朝からベランダの手すりに数羽のスズメが並び、洗濯物の下にフンが点々と落ちている。換気扇のフードの奥からガサガサと音がする。軒下に枯れ草がはみ出していて、どうやら巣を作られたらしい——スズメ対策を調べ始める入口は、だいたいこのあたりではないでしょうか。
先に結論をお伝えします。スズメ対策で最初にやるべきなのは、CDを吊るしたり音で追い払ったりすることではありません。鳥害対策の実務では「追い払う」より「入れない・止まれない」を優先すると最短で効果が出るとされています。つまり、物理的に入れなくする防鳥ネットが第一手、止まり場所を消す鳥よけスパイクが第二手、忌避剤や光・音は最後に足す補助という順番です。
そしてもうひとつ。スズメの繁殖期は3月から8月で、巣作りが本格化する3月〜4月より前、つまり冬から早春に動くかどうかで手間がまるで変わります。卵やヒナが入ってしまえば、その巣は法律上、勝手に動かせなくなるからです。この記事では、全長15cmの鳥がどこから入るのかという相手の性質から、ネットの網目サイズ、スパイクの選び方、忌避剤の限界、そして巣と法律の線引きまで、順番どおりに整理していきます。
・スズメ対策が効く順番(ネット → スパイク → 忌避剤)と、その理由
・防鳥ネットの網目は15〜20mm以下。「体の大きさ」ではなく「頭が通るか」で決める
・巣を防ぐなら冬から早春。3月〜4月を過ぎると打つ手が減っていく
・卵やヒナがある巣は動かせない。空の巣なら自分で撤去できるという線引き
追い払うより「入れない」が先|スズメ対策が空回りする原因

CDや音で追い払っても、翌週には戻っている理由
光る物や音でスズメを追い払う方法が効きにくいのは、対策の種類として実効性が低い部類に入るからです。鳥害対策の整理では、光・音による対策は「慣れやすい」という弱点が指摘されており、超音波や磁石にいたっては再現性が不安定とされています。
理由は、スズメがそもそも警戒心の強い鳥ではないことにあります。スズメは市街地から農耕地まで、人家のある場所に広く暮らす留鳥です。人の生活音や動きが日常的にある環境で暮らしてきた鳥に、動かない吊り下げ物や一定パターンの音は、数日で「危険ではないもの」として学習されていきます。
具体的には、ベランダにCDを吊るした直後は寄りつかなくなっても、風の向きが変わって光り方が単調になった頃から、手すりの端のほうに戻ってくる、といった経過をたどります。「最初の数日は効いた」という感覚が、かえって次の手を遅らせてしまうのが厄介なところです。
知っておきたいのは、光や音がまったくの無駄ではなく、位置づけが違うということ。これらは侵入経路をふさいだあとに「戻ってこないように足す」補助であって、単独で被害を止める主役ではありません。順番を逆にすると、時間だけが過ぎて巣作りシーズンに突入します。
効く順番は①侵入遮断 ②止まり場所の消去 ③補助対策
鳥害対策の実務で推奨される順番は、①侵入遮断(ネット)→②止まり場所の消去(スパイク・ワイヤー)→③補助対策(忌避剤・光・音)の3段階です。上から順に効果が確実で、下にいくほど条件に左右されます。
この順番になるのは、鳥にとっての「使いにくさ」を作る強さが違うからです。ネットは物理的に空間へ入れなくします。スパイクは着地そのものを妨げ、着地する前に羽や体に突起がぶつかるため、スズメは着地をあきらめて飛び去ります。忌避剤は「嫌な匂いがする」という判断材料を与えるだけなので、慣れや天候で揺らぎます。
注意したいのは、Step2を飛ばしてStep4から始めてしまうケース。忌避剤は手軽な価格で買えるので最初に手が伸びやすいのですが、侵入口が開いたままだと、匂いの薄れた頃に元どおりになります。順番は「安い順」ではなく「確実な順」で組み立ててください。
今の被害はどのレベル?DIYで足りるかの線引き
自分で対策するか、根本的な手を打つかの分かれ目は、被害レベルにあります。レベル1〜2の「立ち寄り・定着しかけ」の段階なら、掃除と整頓、ネットやスパイクといったDIYで十分に間に合います。レベル3〜4の「ねぐら化・営巣」まで進むと、DIYだけでは押し返しにくくなります。
見分ける材料は3つです。フンが十数個程度で日中の短時間しか来ていないなら、まだ立ち寄りの段階。朝晩も滞在していて、複数の鳥が同じ場所に出入りし、フンが厚く堆積しているなら、ねぐらとして使われています。そこに枯れ草や羽毛といった巣材が持ち込まれていれば、営巣の段階です。
具体的な確認方法としては、いったんフンをきれいに片づけて、数日後に同じ場所を見てください。翌日にはまた同じ量が積もるようなら滞在時間が長い証拠です。逆に、数日たっても数個しか増えていなければ、通りすがりに止まっているだけと判断できます。
ここで避けたいのが、乾いたフンをそのまま掃き掃除してしまうこと。粉じんを舞い上げるため、避けるべき行動として挙げられています。そして巣を勝手に撤去することも、状況によっては許可が必要になります。この2点は後半で詳しく扱います。
戸建て・ベランダ・家庭菜園でやることは変わる
同じ「スズメ対策」でも、守りたい場所によって主役になる道具が入れ替わります。読者タイプ別に整理しておくと、買う物の判断が早くなります。
マンションのベランダで悩んでいる人は、まず「止まり場所の消去」が主役です。手すり、エアコン室外機の上、物干し金具など、着地できる面が限られているので、スパイクで数か所つぶすだけで滞在時間が落ちます。共用部の扱いは管理規約に左右されるため、ネットを大きく張る前に確認が必要です。
戸建てで軒下や換気扇フードに出入りされている人は、「侵入遮断」が主役になります。スズメは屋根の隙間、建物と建物のあいだ、カーポート、換気扇、郵便受けといった人目につきにくい場所に営巣します。開口部をふさぐ発想に切り替えたほうが早く終わります。
家庭菜園や果樹を守りたい人は、面で覆う防鳥ネットが中心です。スズメはイネ科穀物の播種した種子や出芽した苗のほか、サクランボ・ブルーベリー・ぶどうといったやわらかな果実も食べます。実がつく前に張り終えておくのが、収穫期にあわてないコツです。
全長15cm・27gの鳥は、どこから入り込んでいるのか
まず相手のサイズを知る|スズメの基本データ
対策の精度は、相手の体格をどれだけ具体的に把握しているかで決まります。スズメは体長約15cm、体重27g(20〜30gの範囲で変動)の小型の鳥です。学名はPasser montanus、スズメ目スズメ科に分類されます。
| 分類 | スズメ目スズメ科(学名 Passer montanus/英名 Tree Sparrow) |
| 体長・体重 | 体長 約15cm/体重 27g(20〜30g) |
| 見られる季節 | 通年(日本では小笠原諸島を除く全国に留鳥として分布) |
| 生息環境 | 市街地、住宅地、農耕地、山地まで人家がある場所 |
| 外見の特徴 | 全体的に茶褐色。頭部が茶色で、頬に黒い斑点。オスとメスで外見差がほぼない |
| ねぐら・営巣場所 | 建物の隙間や樹木の茂み/屋根の隙間、建物間、カーポート、換気扇、郵便受け |
頭部が茶色で頬に黒い斑点があり、全体が茶褐色というのがスズメの見た目です。オスとメスで外見差がほぼないため、「つがいで来ているのか、群れの一部なのか」を見た目だけで判断するのは難しいと考えておいてください。
豆知識として、スズメの平均寿命は約1年3ヶ月とされています。同じ個体が何年も居着くというより、世代交代しながら同じ場所が使われ続けるイメージです。だからこそ、一度追い出して終わりではなく、「使えない場所にしておく」対策が意味を持ちます。
判断基準は体の大きさではなく「頭が通るかどうか」
侵入対策で最も間違えやすいのが、隙間の大きさの見積もりです。防鳥ネットの網目は「体の大きさ」ではなく「頭が通るかどうか」が基準になります。小型の鳥ほど小さな隙間から入り込むため、細かい目合いが必要になるという考え方です。
体長15cmという数字から「15cmの隙間がなければ大丈夫」と考えると、対策は必ず空振りします。鳥は羽をたたんで頭から入るので、通れるかどうかを決めるのは胴体の見かけの大きさではなく頭部の幅です。実務でスズメ対策のネットに15〜20mm以下が推奨されるのは、この基準に沿った数字です。
具体的には、換気扇フードの防虫ネットが破れて2cm四方の穴が開いている、軒天の板が反って細長い隙間ができている、シャッターボックスの側面が空いている——こうした場所が入口になります。人の感覚では「こんな所には入らないだろう」と思うサイズです。
チェックのコツは、地面から見上げるのではなく、鳥の出入りを数分眺めること。どこに降りて、どこへ消えるかを追えば、探すより早く侵入口が特定できます。出入りが集中する時間帯は朝夕に偏りやすいので、その時間に観察してみてください。
数羽〜数十羽の群れで動く鳥だから、居着くと戻り続ける
スズメ対策が長期戦になりやすいのは、この鳥が群れで行動するからです。スズメは常に数羽から数十羽の群れで行動し、地上で歩きながら採餌することが多い小鳥です。1羽が「ここは安全で餌がある」と学習すると、その情報は群れの行動として現れます。
さらに営巣についても、複数個が集団で営巣することがあり、同じ巣に翌年戻ってくることも珍しくありません。つまり、去年ヒナが巣立った軒下は、翌シーズンも候補地として残り続けるということです。「今年は来なかったから大丈夫」とは言い切れません。
具体例として、去年の巣を撤去しただけで隙間をふさがなかった場合、翌春の同じ時期に同じ場所で巣材が積み上がり始める、という流れになりがちです。撤去は現状復帰であって、対策ではありません。
ここで押さえておきたいのは、対策の完了ラインを「鳥が来なくなった日」ではなく「隙間が物理的にふさがった日」に置くこと。群れの記憶より、構造の変更のほうが確実です。
春と冬で食べ物が入れ替わる|餌のある場所が来る場所
スズメが来る場所は、餌のある場所とほぼ一致します。スズメはイネ科の草本の種子などを中心とした雑食性で、繁殖期には育雛のために昆虫類を多く採食することが報告されています。一方、冬は昆虫が少ないため種子や穀物を主に摂取し、餌の約90%を占めます。
この季節差は対策のタイミングに直結します。春から夏は昆虫類のほかパンくずや花の蜜も食べるため、生ごみや落ちた食べかすが引き寄せる要因になります。秋から冬は種子と穀物が中心なので、こぼれた鳥の餌、米ぬか、畑の残さが集客装置になります。
採食方法も多彩です。地面をつついて拾うグリーニングのほか、枝から木の実を採ったり、飛翔中の昆虫を空中で捕らえたりもします。地面だけ片づければよいわけではない、というのが実感しやすいポイントでしょう。
注意点として、農作物の被害では、もみ殻をむいて食べるという加害の特徴があります。ネットで覆う前に「何を食べに来ているのか」を特定しておくと、張る範囲を過不足なく決められます。
防鳥ネットは網目15〜20mm以下が分かれ目

スズメに効く網目サイズと、ヒヨドリ・ムクドリとの違い
防鳥ネットを選ぶとき、最初に決めるのは網目(目合い)です。スズメ対策で推奨されるのは15〜20mm以下。ヒヨドリやムクドリを想定した場合は20〜30mm目合いが目安になるため、同じ「防鳥ネット」でも狙う鳥で数字が変わります。
スズメ対策のネットは網目15〜20mm以下。判定基準は体の大きさではなく「頭が通るかどうか」です。ヒヨドリ・ムクドリ向けの20〜30mm目合いをそのまま流用すると、スズメはすり抜けます。
なぜ数字が違うかというと、通れるかどうかを決めるのが頭部の大きさだから。体長27cm前後の鳥を止められる目合いでも、体長約15cmのスズメには粗すぎます。「鳥よけネットを張ったのにスズメだけ入ってくる」という相談は、この目合いの取り違えで起きています。
ただし、細かければ細かいほど良いわけではありません。小さすぎる目合いは風通しを妨げ、カビや病害を招くとされています。とくに家庭菜園や果樹では、通気を確保できる適度なサイズを選ぶことが前提になります。スズメを止めつつ風を通す妥協点が、15〜20mmという帯なのだと理解してください。
素材と強度|ポリエチレンと「20mm目合い・1000d」という定番
次に見るのが素材と強度です。防鳥ネットの素材はポリエチレンまたはポリプロピレン。屋外で使うなら、耐候性に優れるポリエチレンが適しているとされています。日射と風雨にさらされ続ける設置場所では、素材の耐候性がそのまま寿命になります。
強度の単位はデニール(d)で表され、一般的な強度は1000dです。防鳥ネットを扱う東京戸張社では、最も注文が多い規格が「20mm目合い、1000d」とされています。多くの害鳥種に対応でき、適切な強度を備えているため汎用性が高いという位置づけです。
具体的な選び方としては、スズメ単独を想定するなら15〜20mm以下の範囲で、耐候性のあるポリエチレン、強度は1000dを目安にする、という組み立てになります。サイズが合わない場合でも、複数枚を張り合わせたり、オーダーメイドで作ったりして対応できます。
豆知識として、屋外用のネットは色によって目立ち方が変わりますが、効果を決めるのはあくまで目合いと隙間の有無です。見た目を優先して目の粗い製品を選ぶと、対策としては成立しなくなります。
鳩を想定した既製品のネットを流用しようと考えている場合は、網目の考え方が別物になります。あわせてこちらも参考にしてください。

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天井張りとサイド張りでは、必要な細かさが変わる
同じネットでも、張る向きで求められる目合いが変わります。天井張りは比較的大きな目合いでも対応できる一方、サイド張りではより小さなサイズが重要になります。
理由は、鳥の入り方の違いにあります。上から降りてくる動きに対しては、面があるだけで進入がためらわれます。ところが側面は、横方向から頭を差し込む動きになるため、網目に頭が入るかどうかがそのまま結果になります。カーポートやベランダのように側面が開いている構造ほど、目合いをシビアに決める必要があります。
具体例を挙げると、家庭菜園の畝を上から覆うだけの張り方と、支柱を立てて四方を囲う張り方では、後者のほうが細かい目合いを求められます。上だけ覆って側面が開いていると、鳥は横から入って中で採餌します。
注意点は、地面との取り合い部分です。裾が浮いていると、そこが実質的なサイド開口になります。裾を土に埋める、重しで押さえるなど、下端の処理まで含めてはじめて「張った」と言えます。
失敗パターン①:ネットは張ったのに、端の隙間から入られていた
防鳥ネットで最も多い失敗が、隙間の残存です。設置時は隙間がないかを確認することが重要で、隙間があるとスズメは侵入できてしまいます。ネットそのものは正しくても、端部の処理を誤ると効果はゼロに近づきます。
原因は、面積の見積もりです。壁や柱に対してネットの寸法がぎりぎりだと、引っ張って固定した際に角が三角形に開きます。風であおられて留め具が外れれば、そこが恒常的な出入口になります。スズメは人目につきにくい場所を好むので、開いた角が建物の陰にあると、なおさら見つかりにくくなります。
対策は3つ。①ネットは張りたい面より大きめを選び、余りを折り返して留める。②留め具の間隔を詰め、風であおられても開かないようにする。③設置後に、ネットの内側から外の明かりが見える箇所がないか目視する。明かりが見える=隙間がある、という単純な確認法です。
そして、隙間チェックは一度で終わりにしないこと。忌避剤との併用が効果を高めるとされていますが、それは隙間がふさがっている前提での話です。まず隙間、次に補助、という順番を崩さないでください。
鳥よけスパイクは「止まらせない」ための道具
着地の直前で追い返す仕組み
鳥よけスパイク(防鳥剣山)は、スズメの飛来防止アイテムで、物理的に止まりにくくする仕組みです。細い針金状の突起が並んだ台座で、ロッドが何本も突き出た形状をしています。
効き方の要点は、刺すことではなく、着地を妨げることにあります。スズメが着地する前に羽や身体に棒がぶつかるため、着地を諦めて飛び去るという流れです。つまり、鳥が「降りようと思ったのに降りられない」状態を作る道具だと理解すると、設置場所の選び方が変わります。
具体的には、スズメの着地点になっている場所へ設置します。手すり、換気扇の上、軒、アンテナなど、フンが集中している面がそのまま候補です。逆に、鳥が降りていない場所に付けても意味はありません。
設置の考え方としては、部分的に設置して隙間を塞ぐのが基本です。面全体を埋める必要はなく、着地できる幅を消していけば滞在は続かなくなります。フンの落ちている位置が、そのまま設計図になってくれます。
プラスチック製とステンレス製、どちらを選ぶか
スパイクの素材はプラスチック製とステンレス製があり、それぞれ性格が違います。結論から言えば、長く使う場所ならステンレス製、試験的に付けるならプラスチック製という選び分けになります。
プラスチック製は軽量・安価で設置しやすい反面、紫外線劣化に注意が必要です。南向きのベランダや、一日中日が当たる手すりのように、紫外線を浴び続ける場所では劣化が早く進みます。対してステンレス製は耐久性に優れ、長期的な使用におすすめとされています。
具体的な使い分けとしては、「まずどこに降りているかを確かめたい」段階ではプラスチック製で数か所試し、着地点が確定してからステンレス製に置き換える方法があります。最初から全面をステンレスで固める必要はありません。
注意点として、流通しているスパイクは多くが中国製です。製品ごとに突起の間隔や台座の幅が違うので、パッケージの想定鳥種ではなく、突起の間隔がスズメの体格に対して詰まっているかを見て選んでください。
失敗パターン②:100円ショップのスパイクを通り抜けられた
スパイクでの典型的な失敗は、隙間の大きい安価な製品を選んでしまうことです。防鳥剣山そのものはスズメの鳥害対策に十分な効果がありますが、100円ショップの安価な製品は隙間が大きすぎるため、スズメが通り抜けてしまう可能性があるとされています。
スパイクは突起の間隔が命です。ハト向けの間隔が広い製品は、体長約15cmのスズメには素通りされます。設置後に同じ場所へフンが落ち続けるなら、効いていないサインだと考えて製品を見直してください。
原因は、想定している鳥のサイズ差です。突起の間隔がハトを基準に作られていれば、その隙間はスズメにとって余裕のある着地スペースになります。「取り付けたのにフンが減らない」という状況は、ほぼこれが理由です。
対策としては、設置後1週間ほど同じ場所のフンの量を記録すること。減っていなければ、突起の間隔が広いか、隣接する別の面に移っただけかのどちらかです。前者なら製品変更、後者なら設置範囲の拡張で対応します。
スパイク単独では「別の場所に移るだけ」になることがある
スパイクの実効性は高い部類に入りますが、弱点があります。単独で使うと、別の場所への移動が起きる可能性があるという点です。追い出した先が隣の物干し金具や室外機の上なら、被害の場所が変わっただけになります。
これは道具の欠陥ではなく、対策範囲の問題です。スズメは建物の隙間や樹木の茂みをねぐらに使い、屋根の隙間やカーポート、換気扇まで幅広く利用します。1面だけ消しても、その周辺に代わりの着地点がある限り、滞在は続きます。
具体的な進め方としては、フンの落ちている面を全部リストアップしてから、優先度の高い順につぶしていくこと。ベランダなら手すり上端、室外機の天板、物干し竿の受け金具、エアコン配管カバーの上あたりが定番の着地点です。
そして、スパイクはあくまで第二手であることを忘れないでください。営巣スペースへの入口が残っているなら、止まり場所を消すよりネットで入口をふさぐほうが先です。順番を守れば、必要なスパイクの数も減ります。
忌避剤・光・音はどこまで効くのか
忌避剤は「嫌な匂いで寄せつけない」道具
忌避剤は、スズメが嫌がる香りを発してスズメが寄り付かない環境を作るアイテムです。スプレータイプ、液体タイプ、ジェル式など複数の種類があり、比較的手軽な価格で購入できます。
ただし、効果の性質は物理対策とは別物です。香りは時間とともに薄れるため効果は長続きせず、定期的な塗り直しが必要になります。防鳥ネットと比較すると効果は限定的で、単独使用では期待どおりにいかないことが多い、というのが位置づけです。
具体的な使い方としては、ネットやスパイクで物理的な手当てをしたうえで、その周辺に塗布して「戻りにくくする」という運用が現実的です。忌避剤との併用がネットの効果を高めるという考え方は、この順序を前提にしています。
注意点は、雨と紫外線です。屋外で使う以上、成分は天候で劣化します。塗った日をメモしておき、雨のあとは効きが落ちていると想定して塗り直すサイクルを決めておくと、判断がぶれません。
スズメ専用の忌避剤が見つからない理由
忌避剤を探していて「ハト用ばかり出てくる」と感じた人は少なくないはずです。実際、スズメ専用の忌避剤は販売が限定的で、主にハト用が多く、効果を感じにくい場合があるとされています。
背景には、対策市場の中心がハトやカラスであることがあります。体格も行動も違う鳥に向けて作られた製品を流用すれば、想定どおりに働かないことがあるのは自然な話です。一方で、スズメが嫌う臭いタイプの専用の忌避剤は一定の効果を持つとされており、探す価値はあります。
具体的には、製品パッケージに対象鳥種としてスズメが明記されているかを確認してください。明記がない製品を「鳥用だから効くはず」と考えて使うと、効果の判定そのものが曖昧になります。
豆知識として、忌避剤を選ぶより先に「餌の供給源を減らす」ほうが効く場面は多くあります。匂いで遠ざけるより、来る理由をなくすほうが確実だからです。この点は次の見出しで詳しく扱います。
手段別の実効性を並べてみる(野鳥の教科書調べ)
ここまでの内容を、手段ごとの実効性・弱点・向いている場面として一覧にしました。公開されている鳥害対策の整理をもとに、当サイトで比較表の形にまとめたものです。
| 比較項目 | 防鳥ネット | 鳥よけスパイク | 忌避剤・光・音 |
|---|---|---|---|
| 実効性 | 高い(単独で最も確実) | 高い | 忌避剤は中/光・音は低い |
| 効果が落ちる条件 | 隙間が残っている | 別の場所へ移動される | 雨・紫外線で劣化/慣れる |
| 押さえる数字 | 網目15〜20mm以下 | 突起の間隔とロッドの本数 | 塗り直しの周期 |
| 向いている場面 | 営巣・侵入をふさぐ/菜園を覆う | 手すり・換気扇の上・軒・アンテナ | 物理対策のあとの再発防止 |
この表で見えてくるのは、実効性の高い順に「弱点が具体的で対処可能」だということです。ネットの弱点は隙間ですが、隙間はふさげます。光・音の弱点は慣れですが、慣れは止められません。対処できる弱点を持つ手段から選ぶ、というのが合理的な進め方です。
なお、超音波や磁石を使う製品については、再現性が不安定とされています。導入するなら、まずネットとスパイクで土台を作ってからにしてください。
実は、補助対策は「効かない道具」ではなく「最後に足す道具」
意外と知られていないのですが、忌避剤や光・音が批判されがちなのは、道具そのものが悪いからではありません。順番を間違えた状態で単独使用されることが多いからです。
侵入口が開いたまま忌避剤を撒けば、効き目が薄れた瞬間に元どおりになります。同じ忌避剤でも、ネットで入口をふさぎ、スパイクで着地点を消したあとに使えば、「残った微妙な場所に降りようとする個体」を押し返す役割を果たします。評価が割れるのは、使う場面が違うからなのです。
具体的には、ネットの裾まわりや、スパイクを付けられない曲面など、物理対策の取りこぼしに使うのが向いています。取りこぼしは面積が小さいので、塗り直しの手間も現実的な範囲におさまります。
逆に言えば、「まず忌避剤から試したい」という気持ちが対策全体を長引かせます。順番の話に何度も戻ってくるのは、それだけこの順序が結果を左右するからです。
巣を作られる前が勝負|冬から早春にやること
予防のタイミングは3月〜4月より前
スズメの巣作り対策は、巣作りが本格化する3月から4月よりも前、つまり冬から早春にかけて行うことが効果的とされています。この時期を逃すかどうかで、その年の手間はまったく変わります。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| △ | △ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | △ | △ | △ | △ |
◎=巣作り・営巣が本格化する時期 ○=繁殖期の後半 △=繁殖期外(予防工事に向く時期)
スズメは3月から8月の繁殖期に巣を作り、1年に約2回の繁殖を行います。この期間は虫が活発になり、食料が豊富だからです。△の月は、隙間をふさぐ工事や高所作業を落ち着いて進められる時期にあたります。
具体的には、年末年始の掃除のタイミングで軒下と換気扇まわりを点検し、2月中に処置を終える段取りが理想です。3月に入ってから慌てて作業すると、すでに巣材が持ち込まれていて、話が一気に複雑になります。
注意したいのは、7月〜8月の扱いです。繁殖期の後半にあたるため、この時期に見つけた巣も使用中である可能性があります。「もう夏だから空だろう」と決めつけないでください。
隙間をふさぐ|コーキングとネットの使い分け
予防の中心は、物理的に隙間をなくすことです。方法は3つ挙げられています。コーキングで隙間を塞ぐ、編み目2cm以下の防鳥ネットを隙間なく設置する、片付けて餌の供給源を削減する——この3点セットが基本形です。
使い分けの考え方はシンプルで、恒久的に閉じてよい隙間はコーキング、通気や点検が必要な開口はネット、と分けます。換気扇や通気口を完全にふさいでしまうのは論外なので、そこはネットの出番です。網目は2cm以下、つまり20mm以下が基準になります。
具体的な作業箇所は、屋根の隙間、建物と建物のあいだ、カーポート、換気扇、郵便受けなど、スズメが営巣に使う人目につきにくい場所です。とくに郵便受けは見落とされがちですが、実際に営巣場所として挙げられています。
注意点は、高所作業の安全確保です。屋根まわりの隙間は脚立での作業になりがちで、無理をすれば事故につながります。手の届く範囲を自分でやり、屋根や2階の軒下は業者に任せるという線引きをおすすめします。
餌の供給源を減らす|来る理由をなくすのが一番強い
隙間対策と並行してやりたいのが、餌の供給源の削減です。片付けて餌の供給源を減らすことが、予防方法として明確に挙げられています。来る理由がなければ、そもそも隙間を探されません。
理由は食性にあります。冬は種子と穀物が餌の約90%を占めるため、鳥の餌のこぼれ、米や穀類の保管、畑の残さが強い誘引要因になります。春から夏は昆虫類のほかパンくずも食べるので、屋外に置いた食べ物や生ごみが対象になります。
具体的には、ベランダのプランターにこぼれた種、植木鉢まわりの有機質肥料、屋外の生ごみ置き場、集合住宅のごみ集積所の周辺が要チェックです。地上で歩きながら採餌することが多い鳥なので、地面レベルの落下物が効いてきます。
そして、餌やりの扱いには注意が必要です。自治体によっては野鳥への給餌に条例上の制限があります。庭で給餌をしている場合、それが自宅への飛来を増やしている可能性もあるので、対策とセットで見直してみてください。

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作られてしまったら|巣立ちまでは6〜8週間という見通し
予防が間に合わず巣を作られた場合、まず知っておきたいのは時間の見通しです。巣から巣立ちまでは全体で6〜8週間。内訳は巣作りに1週間、産卵に1週間、孵化・育成に約4週間とされています。
もう少し細かく見ると、一腹あたりの産卵数は約4.9卵(岡山県の調査による)、孵化までが10〜15日、孵化から巣立ちまでが12〜17日です。巣材はイネ科の雑草や乾燥したわら、小枝、樹皮、羽毛、人工物などを球形に組み合わせた構造で、内部には柔らかい材料が敷かれています。
この数字が意味するのは、「今すぐどうにかする」以外の選択肢が現実的だということです。卵やヒナがいる巣は動かせませんが、巣立ちまでの期間が見通せていれば、フン受けを設置して待つ、通路を変えるといった対応が立てられます。
注意点は、巣立ち後の対応です。スズメは年に複数回巣を作ることがあり、同じ場所に戻ることも珍しくありません。空になったタイミングで撤去と隙間ふさぎを同時に済ませないと、同じシーズン中に2回目が始まります。
卵とヒナがある巣は動かせない|法律の線引きと、減り続ける鳥
鳥獣保護管理法の原則と、1年以下の懲役という罰則
スズメ対策で最初に線を引いておくべきなのが法律です。鳥獣保護管理法により、すべての野生鳥獣は捕獲(損傷や卵の採取を含む)することができません。例外は狩猟制度や学術研究などの許可を受けた場合に限られます。
違法に野生鳥獣を捕獲した場合の罰則は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。捕獲するには環境大臣または都道府県知事の許可、あるいは狩猟者登録が必要になります。卵の採取も「捕獲等」に含まれる点に注意してください。
スズメは狩猟鳥獣として指定されていますが、それは「いつでも自由に捕まえてよい」という意味ではありません。狩猟として行う場合は狩猟免許が必要で、狩猟期間は11月15日から2月15日(地域により異なる場合があります)と定められています。住宅地での自衛手段として使える枠組みではない、と考えてください。
被害が出ている場合の枠組みとしては、有害鳥獣捕獲があります。これは被害が現に生じているか、そのおそれのある場合に、防止と軽減を図るために行うものです。手続きの詳細は環境省の鳥獣の捕獲等の許可に関するページで確認できます。
空の巣なら自分で撤去できる|卵・ヒナがあるときは申請が必要
巣の撤去については、中に鳥がいるかどうかで扱いが分かれます。鳥がいない空の巣は自分で撤去可能ですが、感染症対策として防護具を着用し、消毒が必要です。鳥がいる場合は法律で保護されているため、自治体への申請が必要になります。
この線引きがあるからこそ、予防のタイミングが重要になります。卵やヒナが入った瞬間から、選べる手が減るということです。逆に言えば、繁殖期外の△の月に動けば、撤去も隙間ふさぎも自分の判断で進められます。
具体的な撤去手順としては、防護具を着けたうえで巣材を袋に入れ、周辺を消毒し、そのまま隙間をふさぐところまで一度に済ませるのが効率的です。撤去だけして開口部を残すと、同じ場所に作り直されます。
注意点をもうひとつ。乾いたフンを掃き掃除するのは、粉じんを舞い上げるため避けるべき行動とされています。掃除の手順を先に確認してから作業に入ってください。なお、地面にヒナがいるのを見つけた場合の対応は、巣の話とは別の判断になります。

庭先や駐車場のすみに、羽の生えそろっていないスズメのヒナがちょこんと座っている。飛べそうにないし、親鳥の姿も見えない。このまま放っておいたらネコに襲われるのでは…
自治体で扱いが違う|東京都のケース
もうひとつ知っておきたいのが、自治体によって扱いが異なる点です。東京都では、農林水産業・生活環境・生態系へ恒常的に被害を与える野生鳥獣の中で、スズメについて「いかなる場合においても保護の対象としていません」としています。
この記述は、他の都道府県と異なる場合があるため、住んでいる地域の窓口で確認する必要があります。同じ行為が地域によって違う扱いになりうる、というのが野生鳥獣まわりの制度の実情です。
具体的には、市区町村の環境課や都道府県の自然環境担当窓口に、「自宅の軒下にスズメが営巣している」という状況を伝えて確認するのが確実です。東京都環境局の野鳥の捕獲に関するページのように、自治体が方針を公開している場合もあります。
注意点は、ネット上の情報をそのまま自分の地域に当てはめないこと。捕獲の可否や巣の扱いは、居住地の運用が答えになります。作業に入る前に電話一本で確認しておけば、後から困ることはありません。
実は、対策を考える相手は「減り続けている鳥」でもある
意外に思われるかもしれませんが、身近すぎるスズメは減少が続いている鳥です。全国1000カ所で20年間、研究者と市民が行った調査では、2000〜2018年の18年間でスズメの個体数が62.1%に減少(37.9%が失われた)という結果が出ています。
さらに2008〜2022年の間は、1年あたり3.6%のペースで減少しているとされ、毎年前年の2.61%が減り、おおよそ26年間で半減すると予測されています。年間減少率3.6%は絶滅危惧種の基準3.5%を超えており、状況は危機的だと指摘されています。
原因として挙げられているのは、穀物を作る農地が野菜を栽培する畑地に変わったという農業形態の変化、気温の上昇や季節の変動が昆虫の発生パターンを変えたという気候変動の影響、そして繁殖状況の変化です。営巣に使える建物の隙間が減ったことも、都市部では現実的な要因になります。
だからといって被害を我慢する必要はありません。大事なのは、捕獲や巣の破壊ではなく「入れない・止まれない」で解決するという方向性です。保全の観点からは、建築計画時に野鳥が住みやすいように配慮することや、巣箱を設置して環境を整えることも挙げられています。スズメ用の巣箱は穴径30.82mmが好まれ、地上から約140cm〜370cmのあいだであれば設置高さを考慮する必要はないとされています。設置は繁殖が3月〜5月ごろに始まる前の秋から冬が適期で、翌年の秋には中の巣材を取り出して掃除・補修し、架け替えます。

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まとめ|スズメ対策は順番と時期で結果が決まる
最初の一歩としておすすめしたいのは、道具を買う前に「フンが落ちている場所」を書き出すことです。どこに降りて、どこへ入っているのかが見えれば、ネットを張る面とスパイクを付ける面が自動的に決まります。被害がレベル1〜2のうちに手を打てば、掃除と整頓、そして数か所の隙間ふさぎで収まることも珍しくありません。巣立ちまで6〜8週間かかる相手だからこそ、繁殖期に入る前の△の月にどれだけ動けるかが分かれ目になります。
※ 巣の撤去可否や捕獲の扱いは自治体によって運用が異なります。作業の前に、お住まいの自治体の窓口および公式サイトで最新情報をご確認ください。

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