春先に空を横切る黒い鳥を見て、「これって全部ツバメなの?」と首をかしげたことはありませんか。軒下に巣をかけるおなじみのツバメだけでなく、駅のホームの天井に集まる小さな一群や、橋の下でとっくりのような形の巣をつくる鳥まで、実は日本には何種類ものツバメの仲間が暮らしています。
結論から言うと、日本で見られるツバメの仲間は6種です。ツバメ科が5種、それに姿がよく似た別のグループを1種加えた数え方で、識別の決め手になるのは「腰の色」と「巣の形」のふたつ。腰が白ければイワツバメ、オレンジならコシアカツバメ、のどが赤ければツバメかリュウキュウツバメ——この順番で見ていくだけで、飛んでいる鳥でもかなりの確率で見分けがつきます。
この記事では、6種それぞれの全長・見た目・巣の形・見られる地域を整理したうえで、「ツバメと名前についているのにツバメ科ではない鳥」の話や、巣を見つけたときに知っておきたい法律のことまでまとめました。図鑑を開かなくても、次に空を見上げたときに種名が言えるようになる内容です。
・日本で見られるツバメの仲間は6種、全長は13cm〜20cmと幅がある
・見分けの第一歩は「腰の色」——白・オレンジ・黒で3グループに分かれる
・巣の形(おわん型・どんぶり型・とっくり型・穴)でも種類が絞り込める
・ヒメアマツバメとアマツバメはツバメ科ではなく、腹の色で見分けられる
・卵やヒナのいる巣は法律で守られていて、勝手に落とすことはできない
日本で見られるツバメの種類は6種|まず全体像をつかもう

ツバメ科5種に「もう1種」を足すのが実用的な数え方
日本で見られるツバメの仲間は6種と覚えておくと、野外で迷いません。公益財団法人日本野鳥の会は、日本で見られるツバメのなかまとして、ツバメ、イワツバメ、コシアカツバメ、ショウドウツバメ、リュウキュウツバメの5種類を挙げています。これがスズメ目ツバメ科に属する顔ぶれです。
いっぽう、同会などが参加するツバメ観察全国ネットワークの図鑑では、この5種にヒメアマツバメを加えた6種を「ツバメの仲間」として紹介しています。ヒメアマツバメはアマツバメの仲間で、分類上はツバメ科ではありません。それでも一緒に扱われるのは、空を飛ぶ姿があまりにも似ていて、実際の観察現場では並べて覚えないと混乱するからです。
つまり「ツバメの種類は5種」も「6種」もどちらも間違いではなく、分類でくくるか、見た目でくくるかの違いということになります。この記事では実際の観察に役立つ後者、6種で話を進めます。
ここでつまずきやすいのが、「ツバメ」という言葉が種名でもありグループ名でもある点です。「ツバメを見た」と言ったとき、それが種としてのツバメなのか、ツバメの仲間全般なのかで話が食い違うことがあります。種名を指すときは和名をそのまま使うと、誤解が起きません。
全長13cmから20cmまで、大きさは思ったよりバラバラ
6種の全長は13cmから20cmの範囲に収まりますが、その中での差は見た目にはっきり出ます。最小はショウドウツバメとイワツバメ、そしてヒメアマツバメの13cm。最大はアマツバメの仲間で20cmあり、同じ空を飛んでいても体格差を感じ取れます。
なぜ大きさに差が出るのかというと、それぞれが狙う獲物の高さと飛び方が違うからです。低空をひらひらと飛んで小さな虫を追う種は体が小さく尾が短め、高い空を直線的に速く飛ぶ種は翼が長く体も大きくなります。飛び方を見ているだけでも、ある程度グループが絞れるということです。
実際の見分けでは、まず単独で見て「大きい・小さい」と判断するのは避けたほうがうまくいきます。空にいる鳥は距離感がつかみにくく、近くを飛ぶ13cmの鳥は遠くの20cmの鳥より大きく見えます。近くにスズメやカラスなど大きさの基準になる鳥がいれば、それと比べるのが確実です。ショウドウツバメは「スズメより小さい」と表現される大きさで、これは覚えておくと役に立つ物差しになります。
豆知識として、ツバメの全長17cmという数字には長い尾羽が含まれています。尾を除いた胴体だけを見ると、印象よりずっと小さな鳥です。全長は「くちばしの先から尾の先まで」を測った値なので、尾の長い種ほど数字が実際の体格より大きく出る、という点は頭に入れておくと数字に振り回されずに済みます。
見分けの近道は「腰の色」を見ること
飛んでいるツバメの仲間を見分ける最短ルートは、腰——背中と尾のあいだの部分——の色を確認することです。ここが白ければイワツバメ、オレンジ色(橙褐色)ならコシアカツバメ、黒っぽければツバメかリュウキュウツバメ。これだけで6種のうち大半が絞り込めます。
腰が有効なのは、飛んでいる鳥を真横や後ろから見ることが多いからです。のどの赤は正面から見ないと分かりませんが、腰は上を飛び去っていく鳥でも目に入ります。キヤノンの野鳥写真図鑑も、白い腰がイワツバメとツバメの識別点だと明記しています。
実際の観察では、電線に止まった個体より、飛び去る瞬間のほうが腰は見やすいものです。橋の下や駅の構内で「白い帯が一瞬光った」と感じたら、それはイワツバメの腰である可能性が高いと考えていいでしょう。
注意点として、逆光では腰の色が判別できません。太陽を背にする位置に回り込んでから見直すと、白とオレンジの区別がつきます。また、ヒメアマツバメとアマツバメも腰が白いので、腰だけで「イワツバメ」と決めつけるのは早計です。腹の色まで確認して初めて確定できます。この見分けは後半のH2で詳しく扱います。
6種まるわかり早見表(野鳥の教科書調べ)
ここまでの情報を1枚の表にまとめました。フィールドに出る前にこの表の「腰」の列だけでも覚えておくと、識別のスピードが変わります。
| 種名 | 全長 | 腰の色 | 巣の形 | 主に見られる地域 |
|---|---|---|---|---|
| ツバメ | 17cm | 黒(のどが赤い) | おわん型 | 北海道〜九州 |
| イワツバメ | 13cm | 白 | 深いどんぶり型 | 九州以北 |
| コシアカツバメ | 19cm | 橙褐色 | とっくり型 | 九州以北に局地的 |
| ショウドウツバメ | 13cm | 褐色(胸に帯) | 崖に掘った穴 | 繁殖地は北海道 |
| リュウキュウツバメ | 14cm | 黒(のどが赤褐色) | おわん型 | 奄美大島以南 |
| ヒメアマツバメ | 13cm | 白(腹は黒っぽい) | 他種の巣を利用 | 関東以西〜四国・九州 |

表を眺めると、腰の色が4パターンに分かれていることが分かります。白が2種(イワツバメとヒメアマツバメ)で重なっていますが、この2種は腹の色が正反対なので、腰と腹の2点セットで見れば確定できます。
もうひとつ読み取ってほしいのは「地域」の列です。北海道にいる人がリュウキュウツバメを見る機会はほとんどなく、沖縄でショウドウツバメの繁殖地を探しても見つかりません。自分の住む地域で候補になる種は、実際には3〜4種に絞られます。全国6種を全部覚える必要はない、というのは心強いところです。
軒下でおなじみのツバメ|のどの赤とおわん型の巣が目印
全長17cm、翼開長32cmの体つきを知る
種としてのツバメは、日本で最も普通に見られるツバメの仲間です。日本野鳥の会によれば全長17cm、翼開長32cm。翼を広げると全長のほぼ2倍近い幅になる計算で、この細長い翼が空中で虫を追いかけ続けるための装備になっています。
体が細く軽いのは、一日の大半を飛んで過ごす生活に合わせた結果です。トンボやアブ、ユスリカなどの飛ぶ虫を、飛びながら捕えるという食べ方をするため、急な方向転換ができる体型に落ち着いています。水飲みや水浴びも飛行中に行うほど、地面から離れた生活をしています。
庭やベランダから観察する場合、ツバメが地面に降りるのは巣づくりの時期だけと考えていいでしょう。巣作り時には地上に降りて泥とわらを集めるので、雨上がりのぬかるみに何羽か降りていたら、近くで巣づくりが始まっているサインです。
注意したいのは、地面に降りたツバメを見て「弱っているのでは」と心配してしまうケース。泥集めは正常な行動なので、そっと離れて見守るのが正解です。神奈川県も、けがをしたり弱ったりするツバメを見つけた場合は触れずに見守るよう呼びかけています。元気な個体ならなおさら、手を出す必要はありません。
| 分類 | スズメ目ツバメ科 |
| 全長 | 17cm(翼開長32cm) |
| 見られる季節 | 春〜夏(8月中旬から10月にかけて東南アジアへ渡る) |
| 生息環境 | 人家や商店、駅など人の生活圏 |
| 食べ物 | トンボ・アブ・ユスリカなどの飛ぶ虫 |
| よく見られる場所 | 北海道から九州(種子島あたりまで) |
のどが赤いのはツバメとリュウキュウツバメだけ
ツバメの識別で最も確実なのが、額とのどの赤です。キヤノンの野鳥写真図鑑は「のどが赤いのはツバメとリュウキュウツバメ(南西諸島に多い)だけ」と明記しています。本州でのどの赤い個体を見たら、ほぼツバメで確定できるということになります。
この赤が識別に効くのは、白い腹はツバメ科共通で区別に使えないからです。腹だけを見て「白いからツバメ」と判断すると、イワツバメもコシアカツバメも同じ結論になってしまいます。逆に言えば、赤という「1種にしかない色」を持っているツバメは、ツバメの仲間の中では見分けやすいほうです。
観察のコツは、電線に止まっている個体を正面から見ること。飛んでいる鳥ののどは見えづらく、止まっているときが確認のチャンスです。双眼鏡があれば、額の赤とのどの赤がつながって見えることも分かります。
やりがちな失敗として、夕方の逆光で「のどが黒っぽい」と見えてツバメを別種と判断してしまうケースがあります。赤は暗い場所では黒に沈むので、順光になる時間帯や角度を選び直しましょう。それでも判別できないときは、腰の色と尾の形という別の手がかりに切り替えるのが賢明です。
オスとメスは尾の長さで見分けられる
ツバメはオスとメスで見た目が違う鳥で、決め手は尾の長さです。キヤノンの野鳥写真図鑑によれば、尾が細長いのがオス、尾が短いのはメス。さえずりをしていればオスと判定できるとも記されています。
尾に差が出るのは、長い尾がオスの魅力を示すサインとして働いているためと考えられています。飛ぶ効率だけを考えるなら尾は短いほうが有利なはずですが、それでも長い尾を持つオスがいるところに、この鳥の暮らしの面白さがあります。
庭先で見分けるなら、2羽が並んで飛んでいるときが好機です。同じ距離で比較すれば、尾の切れ込みの深さの差が分かります。巣にいる個体を長時間見ていると、交代で出入りする2羽の尾の長さが違うことに気づけるはずです。
ただし、渡ってきたばかりの若い個体は尾がまだ伸びきっていないこともあります。尾の長さだけで断定せず、さえずりの有無と合わせて判断するのが安全です。オスが先に飛来し縄張りを主張するという性質があるので、春一番に現れて盛んに鳴いている個体はオストみて間違いは少ないでしょう。
巣はおわん型、人家や商店・駅につくる
ツバメの巣は泥でできたおわん型で、人家や商店、駅などにつくられます。上が開いたお椀のような形で、中のヒナが外から見えるのが特徴です。この「上が開いている」という点が、後述するイワツバメやコシアカツバメの巣との決定的な違いになります。
人の生活圏を選ぶのは、天敵であるカラスやヘビが近づきにくいからだと考えられています。人通りのある軒下は、鳥にとっては安全地帯なのです。駅の改札上やコンビニの入口といった、人間からすると落ち着かない場所ほど好まれるのはこのためです。
繁殖は春から夏にかけてで、2回子育てすることもあります。ツバメ観察全国ネットワークの図鑑では、1シーズンに2〜3回繁殖すると紹介されています。同じ巣が続けて使われることもあるので、一度巣立ったからといって巣が空になったとは限りません。
子育てが終わった夏の終わりには、川沿いのヨシ原等に数千羽から数万羽が集まり、ねぐらをとるようになります。夕暮れどきの河川敷でツバメの群れが渦を巻くように舞い降りる光景は、この時期だけのものです。近所に大きな川があるなら、8月ごろに夕方の土手を歩いてみる価値があります。
身近な鳥の観察という点では、庭に来る鳥を知ることも入口になります。

庭先で「ピーヨ!」と甲高い声がして、見上げると灰色の鳥が枝を揺らしている。気づけばナンテンの赤い実が減っていて、ベランダに干していたミカンにもつつかれた跡がある…
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| △ | △ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | △ | △ | △ |
◎=よく見られる(もっとも観察しやすい時期) ○=見られる △=まれに見られる
※本州でのツバメの目安。イワツバメは3月ごろ、コシアカツバメは4月ころに渡来し、コシアカツバメは9月末から10月にかけて飛去します。リュウキュウツバメは奄美大島以南で1年中見られます。
腰が白ければイワツバメ|3月に姿を見せる小さな仲間

全長13cm、尾が短くて一回り小さく見える
イワツバメはスズメ目ツバメ科で全長13cm。ツバメの17cmと並ぶと、はっきり小さく見えます。キヤノンの野鳥写真図鑑も、ツバメより尾が短く少し小さく見えると説明しています。
小さく見える理由は体そのものの差だけでなく、尾の短さにあります。ツバメの全長にはあの長い尾羽が含まれているので、尾の短いイワツバメは数字の差以上に「ずんぐりした鳥」という印象になります。飛んでいる姿のシルエットも、燕尾の切れ込みが浅く、ずんぐりとした三角形に近く見えます。
庭やベランダからの識別では、飛び方にも差が出ます。ツバメが直線的に低空を横切るのに対し、イワツバメは高い位置をひらひらと旋回することが多く、「高いところを回っている小さいツバメ」という印象で覚えておくとつかみやすいでしょう。
失敗パターンとして多いのが、イワツバメを「ツバメの子ども(巣立ちビナ)」と勘違いしてしまうケースです。小さくて尾が短いという特徴が、巣立ったばかりのツバメの若鳥とよく似ているためです。見分けの決め手は腰で、ツバメの若鳥の腰は黒く、イワツバメの腰は白。サイズではなく色を見る、と覚えてください。
白い腰は、飛んでいてもよく目立つ
イワツバメ最大の特徴は白い腰です。キヤノンの野鳥写真図鑑は、白い腰がツバメとの識別点だとしています。背中の黒と尾の黒のあいだに白い帯が入っているような見た目で、頭上を飛び去っていく個体でもはっきり分かります。
この白が識別に強いのは、色ではなく明暗のコントラストで見えるからです。曇りの日でも逆光気味でも、黒い体に白い帯があるというパターンは崩れません。のどの赤のように光の条件に左右されないぶん、遠くの個体でも通用する手がかりになります。
実際に探すなら、大きな橋の下や、高架のある駅のホームがねらい目です。橋げた、学校、ホテル、駅などに集まって営巣するため、1羽見つかれば周囲に何羽もいることがほとんどです。飛び交う群れの腰が白く光るかどうかを見れば、その場で種名が確定します。
注意点は、この記事の後半で扱うヒメアマツバメも腰が白いこと。ただしヒメアマツバメは腹が黒っぽく、イワツバメはのどから腹部が白いので、下から見上げたときの腹の色で区別できます。腰が白い+腹も白い=イワツバメ、という2段構えで覚えるのが確実です。
| 分類 | スズメ目ツバメ科 |
| 全長 | 13cm |
| 見られる季節 | 3月ごろに夏鳥として九州以北に渡来 |
| 生息環境 | 平地から山地、海岸から山地の建造物 |
| 鳴き声 | 濁った声で鳴く |
| よく見られる場所 | 橋げた、学校、ホテル、駅など |
橋げたや駅に、集団で巣をつくる
イワツバメは集団で繁殖する習性を持ち、橋げた、学校、ホテル、駅などに集まって営巣します。ツバメが1軒に1つの巣をかけるのに対し、イワツバメは同じ構造物にいくつもの巣を並べてつくるので、見つけたときのインパクトが違います。
集団営巣が成り立つのは、天敵が近づいたときに多くの目で早く気づけるからだと考えられています。1羽が警戒声を出せば群れ全体が反応するため、単独で巣をかけるより安全性が高まります。橋のような大きな構造物は巣をかけられる面積が広く、集団の受け皿として都合がいいわけです。
巣の形も見分けの材料になります。イワツバメの巣はツバメより深いどんぶり型で、ツバメ観察全国ネットワークではドーム型と紹介されています。入口が小さくすぼまっていて、中のヒナが外から見えにくい構造です。「巣が並んでいて、中が見えない」なら、イワツバメの営巣地と考えていいでしょう。
鳴き声は濁った声。ツバメのさえずりが澄んだ連続音に聞こえるのに対し、イワツバメの声はジュルジュルとした濁りがあります。橋の下で複数の濁った声が反響していたら、姿を探す前から種類の見当がつけられます。
意外と知られていないけれど、足の指まで羽毛が生えている
イワツバメには、図鑑を読み込んでいる人でも見落としがちな特徴があります。足指まで羽毛が生えているのです。キヤノンの野鳥写真図鑑がこれを識別点として挙げています。
鳥の足は通常、うろこ状の皮膚がむき出しになっています。そこに羽毛があるのは、山地や高緯度の寒い環境でも繁殖する種であることと関係があると考えられています。イワツバメは平地から山地まで幅広く分布し、海岸から山地の建造物に営巣するため、環境の幅が広い鳥なのです。
この特徴を野外で確認するには、巣に止まっている個体を双眼鏡で見るしかありません。飛んでいる個体では足が体に密着していて見えないからです。橋の下の巣に出入りする瞬間、足を出したところが観察のチャンスになります。
この足の羽毛は、識別の主役ではなく「答え合わせ」に使うのが現実的です。まず腰の白で当たりをつけ、余裕があれば足を見る。それでも、自分で見つけたときの手応えは格別なものがあります。図鑑の隅に書かれた特徴を実物で確かめる作業こそ、野鳥観察のいちばん楽しいところかもしれません。
腰がオレンジならコシアカツバメ|とっくり型の巣をつくる大きめの仲間
全長19cm、ツバメより大きく尾も長い
コシアカツバメは全長19cmで、ツバメより大きい種です。ツバメの17cmと2cmしか違わないように見えますが、実際に並ぶと明らかに大柄で、尾の長さがそれに輪をかけます。むなかた電子博物館の解説では、尾はツバメより更に長く、より深い凹尾(燕尾)とされています。
大きな体と長い尾は、より速く長く飛ぶための構造だと考えられます。橋の下や大きな建物の高い位置を主な生活の場にしているため、狭い空間を細かく飛び回るより、広い空を滑るように飛ぶスタイルが合っているのです。
庭先で見分けるなら、「ツバメにしては大きい」「尾が長すぎる」という違和感が最初のサインになります。特に飛んでいるときの燕尾の切れ込みは深く、シルエットだけでもツバメとの差を感じ取れます。
注意点として、大きさの判断は単独ではあてになりません。近くをツバメが飛んでいるときに比較するか、腰の色を確認するほうが確実です。距離のある空の鳥ほど、大きさの印象は当てにならないと考えておきましょう。
腰の橙褐色と、体の下側の細かい縦じま
名前のとおり、腰が赤い——正確には橙褐色であることがこの種の決定打です。むなかた電子博物館は、側頸から後頸、腰、尻脇は橙褐色と記しています。首の横から後ろ、そして腰にかけてオレンジ色が回り込んでいるイメージです。
イワツバメの白い腰とは色がはっきり違うので、明るい条件なら間違えません。ただし夕方や曇天ではオレンジがくすんで白っぽく見えることがあり、この点は気をつけたいところ。順光の時間帯に見直すのが確実です。
もうひとつの手がかりが体の下側です。額から体上面は紺色光沢のある黒色で、眼先から頬、腮以下の体下面は淡褐色。ツバメのような真っ白ではなく、淡い褐色に細かい縦じまが入っているように見えます。下から見上げたとき「腹が白くない」と感じたら、コシアカツバメの可能性が出てきます。
豆知識として、コシアカツバメは日本では夏鳥で、九州以北に局地的に渡来します。「局地的」という言葉のとおり、いる場所にはいるけれど、いない地域には全くいないという分布をします。近所で見たことがない人は、地域の野鳥の会が出している記録を調べてみると、探すべき川や橋の見当がつきます。
| 分類 | スズメ目ツバメ科 |
| 全長 | 19cm(ツバメより大きい) |
| 見られる季節 | 4月ころに飛来し、9月末から10月にかけて飛去 |
| 生息環境 | 橋の下など、高さのある構造物 |
| 巣の形 | ヒョウタンを半分に切ったような形の泥の巣 |
| よく見られる場所 | 九州以北に局地的に渡来 |
ヒョウタンを半分に切ったような、とっくり型の巣
コシアカツバメの巣は、ヒョウタンを半分に切ったような形の泥で作った巣です。ツバメ観察全国ネットワークでは、とっくり型と表現されています。天井にべったり張りついた本体から、細い筒状の出入口が横に伸びている——これを一度見れば忘れられません。
この形になるのは、外敵の侵入を防ぐためだと考えられています。出入口が細長いトンネル状になっていれば、カラスがくちばしを差し込んで中のヒナを狙うことができません。おわん型のツバメの巣が上から丸見えなのと比べると、防御に振った設計と言えます。
実際に探すなら、川に架かる大きな橋の裏側が有力です。天井が平らでコンクリートの構造物は、泥がくっつきやすく雨も当たりません。橋を渡るのではなく、川原に降りて下から橋の裏を見上げる——この視点の切り替えで発見率が上がります。
注意したいのは、古い巣と現役の巣の区別です。とっくり型の巣は丈夫で、使われなくなっても数年残ることがあります。出入りする鳥がいなければ、その年は使われていない可能性があります。空き巣に長時間張り込むより、周囲を飛ぶ成鳥の腰の色を確認するほうが早く答えにたどり着けます。
4月に来て、9月末から10月に去っていく
コシアカツバメの観察には時期の見極めが要ります。むなかた電子博物館によれば、4月ころに飛来し、9月末から10月にかけて飛去します。3月ごろに渡来するイワツバメより1か月ほど遅い到着です。
渡来が遅いのは、越冬地がより南にあることと関係していると考えられています。世界的にはアフリカ中央部、インド亜大陸からインドシナ半島、マレー半島、ジャワ島、フィリピン、中国から満州にかけて生息する種で、日本に来る個体は長い旅の末にたどり着いています。
観察計画を立てるなら、5月から8月が中心になります。4月上旬に橋の下を見に行っても、まだ到着していない可能性があるということです。逆に10月に入ってから探しても、多くはすでに南へ向かったあとになります。
豆知識として、この「遅く来て遅く帰る」性質は、他のツバメの仲間との比較で覚えると忘れません。3月=イワツバメ、4月=コシアカツバメ、そのあいだにツバメ。同じ場所で春から順に3種を見ていくと、渡りの順番が体感として理解できます。1か所の橋を春から秋まで通う「定点観察」は、種類の違いを一度に学べる方法としておすすめできます。
北の崖と南の島にいる2種|ショウドウツバメとリュウキュウツバメ
ショウドウツバメは、胸の帯とM字の尾が目印
ショウドウツバメは全長13cmで、スズメより小さい鳥です。北海道小清水町の花と野鳥図鑑によれば、上面は灰色がかった褐色で下面は白く、胸部に特徴的な帯があります。この胸の帯が、ツバメの仲間の中では独特のサインになります。
他の種が黒や紺の光沢を持つのに対し、ショウドウツバメは灰色がかった褐色。全体に「地味な色のツバメ」という印象で、光沢がないぶん、曇りの日でも色の印象が変わりにくいのが観察者にはありがたいところです。
実際の見分けでは、尾の形も効きます。尾は短くてM字型。ツバメのような深い燕尾ではなく、浅く切れ込んだ形です。ツバメ観察全国ネットワークも、ツバメよりも小さく、胸にT字形の帯があり、尾が浅い凹型と紹介しています。「小さい・褐色・胸に帯・尾が浅い」の4点セットで確定できます。
注意点は、この種を本州で探しても見つかりにくいこと。繁殖地は北海道に限定されており、小清水町では濤沸湖、ニクル沼、涛釣沼といった水辺で見られます。本州では渡りの時期の通過個体を狙うことになるため、確実に見たいなら夏の北海道が近道です。
名前の「小洞」は、崖に掘る巣穴のこと
ショウドウツバメという名前は、崖に掘る小さな洞穴に由来します。水辺の崖や切り通しの法面など、垂直な土の壁に群れでたくさんの巣穴を掘って集団営巣地(コロニー)とする、という暮らし方をする鳥です。
泥を貼りつけて巣をつくる他のツバメと違い、この種は土を掘ります。柔らかい砂質の崖であれば、くちばしと足で横穴を掘り進められるからです。同じツバメ科でも、巣づくりの方法がここまで違うのは面白いところです。
探すなら、川岸の削れた崖や、道路工事でできた切り通しの壁面を見てください。小さな穴がハチの巣のように並んでいれば、それがコロニーです。北海道小清水町では、毎年町内の崖で繁殖することが確認されています。
観察の注意点として、コロニーには近づきすぎないことが挙げられます。垂直な壁の直下は崩落の危険があり、鳥にとっても人が張りつくのはストレスになります。離れた場所から双眼鏡で見るのが、鳥にも自分にも安全な方法です。
リュウキュウツバメは、奄美大島以南で1年中見られる
リュウキュウツバメは、日本のツバメの仲間の中で唯一「渡らない」種です。むなかた電子博物館によれば、日本国内では奄美大島以南で留鳥で、他の地域では迷鳥。1年中、奄美諸島や琉球諸島にすんでいます。
渡らずに済むのは、南西諸島では冬でも飛ぶ虫が絶えないためだと考えられています。ツバメが東南アジアまで往復するのは、日本の冬に虫がいなくなるからで、そもそも虫が途切れない土地なら旅をする必要がないわけです。
沖縄や奄美に旅行する人にとっては、季節を問わず観察できる鳥ということになります。全長14cmでツバメよりやや小さく、巣はおわん型で少し赤っぽく見えることがあります。街なかの建物の軒下でも巣が見られるので、宿の玄関先で出会える可能性もあります。
注意点は、本州で「リュウキュウツバメを見た」と判断するのは慎重になるべきということ。他の地域では迷鳥という扱いで、極めてまれな記録です。本州でのどの赤い小さなツバメを見たら、まずツバメの若い個体を疑うのが順当な考え方になります。
のどの赤褐色と、下尾筒の鱗模様が決め手
リュウキュウツバメの識別で頼りになるのは、のどの色と尾の下側です。むなかた電子博物館の記載では、額から体上面は紺色光沢のある黒色、額、腮から胸は赤褐色で、腹は灰色。ツバメと同じくのどが赤いグループに入ります。
ツバメと分ける決め手は腹の色です。ツバメの腹は白いのに対し、リュウキュウツバメの腹は灰色。ツバメ観察全国ネットワークが「体は全体的に黒っぽく、ツバメよりも少しだけ小さい」と表現するのは、この腹の灰色が効いているためです。
もう1つの手がかりが下尾筒——尾の付け根の下側です。黒褐色で羽縁が淡褐色となり、鱗模様となって見えるという細かい特徴があります。止まっている個体を後ろ下から見上げられれば、この模様が確認できます。
尾の形も違います。尾は短く、小さい白斑があるとされ、ツバメのような長く伸びた尾羽はありません。嘴と脚は短くて黒色。「のどは赤いけれど尾が短くて腹が灰色」なら、南西諸島ではリュウキュウツバメで確定していいでしょう。
| 比較項目 | ツバメ | ショウドウツバメ | リュウキュウツバメ |
|---|---|---|---|
| 全長 | 17cm | 13cm | 14cm |
| のど | 赤い | 白く、胸に帯 | 赤褐色 |
| 腹の色 | 白 | 白 | 灰色 |
| 尾の形 | 深い燕尾 | 短くてM字型 | 短く白斑あり |
| 見られる地域 | 北海道〜九州 | 繁殖地は北海道 | 奄美大島以南 |
名前に「ツバメ」とつくのに、ツバメ科ではない鳥がいる
そっくりなのに、系統がまったく違う2つのグループ
ここが多くの人がつまずくポイントです。アマツバメ科の鳥は形態、生態ともツバメ類に似ていますが、両者は系統を異にし、類縁関係はむしろ離れています。ツバメがスズメ目に属するのに対し、アマツバメの仲間はスズメ目ではない、別のグループの鳥なのです。
姿が似ているのは、同じ「空中で虫を捕る」という暮らし方に適応した結果です。細長い翼、小さなくちばし、幅広く開く口——空を飛びながら虫を捕るために有利な形は限られていて、別々の系統がそれぞれ同じような形にたどり着きました。
庭やベランダから見上げる立場としては、「見た目が似ている=近縁」ではないという事実は、鳥を見る目を一段深くしてくれます。図鑑でツバメ科のページを繰ってもアマツバメが見つからないのは、そもそも別の場所に載っているからです。
注意点として、和名の「〜ツバメ」は分類を保証しません。ヒメアマツバメもアマツバメも、名前にツバメが入っていてもツバメ科ではないのです。名前は昔の人が姿の似ている鳥にまとめてつけたもので、後から分類研究が進んだ結果とずれてしまった——そう理解しておくと混乱しません。
ヒメアマツバメは、他の鳥の巣を借りて暮らす
ヒメアマツバメは全長13cmのアマツバメ科の鳥です。ツバメ観察全国ネットワークによれば、のどと腰が白く、ツバメよりも一回り体が小さくて尾が凹型。全身は黒褐色の羽毛で覆われ、喉と腰は白い羽毛で覆われています。
この種で驚かされるのは巣のつくり方です。イワツバメやコシアカツバメの巣を使い、入り口に羽毛をつけるという暮らし方をします。自分で一から泥を運ぶのではなく、他種が残した巣を再利用し、枯草や羽毛などを唾液で固めて手を加えるのです。
探すなら、イワツバメやコシアカツバメの営巣地が候補になります。他種の古巣を利用するため、生息地が重なるからです。関東地方から南の太平洋岸で繁殖する留鳥で、本州の関東地方より西から四国、九州にかけて見られます。
注意点は、腰が白いという特徴がイワツバメと共通していること。ここでもう一度「腹の色」が効いてきます。イワツバメはのどから腹部と腰が白い、ヒメアマツバメは全身が黒褐色でのどと腰だけが白い——腰だけを見て早合点せず、腹まで確認する習慣をつけてください。
アマツバメは全長20cm、鎌形の翼で空を切る
アマツバメは全長20cmで、ツバメより大きい鳥です。北海道小清水町の花と野鳥図鑑によれば、鎌形をした細身の翼で非常に速く飛びます。飛ぶ姿のシルエットが三日月のように鋭く、慣れてくると遠くからでもツバメ科とは違うと分かるようになります。
速く飛べるのは、翼の形が高速飛行に振り切られているからです。ツバメが低空で小回りを利かせるのに対し、アマツバメは高い空を長距離移動しながら虫を捕ります。抱卵などで巣にいるとき以外はずっと飛び続けているとされ、生活のほぼすべてが空の上です。
体の色は、全身黒褐色で下面には淡色のしま模様があり、のどと腰は白。尾は深い燕尾状ですが、閉じているときには一本のように見えます。この「尾が1本の棒に見える」瞬間があるのも、ツバメとは違う印象を与える理由です。営巣は崖の割れ目や隙間に集団で行います。
観察の豆知識として、雨の降る前には虫を求めて低空へ降りてくるという行動が知られています。「ツバメが低く飛ぶと雨」という言い伝えは有名ですが、アマツバメにも同じような傾向が記録されているのは面白いところです。空模様が怪しい日に、いつもより低い位置を高速で飛ぶ黒い鳥がいたら、腹の色を確かめてみてください。
種類が分かったら、次は見守り方|法律と全国調査が教えてくれること
巣を動かせるのは、卵を産む前か巣立ちのあとだけ
ツバメの巣を見つけたとき、真っ先に知っておくべきなのが法律の扱いです。神奈川県は、ツバメ及びツバメの卵の捕獲や採取は禁止されており、例外的に県の許可を受ければその捕獲や採取を行うことが認められる、と説明しています。
禁止されているのは、ツバメが鳥獣保護管理法の対象だからです。神奈川県は、ツバメを生息地あるいは生息個体数が著しく減少している減少種として区分しています。数を減らしている鳥だからこそ、繁殖の場面が守られているわけです。
実際の判断としては、巣立ち後であれば許可なく撤去可能とされています。逆に、卵やヒナを含めて除去する場合は捕獲許可申請が必要です。「フンが困るから今すぐ落とす」ができるのは、まだ卵が産まれていない段階か、ヒナが巣立ったあとということになります。
気になる期間ですが、神奈川県によれば抱卵期間は13〜14日であり、ヒナは17〜22日で巣立つため、長くとも期間はおおよそ一ヶ月程です。1か月ほど待てば巣は空になる、という見通しが立てば、対応も考えやすくなるはずです。なお、扱いの詳細は自治体によって案内が異なることがあるので、実際に手を加える前にお住まいの自治体に確認してください。
卵やヒナがいる巣を壊すことは違法行為です。日本野鳥の会は、都道府県知事の許可なく巣を壊すと懲役または罰金の対象になると注意を促しています。また、けがをしたり弱ったりするツバメを見つけた場合、神奈川県は触れずに見守るよう呼びかけています。巣に手を加える必要が出たときは、自分で判断せず、まずお住まいの自治体の担当窓口に相談してください。
全国調査10,586巣が明かした、ツバメの子育ての実態
ツバメの現状は、市民参加の調査で数字として見えるようになっています。日本野鳥の会のツバメの全国調査2013〜2020年には延べ5,351人が参加し、延べ10,586巣が観察されました。市民の目が集まると、ここまでの規模のデータになるという好例です。
この調査が示したことのひとつが、都市化の影響です。巣立ちヒナ数は全国平均で1巣あたり約4羽ですが、市街地では平均3.8羽、市街地以外では平均4.2羽。市街地は0.4羽少ないという結果になりました。同じツバメでも、環境によって育つヒナの数が違うということです。
子育てが失敗する要因も分析されています。カラス・ヘビなどの捕食が約35%、巣の落下・ヒナが落下が22%、人による巣撤去が約9%、その他が約34%。自然のなかで起きる出来事が大半を占めるいっぽうで、人の手による撤去も一定の割合を占めていることが分かります。
もうひとつ見逃せないのが過疎化との関係です。調査期間を前半(2013〜2015年)2,426巣、後半(2016〜2020年)2,882巣、計5,308巣に分けて分析したところ、営巣しなくなったメッシュは人口5%減のところにピークを示しました。都市化だけでなく、人がいなくなることもツバメには向かい風になる——この両面性は、ツバメが人の暮らしと深く結びついた鳥であることを物語っています。餌場である水田や畑の減少、巣作りができる軒のある日本家屋の減少など、暮らしの変化が背景にあると同会は指摘しています。
フン受けは巣から50cm以上離す|良かれと思った設置が失敗のもと
巣を残したまま暮らしの困りごとを減らす方法もあります。日本野鳥の会が紹介しているフン受けは、浅めのダンボールと強力な粘着力のあるテープでつくり、巣から50cm以上離して設置するものです。
離す理由は、巣の近くに板があるとカラスの足場になってしまうからです。ヒナを守るはずの対策が、かえって天敵を招き入れる結果になりかねません。「浅め」「離す」の2条件は、どちらも守って初めて意味を持ちます。
設置のタイミングも決まっています。ヒナ孵化後に設置し、巣作り中や抱卵中は避けること。人の気配や環境の変化に敏感な時期に手を加えると、親鳥が巣を放棄してしまう可能性があるためです。
カラス対策としては、巣の下にツバメが通過できる程の隙間を空けてヒモを張ったり、場合によってはネットを張る方法が紹介されています。設置は抱卵開始後が目安で、ヒナが羽ばたき練習を始めるころは避けます。子育て期間の2週間程度、生活を温かく観察する——それが日本野鳥の会の呼びかける基本姿勢です。
ここで、やりがちな失敗も押さえておきましょう。ツバメを守ろうとして裏目に出る典型が、フン受けの設置時期を誤ることです。日本野鳥の会は、巣作り中にフン受けを設置することを「してはいけないこと」として挙げています。親切心が巣の放棄につながってしまうという、いちばん残念なパターンです。
原因は、巣づくりと抱卵の時期がツバメにとって最も警戒心の強い期間だからです。まだ卵やヒナへの投資が少ない段階では、危険を感じた親鳥は巣を捨てて別の場所へ移ることを選びます。ヒナがかえったあとなら、多少の環境変化があっても子育てを続ける傾向が強くなります。
もうひとつの失敗が、大型のフン受けを巣の真下に置いてしまうことです。同会は、大型でカラスが足場にできるフン受けを巣直下に置くことも避けるべきと明記しています。「大きいほうがフンを受け止められる」という発想が、カラスに踏み台を提供する結果になるのです。
対策は単純で、「浅め・小さめ・50cm以上離す・ヒナがかえってから」の4点を守ること。この順番を守るだけで、多くのトラブルは避けられます。庭に鳥を呼ぶ工夫と同じで、良かれと思った行動が逆効果になっていないかを一度立ち止まって考えるのが大切です。

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読者タイプ別・今シーズンの目標の立て方
ここまでの内容を、住んでいる場所と使える時間に合わせて整理します。市街地にお住まいなら、まずは通勤路の駅や商店街でツバメの巣を探すところから。日本野鳥の会の調査で市街地の巣立ちヒナ数が平均3.8羽と、市街地以外の4.2羽より少ないことが分かっていますから、身近な1つの巣を見守るだけでも意味のある観察になります。
郊外や川の近くに住んでいる人は、大きな橋を1つ決めて定点観察するのが効率的です。橋げたにはイワツバメが集団営巣し、橋の下にはコシアカツバメのとっくり型の巣がある可能性があります。1か所で2種、条件が良ければツバメも加えて3種を比較できます。
北海道にお住まいなら、ショウドウツバメのコロニーが最大の見どころです。水辺の崖に並ぶ巣穴は、他のツバメの仲間では見られない光景。南西諸島に行く機会がある人は、季節を問わずリュウキュウツバメが観察できます。
時間が取れない人は、双眼鏡を1台だけ玄関に置いておく方法をおすすめします。空を横切る鳥を見かけたときに数秒だけ覗く——これだけで腰の色は確認できます。装備をそろえてから始めようとすると、渡りの季節が終わってしまいます。なお、ツバメは巣箱を利用しない鳥なので、庭に呼びたい場合は巣箱ではなく軒下の環境を整える方向で考えることになります。巣箱で呼べる鳥については別の記事にまとめています。

庭の木に巣箱をかけたのに、二年たっても誰も入ってくれない。ホームセンターで買った巣箱をベランダに置いてみたけれど、鳥が近づく気配すらない。巣箱を用意した人の多く…
まとめ:ツバメの種類は、腰の色と巣の形で見分けられる
6種を全部覚えようとすると気が重くなりますが、実際に自分の地域で候補になるのは3〜4種です。本州の平地なら、ツバメ・イワツバメ・コシアカツバメ・ヒメアマツバメの4種を頭に入れておけば足ります。そのうえで腰の色を見る癖をつければ、飛んでいる鳥でも見当がつくようになります。
大きさは、ショウドウツバメとイワツバメとヒメアマツバメが13cm、リュウキュウツバメが14cm、ツバメが17cm、コシアカツバメが19cm、アマツバメが20cm。数字だけ並べると差が小さく感じますが、尾の長さが加わることで、実際の見た目の印象はかなり違います。単独で見た大きさより、腰と腹の色を優先するのが確実です。
巣の形も強力な手がかりです。上が開いたおわん型ならツバメかリュウキュウツバメ、入口の狭い深いどんぶり型ならイワツバメ、ヒョウタンを半分に切ったようなとっくり型ならコシアカツバメ、崖の穴ならショウドウツバメ。鳥本体を見られなくても、巣を見れば種類が推定できるというのは、この仲間ならではの面白さです。
そして、種類が分かったあとに知っておきたいのが見守り方です。卵やヒナのいる巣を壊すことは違法行為であり、巣立ち後であれば許可なく撤去できます。抱卵期間は13〜14日、ヒナは17〜22日で巣立つため、長くとも期間はおおよそ一ヶ月程。フン受けを付けるなら、ヒナがかえってから、浅めのダンボールを巣から50cm以上離して——この2点を守るだけで、鳥にも自分にも無理のない付き合いができます。
最初の一歩としておすすめしたいのは、明日の通勤・通学路で、空を横切る鳥の「腰」を1回だけ見上げてみることです。白い帯が見えたらイワツバメ。それだけで、今まで「ツバメ」とひとくくりにしていた景色が、種類のある世界に変わります。
※本記事の分類・形態・生態のデータは、日本野鳥の会「ツバメってどんな鳥?」、同「ツバメの全国調査2013〜2020年結果報告」、ツバメ観察全国ネットワーク「ツバメの仲間」、キヤノンバードブランチプロジェクト 野鳥写真図鑑、北海道小清水町「花と野鳥図鑑」、むなかた電子博物館、法律の扱いは神奈川県「ツバメを見守ってください」を参照しました。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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