MENU

燕の対策は巣が完成する2〜3日が勝負|フン受けは巣から40cm離すのが正解

燕の対策は巣が完成する2〜3日が勝負|フン受けは巣から40cm離すのが正解のアイキャッチ画像

軒下に泥のあとが点々とついていて、見上げたら黒い鳥がすっと飛び去った——その瞬間から、ツバメとの付き合い方を決めるカウントダウンが始まっています。ツバメの巣は早ければ2〜3日、長くても1週間程度で完成します。作らせたくないなら、この数日のうちに動くしかありません。

そして巣ができてしまったあとは、選べる手が一気に減ります。卵やヒナが入った巣は、都道府県知事の許可なしに壊すと法律違反になるからです。「気づいたときにはもう遅かった」という相談が毎年繰り返されるのは、対策の締め切りが想像よりずっと早いからなんですね。

この記事では、巣を作らせない側の対策と、受け入れたうえでフン害・カラス・スズメに対処する側の対策を、両方まとめて整理します。フン受けを巣から40cm離す理由、カラス除けの紐を20cm間隔にする理由、巣台の幅を13cmにする理由——数字の根拠まで押さえておけば、迷わず手が動きます。

📌 この記事でわかること

・巣を作らせない対策と、受け入れる対策の分岐点と締め切り
・フン受けの設置位置(巣から40cm)と設置してよい時期
・カラス除け・スズメ対策の具体的な作り方と、やってはいけない方法
・卵やヒナのある巣を撤去できない法律上の理由と相談先

目次

燕の対策は「追い出す」と「受け入れる」で手順が真逆になる

燕の対策は「追い出す」と「受け入れる」で手順が真逆になるの解説画像

ツバメ対策と一口に言っても、目指すゴールによってやることは正反対になります。しかも困った順に手を出すと、法律に触れたり、かえってフンが増えたりします。最初に方向を決めてしまいましょう。

まずは困りごとを3つに仕分けると迷わない

ツバメの相談は、突き詰めると「フンが落ちる」「巣そのものを作られたくない」「巣は歓迎だがカラスやスズメに壊される」の3つに分かれます。この仕分けが先で、道具選びは後です。理由は単純で、3つのゴールは使う道具も、動いてよい時期もまったく違うからです。フン対策は巣を残したまま下に受け皿を置く話、営巣防止は巣ができる前に物理的に塞ぐ話、天敵対策は巣を守るために前面へ障害物を作る話になります。

場面別に見ると判断しやすくなります。店舗の入口やシャッター前なら、フンが客の頭上に落ちる可能性があるのでフン受けが第一候補。自宅の玄関ポーチなら、巣の位置を数十cmずらせるかを先に考えます。ガレージや駐車場は車のボディにフンが当たるため、巣の真下から車を移動できるなら、それだけで解決することも珍しくありません。集合住宅の共用廊下は自分だけの判断で手を加えられないので、まず管理組合や管理会社に相談する順番になります。

やりがちな失敗は、フンに困っているのに営巣防止グッズを買ってしまうことです。すでに巣がある状態でネットやスパイクを付けると、親鳥が巣に戻れなくなり、中のヒナが取り残されます。困りごとの仕分けは、道具を買う前に済ませてください。

全長17cmの渡り鳥は、いつ来ていつ帰るのか

対策の締め切りを知るには、ツバメの1年を頭に入れておくのが近道です。ツバメ(学名 Hirundo rustica)は全長17cm、翼開長32cmの小鳥で、春から初夏にかけて日本全国に渡来し、秋に東南アジアへ帰っていきます。環境省生物多様性センターの解説によれば、頭部から背中は光沢のある黒色、腹部は白色で、額と喉が赤褐色。尾は長く二つに分かれています。

巣作りの時期は、本州ではおおむね4月〜7月。別の観測記録では3月の終わりごろから6月の終わりごろまでとされています。1年に2回営巣することがあり、1回目の巣立ちは6月頃が多いのですが、二度目の営巣なら8月〜9月まで子育てが続きます。渡去は8月中旬から10月にかけて。つまり「夏の終わりだからもう帰っただろう」と決めつけて巣に手を出すのは危険なんです。

食べているのはトンボ、アブ、ユスリカなどの飛ぶ虫で、飛行しながら捕らえます。雨の日には飛行が低くなるという行動も知られています。害虫を食べてくれる鳥だと言われるのは、この食性が理由です。フンの量は確かに多いのですが、その裏側で庭や店先の飛ぶ虫が減っているという側面もあります。

あわせて読みたい
ツバメの巣作りの時期は3月末〜6月末|完成2週間、渡来時期とのズレの理由
庭先の軒下でツバメが忙しそうに泥を運んでいるのを見て、「そういえば巣作りっていつからいつまでなんだろう」と気になったことはありませんか。毎年同じ時期に同じような…

卵やヒナのいる巣は動かせない、という前提を先に共有する

ここが対策全体の土台になります。鳥獣保護管理法により、都道府県知事の許可なしにツバメの卵やヒナがいる巣を壊すことは違法です。違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるとされています。「小さな鳥だから」「うちの敷地だから」という理屈は通りません。

逆に言えば、鳥が巣立った後であれば撤去しても問題ありません。ただし撤去の前に、中に卵やヒナが残っていないかを必ず確認してください。二度目の営巣に入っていて、外から静かに見えても中にヒナがいる、というケースがあるためです。長岡京市のように、ツバメの巣の扱いを公式ページで案内している自治体もあります。

どうしても巣立ちまで待てない事情がある場合は、自治体に相談する道があります。場合によっては「鳥獣の捕獲等許可申請」を出し、卵やヒナのある巣の撤去を許可してもらえる可能性があります。相談先は都道府県の環境部や自然環境保全課などの野生鳥獣担当部署、または地方環境事務所です。自己判断で落として後から発覚するより、先に電話1本入れるほうがはるかに安全です。

🐦 野鳥スペックカード
和名/学名ツバメ(燕)/Hirundo rustica
全長・翼開長全長17cm/翼開長32cm
見られる季節春から初夏に渡来し、8月中旬〜10月に東南アジアへ渡る
営巣場所人家や商店、駅などの軒先やガレージのひさし
主な食べ物トンボ、アブ、ユスリカなどの飛ぶ虫(飛びながら捕らえる)
巣の形と素材おわん型/泥と藁を唾液で練り上げる

巣を作られたくない場所は、泥がつく前に手を打つ

営巣を防ぐ側の対策は、時間との勝負です。ツバメが巣を作る条件がそろっている場所は、放っておけば毎年狙われます。ここでは方法ごとの向き不向きと、避けたほうがよい手を整理します。

泥のあとを見つけた日から、巣材を落とし続ける

営巣防止でいちばん確実なのは、卵を産む前の段階で巣材をこまめに取り除くことです。ツバメが卵を産む前であれば、泥や藁などの巣材を落とし続けることで巣作りをあきらめさせることができます。法律上も、卵やヒナがいない段階なら問題になりません。

なぜ効くのかというと、ツバメの巣は泥と藁などの枯れ草を混ぜ合わせ、口内で唾液と練り上げて少しずつ積み上げていく構造だからです。土台が消えれば、その場所への投資が無駄になったと判断して別の場所を探します。壁に泥の点が並び始めたら、それが着工のサインです。

具体的には、朝と夕方に軒下を見上げて、乾いた泥を濡らした布で拭き取ります。乾き切ってから削ると壁材を傷めるので、固まる前がベストです。注意点として、巣がおわん型に立ち上がって中がのぞけない高さまで来ていたら、すでに産卵している可能性を疑ってください。この段階で落とすと違法になり得ます。作業前に脚立で目線を上げ、中を確認するひと手間を惜しまないでください。

ネットは効果が高い。ただし金具の打ち方で家が傷む

物理的に近づけなくする方法のなかで、もっとも確実なのがネットです。軒下などツバメが巣を作りやすい場所に、通り抜けられないよう網目の細かいネットを張る方法は、ツバメが近寄れなくなるので効果が高いとされています。光り物のように「慣れて効かなくなる」ということがないのが強みです。

効くのは、ツバメが求める条件そのものを消せるからです。ツバメが選ぶのは、天敵から守られ、雨や直射日光が当たらず、出入りしやすく、コンクリートなど泥が引っ掛かりやすい壁のある場所。ネットは「出入りしやすい」を物理的に潰します。

一方で、施工の注意点があります。金具を壁や軒下に固定する際、クギやネジを打ち込んでヒビ割れたり、穴から雨水が浸入して雨漏りの原因となる可能性があります。木造の軒天や窯業系サイディングは特に注意が必要です。賃貸なら原状回復の問題も出ます。突っ張り式や粘着式の固定具で足りないか、先に検討してください。ネットの端に隙間が残ると、そこから入り込んで内側に巣を作られます。四辺をたるませずに張るのがコツです。

光り物・ガムテープ・スパイクはどこで使い分けるか

ネット以外にも手はあります。キラキラ光るもの(CD、アルミホイル、プリズムテープ)をぶら下げる、壁に養生テープやガムテープを貼って足や泥を引っかけにくい壁にする、スパイクを設置して物理的に巣を作れないようにする——といった方法が挙げられています。

使い分けの軸は「工事の重さ」と「見た目」です。ガムテープ・養生テープは道具代も手間も軽く、しかも壁の材質を変えてしまうという点で理にかなっています。ツバメが好むのはコンクリートのような引っ掛かりやすい材質なので、つるつるした面にすれば泥が定着しません。店舗の外観を損ねたくない場合は、色を壁に合わせた養生テープが現実的です。

光り物は、設置が一番手軽な反面、鳥が慣れる可能性が残ります。「これだけで完璧」と考えず、巣材の除去とセットで使うのが無難です。スパイクは効果が明快ですが、後から自分で外したくなったときに跡が残ります。持ち家の恒久対策向きと考えてください。以下は方法ごとの向き不向きを整理した早見表です(野鳥の教科書調べ)。

方法 効き方 向いている場所 注意点
巣材の除去 土台を作らせない すべての場所 産卵後は不可
細かい網目のネット 近寄れなくする 軒下・ひさし全面 金具の穴から雨漏りの恐れ
養生テープ・ガムテープ 泥を定着させない 狙われる壁の一角 見た目と粘着跡
CD・プリズムテープ 近寄る気を削ぐ 工事しにくい賃貸 単独では心もとない
スパイク 物理的に作れなくする 持ち家の恒久対策 撤去跡が残る

テグスを勧められても、断ってほしい理由

ここが最初の失敗パターンです。ネット上には、太さ0.3〜0.6mm程度の透明なテグスを水平に張って寄せつけない、という方法が出回っています。安価で目立たないので選ばれがちですが、これは避けてください。

理由は、テグス(釣り糸)は鳥に見えないためです。ツバメやカラスがぶつかって怪我をすることがあるので使わないように、という注意が明確に出されています。「寄せつけない」つもりが「気づかず突っ込ませる」道具になってしまうわけです。飛びながら虫を捕らえるツバメは、飛行速度を落とさずに軒下へ滑り込みます。見えない糸との相性は最悪と言っていい組み合わせです。

実際に起きるのは、朝になると軒下で鳥が糸に絡まっている、という状況です。こうなると救助にも手間がかかり、外して自治体に相談する流れになります。同じ「線を張る」でも、後述するカラス対策の紐は太く目立つものを使うのが前提です。透明で細いものを空中に張る、という発想そのものを避けてください。代わりに、見えるネット・テープ・スパイクを選びましょう。

⚠️ 注意:営巣防止に手を出してよい時期

ネット・スパイク・テープなどの営巣防止策は、巣がまだない段階でのみ使えます。すでに卵やヒナがある巣に対して親鳥の出入りを妨げる措置を取れば、結果として巣を壊すのと同じことになります。鳥獣保護管理法では、都道府県知事の許可なく卵やヒナのいる巣を壊すことは違法とされ、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が定められています。判断に迷ったら、着手前に自治体の野生鳥獣担当部署へ相談してください。

フン害は掃除を増やすより「受け止める」ほうが早い

フン害は掃除を増やすより「受け止める」ほうが早いの解説画像

巣ができてしまったあと、多くの人が直面するのがフンです。毎日デッキブラシを持ち出すより、落ちる場所を決めてしまうほうが手間は少なく済みます。ここには寸法と時期のルールがあります。

フン受けは巣から40cm離す、が唯一の寸法ルール

フン受けは、巣から40cm程度離した位置に取り付けます。「なるべく巣の近くのほうが受け止めやすいのでは」と考えたくなりますが、逆です。巣の近くに付けたりすると、親鳥が嫌がって他所へ行ってしまうことがあると指摘されています。

理由は、ツバメが巣の周囲に必要とする空間にあります。ツバメは飛びながら巣に出入りし、天敵の接近を早く察知できる開けた前面を求めます。巣のすぐ下に板が張り出せば、進入経路が狭まるうえ、ヘビやネズミの足場にもなりかねません。40cmという距離は、フンを受け止められて、なおかつ出入りと安全を邪魔しないバランス点だと考えるとわかりやすいです。

取り付ける際は、板の面積を横に広げるのがコツです。ヒナが育つと巣の縁に体を乗り出して排泄するようになり、落下点が真下から少し外れます。奥行きを増やすより、巣の幅より左右に広く取ったほうが取りこぼしが減ります。なお、フン受けの上に載ったフンは風で舞うため、下に人が通る場所では受け皿の縁を少し立ち上げておくと安心です。

産卵前に取り付けると巣を捨てられる

2つめの失敗パターンがここです。フン受けは抱卵開始後に設置することが重要とされています。目安は、親鳥が昼間ずっと巣にこもるようになったタイミング。逆に、産卵前や抱卵前の設置は避けるべきとされています。

なぜかというと、産卵前のツバメは営巣場所をまだ「確定」していないからです。この時期に人が脚立を立て、巣の近くで作業をすれば、警戒して別の場所へ移ります。せっかく巣が9割方できていたのに放棄され、隣家の軒下で一から作り直し——ということが起こります。フンに困って早めに手を打ったはずが、結果的にツバメの労力を無駄にしてしまうわけです。

見分け方は行動でつかめます。巣作り中の親鳥は泥をくわえて何度も往復し、巣に長く留まりません。抱卵に入ると、片方が巣にじっと座り続けるようになります。この「動きが止まった」状態を数日確認してから、短時間で作業を終わらせてください。産卵数は3〜7個、卵の孵化までは前期繁殖で平均14.1日、後期繁殖で平均11.8日という記録があります。抱卵に気づいてから動いても、ヒナが孵る前に間に合う計算です。

あわせて読みたい
ツバメの子育ては産卵から巣立ちまで39日|親鳥が3日で283回運んだ記録
玄関の軒先に泥のかたまりが付きはじめた。数日後には親鳥が出たり入ったりして、気がつけば黄色い口が並んでいる——ツバメの子育ては、日本の家のすぐそばで進みます。け…

壁付け・吊り下げ・箱型トイレの3タイプから選ぶ

フン受けには大きく3つの形があります。壁付けタイプは巣の下の壁に直接装着するもので、壁面がある玄関脇や店舗の柱まわりに向いています。吊り下げタイプは、壁がない場合にワイヤーを使って吊るもの。ガレージの梁の下や、独立した柱に巣がある場合はこちらになります。

3つめが箱型トイレです。段ボール箱を床に置き、ペットボトルで重石をして固定するという方法が紹介されています。壁を傷つけたくない、高所作業をしたくない、賃貸で工事ができない——という条件がそろったときの現実的な答えです。汚れたら箱ごと交換できるので、掃除の心理的ハードルも下がります。

選ぶときの基準は、巣の真下に床があるかどうかです。床があれば箱型がもっとも手軽。床がなく壁だけなら壁付け、どちらもなければ吊り下げ、という順番で考えれば迷いません。注意点として、吊り下げタイプはワイヤーが揺れると親鳥が警戒します。2点以上で吊って、風で振れないようにしてください。段ボールを使う場合は、雨が吹き込む場所だとふやけて崩れるので、屋根の内側に限定するのが安全です。

🏠 フン受け設置の手順ステップガイド
Step1:抱卵の開始を待つ(親鳥が昼間ずっと巣にこもるようになるまで手を出さない)
Step2:タイプを決める(床があれば箱型、壁があれば壁付け、どちらもなければ吊り下げ)
Step3:巣から40cm程度離した位置に取り付ける(近づけすぎると親鳥が他所へ移る)
Step4:作業は短時間で終え、以後は巣を見上げるだけにする
完了! 1回目のヒナが巣立ったら、フン受けの上のフンを速やかに取り除きます

1回目の巣立ち直後が、掃除の唯一のタイミング

フン受けを付けたら終わり、ではありません。1回目のヒナが巣立った後、フン受けの上のフンを速やかに除去することが管理のポイントとされています。ツバメは1年に2回営巣することがあるため、そのまま放置すると2回目の子育て中はもう手を出せなくなります。

放置が問題になるのは、衛生管理を怠るとカビやダニが発生し、親鳥が巣を変える可能性があるからです。フン害を減らすために置いたものが、結果的にツバメを追い出す装置になってしまうという皮肉な事態になります。人間側にとっても、においや虫の発生源になります。

タイミングの見極めは、ヒナの姿が数日続けて見えなくなったかどうかです。巣立ちの時期は6月頃が多いのですが、二度目の営巣の場合は8月〜9月にずれ込みます。1回目の巣立ちを確認したら、その週のうちに受け皿を空にして拭き上げてください。箱型トイレなら箱ごと交換するのが一番早い方法です。作業中はマスクと手袋を着け、乾いたフンを舞い上げないように濡らしてから拭き取ると安全です。

燕の対策で見落とされがちなのはカラスとスズメ

巣を受け入れると決めたあとに待っているのが、天敵と横取りの問題です。せっかく見守っていたのに、ある朝ヒナが消えている——という事態を防ぐ手立ては、実はかなり単純な仕掛けで足ります。

「ツバメは通れて、カラスは通れない」が設計思想

カラス対策の考え方は一つに集約されます。巣の前面に障害物を作って、ツバメは通れるけれどカラスは通れないようにすることです。カラスを追い払うのではなく、体格差を利用して通行を選別する、という発想です。

成り立つのは、両者のサイズと飛び方が違うからです。ツバメは全長17cmで、翼をすぼめて狭い隙間をくぐり抜けられます。カラスはその隙間を通れず、かといってホバリングしながらくちばしだけを差し込むこともできません。この差が、間隔20cm前後という数字に落ちています。編目20cmのネットを使えば、ツバメは羽をすぼめて網目をくぐり抜けられます。

使える資材はいくつかあります。編目20cmのネット、簾(すだれ)、天井から支柱や針金を垂らす方法などです。支柱を垂らす場合は、先端にテープを巻いて安全対策をしておきます。カラス対策は日本野鳥の会をはじめ各所が呼びかけているテーマで、日本野鳥の会のツバメ保護のページでも、ツバメの子育てを見守る人を増やすことの大切さが説明されています。

縦紐を20cm間隔で垂らすだけでいい

いちばん簡単で、しかも結果が出ているのが紐張りです。紐を約20cm間隔で縦方向に張るやり方があり、縦ひもだけのほうが踏み台になる横ひもがなくて安全なうえ、作業が簡単で、カラスの被害はまったくなくなると報告されています。

なぜ縦だけなのかというと、横に渡した紐はカラスの足場になるからです。障害物のつもりで張ったものが、巣をのぞき込むための止まり木になってしまっては本末転倒です。縦方向なら、カラスは掴まれる場所がないまま、目の前を紐で塞がれた状態になります。ツバメは紐と紐の間をすり抜けて巣に戻れます。

作り方は、巣の前面の上部に横棒か針金を1本渡し、そこから紐を等間隔で垂らすだけです。紐は太く色のついたものを選んでください。ここでもテグスは使いません。設置時期にも決まりがあり、カラスよけはツバメが抱卵を始めてから設置します。そうすることで、ツバメが驚いて巣を放棄することを防げます。フン受けと同じタイミングなので、まとめて1回の作業で済ませると、巣に近づく回数を最小にできます。

Q. スズメがツバメの巣に入り込んでいます。追い出してもいいのでしょうか?
A. スズメも鳥獣保護管理法の対象なので、巣に卵やヒナがある状態で手を出すことはできません。スズメが古巣を使い始める背景には、住宅構造の変化で屋根の隙間などの営巣場所が減り、住宅難に陥っているという事情があります。対策としてはシャッターを低くおろす、キラキラのモールなどで巣を飾りつけるといった方法が挙げられています。いずれも卵が入る前に行うのが前提です。

スズメに乗っ取られたときの考え方

「毎年ツバメが来ていたのに、今年はスズメが入っている」という相談は増えています。原因は、最近の住宅構造の変化により屋根の隙間や建物の間といった従来のスズメの営巣場所が少なくなり、住宅難に陥っているためです。ツバメの古巣は、スズメにとって手に入りにくくなった物件というわけです。

起きやすいタイミングもわかっています。春先にツバメが遅れて渡ってくる場合、先にツバメの古巣を見つけたスズメが自分たちの巣として認識してしまい、利用するケースが増えています。つまり、ツバメの到着前の数週間が空白期間になるということです。

手を打つなら、この空白期間しかありません。シャッターを低くおろす、キラキラのモールなどで巣を飾りつけるといった方法が紹介されています。飾りつけは、スズメには落ち着かない環境に見えて、ツバメが戻ってきたら外せばよいという点で扱いやすい方法です。ちなみに、ツバメとスズメは巣を作る場所の立地条件が違います。ツバメは目の前が開けた広い空間を確保した場所を好み、スズメは巣立った後に隠れられる林や木が近くにある場所を好みます。庭に樹木が多い家ほど、スズメに選ばれやすい環境だと考えられます。

来てほしい側の対策|巣台は幅13cm×奥行き9cm

来てほしい側の対策|巣台は幅13cm×奥行き9cmの解説画像

ここからは「作らせない」ではなく「作りやすくする」側の話です。巣を落としてほしくないのに壁がつるつるで泥がつかない、という家は少なくありません。そんなときに効くのが巣台です。

天井から12〜14cmの位置に取り付ける

巣台のサイズは、幅13cm×奥行き9cm前後が適切とされています。取り付ける高さにも基準があり、天井に近い位置で、天井と巣台の板の距離が12〜14cm程空くように付けると、完成した巣が天井との距離が6〜8cm程になります。

この寸法が意味を持つのは、ツバメの巣が天井との隙間で守られているからです。おわん型の巣は上が開いており、天井との距離が近いほど、上からカラスにのぞき込まれたり手を入れられたりしにくくなります。かといって隙間がなさすぎれば、親鳥自身が出入りできません。6〜8cmという完成時の隙間は、その折り合いの数字です。

作り方は凝る必要がありません。名刺ケースをコンクリート用接着剤でくっつけただけのような、小さなとっかかりがあれば十分だと説明されています。ツバメは自分で泥を積み上げるので、人間が用意するのは「泥が落ちない足場」だけでよいわけです。注意点として、巣台の奥行きは巣からはみ出さないサイズにしておいてください。板が巣より前に出ていると、そこがカラスやヘビの足場になります。

置くのは「ツバメが泥をつけた場所」だけ

巣台は、どこに付けてもよいわけではありません。設置場所は、ツバメが自分で泥を付けている位置か、そのすぐ近くです。人間から見て都合のよい場所に付けても、ツバメの基準に合わなければ使われません。

ツバメが求める条件は4つあります。雨や直射日光が当たらない場所、ツバメが出入りしやすい場所、カラスから丸見えにならない場所、ヘビやネズミが来られない場所です。この4つを同時に満たす壁は、じつは家に数か所しかありません。だからこそ、ツバメが泥をつけて示した位置がもっとも信頼できる答えになります。

使い方としては、「玄関の真上は困るけれど、少し離れた柱なら歓迎」というときに、泥をつけている位置のすぐ近く——数十cm横の柱側——へ巣台を出す、という発想が現実的です。ゼロから場所を変えさせるのではなく、ツバメが選んだ範囲のなかで人間の都合のよい端に誘導する、というイメージですね。ヘビ対策としては、巣台へ登れる縦の経路(配管やツタ)がないかも合わせて確認しておくと安心です。

📌 巣台の寸法まとめ

・板のサイズ:幅13cm×奥行き9cm前後
・取り付け高さ:天井と板の距離が12〜14cm空く位置
・完成後の巣と天井の隙間:6〜8cm程度
・設置位置:ツバメが泥をつけている場所か、そのすぐ近く
・NG:巣より前に板がはみ出す奥行き(天敵の足場になる)

巣台を付けても来ないときに疑うこと

3つめの失敗パターンがここです。巣台があればツバメが来るというわけではありません。ツバメが巣作り場所を探して飛び回っていたり、壁に泥付けをしていたりする状況で巣台を付けると効果がある、というのが正しい理解です。

順番を間違えると空振りします。冬のうちに「来年こそは」と巣台だけ設置しても、ツバメが渡来してその場所を選ばなければ何も起きません。巣台は「来させる装置」ではなく「泥が定着しない壁を補う道具」だと考えてください。民家の壁材が汚れに強い素材に進化し、土が張り付かなくなったことがツバメ減少の一因に挙げられています。巣台はまさにその穴を埋めるためのものです。

来ない場合に見直したいのは、周囲の環境です。ツバメが食べるのは飛ぶ虫なので、近くに水田や水辺、草地があるかどうかは大きく影響します。それと、巣台の下がコンクリート敷きで人通りが絶えないか、逆に人の気配がまったくないかも見てください。ツバメは天敵を避けるために、あえて人通りが多い場所を選びます。無人の物置の奥は、人間には静かで良さそうに思えても、ツバメの基準では危険地帯です。

来ているのは本当にツバメ?日本の5種で対策が変わる

「ツバメ対策」として調べていても、実際に軒下にいるのが別の種類ということがあります。種類が違えば、巣の形も営巣する場所も、季節も違います。ここを取り違えると対策が空振りします。

ツバメとイワツバメは大きさと腹側で見分ける

日本で見られるツバメのなかまは、ツバメ、イワツバメ、コシアカツバメ、ショウドウツバメ、リュウキュウツバメの5種類です。世界には約80種類がいるとされるなかで、日本の身近な範囲ではこの5種を押さえれば足ります。

もっとも多いのがツバメで、全長17cm。体は光沢のある黒色、腹部は白く、額と喉が赤い。尾は長く二つに分かれています。これに対してイワツバメは体長15cm程度、体重は約18g。顔から背中全体が黒く、のどから腹部と腰が白いのが特徴です。日本には夏鳥として飛来しますが、関東以南では越冬するものも多いという違いもあります。

見分けのコツは、飛んでいる姿を下から見上げたときの尾です。ツバメの尾は深く二又に切れ込みますが、イワツバメの尾はその切れ込みが浅く、腰の白さのほうが目立ちます。注意したいのは、イワツバメは集団で営巣する傾向があるという点です。1つ見つけたら周囲に複数あることが多く、フン害の量も変わってきます。「ツバメが1組来た」つもりで対策すると、量の見積もりが外れます。

あわせて読みたい
ツバメのヒナは孵化から20日で巣立つ|落ちたヒナを拾ってはいけない理由
軒下から「ジジジッ」という声が聞こえ始めて数日。気づけば巣のふちから黄色い口がいくつも顔を出していて、親鳥がひっきりなしに出入りしている——そんな春から初夏の光…

コシアカツバメとショウドウツバメは巣の形が違う

コシアカツバメの巣は泥でつくられ、建物の壁とひさしの下面につけられます。1回の繁殖で産む卵数は4〜5個、繁殖期は5〜9月です。ツバメより繁殖期が遅くまで続くので、「9月ならもう終わっているはず」という思い込みが通用しません。

ショウドウツバメは、日本に渡ってくるツバメの中で最も小さい種類です。茶色っぽい色で、胸にネクタイのような暗褐色の帯と縦線があります。特徴的なのは巣で、土の壁や崖に小さな穴を掘って巣をつくります。繁殖は北海道でのみ、繁殖期は6〜8月です。住宅の軒先に泥の巣を作ることはないので、家屋のトラブル相手としては外して考えて構いません。

残るリュウキュウツバメは沖縄に分布します。判断のポイントを整理すると、「軒下におわん型の泥の巣」ならツバメ、「壁とひさしの下面に泥の巣」ならコシアカツバメ、「崖の穴」ならショウドウツバメ、という順で絞れます。種類が特定できると、繁殖期の終わりがいつなのかがわかり、撤去してよい時期の見当がつきます。ここを飛ばして「そろそろ大丈夫だろう」と手を出すのが、いちばん危ない進め方です。

比較項目 ツバメ イワツバメ コシアカツバメ ショウドウツバメ
大きさ 全長17cm 体長15cm程度・約18g 日本で最も小さい
見た目 額と喉が赤い/尾が二又 のどから腹部と腰が白い 茶色っぽく胸に暗褐色の帯
巣の場所 軒先やガレージのひさし 壁とひさしの下面 土の壁や崖の穴
繁殖期 巣作りは3月末〜6月末 関東以南では越冬も 5〜9月 6〜8月(北海道でのみ繁殖)

種類がわかると営巣場所の予測が立つ

種類の特定は、来年の対策の精度を上げます。ツバメなら人家や商店、駅などの軒先やガレージのひさしが本命なので、その面だけを重点的に見張ればよい。コシアカツバメなら壁とひさしの下面、つまり天井面ではなく壁との入隅を狙ってきます。防止策を張る面がまるごと変わるわけです。

この予測が効くのは、ツバメ類が営巣場所に高い忠実性を示すからです。条件が良ければ、同じ家、同じ面が翌年も選ばれます。今年どこに泥がついたかを写真に残しておけば、翌春はその面だけにネットやテープを事前配置すればよく、家全体を覆う必要がなくなります。

実践としては、巣立ちのあとに空になった巣の位置と形をメモしておくのがおすすめです。おわん型で上が開いていればツバメ、壁との角に張り付いてトンネル状ならコシアカツバメと見当がつきます。注意点は、空巣の撤去前に必ず中を確認することです。1年に2回営巣することがあるうえ、二度目の巣立ちは8月〜9月にずれ込みます。「もう秋だから」で手を出さないでください。

40年で半分になった鳥と、これからどう付き合うか

ここまで対策の技術を見てきましたが、背景の数字も知っておくと、判断の重みが変わります。ツバメは、私たちが子どもの頃に見ていたよりも確実に減っている鳥です。

環境省と自治体の調査が示した減り方

日本野鳥の会は、ツバメが40年前と比べると半分まで減少していると説明しています。根拠のひとつが繁殖分布調査で、1974年〜1978年と1997年〜2002年の調査を比較すると、ツバメの繁殖がかなり少なくなっていることがわかります。

自治体単位でも同じ傾向が出ています。大阪府吹田市では1998年と2010年の比較で個体数が3分の1に減少。滋賀県大津市の2024年調査では、報告のあったツバメの個体数は2320羽で、16年の前回調査から500羽以上減り、巣の数は374個と前回の3分の1以下でした。個体数の減り方より巣の減り方のほうが急なのが、この数字の読みどころです。

巣が減るということは、営巣できる場所そのものが失われているということです。渡ってくる個体がいても、作る場所がなければ次の世代は生まれません。だからこそ、家の軒下という私有地での判断が、地域全体の数に効いてきます。詳しい調査結果は日本野鳥の会のツバメ減少に関するページで公開されています。

減少の原因は6つ、うち2つは住宅の変化

挙げられている原因は複数あります。農業の衰退により水田や耕作地が減少し、ツバメのエサとなる虫が少なくなっていること。最近の西洋風家屋では軒のないものや、壁面が加工されて巣が作りにくいものが増加し、繁殖困難化につながっていること。カラスなどの天敵による卵やヒナの捕食。フン害が原因で人間によって巣が落とされるケース。民家の壁材が汚れに強い素材に進化し土が張り付かなくなったこと。そしてスズメが巣を乗っ取ること——の6つです。

注目してほしいのは、この6つのうち少なくとも3つに、住宅と人間の判断が関わっている点です。軒のない家、汚れに強い壁材、フン害を理由とした巣の撤去。どれも「対策」の名のもとに行われる行動と地続きです。

裏を返せば、この記事で扱ってきたフン受けや巣台は、6つの原因のうち2つを直接打ち消す道具だということになります。フン受けは撤去の理由をなくし、巣台は張り付かない壁材の穴を埋めます。「対策」という言葉から連想する追い出す行為だけが選択肢ではない、というのがここでの結論です。

🗓 観察カレンダー(ツバメ/本州の目安)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◎=よく見られる(もっとも観察しやすい時期) ○=見られる △=まれに見られる
巣作りは3月末〜6月末、巣立ちは6月頃が多く、二度目の営巣なら8月〜9月。渡去は8月中旬〜10月です。

実は「対策」の半分は、場所をずらすことで終わる

意外と知られていないのですが、ツバメの相談の多くは「巣をなくすこと」ではなく「落ちてくるものの行き先を変えること」で解決します。フンが商品に落ちる、洗濯物にかかる、車のボンネットが汚れる——問題の実体は巣の存在そのものではなく、落下点にあるからです。

落下点は、フン受けを1枚入れるだけで変えられます。車なら停める位置を数メートル動かせば済みますし、洗濯物なら干す面を変えるだけで解決します。巣に手を出す前に、自分の側で動かせるものがないかを一周確認してみてください。法律の心配も、親鳥への影響もなく片づく手が、意外と残っています。

そのうえで、日本ではツバメは害虫を食べる「益鳥」とされ、軒先に巣を作れば「商売繁盛」の兆しとして、「幸福の鳥」と考えられてきました。日本野鳥の会は「温かく見守って」と呼びかけ、ツバメの巣や生育環境を温かく見守っている団体を毎年表彰しています。ツバメをまもるためには、エサになる虫がいるような田んぼや水辺環境を大事にすることと、ツバメの子育てを見守る人を増やすことが大切だとされています。数日の不便と引き換えに、家の前で1シーズンの子育てを見られるという捉え方もできます。

まとめ|燕の対策は「時期」と「距離」の2つで決まる

🐦 この記事の結論

巣を作らせない対策は泥がつく前、フン受けやカラス除けは抱卵開始後に動きます。卵やヒナのある巣は許可なく壊せません。

✅ 要点チェック
  • 締め切り:巣は2〜3日〜1週間で完成する
  • フン受け:巣から40cm離し、抱卵開始後に設置
  • カラス除け:縦紐を約20cm間隔、横紐は張らない
  • 使わない:テグスは鳥に見えず衝突の原因になる
  • 巣台:幅13cm×奥行き9cm、天井から12〜14cm

ツバメ対策で迷ったら、まず「今、巣はどの段階か」を確認するところから始めてください。泥の点がついただけなら巣材を落とし続ける、ネットやテープで壁を変える、という選択肢が残っています。すでにおわん型に立ち上がっているなら、方針は受け入れる側へ切り替え、抱卵が始まるのを待ってフン受けと縦紐を1回の作業でまとめて設置する——この2択に整理すれば、やることはほとんど決まります。判断がつかない段階であれば、都道府県の環境部や自然環境保全課などの野生鳥獣担当部署、または地方環境事務所へ相談するのが確実です。

そして、40年で半分まで減ったという数字を思い出してください。減少の原因にはフン害を理由とした巣の撤去や、泥が張り付かない壁材の普及が挙げられています。フン受けと巣台は、その2つを打ち消せる数少ない道具です。全長17cmの鳥が2000kmを越えて選んだのがあなたの家の軒下だった、という事実は、少しだけ誇っていい話だと思います。

※法律の運用や許可申請の手続きは自治体によって異なります。最新情報は環境省・お住まいの自治体の公式サイトでご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

野鳥の教科書編集部です。テーマに関する基礎知識や選び方を、公式情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、変更があれば更新します。

コメント

コメントする

目次