春先に軒下を見上げたら、壁に泥の点が数か所ついていた。玄関の上でツバメが旋回している。そんな場面に出くわすと、多くの方が「今のうちに何とかしたい」と考えます。糞が落ちる、鳴き声が響く、来客の頭上を鳥が横切る。実際に困りごとが起きる前に手を打ちたい、という気持ちはもっともです。
結論から言うと、ツバメの巣対策には「やってよい時期」と「手を出せない時期」がはっきり分かれています。卵やヒナが入った巣を許可なく壊すことは鳥獣保護管理法で禁じられていて、違反すると1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります。逆に、まだ卵を産んでいない段階や、ヒナが巣立ったあとであれば、対策の選択肢は一気に広がります。
この記事では、まず自分の家の巣が今どの段階にあるかを見分ける方法を整理し、そのうえでネット・テープ・スパイク・忌避剤といった具体的な手段を、効きやすい場面と副作用の両面から比べていきます。ツバメが全国で減っている現実と、追い出さずに折り合いをつける方法にも触れます。
・巣に卵やヒナがある場合とない場合で、やってよいことがどう変わるか
・対策を始める時期の目安(ツバメの渡来は3月上旬〜中旬)
・ネット・テープ・スパイク・忌避剤の効きやすい場面と注意点
・追い出さずに糞害だけを減らす、共存側の選び方
ツバメの巣対策は、まず巣の「中身」を確かめるところから始まる

泥の点が数か所ついただけなら、まだ引き返せる段階です
壁に泥が点々と付着している、あるいは半円の土台がうっすらできている段階なら、対策の自由度は高いままです。この時点ではまだ卵はありません。卵を産む前の巣であれば、泥を落として壁面を掃除し、そのうえで巣を作らせない処置に進めます。
なぜこの見極めが重要かというと、法律の線引きが「卵やヒナの有無」で引かれているからです。大阪府は、卵やヒナが存在する巣を撤去すると損傷や殺傷につながり、法に抵触する可能性があると案内しています。裏を返せば、中身のない作りかけの巣は、その心配なく片づけられるということです。
見分け方は単純で、巣の縁の高さと親鳥の行動を見ます。椀の縁が立ち上がっていない浅い土台の段階で、親鳥が泥をくわえて出入りを繰り返しているなら建築中です。一方、片方の親鳥がじっと座り込んで動かない時間が長くなったら、抱卵に入った合図と考えてください。抱卵期間は約13〜14日です。
注意したいのは、脚立で近づいて中をのぞき込む行為そのものが親鳥のストレスになる点です。日本野鳥の会は、営巣中の野鳥への接近は親鳥が巣を放棄する原因になり得ると注意を促しています。確認は離れた位置から、双眼鏡やスマートフォンのズームで済ませるのが安全です。
卵が1つでもあれば、その巣はもう動かせません
巣に卵やヒナがある場合、自治体の許可なくその巣を撤去することはできません。長岡京市は、許可なく卵やヒナがいる野鳥の巣を撤去することは鳥獣保護管理法で禁止されており、違反した場合は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があると明示しています。
ツバメは一度に4〜5個の卵を産みます。白地に赤褐色の斑点がある小さな卵で、外からは見えないことがほとんどです。だからこそ「まだ卵はないだろう」という思い込みが危険で、巣の形がすでに椀状になっているなら、中身がある前提で扱うのが無難です。
期間の見通しを持っておくと気持ちが楽になります。抱卵は約13〜14日、孵化してからヒナが巣立つまでは17〜22日、平均20日ほどです。つまり卵を確認した時点から数えても、1か月ほどで巣は空になる計算になります。糞受けを一時的に設置してこの期間をしのぐ、という判断が現実的な選択肢になります。
ただしツバメは年に2〜3回繁殖することがあります。1回目が終わったからといって放置していると、同じ巣で2回目が始まります。空になったタイミングを逃さないことが、翌年以降の手間を大きく変えます。

軒下から「ジジジッ」という声が聞こえ始めて数日。気づけば巣のふちから黄色い口がいくつも顔を出していて、親鳥がひっきりなしに出入りしている——そんな春から初夏の光…
【失敗パターン1】「週末にやろう」と先延ばしした数日で巣は完成する
もっとも多い失敗が、泥の付着を見つけながら数日置いてしまうケースです。ツバメの巣作りは泥と草を混ぜて積み上げていく作業で、親鳥は日中ほぼ休みなく往復します。平日に見つけて週末に対処しようと考えているうちに、椀の形ができあがり、産卵まで進んでしまうことがあります。
原因は「巣作りには時間がかかる」という思い込みです。対策として、泥の点を見つけたその日のうちに、まず壁面の泥を水で洗い流してください。土台の足がかりがなくなるだけでも、その場所の魅力は下がります。そのうえで、後述するネットやテープの処置を数日以内に済ませます。
もうひとつ、夜間に判断しないことも大切です。暗い時間帯に脚立を使う作業は転落の危険があり、巣の中身も確認できません。明るい時間に、地上から届く範囲で作業できるかをまず確かめ、届かない高さなら無理をせず専門業者や管理会社に相談してください。
卵やヒナがいる巣の撤去は、都道府県知事の許可がなければ行えません。判断に迷ったら、作業を始める前にお住まいの自治体の環境担当窓口に問い合わせてください。詳しい制度は環境省の鳥獣の捕獲等の許可に関するページで確認できます。
なぜうちの軒下だけ?ツバメが場所を選ぶ基準には共通点がある
そもそもツバメはどんな鳥なのかを押さえる
対策を考えるうえで、相手の性質を知っておくと打ち手の当たり外れが減ります。ツバメは全長約17cm、翼開張約32cmの小型の鳥で、背中は光沢のある青黒色、額と喉が赤褐色、腹が白という配色です。尾が長く二股に分かれているのが特徴で、飛んでいる姿でもほかの鳥と区別しやすい形をしています。
食べているのはハエ、蚊、アブ、ユスリカといった飛ぶ昆虫です。地面についばみに来るのではなく、飛びながら空中で虫を捕らえます。だからパンくずや米を置いても寄ってきませんし、逆に「餌があるから来ている」わけでもありません。ツバメが来る理由は餌場ではなく、営巣場所として条件が合っているからです。
日本には春の渡り鳥としてやってきます。渡来は3月上旬から中旬で、北海道から九州までの広い範囲で繁殖し、8月中旬から10月にかけて東南アジアの越冬地へ移動します。つまり日本の家屋にいるのは1年のうち半年ほどで、この期間だけの付き合いだという見通しが立ちます。
| 全長 | 約17cm |
| 翼開張 | 約32cm |
| 見られる季節 | 3月上旬〜中旬に渡来し、8月中旬〜10月に南へ |
| 体色 | 光沢のある青黒色、額と喉が赤褐色、腹は白 |
| 食べ物 | 飛ぶ昆虫(ハエ、蚊、アブ、ユスリカなど) |
| 営巣場所 | 人家や商店、駅、納屋、車庫の軒下 |
人の出入りが多い場所ほど選ばれるという逆説
「静かな家のほうが狙われそう」と思いがちですが、実際は逆です。ツバメが選ぶのは人家や商店、駅、納屋、車庫の軒下といった、人の気配がある場所です。玄関の真上や店舗の入口という、いちばん困る位置に作られるのはこのためです。
理由は天敵対策にあります。ツバメの卵やヒナを狙うのはカラスやヘビ、ネコといった動物で、これらは人の出入りが多い場所を避けます。人間のそばに巣を作ることで、結果的に捕食されるリスクを下げているわけです。人に慣れているのではなく、人を盾にしていると考えると腑に落ちます。
この習性は対策のヒントにもなります。ツバメが好むのは「人の出入りが多く、天敵が近づきにくく、雨風が当たらない場所」という3条件がそろった場所です。この条件のうち、家主が変えられるのは主に「雨風が当たらない」「足を掛けられる」という物理的な部分です。人通りを減らすことはできませんから、対策は物理面に集中させるのが合理的です。
逆に、この習性を知っていると「なぜ隣家ではなくうちなのか」という疑問にも答えが出ます。軒の出が深い、壁がざらついている、風が回り込みにくい。そうした条件が偶然そろっているだけで、家の管理が悪いわけではありません。
雨風が当たらない場所と、足がかりのある壁面
ツバメの巣は泥と草を混ぜて壁に貼り付けた椀状の構造です。この工法は、雨に濡れると崩れます。だから軒下やひさしの内側、天井と壁が交わる入隅のような、直接雨がかからない場所が選ばれます。
もうひとつの条件が、泥が食いつく足がかりです。ツルツルした面には泥が付かず、そもそも親鳥が身体を支えられません。凹凸のあるモルタル壁、ざらついた吹き付け塗装、木の梁といった面が好まれます。逆に金属サイディングやタイルの平滑面には巣がかかりにくい傾向があります。
この2点を理解すると、対策の原理が見えてきます。雨がかからない条件は建物の形なので変えられませんが、足がかりの条件は変えられます。ツルツルのテープを貼る、スパイクを置く、ネットで面ごと覆う——市販の対策製品がどれもこの発想に基づいているのは偶然ではありません。
ちなみに、日本野鳥の会は最近の西洋風家屋には軒のないものや、壁面が加工されて巣が作りにくいものがあると指摘しています。つまり家の形が変わったこと自体が、すでにツバメにとっての巣作り環境を狭めているという背景も押さえておきたいところです。
実は、更地から作るより「去年の巣跡」を直すほうが多い
意外と知られていませんが、ツバメが何もない壁に泥とわらを一から積み上げて巣を作るケースは多くありません。前年に作った巣や、壊れかけた巣の跡をベースに補修して手間を省いているケースが多く見られる、と生物多様性センターの報告は述べています。
これは対策の優先順位を大きく変える事実です。今年の春に慌ててネットを張るより、前年の秋——ヒナが巣立ち、ツバメが南へ渡ったあと——に古い巣の跡と壁の泥汚れをきれいに落としておくほうが、翌春の負担は軽くなります。対策の本番は春ではなく、実は前年の秋なのです。
具体的には、巣が空になったことを数日かけて確認したうえで、巣を取り外し、壁面に残った泥をブラシと水で落とします。うっすら残った泥の輪郭が、翌年の「ここに作れる」という目印になります。仕上げに壁を乾かし、可能であれば防鳥処置までひと続きで済ませてしまうのが効率的です。
この段取りを知らずに、春になってから巣跡の上にテープを貼っても、すでに親鳥は場所を記憶して戻ってきています。旋回して未練を見せる期間が長くなり、結局は隣接する別の場所に作られることになりがちです。
卵とヒナのいる巣に手を出せない、法律の線引きを整理する

鳥獣保護管理法が守っているものと、罰則の重さ
日本の野鳥は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」、通称・鳥獣保護管理法によって守られています。ツバメも当然この対象で、許可なく捕まえたり飼育したりすることは禁じられています。大阪府はこの点をあらためて周知しています。
巣そのものについては、卵やヒナが存在する巣を撤去すると、損傷や殺傷につながるため法に抵触する可能性がある、という整理になります。「巣は建物の一部だから自分のものだ」という発想は通用しないということです。
罰則も軽くありません。長岡京市の案内によれば、違反した場合には1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金のいずれかが科される可能性があります。糞害を避けたいという動機は理解できるものですが、リスクの大きさは知っておく必要があります。
なお、対象になるのは「撤去」だけではありません。ヒナを別の場所に移す、卵を取り除いて巣だけ残す、といった行為も同じ枠組みで考えるべきです。中身が入っている巣には触らない、が唯一の安全な判断です。
手を出してよいのは、産卵前と巣立ち後の2つのタイミング
裏を返せば、撤去が可能なタイミングははっきりしています。卵を産む前と、ヒナが巣立ったあとの2つです。この2つの窓を逃さないことが、ツバメの巣対策の実務のほぼすべてと言っても大げさではありません。
産卵前の窓は短く、泥がつき始めてから数日という感覚です。前述のとおり、この段階では巣の縁が立ち上がっておらず、親鳥が泥をくわえて出入りしている状態が目印になります。
巣立ち後の窓は、年に2〜3回の繁殖が終わったあと、つまり南へ渡ったあとが確実です。孵化から巣立ちまでは17〜22日、平均20日ほどですが、巣立ち直後のヒナは巣に戻ってねぐらにすることがあります。数日はそのままにして、朝夕とも出入りがないことを確かめてから作業するのが安全です。
迷ったときの原則は「急がない」です。1回の繁殖が終われば巣は必ず空になりますし、渡去の時期である8月中旬から10月を過ぎれば、ツバメは翌春まで戻りません。焦って中身のある巣に触れるより、待って確実に処理するほうが結果的に早く終わります。
どうしても外さなければならないときは、都道府県知事の許可を取る
とはいえ、店舗の調理場の真上、病院の出入口、食品を扱う施設など、衛生上どうしても放置できない場所もあります。その場合に取り得る道が、許可申請です。卵やヒナがいる巣の撤去を希望する場合、許可の権限を持つのは都道府県知事になります。
窓口は自治体によって分かれています。たとえば神奈川県の場合、横浜市と川崎市は環境農政局が、その他の地域は各地域県政総合センターの環境部が担当という区分になっています。同じ県内でも市によって窓口が違うので、まずはお住まいの自治体のウェブサイトで「鳥獣 許可」と探すか、環境担当課に電話で確認するのが確実です。
申請には理由の説明が求められます。「糞が落ちて不快だから」という理由だけで通るとは限らず、衛生上・安全上の具体的な支障を説明できるかどうかが分かれ目になります。時間もかかるため、繁殖期が始まってから動くのでは間に合わないことも多いです。
だからこそ、許可申請という道があると知ったうえで、それを使わなくて済むように「産卵前に手を打つ」という段取りを組むのが現実的です。許可は最後の手段であって、最初の選択肢ではありません。
ツバメの巣対策はいつ動く?3月上旬からのカレンダーで考える
渡来は3月上旬〜中旬。準備は「来る前」に終わらせる
ツバメが日本に渡ってくるのは3月上旬から中旬です。ここが対策のデッドラインになります。到着した鳥が数日で場所を決めてしまうことを考えると、2月中に処置を済ませておくのが理想的なスケジュールです。
対策サイトの整理でも、実施時期は巣作り時期である3月から6月の前が重要とされています。ネットを張る、テープを貼る、スパイクを設置するといった作業は、ツバメがいない時期にやるほうが安全でもあります。営巣が始まってからの作業は、親鳥への圧迫にもなりかねません。
地域差も押さえておきたいところです。九州・四国では巣作り時期が3月下旬から6月中旬とされています。北へ行くほど時期は後ろにずれますが、「うちの地域はまだ先だろう」と構えているうちに渡来が始まるパターンが多いので、早めに動くに越したことはありません。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| △ | △ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | △ |
◎=よく見られる(もっとも観察しやすい時期) ○=見られる △=まれに見られる
巣作り時期は3月〜6月。繁殖は4月から8月まで続く
巣作りが集中するのは3月から6月です。そして繁殖そのものは4月から8月まで続きます。この幅の広さが、対策を難しくしている一因です。「6月まで我慢すれば終わる」と考えていると、二番子の巣作りが始まって振り出しに戻ります。
ツバメは年に2〜3回繁殖することがあります。1回目のヒナが巣立って巣が空になった直後、同じ巣を補修して2回目に入るのが典型的なパターンです。つまり、シーズン中に巣が空になる短い期間は何度か訪れますが、そのたびに次の繁殖が始まるリスクがあるということです。
この特性を踏まえると、シーズン中の対応方針は2択になります。ひとつは、巣が空になったタイミングを見逃さず即座に撤去して防鳥処置まで一気に済ませる方法。もうひとつは、シーズン中は糞受けでしのぎ、渡去後にまとめて処理する方法です。中途半端に撤去だけして処置を先送りすると、同じ場所に作り直されます。

庭先の軒下でツバメが忙しそうに泥を運んでいるのを見て、「そういえば巣作りっていつからいつまでなんだろう」と気になったことはありませんか。毎年同じ時期に同じような…
8月中旬から10月の渡去後が、翌年に向けた本当の作業時期
子育てを終えたツバメは、川沿いのヨシ原などに数千羽から数万羽が集まってねぐらを取り、8月中旬から10月にかけて東南アジアへ渡っていきます。フィリピンやインドネシアが越冬地です。この渡去のあとが、家主にとってもっとも作業しやすい時期になります。
この時期にやるべきことは3つです。第一に古い巣と壁の泥を完全に除去すること。第二に、翌春に向けた防鳥処置を施すこと。第三に、糞で汚れた壁や地面を清掃することです。前年の巣跡が翌年の営巣を呼ぶという性質を考えれば、この秋の作業が翌春の負担をいちばん大きく減らします。
清掃の際は、乾いた糞を掃き出すと粉じんが舞います。作業前に水で湿らせてから拭き取り、マスクと手袋を着けるようにしてください。健康面の心配がある場合は自己判断せず、自治体の衛生担当窓口や医療機関に相談するのが確実です。
冬のあいだに処置を済ませておけば、3月上旬の渡来時にはすでに「作れない壁」になっています。ツバメは条件の合わない場所には長居しませんから、旋回して去っていく期間も短くて済みます。
物理的にふさぐ:ネット・テープ・スパイクの使い分け
ネットは効果が高いぶん、施工の丁寧さがすべて
軒下など巣を作りやすい場所にネットを張る方法は、ツバメが近寄れなくなるため効果が高いとされます。物理的に空間を遮断してしまうので、鳥が慣れるかどうかという不確実さがありません。玄関上や車庫のように面で守りたい場所には向いた方法です。
効果を決めるのは施工の隙間です。ツバメは全長約17cm、翼開張約32cmですが、翼をたたんだ身体はさらに細くなります。壁とネットのあいだにわずかな隙間があると、そこから入り込んで内側に巣を作られます。四辺を確実に固定し、たるみを残さないことが要点です。
注意点として、固定のために壁へ穴をあけると雨漏りの原因になる可能性があります。持ち家であっても、外壁への穴あけは慎重に判断してください。賃貸や集合住宅の共用部であれば、そもそも管理会社や大家さんの許可が必要です。粘着フックや突っ張り式の器具で固定できないか、まず検討することをおすすめします。
見た目の影響も無視できません。玄関まわりにネットを張ると、外観の印象は変わります。人目につく場所には目立ちにくい色を選ぶ、あるいは次に紹介するテープやシートで代替するといった判断も必要になります。
ツルツルのテープは、費用対効果でいちばん試しやすい
表面がツルツルしたテープを貼ると、ツバメが足を掛ける場所がなくなり、巣を作らせない対策になります。ツバメは凹凸のある外壁を好むため、この方法が効きやすいという理屈です。ホームセンターで手に入る材料でできるので、最初に試す手段として扱いやすいでしょう。
変化球として、幅の広い平たいビニールテープを天井へセロハンテープで固定する方法もあります。この方式で15年間ツバメの巣作りを防げたという実例が報告されています。テープが風でわずかに揺れることも、鳥が寄りつきにくくなる要因になっていると考えられます。
貼る位置は、巣が作られていた場所そのものと、その周囲を含めた面です。ピンポイントで巣跡だけをふさぐと、数十センチ横にずれて作られるだけということが起こります。壁と天井が交わる入隅は特に狙われやすいので、そのラインに沿って連続して貼るのが要点になります。
耐久性は屋外環境しだいです。直射日光や雨がかかる位置では、シーズン中に粘着が弱って剥がれてくることがあります。3月から6月の巣作り時期には、月に一度は状態を見て、浮きや剥がれがあれば貼り直してください。
防鳥スパイクと鳥よけシートは、止まり木そのものをなくす道具
市販品で足がかりを断つなら、防鳥スパイクや鳥よけシートが選択肢になります。トゲ状の製品を軒下や物干し竿に取り付けることで、鳥が足を掛けられなくする発想です。
たとえばセフティー3(藤原産業)の防鳥スパイクは、材質がABS樹脂とステンレスで、伸縮タイプの直線時で約50cmまで伸びます。モノタロウでの価格は税込769円です。柔軟に曲げられるため曲面にも平面にも取り付けられ、接着剤・両面テープ・結束バンド・紐・ネジといった複数の方法で固定できます。複数個を継ぎ足せば長い距離もカバーできます。
見た目を重視するなら、DAIMの「とうめい鳥よけシート」のような半透明タイプがあります。シート部分がPET樹脂、トゲがポリプロピレンで、寸法は幅90mm×長さ400mm×高さ80mm。3枚入りのセットで、価格は550円程度から(取扱店により変動します)。タテヨコに連結でき、ハサミで好みのサイズにカットできるため、物干し竿やエアコン室外機、窓のひさしといった細かい場所に合わせやすい製品です。固定は市販の両面テープか結束バンドで行います。詳しい仕様はDAIMの公式サイトで確認できます。
いずれの製品も、設置面の汚れを落として乾かしてから取り付けるのが基本です。泥や油分が残っていると両面テープが浮き、風で外れて落下します。人が通る場所の頭上に設置する場合は、落下防止のために結束バンドとの併用も検討してください。
【失敗パターン2】粘着力の強いテープで外壁塗装を傷めてしまう
テープ方式で起きやすい失敗が、粘着力の強すぎるガムテープを直接外壁に貼ってしまうケースです。剥がすときに塗装ごと持っていかれ、巣の跡より目立つ剥がれが残ってしまいます。粘着力が強すぎると外壁塗装を傷める恐れがある、というのは対策情報でも指摘されている点です。
原因は、屋外用ではないテープを長期間貼りっぱなしにすることです。紫外線と熱で粘着剤が変質し、糊が壁に残ります。夏を越すと剥離はさらに難しくなります。
対策は3つあります。第一に、目立たない場所で数日試し貼りしてから本設置すること。第二に、シーズンが終わったら剥がして貼り替える運用にすること。第三に、塗装が古い建物や吹き付け壁では、貼らずに済むスパイクや突っ張り式のネットを選ぶことです。
賃貸物件では特に注意が必要です。原状回復の範囲を超える壁面の損傷は退去時の負担になります。作業前に管理会社へ一報を入れ、どの方法なら認められるかを確認しておくほうが、結果として安く済みます。
| 対策方法 | 向いている場所 | 見た目への影響 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| ネット | 玄関上・車庫など面で守りたい場所 | 大きい | 壁の穴あけが雨漏りの原因になる可能性 |
| ツルツルのテープ | 壁と天井の入隅・巣跡の周囲 | 小さい | 粘着が強すぎると外壁塗装を傷める |
| ビニールテープ吊り下げ | 天井面から垂らせる軒下 | 中くらい | 固定が弱いと風で外れる |
| 防鳥スパイク | 手すり・物干し竿・止まりやすい縁 | 中くらい | 頭上設置は落下防止の併用固定を |
| 鳥よけシート(半透明) | 室外機・窓のひさし・細かい場所 | 小さい | 設置面の汚れを落とさないと剥がれる |
| 光る物(CDなど) | 補助的に他の方法と併用 | 中くらい | 効果は確実でなく、鳥が慣れることがある |
| 忌避剤(ジェル・スプレー) | テープを貼りにくい凹凸面 | 小さい | 匂いが周辺に不快感を与える可能性 |
※野鳥の教科書調べ。公開されている製品情報と自治体・対策情報をもとに整理したものです。
見せて遠ざける:光り物・模型・忌避剤にできること、できないこと
CDやキラキラテープは「補助」と割り切る
巣を作りそうな箇所にCDをぶら下げたり置いたりすると、鳥が近寄りづらくなるとされています。光の反射が天敵の猛禽類に見えるため、ツバメを遠ざけられるという理屈です。手元にある材料でできるので、真っ先に試す人が多い方法でもあります。
ただし、効果は確実ではなく、鳥が慣れてしまうこともあります。最初の数日は旋回して近寄らなかったのに、1週間後には隣で巣作りが始まっていた、という展開は珍しくありません。動かないものは、鳥にとってすぐ「危険ではない景色」に変わります。
使うなら、単独ではなく物理的な方法と組み合わせるのが現実的です。テープやスパイクで足がかりをなくしたうえで、視覚的な要素を足す。ネットやテグスによる物理的方法、キラキラと光るアルミホイルなどの視覚的方法、忌避スプレーを組み合わせることで効果を高められる、という整理は理にかなっています。
吊るす位置にも配慮が要ります。隣家の窓に反射光が入る位置は避けてください。鳥よけのつもりが近隣トラブルの種になっては本末転倒です。風の強い日に音を立てないかどうかも、設置前に確認しておきたいポイントです。
天敵の模型は、置き方しだいで景色になる
カラスやヘビをかたどった模型を軒下に置いて、ツバメの接近を避けさせる方法もあります。ツバメの卵やヒナを実際に狙うのがカラスやヘビであることを考えると、発想としては筋が通っています。
弱点はCDと同じで、動かないことです。同じ場所に同じ姿勢で置き続ければ、やがて建物の一部として認識されます。使う場合は、数日おきに位置や向きを変えるひと手間を前提に考えてください。
また、模型が効いてしまった結果として、その周辺で営巣していた別の鳥まで遠ざけることもあります。庭に来る小鳥を楽しんでいる方の場合、玄関だけは守りたいのに庭全体から鳥が減った、という結果になりかねません。設置範囲は困っている場所に限定するのが賢明です。
忌避剤は「不快な場所」と学習させる道具
鳥が嫌がる成分の薬剤を、ジェルやスプレーで設置する方法もあります。ジェル型は泡タイプより持続力が長いとされ、視覚・嗅覚・触覚・味覚・学習という5つの作用メカニズムを通じて、鳥がその場所を不快な場所だと学習し、寄りつかなくなるように設計されています。
向いているのは、テープが貼りにくい凹凸の激しい壁面や、形が複雑でネットを張れない場所です。塗るだけで済むぶん施工のハードルは低く、賃貸でも比較的取り入れやすい方法と言えます。
注意点は匂いです。強い匂いが周辺に不快感を与える可能性があるため、隣家との距離が近い場所や、飲食店の出入口付近では使いどころを選びます。玄関のドアノブ周辺など、人が触れる可能性のある場所への設置も避けてください。
また、忌避剤は雨や紫外線で効果が落ちていきます。製品ごとに持続期間の目安が示されているので、使用前に必ず表示を確認し、その周期で塗り直す前提でスケジュールを組んでおくと、シーズン途中で効かなくなる事態を防げます。
視覚に訴える方法(CD・模型)は単独では慣れられやすく、物理的に足がかりをなくす方法(ネット・テープ・スパイク)が対策の土台になります。組み合わせて使うこと、そして渡来前の時期に仕込んでおくこと。この2点が、シーズンを通して効かせるための条件です。
追い出す前に知っておきたい、4割減ったツバメと共存という選択肢
全国で1990年代の調査から4割減という現実
ツバメは、どこにでもいる鳥という印象があります。ところが実際には、全国で1990年代の調査に比べて4割減少しているという報告があります。大阪府吹田市の調査では、1998年から2010年までの12年間で約1/3にまで減ったという数字も出ています。
環境省の分布調査でも、1974年から1978年と1997年から2002年を比べると、ツバメの繁殖がかなり少なくなっていることが示されています。石川県では昭和47年からの長期調査で、年を追うごとの減少が記録されました。
自治体レベルでは保護の対象としての位置づけも進んでいます。神奈川県では、ツバメは県内で生息地あるいは生息個体数が著しく減少している「減少種」として区分され、県が保護への協力を呼びかけています。詳細は神奈川県のツバメに関するページで確認できます。
もちろん、減っているから我慢しなければならない、という話ではありません。糞や衛生の問題は現実に存在します。ただ、対策を「巣を作らせない」一択で考えるか、「困る場所だけ守り、それ以外は受け入れる」という設計で考えるかで、打ち手の幅は大きく変わります。
減少の背景にある3つの変化
日本野鳥の会は、減少の理由をいくつかの側面から説明しています。ひとつは餌の問題です。里山の自然が宅地化などで減り、農業の衰退により水田や耕作地が減少して、ツバメの餌となる虫が少なくなりました。飛ぶ昆虫だけを食べる鳥にとって、これは直接的な打撃です。
ふたつめが住宅構造の変化です。最近の西洋風家屋には軒のないものや、壁面が加工されて巣が作りにくいものもあり、巣を作る環境が減って繁殖が難しくなったとされています。私たちが対策として意図的にやっている「作らせない加工」が、家づくりの標準としてすでに進んでいるということでもあります。
みっつめが、糞や鳴き声を嫌う社会の風潮です。これは各家庭の判断の積み重ねであり、誰か一人の責任ではありません。ただ、その総和が個体数に影響しているという構図は知っておいてよいと思います。より詳しい背景は日本野鳥の会のツバメ減少に関するページにまとまっています。
もうひとつ、ツバメが食べているのがハエ、蚊、アブ、ユスリカといった飛ぶ昆虫だという事実も見落とせません。空中の昆虫を多く捕食することで、蚊やハエを減らす役割を果たしています。夏場の虫を気にする家庭にとって、まったく無関係な鳥ではないわけです。

庭先を横切っていくツバメを見て、「何を食べているんだろう」「餌をあげたら喜ぶのかな」と思ったことはありませんか。巣の下でヒナがピーピー鳴いていると、なおさら何か…
シーン別:追い出さずに困りごとだけ減らす方法
状況によって、取るべき方針は変わります。戸建てで玄関の真上に作られた場合は、糞受けの板を巣の下に取り付けるだけで、日々の掃除の負担はかなり下がります。巣立ちまでは17〜22日、平均20日ほどですから、期間限定のしのぎ方として現実的です。
賃貸や集合住宅の共用廊下では、まず管理会社に連絡するのが先です。共用部の壁に手を加えることも、巣を撤去することも、居住者の一存では決められません。管理者側が自治体と調整するルートを持っていることもあります。
飲食店や食品を扱う施設では、衛生面の要請が優先されます。この場合こそ、渡来前の2月までに物理的な処置を完了させておく価値が高い場面です。営業中に営巣されてからでは、許可の問題で身動きが取れなくなります。
そして、駐車場や車庫のように「車が汚れるだけ」の場所であれば、駐車位置をずらす、カバーをかけるという回避策が成立することもあります。守るべき場所とそうでない場所を仕分けするだけで、対策のコストは下がります。
まとめ:時期を外さなければ、ツバメとの折り合いはつけられる
ツバメの巣対策でつまずく人の多くは、方法を知らないのではなく、時期を外しています。泥がつき始めてからの数日と、ヒナが巣立って空になったあとの数日。この2つの短い窓を意識しておくだけで、法律に触れる心配も、追い出せずに悩む時間もかなり減らせます。まずは今日、軒下を見上げて巣がどの段階にあるかを確かめるところから始めてみてください。
そのうえで、困る場所と受け入れられる場所を仕分けしておくと、翌年からの判断がぐっと軽くなります。玄関の真上だけは守り、車庫は糞受けでしのぐ、といった線引きです。全国で4割減ったと報告されている鳥だからこそ、ゼロか百かではない選び方が残されています。
※法律の運用や申請窓口は自治体によって異なります。撤去や許可申請の判断にあたっては、最新情報をお住まいの自治体の環境担当窓口および環境省の公式ページでご確認ください。製品の価格・仕様は変動する場合があります。

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