軒下から「ジジジッ」という声が聞こえ始めて数日。気づけば巣のふちから黄色い口がいくつも顔を出していて、親鳥がひっきりなしに出入りしている——そんな春から初夏の光景を、家の前で眺めている方は多いと思います。同時に気になるのが、「あと何日で巣立つの?」「巣の下にヒナが落ちていたらどうすればいい?」という現実的な疑問ではないでしょうか。
結論から書きます。ツバメのヒナは孵化してから20日ほどで巣立ちます。そして、巣の下で見つけたヒナは、羽が生えそろっていればほとんどの場合そのままにしておくのが正解です。拾って持ち帰る行為は、鳥獣保護管理法に触れる可能性があり、しかもヒナの生存率をむしろ下げてしまいます。
この記事では、バードリサーチや日本野鳥の会、自治体が公開している調査データと公的な見解をもとに、ヒナが卵から巣立ちまでたどる日数と体重の変化、親鳥が運ぶ餌の中身、落ちていたヒナへの正しい対応、そしてフンや天敵と折り合いをつけながら見守る方法まで、順を追って整理していきます。数字はすべて出どころを示しているので、ご近所や家族に説明するときの根拠としても使えます。
・ツバメのヒナは孵化から20日ほどで巣立ち、産卵初日から数えると1回目で39日かかります
・巣の下のヒナは、羽が生えそろっていれば拾わずそのままにするのが基本です
・許可なく野鳥を捕獲・飼育すると、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になり得ます
・巣立ちの失敗要因は捕食が約35%、巣の落下・転落が22%、人による巣撤去が約9%です
ツバメのヒナは孵化から20日で巣立つ

卵から数えると39日|産卵初日から巣立ちまでの実際のカレンダー
ツバメの子育て期間は、「孵化してから」で数えるか「卵を産み始めてから」で数えるかで、印象がまるで変わります。バードリサーチの記事によれば、ツバメのヒナは孵化して20日ほどで巣立ちます。一方、産卵初日から巣立ちまでの日数で見ると、1回目の繁殖で39日、2回目で36日という数字が示されています。成育日数そのものは1回目・2回目とも21日で、差がつくのは主に産卵と抱卵の期間です。
なぜ2つの数え方があるかというと、観察している人が巣に気づくタイミングが人それぞれだからです。「巣を作り始めた日」に気づいた人は約39日を待つことになりますが、「ヒナの声が聞こえた日」に気づいた人にとっては残り20日ほど。軒下の巣を見上げて「いつまで続くんだろう」と思ったとき、自分がどの段階から数えているかを意識すると、見通しが立てやすくなります。
具体的な観察のコツは、親鳥の動きを見ることです。親が昼間もずっと巣にこもるようになったら抱卵の合図。そこから2週間ほどで、巣のふちから小さな鳴き声が聞こえ始めます。ツバメかんさつ全国ネットワークが公開している観察例では、6卵目を産んだ日から14日目に孵化し、そこから約19日で巣を離れました。公表されている「20日ほど」という目安と、実際の巣の記録がほぼ一致しているのがわかります。
注意したいのは、この日数がぴったり当てはまるとは限らないことです。天候が悪く餌になる虫が飛ばない日が続くと、ヒナの成長は遅れます。「20日経ったのに巣立たない」と焦って巣に近づくと、かえって巣立ちを遅らせてしまいます。日数はあくまで目安として、ヒナ自身のタイミングに任せてください。
3日目5g、15日目19.4g|12日で親の体重に追いつくスピード
ツバメのヒナの成長速度は、体重の推移で見るともっともわかりやすくなります。孵化後3日目で5g、7日目で12.5g、9日目で16.7g、15日目で19.4g。親ツバメの体重が約18gですから、ヒナは孵化からわずか2週間ほどで親と同じか、それ以上の重さに達することになります。
これほど急激に増えるのは、ツバメが「巣にいる時間をできるだけ短くする」戦略をとっている鳥だからです。泥でできた巣は雨に弱く、開けた場所にあるため天敵にも見つかりやすい。巣の中で過ごす日数が長いほどリスクが積み上がるので、短期間で一気に体を作り上げ、飛べる状態にして巣を離れます。その燃料になるのが、親鳥が運び続ける虫です。
庭やベランダから観察するときは、巣のふちから見える口の位置で日齢が読めます。孵化直後は巣の底で丸まっていて姿がほとんど見えませんが、1週間を過ぎると首を伸ばして巣のふちに黄色い口が並ぶようになります。15日齢前後になると、巣からはみ出すほど大きくなり、羽ばたきの練習を始めます。この段階が、餌の要求がもっとも激しくなる時期です。
豆知識をひとつ。15日齢を過ぎたヒナは体重が一度ピークを迎え、巣立ち直前にわずかに減ることがあります。飛ぶために体を軽くしているためで、痩せたように見えても異常ではありません。「急に小さくなった気がする」と心配して手を出す必要はありません。
| 段階 | 目安の日数 | ヒナの体重 | 巣の外から見える様子 |
|---|---|---|---|
| 産卵 | 3〜7卵を数日かけて | — | 親が出入りを繰り返す |
| 抱卵 | 9〜17日(平均14.1日) | — | 昼間も巣にこもる |
| 孵化〜3日目 | 3日 | 5g | 姿はほぼ見えない |
| 7〜9日目 | 7〜9日 | 12.5〜16.7g | 黄色い口が巣のふちに並ぶ |
| 15日目 | 15日 | 19.4g(親は約18g) | 巣からはみ出し羽ばたく |
| 巣立ち | 孵化から20日ほど | — | 1羽ずつ飛び出す |
※日数・体重は公表データをもとに野鳥の教科書が整理(出典:バードリサーチ/ツバメかんさつ全国ネットワーク)
「巣立ち」は上手に飛べるようになった日ではない
巣立ちという言葉には「一人前になって旅立つ」響きがありますが、ツバメの場合はまったく違います。巣立ちの日は「巣を離れた日」であって、「上手に飛べるようになった日」ではありません。東京都環境局も、巣立ちしたばかりのヒナはうまく飛べず、枝から枝へ移るときなどに地面に降りてしまうことがある、と説明しています。
理由は、ツバメが巣で羽ばたきを完成させてから出るのではなく、体が仕上がった時点で外に出て、飛行技術は空中で学ぶ鳥だからです。飛ぶ虫を空中で捕らえるという生き方は、狭い巣の中で練習できるものではありません。だから巣立ち当日のヒナは、電線や物干し竿に不器用に止まり、時には地面に降りてしまいます。
見分け方は簡単です。羽が生えそろっていて、しっかり立って歩けるヒナは巣立ちビナ。地面にいても、親鳥が近くから見守っていて餌を運び続けます。反対に、羽毛がまばらで自力で立てないヒナは、巣から落ちてしまった巣内ビナです。この2つで対応がまったく変わるので、まず羽を見てください。
やりがちな失敗が、「飛べていないから助けが必要だ」と判断して段ボールに入れてしまうことです。巣立ち当日の飛べなさは正常な通過点であり、翌日にはかなり飛べるようになっています。地面にいるヒナを見つけたら、まずは離れた場所から10分ほど様子を見てください。多くの場合、親鳥が餌を持って降りてくるのが確認できます。
1番子と2番子で日数が変わる理由
ツバメは1シーズンに2回子育てすることが珍しくありません。そして1回目(1番子)と2回目(2番子)では、かかる日数が違います。産卵初日から巣立ちまでで見ると、1回目が39日、2回目が36日。3日ほど短縮されます。
差が生まれる主な理由は抱卵日数です。前期繁殖の抱卵日数は9〜17日(平均14.1日)ですが、後期繁殖では9〜16日(平均11.8日)と、平均で2日以上短くなります。気温が上がって卵が冷えにくくなること、餌になる虫が増えて親鳥が巣を空ける時間を短くできることが背景にあると考えられています。一腹産卵数は3〜7卵の幅があり、こちらも回によって変わります。
庭で観察していると、この違いは体感としても現れます。1回目の子育ては4月から5月にかけてゆっくり進み、雨で中断することもあります。2回目は6月から7月にかけてテンポよく進み、「気づいたらもう巣立っていた」となりがちです。2回目を見逃したくない方は、1番子が巣立った直後から巣を気にかけておくといいでしょう。
知っておくと得する点として、1回目と2回目では巣立つヒナの数も変わります。日本野鳥の会の全国調査では、1巣あたりの巣立ちヒナ数は全国平均でほぼ4羽。ただし2番子は1番子より少なくなる傾向が報告されています。「2回目は数が減った」と感じても、それは珍しいことではありません。
親鳥は3日で283回運んでいた
銀座の巣で数えた283回という記録
ヒナの急成長を支えているのは、ひたすら虫を運ぶ親鳥です。バードリサーチが2023年に公表した銀座のツバメの観察では、3日間で283回の餌運びが記録されました。内訳はオスが128回、メスが155回。撮影は巣から5メートルほど離れた位置から行われ、雌雄は尾羽の長さと喉の赤色の濃淡で識別されています。
この数字が示すのは、親鳥にとって育雛期がどれだけ過密なスケジュールかということです。283回のうちほとんどが、飛び立って虫を捕らえ、巣に戻って口に押し込むという往復。しかも撮影時のヒナは15日齢くらいで、巣立ち前のいちばん食べ盛りな時期でした。ヒナの数が多いほど、この回数はさらに増えていきます。
観察するときは、ストップウォッチを持たなくても「何分に1回戻ってくるか」を数えてみるだけで、親鳥の忙しさが実感できます。天気のよい日は虫が多く飛ぶので往復が速く、雨の日は間隔が空きます。「今日は親が来ない」と感じる日があっても、それは天候によって餌が取りにくくなっているサインで、巣が放棄されたわけではないことがほとんどです。
豆知識として、この調査では給餌回数のオスメス差に統計的な有意差は認められていません。「メスのほうが多かった」のは事実ですが、それをもって「ツバメはメスのほうが働き者だ」と一般化はできない、という慎重な扱いになっています。数字の読み方まで含めて公開されているのが、公的な調査データの価値です。
ツバメのヒナが食べるのは、親鳥が空中で捕らえた「飛ぶ虫」だけです。石川県金沢市の調査例では体長4〜15mmほどの個体が多く、川沿いではカゲロウとトビケラが餌の大半を占めていました。人がパンやごはん粒を置いても、ヒナの餌にはなりません。
運ぶのは体長4〜15mmの飛ぶ虫だけ
ツバメがヒナに与えるのは、空中で捕らえた飛翔性の昆虫です。ツバメかんさつ全国ネットワークがまとめた調査例では、石川県金沢市で体長4〜15mmほどの個体が多く確認されました。場所によって中身は変わり、川沿いの巣ではカゲロウとトビケラが餌の大半を占め、川から離れた場所ではハチ、ハエ、チョウの仲間が多かったと報告されています。
この偏りは、ツバメの狩りの方法から必然的に生まれます。ツバメは飛びながら口を開けて虫を捕らえるため、地面を歩く虫や葉にとまっている虫は基本的に対象外です。だから巣の周りにどんな虫が飛んでいるかが、そのままヒナの食卓の内容になります。田んぼや川が近い家のツバメと、市街地のツバメでメニューが違うのはそのためです。
運び方にも工夫があります。ハエやハチのような大きい虫は1匹ずつ運びますが、小さい虫は複数匹をくちばしにくわえるか、のどを膨らませてまとめて運びます。巣に戻った親鳥の喉がふくらんで見えたら、小さな虫を大量に詰め込んできた証拠です。双眼鏡があれば、口先に何かがはみ出している様子まで観察できます。
ここから読み取れる注意点は、殺虫剤の使い方です。巣の近くで虫を徹底的に減らしてしまうと、親鳥は遠くまで餌を取りに行かざるを得なくなり、往復の効率が落ちます。ヒナがいる期間だけでも、巣の周辺での大量散布は控えるのが、見守る側にできる現実的な配慮です。

軒下にツバメの巣ができた。ヒナの声が聞こえてくる。そうなると、つい「何か食べさせてあげたほうがいいのでは」と思ってしまいますよね。パンくずを置いてみた、ごはん粒…
メスは餌を渡したあと巣に留まる
同じ「餌を運ぶ」でも、オスとメスでは巣での振る舞いが違います。銀座の観察では、メスはヒナに餌を与えた後、巣に長い時間留まりました。ヒナを見つめてじっとしてから飛び立つ様子が記録されています。オスは渡してすぐ飛び出す傾向がありました。
この差は、メスが抱雛(ヒナを温める役割)を担っていることと関係していると考えられます。孵化して間もないヒナは自分で体温を保てないため、親が覆いかぶさって温める必要があります。日齢が進んでも、その習性が残っている可能性があります。
庭で見分けたい方は、尾羽の長さと喉の赤色に注目してください。銀座の調査でもこの2点が識別の手がかりに使われています。オスは外側の尾羽(燕尾)が長く、喉の赤色が濃い傾向があります。巣を出入りする2羽をしばらく見比べると、片方が明らかに尾の切れ込みが深いことに気づくはずです。
観察の注意点として、識別のために巣へ近づくのは避けてください。5メートルほど離れた場所からでも、双眼鏡があれば尾羽の違いは十分に判別できます。近づいて親を警戒させると、給餌の間隔が空いてヒナに影響が出ます。
パンやごはん粒を置く「手伝い」が実らない理由
ヒナの声を聞いていると、何か手伝いたくなるものです。実際、巣の下にパンくずや炊いたごはん、ミルワームを置く方がいます。しかし、これはほぼ確実に無駄になります。ツバメの親鳥は空中で飛ぶ虫を捕らえるので、地面や台に置かれた餌を「ヒナの餌」として認識しません。
原因は、ツバメの採餌行動が飛翔中の捕獲に特化していることです。地面に降りて何かをついばむという行動そのものが、ツバメの日常にはほとんどありません。餌台に来るスズメやシジュウカラとは、そもそも餌の取り方が違います。置いた餌が減っていたとしても、食べているのはスズメやネズミ、アリなど別の生き物です。
むしろ弊害があります。地面に食べ物を置くと、ネコやカラス、ネズミが巣の周辺に集まりやすくなります。日本野鳥の会の全国調査では、子育て失敗の原因としてカラス・ヘビなどの捕食が約35%を占めています。手伝いのつもりで置いた餌が、天敵を呼び寄せる結果になりかねません。
対策はシンプルで、「餌は置かない、代わりに環境を整える」に切り替えることです。巣の下に落ちるフンを受ける板を用意する、巣の周辺で殺虫剤を大量に使わない、人やペットの動線を巣から少し離す。この3つのほうが、パンを置くよりはるかにヒナの生存率に効きます。
巣の下でヒナを見つけたら、最初に見るのは羽

羽が生えそろっているなら、それは巣立ちビナ
地面にヒナがいる。この状況で最初にすべきなのは、拾うことでも巣に戻すことでもなく、羽の状態を確認することです。日本鳥類保護連盟は「ヒナを拾わないで」キャンペーンの中で、羽が生えそろい、しっかり立って歩けるビナは親鳥による育成段階にあると説明しています。ケガがない限り拾わず、ヒナから離れるのが正しい対応です。
なぜ拾ってはいけないのか。理由は明確で、人の手で育てるよりも、親鳥に任せた方がヒナの生存率は高くなるからです。地面にいるヒナも、親鳥は見失っていません。声を頼りに位置を把握し、餌を運び続けています。人がその場に立ち続けることのほうが、親鳥を近づけなくする分だけ害になります。
福井県自然保護センターも、巣立ち間もないヒナはうまく飛ぶことができず地面で休んでいることがあり、1羽でいるように見えても親が近くで見守っているので、そのままにするよう案内しています。「1羽きりで放置されている」ように見えるのは、人間側の見え方の問題です。
判断に迷ったときの目安は、羽と姿勢です。全身に羽が生えていて、足で立って、目がしっかり開いている——この3つがそろっていれば巣立ちビナです。5メートルほど離れて15分待ってみてください。親鳥が降りてきて口に虫を入れる場面が見られたら、それが答えです。
ネコや車が心配なときだけ、少し場所を移す
「そのままに」が原則とはいえ、車道のまん中やネコの通り道では話が別です。この場合は、拾って持ち帰るのではなく、その場から数メートル以内で安全な場所へ移すのが公的機関の案内です。福井県自然保護センターは、交通量が多い場所やネコがいる場所なら近くの植え込みや高い場所に移すよう説明しています。
東京都環境局も同じ考え方で、ネコが近くにいて心配な場合は、近くの木の枝先などネコが近寄れないところに移しましょう、と案内しています。ポイントは「近くの」という部分です。親鳥がヒナの声を聞き取れる範囲を出てしまうと、その時点で親子は切り離されてしまいます。
実際の動かし方としては、両手でそっとすくい、走らず、数メートル以内の植え込みや低い枝に置くだけで十分です。手袋があれば使ってください。移したあとは、その場に留まらずに離れます。人がそばにいると親鳥が降りてこられません。
やりがちな失敗は、「安全な場所」を求めて家の中や庭の奥まで運んでしまうことです。屋内は親鳥が絶対に入れないので、そこに置いた時点で人の手で育てるしかなくなります。移動は最小限、というのが鉄則です。
羽が未発達なら、カップ容器で仮の巣をつくる
羽毛がまだ生えそろっておらず、自力で立てないヒナは、巣から落ちてしまった巣内ビナです。この場合だけは、人が手を貸す余地があります。長岡京市は、羽毛が未発達のヒナについてビニール手袋を着用して巣に戻すよう案内しています。巣が無事なら、これがいちばん確実な対応です。
巣に戻せない、あるいは巣そのものが壊れてしまった場合は、仮の巣を作ります。福井県自然保護センターの案内では、カップめんの容器を半分に切ったものやザルなどを、できるだけ巣に近い場所に設置し、中にティッシュペーパーやキッチンペーパーをしいてヒナを入れる、という方法が示されています。あとはヒナの鳴き声を頼りに、親鳥が餌を運んできます。
設置場所は「できるだけ巣に近く」が要点です。元の巣のすぐ横、同じ壁面、同じ高さが理想です。親鳥は巣の位置を記憶しているので、離れた場所に置くと見つけてもらえません。容器の底に水がたまらないよう、雨がかからない位置を選んでください。
注意点として、「鳥は人のにおいがつくと育児を放棄する」という話は広く信じられていますが、鳥類の多くは嗅覚がそれほど発達していません。手で触れたことを過度に恐れて対応が遅れるより、手袋をして手早く戻すほうが結果はよくなります。ただし衛生面のため、作業後は必ず手を洗ってください。
実は、人が育てて空へ返すのがいちばん難しい
意外と知られていないのですが、ヒナを保護して育てることは「助けた」ことにならない場合があります。福井県自然保護センターは、ヒナは親から生きるすべを学ぶため、人が育てても野生に返すことは難しいと明記しています。日本鳥類保護連盟も、人の手で育てるよりも親鳥に任せた方がヒナの生存率は高くなる、という立場です。
ツバメの場合、この難しさは特に際立ちます。ツバメが生きるには、飛びながら空中の虫を捕らえる技術が要ります。これは巣立ち後に親と飛び回りながら習得するもので、人が餌をピンセットで与えるだけでは身につきません。体だけ大きくなっても、放したときに自力で食べられないのです。
さらにツバメは渡り鳥です。秋には東南アジア方面へ渡る必要があり、その旅は仲間と行動をともにしながら成立します。巣立ち後に集団ねぐらへ合流する時間を持てなかった個体が、単独で渡りを完遂できるかは心もとないところです。
だから「見守る」という選択は、消極的な対応ではありません。数字が示すとおり、それがもっとも生存率の高い選択肢です。手を出したくなる気持ちを抑えて距離を取ることが、実はいちばん難易度の高い、そして効果の大きい手助けになります。
持ち帰った時点で法律違反になることがある
鳥獣保護管理法:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
感情の話だけでなく、法律の話もはっきりさせておきます。ツバメは鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)で保護されている野鳥です。東京都環境局は、許可なく野鳥を飼うことは法律で禁止されていると明記しています。日本鳥類保護連盟も、野鳥は法律で保護されており、許可なく捕獲すると鳥獣保護管理法に違反すると案内しています。
罰則の重さも公表されています。長岡京市の案内によれば、違反した場合は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金いずれかの刑罰が課される可能性があります。「かわいそうだったから」という動機であっても、法律上の扱いは変わりません。
実務的にどう受け止めればいいかというと、「保護」と「捕獲」の線引きを意識することです。危険な場所から数メートル移動させるのは、その場の安全確保です。しかし家に持ち帰って飼育を始めれば、それは許可のない捕獲・飼養にあたり得ます。持ち帰る前に、必ず自治体の窓口に相談してください。
知っておくと安心なのは、公的機関はこの点を責めるために案内しているわけではないということです。多くの自治体が、まず相談してほしいという姿勢で窓口を公開しています。判断に迷ったら、拾う前に電話をかけるのが最短ルートです。
許可なく卵やヒナがいる野鳥の巣を撤去することは、鳥獣保護管理法により禁止されています(長岡京市の案内では、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金いずれかの刑罰が課される可能性があるとされています)。巣を外したい事情があるときは、自作業の前に必ず市区町村の担当課へ相談してください。長岡京市の案内ページ/東京都環境局「ヒナを拾わないでください」
卵やヒナがいる巣は、許可なく外せない
ヒナ本体だけでなく、巣そのものにもルールがあります。長岡京市は、府や市町村の許可なく卵やヒナがいる野鳥の巣を撤去することは、鳥獣保護管理法により禁止されていると説明しています。逆に言えば、中身が空であれば撤去は問題になりません。
この線引きが設けられている理由は、巣の撤去が実質的にヒナの命を奪う行為になるからです。日本野鳥の会の全国調査では、子育て失敗の原因のうち人による巣撤去が約9%を占めています。捕食(約35%)や巣の落下・雛の転落(22%)に次ぐ規模で、人為的な要因としては最大です。
どうしても巣立ちまで待てない事情がある場合は、自治体に相談する道があります。長岡京市の案内では、鳥獣の捕獲等許可申請を出すことで、卵やヒナがある巣の撤去を許可される可能性があるとされています。無断で外すのではなく、まず窓口に事情を伝えてください。
実際の撤去タイミングとしては、鳥が巣立った後であれば撤去して問題ありませんが、中に卵やヒナが残っていないか必ず確認する必要があります。さらに、巣立った直後でも数日はヒナが巣に戻ることがあるため、1週間ほど様子を見てから片付けるのが安全とされています。
ケガをしているときの相談先はどこか
羽が折れている、血が出ている、猫に噛まれた跡がある——明らかにケガをしている場合は、対応が変わります。この場合は自分で治療しようとせず、都道府県や市区町村の鳥獣保護担当窓口に連絡してください。東京都環境局のように、保護した地域ごとの連絡先を公開している自治体もあります。
自分で手当てしないほうがいい理由は2つあります。ひとつは、許可のない飼養にあたる可能性があること。もうひとつは、野鳥の傷病処置には専門的な知識が要るためです。よかれと思ってした処置が状態を悪化させることもあります。
連絡するときは、「どこで」「いつ」「どんな状態で」見つけたかを伝えられるようにしておくとスムーズです。ヒナの羽の状態、立てるかどうか、出血の有無、親鳥が近くにいるかどうか。写真を撮っておくと説明が早く済みます。
注意点として、自治体によって対応方針や受け入れ体制は異なります。「隣の市ではこうだった」が通用しない場合があるので、実際に見つけた場所を管轄する窓口に確認してください。
「ヒナを拾わないで」キャンペーンが毎年春に立つ理由
春から初夏にかけて、駅や公共施設で「ヒナを拾わないで」というポスターを見かけたことがあるかもしれません。これは(公財)日本鳥類保護連盟、(公財)日本野鳥の会、NPO法人野生動物救護獣医師協会が中心となって実施しているキャンペーンで、令和8年度は2026年4月から7月にかけて行われています。
この時期に集中して行われるのは、巣立ちの季節と重なるからです。多くの鳥が巣立つ4月から7月は、地面でヒナを見かける機会がもっとも増えます。同時に、善意による「保護」が最も多発する時期でもあります。
キャンペーンの目的は、自然の仕組みや鳥の生態を周知し、野鳥保護への関心を高め、自然保護思想の普及を図ることとされています。単に「拾うな」と禁じるのではなく、なぜ拾わないほうがヒナのためになるのかを伝えることに主眼が置かれています。
ツバメの巣が家にある方は、この時期にポスターを見かけたら、家族や同居している方と一度話しておくといいでしょう。特に小さなお子さんは、地面のヒナを見つけたら助けたくなります。「見つけたら大人を呼ぶ、触らない」というルールを先に共有しておくだけで、判断ミスは防げます。詳しくは日本鳥類保護連盟のキャンペーンページで確認できます。
巣立ちの失敗、いちばん多い原因は何か

捕食が約35%|狙うのはカラス・ヘビ
日本野鳥の会が2013年から2020年にかけて実施したツバメ全国調査では、のべ5,351人が10,586巣を報告しました。この大規模なデータから、子育てがうまくいかなかった原因の内訳が明らかになっています。最大の要因はカラス・ヘビなどの捕食で、約35%を占めます。
捕食が突出する理由は、ツバメの巣が構造的に「見つけやすい場所」にあるからです。ツバメは人の生活圏に巣をかけることで、多くの天敵を遠ざけています。しかしカラスやヘビは人の生活圏にも入り込むため、この戦略の隙間を突かれる形になります。
実際に狙われやすいのは、開けた場所にある巣、足場になる手すりや配管が近くにある巣です。ヘビは壁を伝って登ってくるので、壁面がざらついている場所や、つる植物が這っている壁は注意が必要です。カラスについては、ハシブトガラスがツバメの天敵とされる一方、ハシボソガラスは巣を襲わないとされています。庭に来るカラスがどちらかを見分けられると、リスクの見積もりが変わります。
知っておきたいのは、対策の限界です。天敵を完全に排除することはできませんし、ヘビやカラスも野生鳥獣として保護の対象になり得ます。できるのは「巣に近づきにくくする」ことまでで、駆除ではありません。

駅前の電線にとまっている黒い鳥を見上げて、「カラスってどれも同じに見えるけれど、種類ってあるんだろうか」と思ったことはありませんか。ゴミ集積所に集まるカラスと、…
| 失敗の原因 | 割合 | 人にできること |
|---|---|---|
| カラス・ヘビなどの捕食 | 約35% | 巣の周りに紐を張り近づきにくくする |
| 巣の落下・雛の転落 | 22% | 巣台を付けて下から支える |
| 人による巣撤去 | 約9% | 巣立ちまで待つ/自治体に相談する |
出典:日本野鳥の会「ツバメの全国調査2013〜2020年結果報告」(のべ5,351人・10,586巣の報告にもとづく)
巣の落下・雛の転落が22%を占める
2番目に多い失敗要因が、巣の落下・雛の転落で22%です。天敵に襲われたわけではなく、物理的に巣が持ちこたえられなかったケースがこれだけの割合を占めています。
原因は主に2つあります。ひとつは雨。ツバメの巣は泥と枯れ草を唾液で固めた構造なので、雨がかかり続けると崩れやすくなります。もうひとつはヒナの重さです。孵化後3日目で5gだったヒナが15日目には19.4gになり、それが数羽分。巣にかかる荷重は2週間で数倍になります。巣立ち直前に落ちる事故が多いのは、この重量増加が背景にあります。
有効な対策は巣台です。巣の真下に板や受け皿を取り付けて、巣を下から支える構造にします。天敵がいないのに雨やヒナの重みで巣が落ちる場合には、巣台を付けると有効とされています。落下してから慌てるより、抱卵の段階で備えておくほうが確実です。
注意点として、巣台を取り付ける作業自体が親鳥への刺激になります。作業は短時間で終わらせ、脚立を使う場合も巣を覗き込まないようにしてください。取り付けのタイミングについては、次の項目で扱います。
紐は18cm間隔、太さ2〜6mm|テグスを張ってはいけない
カラス対策として巣の前に紐を張る方法があります。ここには具体的な数値の基準があり、適当に張ると逆効果になります。ツバメの保護活動団体が公開している方法では、タテ紐の間隔は、ツバメがよく通り抜ける巣周辺の間隔が18cm前後になるようにします。カラス対策としては20cm程度でも通用します。
この間隔設定には理由があります。狭すぎるとツバメ自身が巣に入れなくなり、広すぎるとカラスが翼を広げて入り込めてしまいます。18cm前後というのは、ツバメが翼をたたんで通り抜けられて、カラスは通れない幅を狙った数値です。
紐の仕様も重要で、太さ2〜6mmのものを使います。そして、透明のテグス等はツバメが見えづらく危険なので使用しないよう明確に注意されています。目立たないほうがいいという発想でテグスを選ぶと、ツバメが紐に気づかず衝突したり絡まったりします。カラス対策で釣り糸を使う話をよく聞きますが、ツバメの巣の前では避けてください。
豆知識として、紐は「巣を囲う」のではなく「巣の前を縦に区切る」イメージで張ります。ツバメは高速で飛び込んでくるので、水平方向の飛行ラインを塞がない配置にするのがコツです。設置後しばらくは、親鳥が問題なく出入りできているか確認してください。
対策を付ける時期を間違えて、親に見捨てられる
ここが最大の落とし穴です。紐やフン受けを「早めに準備しておこう」と考えて、産卵前や抱卵前に取り付けてしまう。これで親鳥が巣を放棄してしまうケースがあります。産卵前や抱卵前に付けたり巣の近くに付けたりすると、親鳥が嫌がって他所へ移動することがある、と注意されています。
理由は、営巣場所を決める段階のツバメが周囲の変化に敏感だからです。巣作りから産卵までの期間、親鳥はまだ「この場所で本当に大丈夫か」を判断している最中です。そこに人工物が増えると、判断が「危険」に傾きます。いったんヒナがいる状態になれば、多少の変化があっても巣を捨てにくくなります。
正しいタイミングは、抱卵を始めてからです。見分け方は明快で、親鳥が昼間もずっと巣にこもるようになったら抱卵開始の合図。天敵対策の紐も、ツバメが抱卵を始めてから付けるのが原則で、産卵前後に設置すると警戒して他所に行ってしまうリスクがあります。
この失敗が惜しいのは、善意から出ている点です。「守ってあげたい」という気持ちが早すぎる行動につながり、結果として巣ごと去られてしまう。ツバメが来たら、まずは何もせずに抱卵が始まるのを待つ。準備は道具を用意しておくところまでにして、取り付けは抱卵開始のサインを見てから、と覚えておいてください。
ヒナがいる3週間、フンとどう付き合うか
フン受けは巣から40cm離して、抱卵開始後に付ける
ヒナの成長期はフンの量も増えます。孵化から巣立ちまでの20日ほど、特に後半は巣の下に相当な量が落ちます。ここで役立つのがフン受けですが、これにも位置と時期の基準があります。フン受けは巣から40cm程離した位置に付けるのが目安です。
40cmという距離には意味があります。巣に近すぎると親鳥が圧迫を感じますし、逆に遠すぎるとフンが受け皿の外に落ちます。ツバメのヒナは巣のふちからお尻を出して外へ向けて排泄するので、真下だけでなく少し前方にも飛びます。この距離を確保しておくと、受け止めながら親鳥の出入りも妨げません。
取り付け時期は前項と同じで、抱卵を始めてからです。フン受けを産卵前や抱卵前に付けると、親鳥が嫌がって他所へ移動することがあります。市販品には床置きタイプ、壁付けタイプ、ワイヤーで吊り下げるタイプがあり、NPO法人バードリサーチが制作している壁付けタイプもあります。自作する場合も、段ボールや板で同じ位置関係を作れば機能します。
実践的な注意として、フン受けは「付けたら終わり」ではありません。ヒナが大きくなる後半は数日でたまるので、こまめに交換・清掃してください。放置すると衛生面の問題が出るうえ、においで苦情の種にもなります。
1番子が巣立ったらすぐ掃除すると、2回目が来る
1番子が巣立ったあと、多くの方が「終わった」と思って片付けに入ります。ただ、同じ巣で2回目の子育てが行われることは珍しくありません。そして、このタイミングでの掃除が2回目の可否を左右します。1回目のヒナが巣立った後、速やかにフン受けを清掃することで、2回目の子育てが同じ巣で行われやすくなるとされています。
理由は、巣の周辺環境が繁殖の条件になっているからです。フンがたまった状態は衛生的に悪く、寄生虫が増える要因にもなります。親鳥にとっても、汚れた環境は次の繁殖に向かない場所として判断されます。逆に、掃除して清潔にしておけば、そのまま2回目に入る可能性が高まります。
掃除する対象は、あくまで巣の下と周辺です。巣そのものには手を触れないでください。2回目に使われる可能性がある以上、巣は残しておく必要があります。フン受けの中身と地面のフンを片付けるだけで十分です。
タイミングの目安としては、ヒナが全員巣立ったことを確認してからです。巣立った直後でも数日はヒナが巣に戻ってくることがあるため、掃除中に戻ってきたヒナを驚かせないよう、朝や夕方の出入りが多い時間帯は避けるといいでしょう。
巣のフンに触れたあとの衛生管理
野鳥の巣やフンには、ダニなどが潜んでいることがあります。掃除や巣台の取り付けで触れる機会がある以上、衛生管理は押さえておきたいところです。基本は、手袋を着用して作業し、作業後に手を洗うことです。
これは特別な話ではなく、土いじりや動物の世話と同じレベルの一般的な衛生対応です。長岡京市も、羽毛が未発達のヒナを巣に戻す場面ではビニール手袋の着用を推奨しています。素手で扱う前提を作らないというだけのことです。
具体的には、使い捨てのビニール手袋とマスクを用意しておくと安心です。乾いたフンを掃くと粉が舞うので、水で湿らせてから拭き取るほうが飛散を抑えられます。使った雑巾やペーパーは袋に入れて口を縛って捨ててください。
健康上の心配については、自己判断せず医療機関に相談するのが原則です。この記事では、掃除の手順として手袋と手洗いを推奨するところまでにとどめます。
玄関・店舗・ガレージ|場所別の落としどころ
ツバメが巣をかける場所によって、現実的な対応は変わります。読者の状況別に整理しておきます。
玄関の真上に巣がある場合は、人の出入りが直下で起きるため、フン受けの設置効果がもっとも大きい配置です。巣から40cm程離した位置に受け皿を設け、玄関マットを一時的に別のものに替えておくと、掃除の手間が減ります。人が通る動線とヒナの排泄位置を少しずらせるかどうかがポイントです。
店舗や事務所の入口の場合、お客さんへの説明が課題になります。「ツバメが子育て中です。◯月頃に巣立ちます」という掲示を出すと、苦情がむしろ好意的な関心に変わることがあります。孵化から20日ほどで巣立つという具体的な期間を示せると、待ってもらいやすくなります。
ガレージや車庫は、シャッターの開閉が問題になります。親鳥が出入りできない時間帯があると、給餌が止まってしまいます。ヒナがいる期間だけシャッターを少し開けておく、または人の出入り用の扉を開放しておくといった対応が必要です。3日間で283回という給餌回数を踏まえると、閉め切る時間は最小限にしたいところです。
いずれの場所でも共通するのは、期間が有限だということです。孵化から数えれば20日ほど、2回目まで含めても夏前には終わります。「一時的なもの」と割り切れる材料として、日数を把握しておくのが役に立ちます。
巣立ったあと、ヒナはどこへ行くのか
数日は巣に戻って眠る
巣立ちの日にヒナが飛び出しても、それで巣が空になるわけではありません。巣立ち後、しばらくの間は巣に戻ってきて眠り、その後も親鳥と過ごしながら飛び方や餌の獲り方を学びます。夕方になると次々と巣に帰ってくる光景が見られることがあります。
この期間があるのは、ツバメの巣立ちが「独立」ではなく「屋外での訓練開始」だからです。自分で餌を取れるようになるまでは巣の近くに留まり、親鳥から餌を運んでもらいます。電線に並んだ幼鳥が、飛んできた親に口を開けて餌をねだる場面は、この時期の典型的な光景です。
観察したい方は、夕方から日没前後の時間帯を狙ってください。日中は巣の周辺から離れていることが多く、夕方に戻ってくるパターンが見られます。数が減っていくのが、独立が進んでいるサインです。
ここで重要な注意点があります。この期間に巣を撤去してしまうと、ヒナは眠る場所を失います。「巣立ったからもう不要」と判断して当日に片付けるのは早すぎます。
巣立ち後12日ほどで親から離れる
では、いつ本当に独立するのか。観察例では、巣立ち後12日目でヒナたちが自立し、仲間と集団のねぐらで生活を始めた記録があります。孵化から数えると、およそ1か月で親元を離れることになります。
この間に何を学ぶかというと、飛行技術と採餌技術です。飛ぶ虫を空中で捕らえるのは高度な技術で、最初はうまくいきません。親が捕らえた虫を空中で受け渡す訓練を経て、少しずつ自力で捕れるようになっていきます。
庭から見分けるコツは、幼鳥の外見です。巣立ち直後の幼鳥は、成鳥に比べて尾羽(燕尾)が短く、喉の色も淡いのが特徴です。電線に止まっている群れの中で、尾が短く色の薄い個体がいたら、その年に巣立った若い個体である可能性が高くなります。
知っておくと楽しいのは、この時期のツバメが同じ場所に何日も現れることです。「巣立ったのに毎日見かける」のは自然な状態で、独立までの数日から10日ほどは近所で暮らしています。

7月末から8月初めの集団ねぐらへ
独立したツバメが向かうのが、集団ねぐらです。巣立ってまもない幼鳥や子育てを終えた親ツバメは、水辺のヨシ原などで集団で夜を過ごすようになります。この集団は7月に入ると数が増え始め、関東地方では7月末から8月初めにかけて最大になります。
なぜ集まるかというと、渡りの準備という側面があります。ツバメは秋に東南アジア方面へ渡る鳥で、その前に体力を蓄え、群れとしてまとまる必要があります。個々の巣で育った幼鳥が合流し、大きな群れを形成していきます。
観察したい場合は、河川敷のヨシ原が狙い目です。日没前後の30分ほどに、上空を旋回していた群れが一気に降りてくる光景が見られます。各地でこの時期に観察会が開かれていることもあるので、自治体や自然観察施設の情報をチェックしてみてください。
注意点として、ねぐらは鳥にとって無防備な休息場所です。強い光を当てる、大きな音を出す、ヨシ原の中に立ち入るといった行為は避けてください。離れた土手の上から眺めるのが、鳥にも人にも無理のない観察方法です。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| △ | △ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | △ | △ |
◎=よく見られる(もっとも観察しやすい時期) ○=見られる △=まれに見られる/4〜5月は1番子の子育て、6〜7月は2番子と巣立ち、7月末〜8月初めは集団ねぐらが最大になります
巣を片づけていいのは、1週間見届けてから
最後に、巣の片付けについて整理します。鳥が巣立った後であれば撤去して問題ありませんが、中に卵やヒナが残っていないか必ず確認する必要があります。全員が巣立ったかどうかの確認が第一歩です。
そのうえで、巣立った直後でも数日はヒナが巣に戻ることがあるため、1週間ほど様子を見てから片付けるのが安全とされています。この待機期間を設けることで、戻ってきたヒナが寝床を失う事態を防げます。
また、同じ巣で2回目の子育てが行われる可能性も考慮してください。5月から6月に1番子が巣立った場合、そのまま2番子に入ることがあります。シーズンが完全に終わる夏以降まで待てるなら、そのほうが確実です。
片付けの際は手袋を着用し、乾いた巣材が飛散しないよう湿らせてから外すのが実践的です。翌年また同じ場所に来てほしい場合は、巣の跡(泥の付着部分)を無理に削り落とさず残しておくと、営巣場所として選ばれやすくなります。
まとめ:ツバメのヒナは、見守るのがいちばんの手助け
まずやってほしいのは、巣の下にヒナがいたときに5メートルほど離れて15分待つことです。多くの場合、その間に親鳥が餌を持って降りてきます。それが確認できたら、あなたにできることはもう終わっています。あとは巣に近づきすぎず、フン受けを整えて、20日ほどのにぎやかな時間に付き合うだけです。
ケガをしている、明らかに危険な場所にいるといった場合は、拾う前に自治体の鳥獣保護担当窓口へ相談してください。判断に迷う状況ほど、公的な窓口に一報を入れるのが確実です。
※法令の運用や自治体の対応方針は変わることがあります。最新情報は環境省・お住まいの自治体の公式サイトでご確認ください。

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