庭先やベランダにやってきたカラスに、パンの耳をひとかけら。あるいは通勤路の公園で、毎朝おにぎりを置いていく人を見かけた。どちらの側に立っていても、頭をよぎるのは同じ疑問だと思います。カラスへの餌付けって、そもそもやっていいことなんでしょうか。
結論から言うと、国の法律に「カラスに餌をやってはいけない」と書かれた条文はありません。ただし、餌やりが原因で周りの生活環境が壊れたとき、動物の愛護及び管理に関する法律や自治体の条例が動き出します。大田区では公共の場所での給餌そのものが禁止され、指導に従わなければ過料5,000円。箕面市では悪質な行為に10万円以下の罰金が科される場合があります。「違法かどうか」ではなく「どこからアウトになるか」を知るのが実用的です。
この記事では、餌をもらったカラスの身に何が起きるのか、自治体ごとに条例がどう違うのか、そして餌やりをやめたい人・やめてほしい人が明日から取れる行動までをまとめました。カラスは知能が高く、一度覚えた場所を長く記憶する鳥です。だからこそ、始める前と始めたあとでは対応の難しさがまるで変わります。
この記事でわかること
・カラスへの餌付けが「違法」になる条件と、根拠になる法律・条例
・自治体ごとの罰則の違い(過料5,000円から罰金10万円まで)
・餌をもらったカラスに起きる変化と、最後にたどりつく結末
・餌やりをやめる手順と、意図しない餌付けを断つごみの出し方
カラスの餌付けは違法なのか、まず結論から整理する

国の法律に「餌をやるな」という条文はない
カラスに餌を与える行為そのものを直接禁じた国の法律は、現在のところ存在しません。野鳥を守る中心的な法律である鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)が規制しているのは、主に「捕まえること」の側です。環境省は捕獲許可制度の説明で、「鳥獣又は鳥類の卵については、狩猟により捕獲する場合を除いて、原則としてその捕獲、殺傷又は採取が禁止されています」と示しています。つまりこの法律の目線は、人が鳥に手を出す方向を向いているわけです。
ではなぜ「餌付けは違法」という話が広まっているのか。理由は、餌付けを直接罰する規定がない代わりに、餌付けの結果を罰する仕組みが複数あるからです。糞や鳴き声で近所の生活環境が壊れた時点で、別の法律や条例が働き始めます。「餌をやった瞬間に違法」ではなく「餌をやり続けて被害が出たら違法」という構造だと理解すると、話の見通しがよくなります。
実際に多いのが「注意されたけれど法律違反ではないと言い返した」というケースです。法律違反かどうかだけを争点にすると、対話がそこで止まってしまいます。争点にすべきなのは、糞・鳴き声・ごみの散乱という目の前の被害の方です。
条例と動物愛護管理法が、実際に効いてくる場面
餌付けを止める根拠として最初に挙がるのが、動物の愛護及び管理に関する法律の第25条です。東京都北区はこの条文をもとに、「騒音又は悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等によつて周辺の生活環境が損なわれている」と認められる場合、都知事が指導・助言を行えると説明しています。指導で改まらなければ期限を定めた勧告、それでも従わなければ措置命令。命令に違反した者には50万円以下の罰金が定められています。
2020年6月に施行された改正では、この仕組みがさらに広がりました。動物の不適正な飼養、保管、給餌などが原因で周辺の生活環境が損なわれていると認めるときは、原因者に対し指導助言を行うとともに、必要に応じて報告の徴収や立入検査ができるようになっています。「給餌」がはっきり名指しされている点が重要です。
これに加えて、多くの自治体が独自の条例を持っています。世田谷区は環境美化等に関する条例第4条第3項で、平成30年(2018年)4月1日から「区民等は、周辺住民の良好な生活環境を確保するため、給餌による迷惑行為を行うことのないよう努めなければならない」と定め、区内全域を対象にしました。努力義務なので罰則はありませんが、区が注意する根拠としては十分に機能します。
「善意でやっている」が通じなくなる分岐点
餌をやっている人のほとんどに悪意はありません。かわいそう、お腹をすかせている、それだけの動機です。ただ、行政が動く分岐点は動機ではなく継続性と反復性にあります。箕面市の条例は「給餌」を、自ら所有せず、かつ、占有しないカラスに餌を与えること(餌を目当てにカラスが集散することを認識しながら、カラスが食べることができる場所に餌を置き、又は放置する行為を含む)を継続し、又は反復して行う行為、と定義しています。
ここで見逃せないのが「置き、又は放置する行為を含む」という部分です。手渡しでなくても、地面に置いたままにすれば給餌に当たります。「食べ残しを片づけずに帰る」も同じ扱いになりうるということです。1回きりなら対象外でも、毎朝同じ時間に置き続けていれば継続・反復と判断されます。
もうひとつの分岐点が「被害の共通認識」です。箕面市はカラス被害を、給餌を目当てに集散するカラスによる鳴き声、ふん尿その他汚物及びその放置により発生する臭気、羽毛の飛散などにより周辺住民に著しい被害が生じており、複数の周辺住民からの市長への苦情申出により被害が共通認識になっていると認められる状態、と定義しました。1人の苦情では動かないが、複数の声がそろえば行政の手続きが始まる、という設計です。
条例の有無・内容・罰則は自治体ごとに大きく異なります。ここで紹介した内容はそれぞれの自治体の公表情報にもとづくものです。自分の住む市区町村がどう定めているかは、環境課・清掃課などの公式ページで必ず確認してください。近隣とのトラブルになっている場合も、当事者同士で解決しようとせず、まず自治体の窓口に相談するのが早道です。
1日300羽——餌をもらったカラスがたどる道すじ
栄養状態がよくなると、繁殖の回数そのものが変わる
餌付けの影響でいちばん大きいのは、目の前の1羽が太ることではなく、群れの規模が変わることです。東京都環境局は野生動物への餌付けについて、「栄養状態がよくなるため、一年に何度も繁殖します」と説明しています。自然状態では餌の量が繁殖のブレーキになりますが、人が安定して餌を供給するとそのブレーキが外れます。
数の増え方は、実例を見ると想像がつきます。箕面市市民部環境整備室の啓発チラシによれば、桜井の一部の地域ではカラスへの餌やりが原因でカラスが1日300羽も集まり、多量のふんや激しい鳴き声などで日常生活に被害が出ました。1人が「かわいそうだから」と始めた行為が、300羽規模の集合を生んだわけです。
増えたカラスは、餌場の周辺だけにとどまりません。世田谷区は餌付けの影響として、カラスによる小動物や野鳥の卵・雛の捕食が生態系に大きな悪影響を与える可能性を挙げています。庭にシジュウカラやスズメを呼びたい人にとっては、カラスの密度上昇はそのまま巣立ち成功率の低下につながる話です。旭川市も、餌付けによって生息数が増え、生態系のバランスを乱すと指摘しています。
人を怖がらなくなった鳥は、どこへ向かうのか
もうひとつの変化が、警戒心の消失です。東京都環境局は餌付けされた野生動物について「人を怖がらなくなります」とし、さらに「人に食べ物をねだるようになったり、ときには人に襲いかかってくることもあります」と説明しています。旭川市も同じく、人への警戒心が低下し、接近されるようになると挙げています。
カラスは記憶力の高い鳥です。餌をくれた人の顔や、餌が出てくる時間帯・場所を覚え、そこに通うようになります。困るのは、覚えるのが「餌をくれた特定の人」だけではない点です。同じ手提げ袋、同じ制服、同じ時間帯の人の流れといった特徴に反応するようになると、餌をやったことのない通行人までねらわれます。子どもが持っているパンを横取りされる事例は、この延長線上で起きます。
ここで知っておきたいのが、警戒心を失うことは鳥にとっても不利益だということです。旭川市は餌付けの問題点として「自分で餌をとれなくなり、人が与える食物に依存する」と書いています。人が引っ越したり、体調を崩して来られなくなったりした瞬間に、その依存関係は断ち切られます。
最後にカラスが受けるのは、駆除という結末
餌付けの終着点について、東京都環境局はきわめて率直に書いています。「人とのトラブルを起こすようになると、駆除されてしまう場合もあります」。餌をやった人が望んだ結果とは正反対のところに、鳥は運ばれていきます。
カラスの捕獲は自由にできるわけではありません。環境省の捕獲許可制度では、生態系や農林水産業に対して鳥獣による被害等が生じている場合や学術研究上の必要性が認められる場合に、環境大臣または都道府県知事の許可を受けて捕獲等が認められます。許可権限は多くの都道府県で市町村長に一部移譲されています。逆に言えば、被害が認定される段階まで進めば、行政の手続きとして捕獲は現実に動き出します。
なお、ミヤマガラス・ハシボソガラス・ハシブトガラスの3種は狩猟鳥に指定されており、狩猟免許を持ち狩猟者登録を受けた人であれば、狩猟期間内に定められた方法で捕獲できます。「かわいそうだから餌をやる」という行為が、結果としてその鳥を捕獲対象へ押し出してしまう。この因果関係が、行政が餌付け防止を呼びかける最大の理由です。
庭に来る鳥との距離感については、こちらの記事も参考になります。

失敗パターン①「自分の敷地内だから問題ない」
原因:条例の禁止対象を「公共の場所」だけだと思い込むこと。大田区の条例は公共の場所での給餌を禁止する一方、区内全域で給餌を控えるよう努力することを求めています。飛んできたカラスは敷地の内外を区別せず、糞や鳴き声は隣家に届きます。
対策:私有地であっても、屋外に食べ物を置きっぱなしにしない。生ごみの一時置き場も同じ扱いにする。
そもそも庭に来るのはどっち?57cmと50cmのカラスの見分け方

ハシブトガラスは額が出っ張り、両足でぴょんと跳ぶ
市街地で「カラス」と呼ばれている鳥の多くは、ハシブトガラスです。福岡県の生きもの図鑑によれば全長57cm、体重550〜750g。日本では小笠原諸島を除き、留鳥として全国の低地から山地まで幅広く分布します。全身が光沢のある黒色で、雌雄同色です。
見分けの決め手は頭の形とくちばしです。ハシボソガラスより嘴が厚く、額が出っ張っています。横から見ると、くちばしの付け根から頭のてっぺんに向かって急な段差があるように見えるのが特徴です。鳴き声は「カーカーと澄んだ声」。地面での動き方も分かりやすく、ぴょんぴょんと両足飛びで移動します。
食性は雑食で、昆虫や果実、動物の死骸などあらゆるものを食べ、ゴミあさりでも知られています。ハシボソガラスより肉食性が強いのもこの種です。産卵期は4月頃で、主に大木に巣を作ります。街路樹や公園の高木で春先に枝が集まっているのを見かけたら、この鳥の巣である可能性が高いということです。
豆知識をひとつ。ハシブトガラスは知能が高く、遊び行動も確認されています。餌を隠す、道具のように物を使う、といった行動が観察されるのはこの種です。だからこそ、餌が出る場所を一度覚えると忘れにくく、やめた後もしばらく通い続けます。
ハシボソガラスは額がなだらかで、お辞儀をしながら鳴く
もう1種のハシボソガラスは全長約50cm、ハシブトガラスより少し小さい鳥です。ユーラシア大陸に広く分布しますが、日本では九州より北にのみ生息します。九州南部や沖縄で見るカラスは、基本的にハシブトガラスだと考えてよいことになります。
生息環境がはっきり分かれるのも見分けの助けになります。ハシボソガラスは「農地や河原のような開けた環境を好み、ハシブトをよく見る山地や林内、都市部では少ない」とされています。田んぼのあぜ道を歩いている黒い鳥はハシボソガラス、駅前のごみ集積所にいるのはハシブトガラス、という当たりのつけ方ができます。
形の違いは、くちばしが細めで額がなだらかなこと。おでこが平らに見えるので、頭のシルエットが流線形です。鳴き声は濁った声で、しかも鳴くときにお辞儀をするような動作を伴います。この「お辞儀鳴き」は一度見ると忘れません。歩き方はウォーキング、つまり足を交互に出して歩きます。
注意したいのは、両種が同じ場所に混ざることもある点です。郊外の住宅地や河川敷では両方が見られます。1羽だけを見て決めつけず、鳴き声・歩き方・額の形の3点をそろえて判断すると精度が上がります。
2種の違いを一覧で比べる(野鳥の教科書調べ)
公的機関・企業の図鑑情報をもとに、庭やベランダで実際に使える見分けポイントだけを整理しました。数値は各出典に記載された値をそのまま使っています。
| 比較項目 | ハシブトガラス | ハシボソガラス |
|---|---|---|
| 全長 | 57cm | 約50cm |
| 額とくちばし | 嘴が厚く額が出っ張る | くちばし細め・額はなだらか |
| 鳴き声 | カーカーと澄んだ声 | 濁った声・お辞儀動作を伴う |
| 地上での動き | 両足飛び(ホッピング) | 足を交互に出して歩く |
| よく見る環境 | 低地から山地まで全国・市街地 | 農地や河原など開けた場所 |
| 国内の分布 | 小笠原諸島を除く全国 | 九州より北にのみ生息 |
見分けがつくと、打つべき手が変わる
種類が分かると対策の精度が上がります。ごみ集積所の被害に悩んでいるなら、相手はほぼハシブトガラスです。市街地に強く、雑食性が高く、ゴミあさりで知られる種だからです。この場合の手当ては、後述する生ごみの出し方と防鳥ネットに集約されます。
一方、家庭菜園の作物や畑の被害であれば、ハシボソガラスが関わっている可能性が上がります。農地や河原のような開けた環境を好む種だからです。対策の方向も、集積所ではなく圃場側の防除に寄っていきます。
餌付けの話に戻すと、種の違いは「誰が集まってくるか」に直結します。市街地で餌をまけばハシブトガラスが集まり、その鳥は街路樹や公園の大木に4月頃巣を作ります。つまり、餌やりの場所と春の営巣トラブルは地理的につながっています。5月に頭上を襲われるようになった、という相談の背景に、前年からの餌やりがあることは珍しくありません。
| 名前 | ハシブトガラス |
| 全長 | 全長57cm/体重550〜750g |
| 見られる季節 | 留鳥で通年(産卵期は4月頃) |
| 生息環境 | 小笠原諸島を除く全国の低地から山地 |
| 鳴き声 | カーカーと澄んだ声 |
| よく見られる場所 | 市街地・公園の大木・ごみ集積所 |
条例は自治体ごとに別物|過料5,000円から罰金10万円まで
大田区型:公共の場所での給餌そのものを禁止する
いちばん踏み込んだ形が、給餌行為自体を禁止するタイプです。大田区は令和4年(2022年)4月1日に「大田区ハト・カラスへの給餌による被害防止条例」を施行しました。内容は、公共の場所(道路・公園等)でハト・カラスへ給餌をすることの禁止、ハト・カラスへの給餌による被害を公共の場所に生じさせることの禁止、そして区内全域において給餌を控えるよう努力すること、の3本立てです。
罰則も定められています。給餌による被害を公共の場所に生じさせた場合、指導に従わないときには過料5,000円が科される可能性があります。金額の大きさより、「行政が手続きとして動ける根拠がある」ことのほうが実質的な意味を持ちます。
このタイプの条例で押さえておきたいのは、被害の発生を待たずに公共の場所での給餌が禁止される点です。「まだ誰も困っていない」段階でも、公園で餌をまけば条例違反に当たります。散歩コースの公園でパンをちぎっている人を見かけたら、その区の条例を一度調べてみる価値があります。
箕面市・奈良市型:「被害を出したらアウト」の設計
関西には、カラスに特化した条例が早くから存在します。奈良市の「奈良市カラスによる被害の防止及び良好な生活環境を守る条例」は平成25年(2013年)10月1日施行。給餌そのものを禁止するのではなく、カラスへの餌やりにより周辺の生活環境に被害を発生させてはならない、という組み立てです。餌やりによりカラスによる被害を発生させ、市の指定職員からの是正命令に違反すると5万円以下の罰金が科されます。
箕面市の「箕面市カラスによる被害の防止及び生活環境を守る条例」も同じ系統で、カラス被害を繰り返し発生させる悪質な行為には10万円以下の罰金が科せられる場合があります。これは今回調べた範囲では最も重い罰則でした。市はあわせて「カラスに直接、えさやりをしない」ことを呼びかけています。
この型の利点は、被害の実態に即して動けることです。半面、被害の認定に「複数の周辺住民からの苦情申出」が要るため、1人で我慢し続けている限り手続きが始まりません。近隣で困っている人がいるなら、それぞれが個別に自治体へ相談を入れるほうが結果的に早く動きます。
大阪市型:餌をやった人に「片づける義務」を課す
3つめが、給餌の可否ではなく後始末を義務づけるタイプです。大阪市は「大阪市廃棄物の減量推進及び適正処理並びに生活環境の清潔保持に関する条例」で、公共の場所またはその周辺で動物に給餌した者に対し、餌又は動物のふん尿その他の汚物、毛若しくは羽毛が散乱し、又はふん尿その他の汚物による臭気が発散しないよう、清掃を行う等の必要な措置を講じなければならない、と定めました。義務規定は令和元年(2019年)12月14日、罰則規定は令和2年(2020年)3月1日の施行です。
手続きは段階的で、口頭注意、指導、文書勧告、改善命令の順に進みます。改善命令に違反した場合には5万円以下の過料。いきなり罰則が来るわけではないので、途中で改めれば処分には至りません。
この型は「餌やり自体は止めないが、散らかしたままは許さない」という考え方です。ハト・カラスへの餌やりで実際に近所が困るのは、餌そのものより残された餌の腐敗と糞であることが多く、その現実に合わせた設計と言えます。ただし片づけたとしても、鳥が集まる状態が続けば動物愛護管理法第25条の対象になりうる点は変わりません。
| 自治体 | 規制の考え方 | 罰則 |
|---|---|---|
| 大田区(令和4年4月1日) | 公共の場所での給餌を禁止+区内全域で努力義務 | 過料5,000円 |
| 箕面市 | 継続・反復した給餌とカラス被害を規制 | 10万円以下の罰金 |
| 奈良市(平成25年10月1日) | 餌やりで生活環境に被害を出すことを禁止 | 是正命令違反で5万円以下の罰金 |
| 大阪市(義務は令和元年12月14日) | 給餌した人に清掃等の措置を義務づけ | 改善命令違反で5万円以下の過料 |
| 世田谷区(平成30年4月1日) | 区内全域で給餌による迷惑行為の禁止(努力義務) | 罰則なし |
自分の街の条例を10分で調べる方法
条例は市区町村ごとに違い、同じ都道府県内でも内容がそろっていません。調べるときは、市区町村名と「餌やり」「給餌」「カラス」を組み合わせて公式サイト内を探すのが確実です。担当部署は環境課・環境政策課・清掃事務所・生活衛生課などに分かれています。
条例が見つからない場合でも、打つ手はあります。動物の愛護及び管理に関する法律第25条は全国共通で、都道府県知事(東京都では都知事)が指導・助言、勧告、措置命令と段階を踏めるからです。命令に違反した者には50万円以下の罰金という定めがあります。市区町村に条例がなくても、都道府県の動物愛護担当部署に相談する道が残っているということです。
相談するときは、被害の記録が力になります。日付・時刻・場所・おおよその羽数・糞の状態を書き留め、可能なら写真を残す。箕面市の条例が被害の「共通認識」を要件にしているように、行政が動くには客観的な材料が要ります。感情ではなく記録を持っていくと、話がぐっと具体的になります。
餌やりをやめたいとき、明日から何をすればいいのか
やめ方には手順がある(急にゼロにしない)
「今日からきっぱりやめる」が正しいとは限りません。カラスは学習した場所に通い続けるため、餌が消えても数日から数週間は同じ場所に集まります。その間、近隣の生ごみや家庭菜園が代わりの標的になることがあります。やめるときは、餌場そのものの魅力を段階的に落としていくほうが確実です。
意図しない餌付けを断つ|生ごみは「見えなくする」
本人にその気がなくても、結果的に餌付けになっているのが生ごみです。東京都環境局はカラス対策として、防鳥ネットでごみを覆うこと、生ゴミの水切りと新聞紙などで包むこと、収集日時を守ることを挙げています。ポイントは「隠す」ことで、カラスは視覚で餌を探すため、中身が見えなければ狙われにくくなります。
効果を裏づけるデータもあります。東京都環境局は、カラスによるゴミの散乱が多い地域では、巣も多く作られていることが明らかになっていると説明しています。ごみが豊富な場所に営巣が集中するということは、逆にごみを断てば営巣密度も下げられるという意味です。餌やりと生ごみは、カラスから見れば同じ「安定した餌場」です。
やりがちな失敗が、ネットをかけたつもりで端が浮いているケースです。カラスはくちばしで持ち上げて隙間から中身を引き出します。ネットは袋の上にふわりと載せるのではなく、四辺を地面まで下ろして重しで押さえる。この一手間で結果が変わります。ネットの貸出しを行っている自治体も多いので、町内会単位で問い合わせてみてください。
庭の餌台まわりの衛生管理については、こちらの記事で詳しく扱っています。

失敗パターン②:やめたつもりが「移動させただけ」になる
2つめの典型的な失敗が、餌やりの場所を変えるだけで解決したつもりになることです。公園で注意されたから自宅の庭に切り替えた、という対応がこれに当たります。集まる鳥の数は変わらないため、被害の当事者が公園の利用者から隣家に移るだけになります。
原因は、問題の本質を「場所」だと捉えていることにあります。行政が問題視しているのは場所ではなく、餌の安定供給が生む個体数の増加と警戒心の低下です。世田谷区が挙げる被害には、鳴き声や羽音の騒音、ふん尿による悪臭・汚れ、ごみ集積所の散乱、羽毛の飛散が並びます。これらは場所を変えても付いてきます。
対策はシンプルで、「屋外で食べ物を出しっぱなしにしない」を家全体のルールにすることです。ペットフードを外に置いたまま、収穫した野菜を庭先に積んだまま、コンポストの蓋が開いたまま。こうした状態はすべて置き餌と同じ働きをします。旭川市が「一定の距離感を保つことが大切」と書いているのは、まさにこの生活習慣の話です。
東京都の数字が示す、餌を減らすことの効き目
「1人がやめたところで何が変わるのか」と思うかもしれません。ここで参考になるのが東京都の実績です。東京都環境局は、対策開始前に都内に36,400羽いたカラスが、現在、4分の1程度にまで減少したと公表しています。対策は平成13年度末から始まりました。
この減少は、捕獲だけで達成されたものではありません。ごみ対策と巣の管理、そして餌となるものを減らす取り組みが並行して進められました。カラスが都市部で増えた最大の原因は餌となるごみが豊富だったことにあり、そこを絞れば個体数は下がる。都市スケールで実証された話です。
参考までに、巣の撤去を業者に依頼した場合の費用は、東京都環境局によるとおおよそ1件あたり、20,000円から30,000円程度とされています。餌やりを続けた先にあるのは、こうした実費と近隣トラブルです。始めないこと、早くやめることが、いちばん安上がりな対策になります。
意外と知られていないけれど、庭の餌台とカラス対策は両立できる
日本野鳥の会が「控えるべき」としている条件を読む
野鳥への給餌をすべて否定する必要はありません。日本野鳥の会のフィールドマナー「やさしいきもち」は、7項目のうち5番目に「き:気をつけよう、写真、給餌、人への迷惑」を置いています。禁止ではなく「気をつけよう」です。
そのうえで、控えるべき条件がはっきり示されています。「餌を与える行為も、カラスやハトのように人の生活と軋轢が生じている生物、生態系に影響を与えている移入種、水質悪化が指摘されている場所などでは控える必要があります。」——名指しされているのが、まさにカラスとハトです。つまり、シジュウカラやメジロを庭に呼ぶことと、カラスに餌をやることは、同じ「給餌」でも扱いが分かれます。
もうひとつ、同会は「写真撮影や給餌、観察が地元の人や周囲の人に誤解やストレスを与える場合もあるので、十分な配慮をしましょう。」とも書いています。自分の庭であっても、隣家から見て何をしているか分からない状態は誤解のもとです。餌台を設置するときに一声かけておくだけで、後々の関係がまるで違ってきます。
小鳥用の餌台をカラスに使わせないための工夫
餌台をカラスから守る考え方は、大きく3つです。1つめが物理的なサイズ制限。ハシブトガラスは全長57cm、体重550〜750gの大型の鳥ですから、体が入らない隙間しか開いていなければ食べられません。2つめが時間の制限で、カラスの活動が活発な朝の時間帯を避けて置き、日中に片づける方法です。
3つめが餌の種類です。カラスは雑食で、昆虫や果実、動物の死骸などあらゆるものを食べます。逆に言えば、獣脂や肉片、パン、ごはんのように人の食べ物に近いものほどカラスを引き寄せます。小鳥向けの餌台を運用するなら、こうした食材は避けたほうが無難です。
注意点として、餌台の下に落ちた餌の掃除は毎回行ってください。地面に散った餌はカラスにとって格好の採食対象で、掃除を怠ると餌台ではなく地面が餌場になります。箕面市の給餌の定義に「餌を置き、又は放置する行為を含む」とあるとおり、放置は給餌と同じ扱いです。
餌台の設置場所や餌の選び方は、こちらで詳しく解説しています。

「冬季に少量」という原則は、なぜ生まれたのか
小鳥への給餌が容認されやすいのは、自然界に食べ物が乏しくなる時期に限り、量を絞って行う場合です。これは鳥を人に依存させないための線引きで、旭川市が挙げる「自分で餌をとれなくなり、人が与える食物に依存する」という問題を避けるための条件でもあります。
カラスにこの原則が当てはめにくいのは、冬でも餌に困りにくい鳥だからです。雑食性が高く、ごみからも採食できるハシブトガラスにとって、冬季の食料不足は小鳥ほど深刻ではありません。「冬だけ少量なら」という条件が、カラスでは成立しにくいわけです。
また、旭川市は餌付けの問題として、密集することで感染症が発生しやすくなること、人工的な餌を摂取することで病気にかかりやすくなることも挙げています。餌場に多数の個体が集まる状態そのものが、鳥の健康にとってのリスク要因になります。餌台を使うなら、少数の鳥が入れ替わりで利用する程度の規模にとどめ、こまめに清掃する。この2点が守れる範囲かどうかが、続けるかどうかの判断基準になります。
3月下旬から7月上旬|繁殖期のカラスとの付き合い方
5月から6月に威嚇が集中するのはなぜか
カラスの繁殖期は、東京都環境局によればおよそ3月下旬から7月上旬ごろ。この期間に巣をつくり、卵を産んでヒナを育てます。東京周辺での内訳は、巣作りが3月〜4月、卵やヒナを温める時期が4月〜5月、ヒナの世話をする時期が5月〜6月、巣立ったヒナが多くみられるのが6月〜7月です。
威嚇トラブルは5月から6月に集中します。理由は単純で、この時期が最も無防備な子どもを抱えているタイミングだからです。巣立ち直後のヒナは飛ぶのが下手で、地面や低い枝にいることが多く、親鳥は近づく人間を脅威と判断します。攻撃ではなく防衛行動だと理解すると、対処も落ち着いてできます。
行動には特徴があります。東京都環境局は「カラスは後ろから人の頭をめがけて飛んできます」と説明しています。正面から来ないので気づきにくく、驚いて転倒するほうが危険です。対処法として都が挙げているのは、傘などの棒状のものを肩にかつぐこと、帽子をかぶること。カラスは羽が接触するのを恐れて近寄らないため、頭の上に何かが突き出ているだけで抑止になります。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| △ | △ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | △ | △ | △ |
東京都環境局の情報をもとにした、東京周辺での威嚇トラブルの起きやすさの目安(野鳥の教科書調べ)。◎=威嚇が集中する時期(ヒナの世話・巣立ち直後) ○=巣作りや巣立ち終盤で注意が必要 △=繁殖期外で落ち着いている
巣・卵・ヒナに手を出すと、法律に触れる
庭木や電柱に巣ができたとき、自分で落としてしまいたくなります。ここは慎重になってください。東京都環境局は、鳥獣保護管理法により、許可なく、卵やヒナを捕獲したり、傷つけたり、処分したりすることは禁止されていると明記しています。
環境省の捕獲許可制度でも、鳥獣又は鳥類の卵については、狩猟により捕獲する場合を除いて、原則としてその捕獲、殺傷又は採取が禁止されています。許可権限は環境大臣と都道府県知事にあり、多くの都道府県では市町村長に権限の一部が移譲されています。巣の扱いで迷ったら、まず市区町村の担当課に相談するのが正しい順序です。
自治体によっては巣の撤去に対応しています。箕面市は3月〜7月の繁殖期、特に4月〜6月に巣の撤去対応を行っています。業者に依頼した場合の費用は東京都環境局の情報でおおよそ1件あたり20,000円から30,000円程度なので、まず自治体に問い合わせてみる価値は十分にあります。
巣立ち直後のヒナが地面にいても、拾い上げないでください。親鳥が近くで見守っていることが多く、人が手を出すと親子が引き離されます。鳥獣保護管理法により、許可なくヒナを捕獲したり傷つけたりすることは禁止されています。どうしても心配なときは、市区町村や都道府県の鳥獣担当窓口に連絡して指示を仰いでください。また、糞や羽に触れたあとは手洗いを徹底しましょう。
シーン別|通勤路・ベランダ・町内会でできること
通勤・通学路で威嚇される人:ルートを50mでもずらせるなら、繁殖期の5月〜6月だけ迂回するのがいちばん確実です。変えられない場合は、傘を肩にかついで歩く、帽子をかぶるという都の推奨方法を取り入れてください。走って逃げるのは逆効果になりやすく、落ち着いて歩き抜けるほうが安全です。
マンションのベランダで困っている人:ベランダに置いた食べ物・ペットフード・生ごみをまず撤去します。物干し竿にとまるのを防ぐには、使わないときに竿を外すか、洗濯ばさみのついたハンガーを並べて足場をなくす方法があります。糞の掃除は乾かす前に、水で流してから拭き取ると衛生的です。
町内会・自治会で対策したい人:ごみ集積所の防鳥ネットは、個人ではなく集団で導入するほうが効果的です。旭川市はカラス対策型ステーションの町内会への貸出しを実施しており、同様の制度を持つ自治体は少なくありません。あわせて、餌やりをしている人がいる場合は個別に注意するのではなく、自治体の担当課を通じて対応してもらうほうが角が立ちません。
まとめ|餌をやらないことが、カラスにとっていちばんの優しさ
カラスへの餌付けをめぐる話は、法律違反かどうかの一点で語られがちです。けれど実際に大切なのは、餌をもらった鳥がどうなるかという道すじのほうだと思います。栄養状態がよくなって数が増え、人を怖がらなくなり、鳴き声や糞で近隣とぶつかり、最後は駆除の対象になる。東京都環境局が「人とのトラブルを起こすようになると、駆除されてしまう場合もあります」と書いているのは、その終点です。餌をやった人が望んだ未来ではないはずです。
最初の一歩として今日できるのは、屋外に置きっぱなしの食べ物を1つ片づけることです。ペットフードの皿でも、収穫した野菜でも、ふたの開いたコンポストでもかまいません。それが結果的に、庭に来るシジュウカラやスズメを守ることにもつながります。カラスとは距離を置き、小鳥とは適切な距離で付き合う。この使い分けができれば、庭の風景は変わっていきます。
条例の内容・施行状況・罰則は自治体ごとに異なり、改正されることもあります。最新情報は各自治体の公式サイトでご確認ください。
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