ベランダの手すりに毎朝2羽。追い払っても数分で戻ってきて、室外機の裏にはもう小枝が集まりはじめている——「鳩駆除」と検索する人の多くは、この段階で焦っています。ホームセンターで忌避剤を買ってくればいいのか、それとも業者を呼ぶべきか、そもそも自分で捕まえてしまってもいいのか。判断材料がないまま時間だけが過ぎて、気づけばフンが積もっている、というのがよくある流れです。
先に結論をお伝えします。鳩(ドバト)を許可なく捕まえることは鳥獣保護管理法で禁じられていて、卵やヒナのある巣も勝手に撤去できません。つまり「鳩駆除」で私たちができるのは、寄せつけない・入らせない・住み着かせないという3層の対策と、こまめな掃除です。そして対策の効果は、被害がどの段階まで進んでいるかで大きく変わります。
この記事では、ドバトという鳥の生態から被害レベル別の対策の選び方、グッズごとの価格と持続時間、自治体と民間業者の使い分け、そして動き出すべき時期までを、環境省・自治体・研究機関の公開情報をもとに整理しました。読み終わるころには、今日あなたのベランダで何をすればいいかがはっきりします。
・鳩を自分で捕まえられない法律上の理由と、巣を撤去できる条件
・被害レベル1〜4の自己診断と、レベルごとに選ぶべき対策
・忌避剤・剣山・防鳥ネットの価格と持続時間、効果が疑わしいグッズ
・自治体の窓口と民間業者の費用の目安、動き出すべき季節
「鳩駆除」の第一歩は、捕まえないと決めること

鳩の被害に悩んでいる人が最初につまずくのが、この言葉のイメージです。「駆除」と聞くと捕獲や排除を思い浮かべますが、住宅で現実に取れる手段はそこには含まれていません。まずは足元のルールを確認しておきましょう。
鳩駆除は「忌避・防除・捕獲」の3層に分かれている
鳩対策は、目的の異なる3つの層に分けて考えると迷いません。1つめが忌避対策で、鳩が寄り付かないようにするもの。忌避剤や蛇の模型、CD、ミントなどの芳香が代表格で、被害が軽い段階に向いています。2つめが防除対策で、鳩が特定の場所に入り込めないようにするもの。防鳥ネットや棘状グッズ(剣山)、ワイヤーがこれにあたり、巣作りが始まった段階で必要になります。3つめが捕獲・駆除で、鳩を実際に捕まえる行為ですが、これは個人では難しく、有害鳥獣捕獲許可を持つ事業者への依頼が前提になります。
この3層を混同すると失敗します。たとえば巣ができてしまった場所に忌避剤だけを置いても、鳩はその場所への執着が強いため戻ってきます。逆に、まだ羽が数枚落ちている程度なのに大掛かりなネット工事を検討するのは急ぎすぎです。自分の状況がどの層に対応するのかを見極めることが、費用も手間も抑える近道になります。次の章で、そのための自己診断表をお見せします。
ドバトは狩猟鳥獣に指定されていない、という前提
街にいる鳩、いわゆるドバト(カワラバト)は、狩猟によって捕獲してよい鳥のリストに入っていません。環境省の資料には、昭和56年の通達として「ドバトとレース鳩等の飼鳩との判別が必ずしも容易でないこと等の問題があるので、当面、ドバトを狩猟鳥獣に加えることは見合わせる」と記されています。見た目だけでは、野生化した個体なのか誰かが飼っているレース鳩なのかを区別できない——これが指定を見送っている理由です。
したがって、個人が鳩を捕獲するには都道府県知事(または権限を移譲された市町村長)の許可が必要になります。許可される捕獲の主な目的は「鳥獣による生態系等の被害防止」「特定計画に基づく個体数調整等」「学術研究上の必要性が認められる場合」に限られており、思い立って罠を仕掛けるといったことはできません。根拠となる条文は環境省の鳥獣保護管理法のページで確認できます。昭和25年に制定された法律で、その後も複数回の改正を経ています。
卵かヒナが1つでもあれば、その巣には触れない
巣の扱いは、中身によって対応が真逆になります。新宿区の案内では、卵やヒナがない巣であれば自分で撤去できる一方、卵またはヒナがある場合は「鳥獣保護管理法により、許可なく処分はできません」として、巣立つまで待機するか業者に依頼するよう示されています。大阪市も同様に、ハト(卵やヒナがいる巣を含む)は法律により原則として捕獲が禁止されていると明記しています。
ここで知っておきたいのが時間の感覚です。ドバトは最初の産卵から子鳩の巣立ちまで約50日を要するとされています。つまり、卵を見つけてから待機する場合、1か月半以上そのままにする覚悟が要るということ。だからこそ、巣ができる前の段階で手を打てるかどうかが分かれ目になります。「まだ巣じゃないから大丈夫」と見送った数日が、結果的に数十日の待機につながることは珍しくありません。
①許可なく鳩を捕まえる・傷つける(鳥獣保護管理法に抵触します)
②卵やヒナのある巣を撤去する(巣立つまで待つか、許可を持つ事業者に相談)
③フンをそのままにする(放置するほど鳩が集まりやすくなります)
自治体は原則として、鳩を捕まえには来てくれない
「役所に電話すれば駆除に来てくれるのでは」という期待は、残念ながらほとんどの自治体で外れます。大阪市は「大阪市では野生鳥獣の捕獲や駆除は原則行っていません」と明言していますし、福岡市も「福岡市では通常の生活被害において市では捕獲行為を行っておりません。ご自身で捕まえるのが困難な場合は、専門の駆除業者等にご相談ください。」としています。
では自治体に相談する意味がないかというと、そうではありません。東京都は生活環境被害(ドバトがベランダに巣を作り、鳴き声やフン害に困っている場合など)について、認定された捕獲許可事業者を紹介する窓口を設けています。京都市では北部・南部の環境共生センターや環境保全創造課が野生鳥獣の相談を受け付け、病気やけがの野鳥については動物園の野生鳥獣救護センターへつなぐ体制になっています。窓口は「捕獲の実行部隊」ではなく「制度と事業者への案内役」と考えるのが実態に近いでしょう。
ベランダに来ているのは、どんな鳥なのか
相手の習性を知らずに対策を選ぶと、お金と時間を無駄にします。ドバトは「たまたま飛んできた鳥」ではなく、人間の生活圏に適応しきった鳥です。
全長20〜25cm、体重200〜350gという体格が意味すること
ドバトはハト目ハト科の鳥で、全長20〜25cm、体重200〜350gほど。原産はユーラシア大陸の岩場地域で、新石器時代には日本に伝わっていたとされます。もともと崖の窪みに巣を作っていた鳥が、ビルの隙間や換気口、ベランダを「岩棚」と認識して住み着いている——これがドバトの都市進出の正体です。山階鳥類研究所も、ドバトは人間の活動地域に適応し、都市環境で良く生活していると説明しています。
この体格は対策の設計にも直結します。体重200〜350gの鳥が着地するには、足をかけられる平らな面が必要です。だからこそ手すりや室外機の上といった「留まれる面」を潰す発想が効きます。逆に、体が小さいスズメ用の対策をそのまま流用しても隙間から入られてしまいます。ベランダに来る鳥は鳩だけではないので、まずは誰が来ているのかを見極めるところから始めてもよいでしょう。

ベランダの手すりに見慣れない鳥がとまっていて、名前を調べようと図鑑を開いたら数百種が並んでいた——そんな経験はありませんか。日本で記録のある野鳥は600種を超え…
| 分類 | ハト目ハト科 |
| 全長・体重 | 全長20〜25cm/体重200〜350g |
| 見られる季節 | 通年(巣作りは3月〜10月が活発) |
| 生息環境 | 市街地・橋の下・屋根裏・換気口・ベランダ・軒下 |
| 食性 | 穀類・豆類・野菜・果実。都市部では人の食べ物屑も食べる |
| 寿命 | 野生で3〜4年 |
「三方が囲まれた場所」を選ぶ理由と、狙われやすい場所
ドバトが巣を作るのは、橋の下、屋根裏、換気口、ベランダ、軒下、鐘楼など。新宿区の案内では、ハトは三方が囲まれた場所を好み、安全と判断した場所に巣を作ると説明されています。岩場の窪みで繁殖していた頃の習性がそのまま残っているわけです。
この視点で自宅を見直すと、危険地帯がはっきりします。エアコン室外機の裏側、洗濯機の脇、物置と壁のあいだ、使っていない植木鉢が積んである一角。いずれも上と両側が塞がっていて、人の目が届きにくい場所です。新宿区もエアコン室外機や洗濯機の隙間を塞ぐことを予防策として挙げています。実際、ベランダのどこに巣ができたかを聞くと、室外機まわりが繰り返し登場します。掃除のついでに「三方囲まれていないか」を口に出して確認するだけでも、狙われる面積は減らせます。
追い払っても戻るのは、帰巣本能が働いているから
手を叩いて飛ばしても、数分で同じ手すりに戻ってくる。この繰り返しに疲れて検索している人は多いはずです。ドバトは地磁気で方角を認識できる磁性感覚を持ち、帰巣本能の強い鳥として知られています。視力は人間の3倍の解像度があるとされ、時速50〜60kmで飛べます。一度「ここは安全な場所だ」と学習した場所には、何度でも戻ってくる性質があるのです。
新宿区も、ハトは安全と判断した場所に戻るため、撤去後の対策が重要だと指摘しています。つまり追い払う行為そのものには持続的な効果がなく、「留まれない状態」「入れない状態」を物理的に作らないと堂々巡りになります。人の気配を感じさせる意味で毎日ベランダに出入りするのは予防として有効ですが、それだけで完結させないことが大切です。旅行や出張で1週間家を空けたあいだに巣ができていた、という展開はここから生まれます。
年に最大8〜13回、50日サイクルで増えていく
放置がなぜ危険なのか。数字を見ると腑に落ちます。ドバトは生後6〜7ヶ月齢で繁殖可能になり、1回の産卵数は2個が一般的、最初の産卵から巣立ちまで約50日、そして1年間の産卵回数は最大8〜13回にもなります。孵化当日のヒナは15〜20gで全身が黄色い綿毛に覆われ目も開いていませんが、28日目頃にはほぼ全体が羽で覆われ、成鳥と同じような姿になって約30cmの距離を飛べるようになります。
2羽が居着いただけでも、条件が揃えば1年でその場所は「繁殖拠点」になります。ドバトは群れる習性が強く、1000羽以上の大群を形成することもある鳥です。1羽あたり1日に体重の5〜8%程度のフンをするとされ、居着く個体が増えるほど汚れは加速度的に増えます。「まだ2羽だから」という判断が、対策コストを跳ね上げる最大の要因になっています。
いま被害はどのレベル?4段階で自己診断する

対策の正解は状況によって変わります。ここでは被害の進み具合を4段階に分け、それぞれ何をすべきかを整理します。まずは今のベランダを見てから読み進めてください。
レベル1〜4の判定表で、必要な対策が決まる
判定は難しくありません。ベランダに何が残っているかを見るだけです。羽が数枚落ちている程度ならレベル1、鳩の姿を見かけることがあるならレベル2、頻繁に来て休んでいるならレベル3、巣がある・卵があるならレベル4。この4段階に応じて、忌避グッズだけで足りるのか、防除グッズや業者依頼まで必要なのかが変わります。
| 被害レベル | ベランダの状態 | 推奨される対策 | 業者相談の必要性 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 羽が落ちている | 掃除と経過観察(無視してよい段階) | 不要 |
| レベル2 | 鳩がいることがある | 忌避グッズ(忌避剤など) | 不要 |
| レベル3 | よく来ている・フンが増える | 忌避グッズ+防除グッズ(剣山・ワイヤー) | 検討 |
| レベル4 | 巣があった・卵がある | 防除グッズ(防鳥ネット)+業者依頼 | 必要 |
レベル1〜2は、掃除と忌避グッズで十分間に合う
羽が落ちている、たまに鳩がいる。この段階なら、ホームセンターや通販で手に入る忌避グッズで対応できます。被害レベル1〜2の場合は忌避剤などの忌避グッズを使うのが定石で、コストも手間も軽くて済みます。ポイントは、鳩が「まだこの場所を安全だと決めていない」うちに手を打つこと。学習が固まる前なら、少しの不快感でも別の場所を選んでくれます。
ここでの失敗は「様子を見る」判断です。レベル1は無視してよい段階とされていますが、それは掃除をしたうえでの話。羽やフンが残っていると、鳩にとっては仲間がいた痕跡になります。週に一度でも水拭きの習慣を作っておくと、レベル2以降へ進む確率が下がります。忌避剤を置くなら、鳩が留まっている場所そのもの(手すりの上、室外機の天板)に近い位置に置くのがコツです。
レベル3は「留まれなくする」対策を足す段階
毎日のように来て、手すりに並んで休んでいる。フンが同じ位置に溜まりはじめた。ここまで来ると、匂いだけで追い出すのは難しくなります。被害レベル3では、忌避グッズに加えて防除グッズ、つまり剣山やワイヤーで物理的に留まれなくする対策を組み合わせます。
この段階の見極め方として、フンの位置を観察する方法があります。手すりの一点に集中しているなら、そこが「お気に入りの止まり場」です。その一点を剣山で潰すだけでも滞在時間は減ります。逆に、フンが床全体に散っているなら、すでに休憩場所ではなく生活空間として使われている可能性が高く、レベル4に近い扱いが必要です。「まだ巣はないから大丈夫」ではなく、「巣ができる直前かもしれない」と考えて動く方が結果的に安く済みます。
レベル4は、自力での完結を目指さない
巣がある、卵がある。この状態は、DIYの範囲を超えています。理由は2つ。1つは前述のとおり、卵やヒナのある巣を許可なく処分できないという法律上の制約。もう1つは、被害レベルが高いほどグッズ単独では効果が限定的になるという実務上の限界です。巣作りが進んだ場所は鳩にとって「実績のある安全地帯」であり、忌避剤や模型では追い出せません。
この段階でやるべきは、①巣に卵やヒナがあるかを確認する、②ある場合は自治体の窓口か有害鳥獣捕獲許可事業者に相談する、③巣立ち後・撤去後に防鳥ネットで再侵入を防ぐ、の3手順です。順番が逆になると、せっかく片づけても再び戻られます。新宿区も、ハトは安全と判断した場所に戻るため撤去後の対策が重要だと繰り返し注意を促しています。
グッズは価格より「持続時間」で選ぶ
鳩対策グッズは価格帯が広く、110円から数万円まであります。選ぶ基準を価格に置くと失敗しやすいので、ここでは持続時間と対応レベルで整理します。
忌避剤は3タイプ、持続時間が10倍以上違う
忌避剤には固形・スプレー・ジェルの3タイプがあり、それぞれ性格が異なります。固形タイプは500〜1,000円程度で設置が簡単、持続時間は数日〜1週間程度。スプレータイプは800〜1,500円程度で吹きかけるだけですが、持続時間は数時間〜1日程度と短めです。ジェルタイプは1,500〜3,000円程度と高めですが、設置場所に直接塗るため鳩の足にジェルが付着しやすく、忌避効果が高いとされ、持続時間も1〜2週間程度あります。成分はカプサイシン(唐辛子成分)など、鳩が嫌うニオイを利用したものが中心です。
ここで注意したいのが、単価と総コストの違いです。スプレータイプは1本が安くても、数時間〜1日で効果が薄れるなら繰り返し使うことになります。逆にジェルタイプは初期費用こそ高いものの、1〜2週間持つぶん手間が減ります。「安いものを何度も」か「高いものを長く」かは、あなたがどれだけベランダに出られるかで決めてください。共働きで平日は手が回らないなら、持続時間の長いタイプが現実的です。
剣山は110円で買えるが、その多くは鳩向きではない
棘状グッズ、いわゆる剣山は、鳩が留まるのを防ぐ効果の高い防除グッズです。手すり、ベランダの柵、軒先、配管など、鳩が留まりやすい場所に設置します。セリアとキャンドゥでは生花用の剣山が110円(税込)で販売されており、ダイソーでも生花用の剣山がクラフトコーナーに110円(税込)で並んでいます。この安さから100均で揃えようとする人は多いのですが、ここに落とし穴があります。
100均で販売されている生花用の剣山は、鳩対策用としては針が短く効果が薄い可能性があるため、主に生花用と考えるべきものです。鳩よけ専用の剣山は針が長く(3〜5cm程度が目安)、1,000〜3,000円程度が目安。素材は樹脂製と金属製があり、金属製の方が耐久性に優れ長期使用に向きます。設置のコツは、複数を並べて隙間なく覆うこと。1枚だけぽつんと置くと、鳩はその横に留まります。「安く上げたつもりが結局買い直した」という遠回りは、ここで起きています。
防鳥ネットは、効果が高いぶん施工の丁寧さが問われる
物理的に鳩が入り込めなくなるため、防鳥ネットは効果の高さでは群を抜きます。ベランダ、軒下、橋、倉庫など幅広い場所に使え、一度設置すれば長期的に効果が続くのが利点です。素材はポリエチレンやナイロンなどで、鳩が通り抜けない目のサイズ(15mm以下の製品があります)を選びます。
価格は幅があります。ベランダ用防鳥ネットの価格帯は、1,000円前後のものから、取り付けに必要なものが付属する20,000円程度の商品まで。業者に施工してもらう場合は、ワンルームマンションのベランダ(横4mまで)で34,800円(税込・難燃性ネット取付と清掃消毒を含む)、ファミリーサイズのベランダ(横7.5mまで)で38,000円(税込・同内容)という例があります。業者施工では延焼を防ぐ難燃性ネットが使われる点も、集合住宅では見逃せない要素です。
デメリットは、初期費用と見た目、そして施工の難しさ。設置のコツは隙間なく張ることで、隙間があるとそこから鳩が入り込みます。人が通り抜けられる程度の緩みがあれば、鳩には十分な入口です。自分で張る場合は、上端・下端・両サイドをすべて固定できるかを買う前に確認してください。
実は、音やCDに頼る対策は科学的な裏づけが乏しい
ベランダにCDを吊るす、超音波アプリを流す、蛇の模型を置く。昔からある定番ですが、ここは正直にお伝えします。100均ショップやホームセンターなどで販売される音やCDなどは科学的根拠のないものもあり、その信頼性や効果は疑わしい部分もあると指摘されています。視力が人間の3倍の解像度とされる鳩にとって、動かない模型が「危険」であり続ける時間は長くありません。
意外と知られていませんが、これらのグッズが役に立たないわけではなく、役割が限定されるだけです。まだ鳩が場所を決めていないレベル1〜2では、環境が変わったこと自体が忌避のきっかけになります。問題は、巣作りが進んでからも同じ手段を続けてしまうこと。被害レベルが高いほど、グッズ単独では効果が限定的になります。CDが回っている横で巣作りが進んでいるなら、それは対策の層を上げるサインです。
効果を決めるのは掃除|フンと巣の片づけ方
グッズを買う前にやるべきことがあります。掃除です。地味ですが、公的機関がそろって挙げる最重要の対策でもあります。
フンを放置するほど、鳩はもっと集まる
大阪市は被害防止対策として、糞を放置すると鳩がますます集まるため、こまめに掃除してベランダなどを清潔に保つことが重要だとしています。フンや羽は、鳩にとって「ここには仲間がいて安全だった」という痕跡です。人間でいえば、灯りのついた店に入りたくなるのと似た効果が働きます。
掃除の頻度は、被害レベルによって変えてください。レベル1なら週1回の水拭きで足ります。レベル2〜3なら、見つけたその日のうちに落とすのが理想です。同じ場所にフンが残る時間が短いほど、鳩の学習は定着しません。忌避剤を置く前にまず徹底的に落とす——この順番を守るだけで、同じグッズでも結果が変わります。掃除を「対策の前準備」ではなく「対策そのもの」と捉え直すのが、遠回りしないコツです。
フンには病原体が含まれることがある、という前提で扱う
鳩のフンには、大腸菌・サルモネラ菌・クリプトスポリジウムなどの病原体が含まれることがあるとされています。素手で触ったり、乾いたまま勢いよく掃き飛ばしたりする扱いは避け、使い捨ての手袋やマスクを用意して作業するのが無難です。掃除に使った道具や布は、使い回さずに処分できるものを選んでおくと気が楽になります。
健康への影響については、体質や状況によって異なるため、この記事で断定的なことは書きません。体調に不安がある場合や、大量のフンが堆積していて自力では手に負えない場合は、清掃を含めて対応してくれる事業者に相談するという選択肢があります。前章で紹介した業者施工の料金には清掃消毒が含まれる例もあり、「掃除だけでも頼む」という発想は現実的です。
巣の撤去は、卵とヒナの有無で手順が分かれる
巣を見つけたときの動き方を、順番に整理しておきます。焦って手を出す前に、まず中を確認してください。
失敗パターン①:巣を撤去して、そこで安心してしまう
最も多い失敗が、これです。巣を片づけて掃除まで済ませ、ベランダがきれいになった時点で対策を終えてしまう。ところが数日後、同じ場所に小枝が集まりはじめます。原因は鳩の帰巣習性で、巣のある場所に強い執着を持ち、一度営巣すると何度も戻ってくるからです。新宿区も、撤去後の対策が重大であると明記しています。
対策はシンプルで、撤去と防除をセットで計画することです。巣を外す日に、剣山やネットも手元に用意しておく。取り外した直後の数時間が、鳩にとっては「一時的にいなくなった」だけの状態なので、そこを埋めるまでが1つの作業だと考えてください。休日にまとめて行うなら、午前に撤去と清掃、乾いてから防除設置、という組み立てが現実的です。ここを分割して「来週やろう」にすると、来週にはまた巣ができています。
動くべきは3月〜5月|季節で結果が変わる
同じ対策でも、始める時期によって手応えが違います。鳩の繁殖リズムに合わせると、労力が減ります。
巣作りが活発なのは3月〜10月、ピークは3月〜5月
鳩の繁殖期は春から初夏で、3月〜5月が特に活発です。巣作りをする時期は3〜10月が最も活発で、都市部では通年繁殖する例もあるとされています。対策の最適時期は春(特に3月〜5月)から初夏で、この時期に対策を始めることで夏以降の被害を最小限に抑えられます。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| △ | △ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ |
◎=巣作りが特に活発(対策の最適期) ○=巣作りが活発 △=落ち着くが、通年繁殖する個体もいるため油断できない
「冬は来ないから大丈夫」という思い込みが被害を長引かせる
春から初夏にしか繁殖しないと考えるのは誤解です。鳩は1年中繁殖している可能性があり、繁殖が盛んな時期と控えめな時期はあっても、季節を問わず対策が必要とされています。繁殖開始年齢が6〜7ヶ月齢と早く、1年間の産卵回数が最大8〜13回にもなる鳥ですから、暦の上の冬でも条件が揃えば巣は作られます。
実務的には、△の月を「点検の月」に充てるのが合理的です。鳩の動きが落ち着いている時期は、ネットの緩みや剣山のズレを直す作業がしやすく、鳩を追い立てる心配も少なくて済みます。3月に慌てて工事を探すより、11月〜2月のあいだに手を入れておく方が、選択肢も時間も余裕があります。
失敗パターン②:巣ができてから、慌てて忌避グッズを買い足す
2つめの典型的な失敗が、順番の逆転です。5月に巣を見つけて、その週末に忌避剤とCDと蛇の模型を買い込む。しかしこの段階はレベル4であり、必要なのは防鳥ネットと業者への相談です。被害レベルが高いほどグッズ単独では効果が限定的になるため、忌避グッズの買い足しは費用だけが積み上がります。
この失敗を防ぐには、レベルを先に確定させてから買い物に行くことです。前掲の判定表で自分がどこにいるかを決め、その行に書かれた対策だけを買う。逆に、レベル1〜2なのに数万円の工事を検討するのも急ぎすぎです。被害の段階と対策の層を一致させる——これだけで、鳩対策の費用対効果は大きく変わります。
季節ごとに何を見るか、点検メニューにしておく
年間の流れを決めておくと、判断に迷いません。3月〜5月は最優先の行動月で、剣山やネットの設置、室外機まわりの隙間塞ぎを済ませます。6月〜10月は監視月で、巣材が集まっていないか、フンの位置が変わっていないかを週単位で確認します。11月〜2月は補修月で、固定具の緩み、ネットの破れ、剣山の傾きを直します。
もう1つ、毎日できる予防があります。新宿区が挙げているのは、毎日ベランダに出入りして人間の存在を認識させること、定期的に清掃して糞を放置しないこと、エアコン室外機や洗濯機の隙間を塞ぐことです。洗濯物を干すついでに数秒見渡すだけでも、巣材が集まりはじめた初期のサインを拾えます。手すりの一点に小枝が乗っていたら、それが対策開始の合図です。
自分でやるか、業者に頼むか|鳩駆除の費用と相談先
最後に、外部に頼るときの費用感と、どこに何を相談すればいいのかを整理します。窓口の性格を知っておくと、電話のかけ直しが減ります。
民間業者の費用は、建物の種別で入口が変わる
鳩駆除に特化した全国対応のサービスもあります。たとえば鳩110番の公表料金では、個人のお客様(一戸建てやマンション等)が22,000円〜(税込)、法人のお客様(工場等の大型建築物)が24,200円〜(税込)と案内されています。24時間365日対応の相談窓口を設けており、現地無料調査で正式な見積もりを出し、見積もり後は追加料金なしという説明です。
依頼するときの注意点は、料金が「〜」で始まる下限額である点です。ベランダの広さ、フンの堆積量、施工方法によって実際の金額は変わります。前章で触れたネット施工の例(ワンルームマンションのベランダ横4mまでで34,800円、ファミリーサイズ横7.5mまでで38,000円、いずれも税込・清掃消毒込み)のように、条件つきの定額プランを出している事業者もあります。複数社に現地を見てもらい、作業範囲(清掃・消毒・撤去・防除設置のどこまでか)を揃えて比べるのが確実です。
自治体の窓口は「案内役」|東京・大阪・福岡・京都の違い
自治体の対応は一律ではありません。東京都は生活環境被害について認定された捕獲許可事業者を紹介する仕組みを持ち、東京都環境局のページから有害鳥獣捕獲許可事業者のリストをダウンロードできます。多摩地区は多摩環境事務所が窓口です。大阪市は捕獲や駆除を原則行わない立場を示したうえで、各区役所の保健福祉センターや動物管理センター分室で相談を受け付けています。
福岡市も市としての捕獲は行わず、被害を受けている個人や法人からの有害鳥獣捕獲許可申請を受け付ける形です。京都市は北部・南部の環境共生センターと環境保全創造課で野生鳥獣の相談に対応し、けがや病気の野鳥は動物園の野生鳥獣救護センターへつなぐ体制になっています。共通しているのは、許可の窓口であって作業員ではないということ。「駆除に来てほしい」ではなく「許可の要否と事業者を教えてほしい」と伝えると話が早く進みます。
賃貸・持ち家・店舗、立場によって最初の一手は変わる
同じレベル4でも、あなたの立場によって動き方は違います。賃貸住宅なら、まず管理会社か大家に連絡してください。ベランダは共用部分として扱われることが多く、ネットの設置や外壁への固定を勝手に行うと原状回復の問題になります。掃除と忌避剤までは自分の判断で、防除設置からは相談、と線を引くのが安全です。
持ち家の戸建てなら、設置の自由度が高いぶん自分で決められます。剣山やネットを自分で張るか業者に任せるかを、高所作業の有無で判断してください。分譲マンションなら管理組合の管理規約を確認し、外観に関わる設置は理事会への相談が必要になる場合があります。店舗や事務所、工場は法人向けの料金区分(工場等の大型建築物で24,200円〜)が適用されることがあり、営業への影響も考えると早めの見積もりが有利です。いずれの立場でも、写真を撮って被害の状況を記録しておくと、相談も見積もりもスムーズになります。
餌やりをやめることが、いちばん上流の対策になる
グッズやネットは、来てしまった鳩への対処です。そもそも来る理由を減らせるなら、それに越したことはありません。ドバトは穀類・豆類・野菜・果実を食べ、都市部では人間の食べ物屑も食べます。食べ物のある場所を覚えれば、群れは定着します。1000羽以上の大群を形成することもある鳥ですから、餌場が1つできるだけで周辺一帯の状況が変わります。
自分の家でできることとしては、ベランダに食べ物の屑を落とさない、生ゴミを外に置かない、プランターの土に落ちた種子をそのままにしない、といった点が挙げられます。野鳥への給餌全般をどう考えるかは、種と季節と場所によって判断が分かれるテーマです。庭で小鳥を迎えたい人ほど、鳩やカラスとの線引きを知っておくと安心して続けられます。

ベランダの手すりにスズメが並んでいるのを見て、思わずご飯粒を置きたくなる。庭に来るシジュウカラのために、ヒマワリの種を買ってこようか迷っている。近所の公園で毎朝…

庭先やベランダにやってきたカラスに、パンの耳をひとかけら。あるいは通勤路の公園で、毎朝おにぎりを置いていく人を見かけた。どちらの側に立っていても、頭をよぎるのは…
まとめ|鳩駆除は「捕まえない対策」の積み重ねで決まる
ドバトは全長20〜25cm、体重200〜350gの小さな鳥ですが、生後6〜7ヶ月齢で繁殖を始め、1年間に最大8〜13回産卵し、最初の産卵から巣立ちまで約50日をかけて数を増やします。帰巣本能が強く、一度安全だと覚えた場所には何度でも戻ってきます。だからこそ、追い払うのではなく「留まれない・入れない・住み着けない」状態を作る発想に切り替えることが、遠回りに見えて最短の道になります。
今日できる最初の一歩は、ベランダに出て被害レベルを判定することです。羽が数枚落ちているだけならレベル1、掃除をして経過を見る。鳩を見かけるならレベル2、忌避剤(固形500〜1,000円程度、ジェル1,500〜3,000円程度)を置く。毎日来ているならレベル3、鳩よけ専用の剣山を隙間なく並べる。巣があるならレベル4、中身を確認したうえで自治体窓口か有害鳥獣捕獲許可事業者に連絡する。判定して、その行に書かれたことだけをやる。それが今日からできる鳩駆除です。生態や法律の一次情報は山階鳥類研究所のドバト研究ページや新宿区のハト対策ページ、日本野鳥の会のフィールドマナーでも確認できます。
なお、価格や制度の運用、自治体の窓口体制は変わることがあります。実際に依頼・申請する際は、最新情報を各公式サイトでご確認ください。

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