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スズメの寿命は平均1年未満なのに最長8年1か月|標識調査が明かした短命と長寿の理由

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庭先にやってくるスズメを眺めていると、ふと「この子は何歳なんだろう」と思うことがあります。去年の春も同じ場所で餌をついばんでいた気がするけれど、あれは同じ個体なのか、それとも別の1羽なのか。調べてみると「スズメの寿命は1年」という言葉があちこちに出てきて、たった1年で死んでしまうのかと落ち込む人も少なくありません。

結論から書きます。野生のスズメの平均的な生存期間は1年未満とされる一方で、日本の鳥類標識調査では8年1か月生きた個体が記録されています。さらに飼育下では15年という数字もあります。この「1年」と「8年」と「15年」は矛盾しているのではなく、まったく別のものを測った数字です。ここを理解すると、庭のスズメの見え方が変わります。

この記事では、山階鳥類研究所の鳥類標識調査という一次データをもとに、スズメが実際に何年生きるのか、なぜ短命になりやすいのか、そして目の前の1羽と長くつきあうために何ができるのかまでを、順を追って整理します。身近な鳥14種の最長記録を並べた比較表も用意しました。

📌 押さえておきたいポイント

・野生の小鳥の生態的寿命の平均は1年未満、飼育下のスズメは15年程度という2つの数字がある
・日本の標識調査でのスズメの最長記録は8年1か月(1996年3月10日に標識、2004年4月26日に回収)
・短命の主因は、卵から巣立ち、そして最初の冬までに危機が集中するため
・寿命よりも深刻なのは、スズメが年3.5%以上のペースで減っている全国調査の結果

目次

スズメの寿命は平均1年未満、それでも最長記録は8年1か月

スズメの寿命は平均1年未満、それでも最長記録は8年1か月の解説画像

「平均1年」と「最長8年」が両方とも正しい理由

スズメの寿命を語るとき、まず押さえたいのが寿命という言葉が2つの意味で使われていることです。山階鳥類研究所は、理想的な条件下での生存期間を「生理的寿命」、自然環境下での実際の生存期間を「生態的寿命」と呼び分けています。そのうえで、飼育されたスズメは15年程度生きる一方、野生の小鳥の生態的寿命の平均値は1年未満だと説明しています。

なぜここまで差が出るのか。飼育下では天敵に襲われることも、餌が見つからない日が続くことも、雪に埋もれた朝を迎えることもありません。逆に野外では、これらすべてが日常です。同じ種でも、置かれた環境によって生存期間は10倍以上変わります。

庭で見分けるなら、こう考えてください。目の前の群れが20羽いたとして、その半分近くはその年に生まれた若い個体で、来年の同じ日に生き残っている保証はありません。一方で群れの端に、8年目の冬を越えた古参が混じっている可能性もゼロではない。平均値は「全員が1年で死ぬ」という意味ではないのです。

気をつけたいのは、ネット上で見かける「スズメの寿命は1年3か月」といった細かい数字です。出典をたどると新聞記事の見出しや孫引きに行き着くことが多く、どの集団を、どの方法で測ったのかがわかりません。数字を使うときは、必ずその条件までセットで確認する習慣をつけると、鳥の話が一段と面白くなります。

標識調査が記録した「8年1か月」の1羽

日本のスズメの最長生存記録は8年1か月です。この数字は、山階鳥類研究所が環境省の事業として実施している鳥類標識調査から出ています。吉安京子ほか(2020)「鳥類標識調査より得られた種別の生存期間一覧」(山階鳥類学雑誌 52巻1号)に、種ごとの上位2記録が一覧で掲載されています。

調査の仕組みはシンプルです。捕獲した野鳥1羽ずつに、個別の番号が刻まれた金属製の足環をつけて放します。その個体が後日ふたたび捕獲されたり、写真に撮られたり、死体で見つかったりすると、足環の番号から「いつ標識され、いつ再確認されたか」がわかる。この経過年月を全個体について計算し、種ごとに1位と2位を並べたのがこの論文です。

スズメの1位の個体は、足環番号3C-22341。1996年3月10日に標識され、2004年4月26日に再確認されました。この間、8年1か月。2位も8年0か月(足環番号3C-04644、1995年5月8日標識、2003年5月10日回収)で、上位2記録がほぼ並んでいます。

この論文には見落としやすい但し書きがあります。1位の記録には「+」の印がついていて、これは標識した時点ですでに成鳥だった、つまり実年齢は足環で追跡できた期間よりも長かったことを示します。8年1か月というのは「足環をつけてから8年1か月」であって、生まれてからの年数ではありません。実際には9年、10年を超えていた可能性があります。

飼育下15年という数字をどう受け取るか

飼育されたスズメの15年という記録は、天敵も飢えもない条件で体がどこまでもつかを示す数字です。人間でいえば健康診断の理想値のようなもので、実際に野外で暮らす個体がこの年数に届くことはまずありません。

体のつくりから見ると、スズメは全長約14.5cm、体重約25gという小さな鳥です。体が小さいほど代謝が速く、体温を保つために絶えず食べ続ける必要があります。冬の朝、羽をふくらませて丸くなっているスズメを見かけますが、あれは空気の層をつくって熱を逃がさないようにしている姿です。それでも1日食べられない日が続けば、体力はすぐ底をつきます。

具体的な場面で言うと、都市部で餌場が急に閉ざされる状況が危険です。稲刈り後の田んぼが埋め立てられた、庭木が伐採されて虫が減った、といった変化は、人間には小さく見えても25gの鳥には生死に直結します。飼育下の15年という数字は、逆にいえば「環境さえ整えばスズメはそれだけ長生きできる体を持っている」という事実でもあります。

豆知識として、この15年という数字は山階鳥類研究所が生理的寿命の例として挙げているものです。ペットとして飼えばそのくらい生きる、という意味に読み替えるのは誤りで、そもそも野鳥の捕獲・飼育は原則として法律で禁止されています。この点は記事の後半で詳しく扱います。

実は「平均1年未満」は、大半が1年以内に死ぬという意味

意外と知られていないのですが、小鳥の寿命の分布は、人間の寿命のような山型ではありません。生まれた個体の多くが最初の1年で死に、生き残ったごく一部が数年間生き続ける、という極端に偏った形をしています。平均が1年未満になるのは「みんなが1年前後で死ぬから」ではなく、「大半が1年に届かず、少数が引っ張り上げているから」です。

この構造は、山階鳥類研究所が挙げているアオジの例にもあらわれています。スズメほどの大きさの鳥でも14年3か月という記録があり、多くの個体が早く死亡する一方で、ごく限られた割合の個体が長生きすることがわかっています。平均と最長の間には、10倍以上の開きがあるわけです。

庭での見え方に翻訳するとこうなります。毎年春に「今年もスズメが来た」と感じるとき、来ているのは去年と同じ個体ではなく、去年生まれた子や、その子の兄弟である可能性が高い。群れという単位では連続していても、個体の単位ではかなりの入れ替わりが起きています。

注意点として、この偏りは繁殖戦略とセットで理解する必要があります。多くが死ぬからこそ、スズメは1シーズンに複数回の繁殖を試みます。産卵時期は主に3〜8月、年間の繁殖回数は約2回。1巣あたり4〜8個の卵を産み、そのうち5〜6卵のケースが75%を占めます。数を打つことで、失われる分を埋めているのです。

🐦 野鳥スペックカード
分類スズメ目スズメ科スズメ属(学名 Passer montanus)
全長全長約14.5cm/体重約25g
見られる季節通年(産卵時期は主に3月〜8月)
生息環境農地・住宅地など、人の暮らしに接した開けた環境
最長生存記録8年1か月(日本の鳥類標識調査/飼育下は15年程度)
よく見られる場所庭先・電線・駅前のロータリー・田んぼのあぜ

短命になりやすいのは、生まれてから1年に危機が集中するから

卵から巣立ちまで、最短30日の綱渡り

スズメの一生でもっとも死亡率が高いのは、卵の時期から巣立ち直後までです。ここを通過できるかどうかが、その後の年数を決めます。

時間の流れを追ってみます。親鳥は1日1個ずつ卵を産み、1巣あたり4〜8個。最後の卵が産まれてから10〜12日で孵化し、そこから14〜18日で巣立ちます。研究者の三上修さんは、産卵から巣立ちまでを最短でも30日ほどと見積もっています。この30日のあいだ、巣は動かせません。天候が崩れても、天敵に見つかっても、逃げる選択肢がないのです。

この期間の親鳥の働きぶりは数字で見ると圧巻です。ひなを巣立たせるまでの2週間に、親鳥は4千回以上も虫を捕らえて運びます。1日あたりに直すと300回近く。庭で親鳥が慌ただしく出入りしているのを見かけたら、それはこの往復の最中です。

知っておくと役に立つのは、この時期に巣に近づかないことです。親鳥が警戒して巣に戻れない時間が増えると、給餌の回数が落ちます。4千回という総量が少しでも削られれば、ひなの育ちに響く。観察したい気持ちはよくわかりますが、双眼鏡で離れた場所から見るのが結果的に一番よく見えます。

巣立ってから自立するまでの10日間

巣立ちは終わりではなく、もっとも危ない時期の始まりです。巣立ち直後のひなはまだうまく飛べず、地面や低い枝にとまって親を待ちます。この状態が続くのが、およそ10日間です。

キヤノンバードブランチプロジェクトの解説によれば、巣立ち後のひなは10日ほどで自立します。日本野鳥の会は、巣立ちビナが親鳥から「何が食べ物で、何が危険か」などを学習する期間として1週間から1か月という幅を示しています。この間に、餌の見つけ方も、危険の察知も、体で覚えなければなりません。

庭やベランダで判断する目安は、地面近くにいる小さなスズメが、口をあけて鳴き続けているかどうかです。親鳥が近くにいて、数分おきに餌を運んでくる光景が見られれば、それは自然な巣立ちの過程です。動かないから弱っている、と早合点する必要はありません。

やりがちな失敗は、この時期に「巣に戻してあげよう」と手を出すことです。人が近くにいる間、親鳥は警戒して寄ってきません。結果として給餌が止まり、助けるつもりの行動が飢えを招きます。具体的な対処は後半のH2でまとめます。

ネコ・カラス・小型の猛禽——地上と空の二方向から

スズメの天敵は、地上側と空側の両方から来ます。主なものはネコ、カラス、ハイタカやツミといった小型の猛禽類、そしてモズです。

それぞれ襲い方が違います。ネコは、スズメが地面を移動しているところにとびかかって捕食します。ハイタカやツミは空中から成鳥を襲い、ハイタカについては巣にいるひなを襲った記録もあります。モズは昆虫やカエルなどを主食にしていますが、小鳥を襲うこともある鳥です。

庭での見分け方としては、スズメの群れが一斉に飛び立って茂みに突っ込んだら、上空に猛禽がいる可能性が高いと考えます。逆に、地面にいた群れが低い姿勢のままバラバラに散ったときは、地上の脅威、つまりネコやイタチが近い合図です。散り方の違いを覚えておくと、何が来たのかを推測できるようになります。

豆知識として、スズメが人家のすぐそばに巣をつくるのは、猛禽が近づきにくい環境を選んでいるからだと考えられています。人間を「利用している」わけです。ただし人家周辺はネコの生活圏でもあるため、脅威を1つ避けて別の1つを引き受けている構図になります。

最初の冬を越せるかどうかが、最大の関門

巣立ちを乗り越えても、次に待っているのが最初の冬です。ヨーロッパでの標識調査から推定された数値では、秋に捕獲された当年生まれの個体が冬を越せる確率は0.49、その後の年間生存率は0.32とされています。

この2つの数字を並べると、生存曲線の形が見えてきます。若い個体の最初の冬でおよそ半分が失われ、成鳥になってからも1年ごとに3割程度しか生き残らない。8年生きるということは、この関門を8回連続で通過したという意味です。確率だけを見れば、それがどれほど少数派かがわかります。

冬に何が起きているのかというと、餌の確保です。夏は虫が主な食べ物ですが、冬は草の種や落ち穂に切り替わります。積雪でこれが埋まると、25gの体はすぐに消耗します。冬の朝、電線に並んだスズメが日の当たる側にびっしり寄っているのは、体温を保つための行動です。

注意したいのは、この数字がヨーロッパの調査に基づく推定値だという点です。日本のスズメにそのまま当てはまるとは限りません。ただし「最初の冬が最大の壁」という傾向自体は、小鳥に広く見られるものです。

🏠 スズメが8年を生きるまでに通る関門
Step1:卵の時期(最後の卵から10〜12日で孵化。1巣4〜8個、5〜6卵が75%)
Step2:巣内の育雛(14〜18日。親鳥はこの2週間に4千回以上も虫を運ぶ)
Step3:巣立ち後の10日間(うまく飛べず、地面や低い枝で親の給餌を待つ)
Step4:最初の冬(欧州の推定では当年生まれの越冬生存率は0.49)
その先へ 成鳥後も年間生存率は0.32の推定。これを8回続けた個体が、あの8年1か月の記録です

身近な鳥14種の最長生存記録を並べてみた

身近な鳥14種の最長生存記録を並べてみたの解説画像

スズメは8年1か月、ハシブトガラスは19年4か月

同じ論文には、日本で記録された289種の生存期間が並んでいます。そこから、庭や公園でよく見かける14種を抜き出して表にしました。数字はすべて、標識してから最後に再確認されるまでの経過年月です。

鳥の名前 最長生存期間(1位の記録) 記録の性質
ハシブトガラス 19年4か月
アオジ 14年3か月
ヒヨドリ 10年4か月
キジバト 10年0か月
ハクセキレイ 9年1か月
ウグイス 9年0か月
ツバメ 8年11か月 +(実年齢はさらに上)
イワツバメ 8年11か月
スズメ 8年1か月 +(実年齢はさらに上)
シジュウカラ 7年11か月 +(実年齢はさらに上)
カワラヒワ 7年9か月
ムクドリ 7年7か月
メジロ 6年10か月 +(実年齢はさらに上)
ニュウナイスズメ 3年2か月

※野鳥の教科書調べ。吉安京子ほか(2020)「鳥類標識調査より得られた種別の生存期間一覧」(山階鳥類学雑誌 52: 21-48)の各種1位記録より作成。「+」は標識時にすでに成鳥だった個体で、実年齢は表の期間より長い。

体が大きい鳥ほど長い、という傾向がはっきり出ている

表を上から眺めると、ある傾向に気づきます。上位のハシブトガラスやキジバトは体の大きな鳥で、下位に並ぶのはスズメやメジロといった小型の鳥です。体サイズと生存期間には、ゆるやかな相関があります。

理由は代謝の速さにあります。小さな鳥ほど体重あたりの熱の逃げ方が速く、それを補うために絶えず食べ続けなければなりません。餌が途切れたときの余裕が小さいぶん、危機に弱くなります。一方、体の大きな鳥は蓄えが効き、天敵に襲われる機会そのものも減ります。

ただし例外もあります。表の2番目、アオジの14年3か月がそれです。アオジはスズメと同じくらいの大きさの小鳥ですが、ハシブトガラスに次ぐ記録を持っています。体の大きさだけで決まるわけではなく、越冬地の環境や暮らし方も効いてくるということです。

この表を庭で使うなら、こう考えると面白くなります。餌台に来る顔ぶれのうち、キジバトやヒヨドリは同じ個体が何年も通っている可能性がある。一方でスズメの群れは、数年単位で構成メンバーが入れ替わっている。同じ「常連」でも、時間の重みが違うのです。

この数字は「寿命そのもの」ではない、という但し書き

表の数字を扱うときに、必ずセットで覚えておきたい注意点があります。論文自体が、これらのデータは「必ずしもその種の寿命を表すものではない」と明記しているのです。

理由は2つあります。1つは、生まれてから最初に標識されるまでの期間が不明な個体が含まれること。もう1つは、最後に回収されたあと、その個体がさらに何年生きたかがわからないことです。足環で追えるのは「標識から回収まで」の区間だけで、その前後は闇の中にあります。

具体例で言えば、スズメの1位の個体は1996年3月10日の標識時点ですでに成鳥でした。仮に前年生まれだとしても、2004年の回収時点で9年目に入っていた計算になります。しかも回収後にさらに生き延びた可能性もある。8年1か月は、確実に生きたことが証明できた最低ラインなのです。

もう1つ知っておきたいのが、この調査が長期間の積み重ねだという点です。1961年から2017年までに回収記録として整理されたのは289種・約4万例。全国のボランティア調査員(2019年時点で約450名)が地道に記録してきた結果です。山階鳥類研究所の解説ページで、この調査の背景を読むことができます。

📌 押さえておきたいポイント

標識調査の「最長生存期間」は、足環をつけてから最後に確認されるまでの期間です。生まれてからの年数でも、死ぬまでの年数でもありません。スズメの8年1か月は、確実に生きたと証明できた最低ラインだと受け取るのが正確です。

目の前の1羽が何歳か、庭で見分けられる?

幼鳥はくちばしが淡色、頬の黒斑が薄い

年齢そのものを外見から言い当てることはできませんが、その年に生まれた幼鳥かどうかなら、庭からでも見分けられます。決め手はくちばしと頬です。

成鳥はくちばしが黒く、頬にはっきりした黒い斑があり、頭から背にかけて赤茶色をしています。対して幼鳥は、くちばしが肉色で縁が黄色っぽく、頬の黒い斑はかすかにしか見えません。全体に褐色味を帯びていて、成鳥より色が淡い印象になります。バードリサーチの「子雀ウォッチ」でも、幼鳥は嘴が淡色で成鳥より目立たない色をしている点が識別の手がかりとして示されています。

実際に庭で試すなら、群れが地面で餌をついばんでいる時が狙い目です。横顔が見えたら、頬の黒い斑がくっきり境界を持っているか、ぼんやりにじんでいるかを比べます。数羽並んでいると差がわかりやすく、単独で見るより格段に判別しやすくなります。

注意点として、キヤノンバードブランチプロジェクトの解説では「頬の黒斑が薄いほど若い」とされる一方、秋になると成鳥との区別が難しくなることも指摘されています。見分けに挑戦するなら、幼鳥がまだ幼い5月から7月ごろが向いています。

「毎年同じスズメが来ている」という思い込み【失敗パターン1】

庭の観察でもっとも多い勘違いが、来ているスズメを同一個体だと思い込むことです。スズメは雌雄同色で個体差も小さく、外見だけでは1羽1羽を区別できません。

この思い込みが起きる原因は、群れの行動パターンが安定していることにあります。毎朝同じ時刻に同じ電線にとまり、同じ順序で地面に降りてくる。人間の目にはそれが「いつもの子」に見えますが、実際には生存率のデータが示す通り、1年ごとにメンバーの多くが入れ替わっています。

対策はシンプルで、個体ではなく群れの規模と行動を記録することです。「4月12日、朝7時、7羽」といった程度のメモを続けると、季節ごとの増減や、幼鳥が混じり始める時期が見えてきます。個体を追うより、はるかに実りのある観察になります。

関連して、スズメの雌雄を見分けようとして行き詰まる人も少なくありません。外見で性別を判定するのが難しい理由は、こちらの記事で詳しく整理しています。

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足環をつけたスズメを見かけたら

ごくまれに、脚に金属製の足環をつけたスズメに出会うことがあります。これは鳥類標識調査で標識された個体で、その番号を報告することが、この記事で紹介してきたデータそのものを支えています。

報告の仕組みはこうです。調査は山階鳥類研究所と全国のボランティア調査員が担っていますが、回収情報については一般の人からの協力も集めています。望遠鏡や双眼鏡での観察、写真撮影、衰弱した鳥の保護、死体の回収といったかたちで足環番号が確認されると、その1件が生存期間のデータに加わります。

庭で見つけたときの現実的な対応は、写真を撮ることです。足環の番号は小さく、肉眼では読み取れません。カメラで脚のあたりを何枚か撮っておき、番号が判読できたら山階鳥類研究所に連絡する、という流れになります。生きている個体を捕まえる必要はありません。

豆知識として、8年1か月の記録が残せたのは、この仕組みが1961年から途切れずに続いてきたからです。1羽の記録が数十年後に「日本記録」として残る。庭先の1枚の写真にも、その可能性があります。

Q. スズメの年齢は、鳴き声や動きからも推測できますか?
A. 巣立ち直後のひなであれば、翼を細かく震わせながら口をあけて鳴き続ける「餌ねだり」の仕草でわかります。ただしこの行動が見られるのは巣立ちから10日ほどの短い期間だけで、それを過ぎると成鳥と同じ動きになります。1歳と3歳を仕草で区別する方法は、いまのところありません。

寿命の話より重い、20年で減り続けているという事実

106種のうち16種が急減、その中にスズメが入っている

スズメについて調べていると、寿命より深刻な数字に行き当たります。環境省の生物多様性センターと日本自然保護協会が実施している「モニタリングサイト1000里地調査」の2005-2022年度とりまとめ報告書です。

この調査は全国325か所のサイトで18年間続けられました。里地調査で記録された鳥類286種のうち、出現頻度が低い種を除いた106種を解析したところ、そのうち16種、割合にして15%の記録個体数が、年間3.5%以上のペースで急速に減少していました。この16種のなかに、スズメが含まれています。

年3.5%という数字がどれくらいかというと、10年あたり30%の減少にあたります。報告書は、種全体についてこの傾向が当てはまる場合、環境省レッドリストの判定基準の一つを満たしうる数値に相当すると述べています。どこにでもいる鳥が、絶滅危惧種の判定に使われる減少率で減っている、ということです。

注意点として、報告書はこの結果がモニタリングサイト1000の調査サイトに限ったものであることも明記しています。この結果のみで全国を対象とするレッドリストの判定が下されるわけではありません。それでも、18年・325か所という規模のデータが示す方向は無視できません。詳細は環境省の報道発表資料から報告書本体を確認できます。

2015年以降、農地の鳥は年7.4%のペースで減っている

報告書のなかで、さらに踏み込んだ数字が示されています。里地調査に加えてモニタリングサイト1000の森林・草原調査のデータも合わせて解析したところ、2015年以降、スズメやヒバリ等の「農地の鳥」の記録個体数の減少率は1年あたり7.4%だったというものです。

ここでいう農地の鳥とは、繁殖期に開けた環境(農地、草地、湿地、池、湖、川を含む)のみを利用する鳥類を指します。具体的にはカルガモ、カワセミ、スズメ、セグロセキレイ、ハクセキレイ、ヒバリ、ムクドリの7種です。一方で、森に生息する鳥類は増加傾向にあることも同時に示されました。

この対比が示しているのは、減っているのは鳥全般ではなく、開けた環境に依存する鳥だということです。スズメが暮らしてきたのは、人が耕した田畑と、その周りの木造家屋でした。その環境が変わったぶんだけ、スズメの居場所が狭くなっている。

報告書は、これらの減少の背景として、管理放棄された里地里山の増加や気候変動(地球温暖化)が関わっている可能性を指摘しています。庭に餌台を置くといった個人の工夫だけでは届かない規模の変化が、背後で進んでいるということでもあります。

1990年比で半分、という推計と1800万羽という数字

個体数そのものの推計も出ています。研究者の三上修さんは、日本本土の環境別面積を地理情報システムのデータから求め、2008年時点の繁殖期成鳥数をおよそ1800万羽、推定巣数をおよそ900万巣と算出しました。

減少幅については、複数のデータをもとに幅を持たせた推計が示されています。低く見積もった場合で1990年比の50%程度、高く見積もった場合で20%程度。三上さん自身は、当時の半分程度にはなっていると推測しています。

1800万羽と聞くと多く感じるかもしれません。ただし日本の人口が1億人を超えることを思えば、人間6〜7人に対してスズメ1羽という計算になります。駅前や商店街でいつも見かける鳥が、実はその程度の数しかいないのです。

知っておくと視点が変わるのは、減少の把握そのものが難しいという事実です。ありふれた鳥ほど誰も数えず、気づいたときには大きく減っている。モニタリングサイト1000のような長期調査が続けられている意味は、まさにここにあります。

個体群を保つのに必要なのは「2羽ちょっと」のひな

減少の理由を繁殖の側から見ると、はっきりした境界線が見えてきます。三上さんのシミュレーションによれば、スズメの個体群が維持されるには、調査の時期に親鳥が2羽ちょっとのひなを連れている必要があります。

ところが実際の観察結果は、環境によって違いました。巣立ち後およそ10日の時点で親鳥が連れていた子スズメの数は、商業地で1.41羽、住宅地で1.79羽、農村地で2.03羽。維持に必要とされる水準に届いているのは農村地だけで、都市部ほど数が少なくなっています。

都市部で数が伸びない理由としては、餌となる虫の不足のほか、営巣場所の不足や巣の狭さが影響していると考えられています。瓦屋根の隙間のような、スズメが好んで使ってきた巣の場所が、現代の建物では減っているのです。

注意したいのは、この差が「都会のスズメは子育てが下手」という話ではないことです。同じ鳥が、環境の条件によって残せる子の数を変えている。庭やベランダの環境を少し整えることに意味があるとすれば、この数字の側に働きかけられる可能性があるからです。

弱ったスズメや巣立ちビナに出会ったときの正解

拾わない。まずその場を離れる

地面にいる小さなスズメを見つけたときの正解は、拾わずにその場を離れることです。日本野鳥の会は、巣立ちビナについて「その場を去る方がよいでしょう」と案内しています。

理由は親鳥の行動にあります。親鳥は人がヒナの近くにいると警戒して近づけません。人が見守っているつもりの時間は、親鳥にとっては給餌ができない時間です。同会は、人間によって育てられたヒナが自然の中で生きていけるとは限らないことも指摘しています。

具体的な判断としては、まず10〜20mほど離れて、5分ほど様子を見ます。親鳥が餌を運んできたら、それは通常の巣立ちの過程です。歩道の真ん中など危険な場所にいる場合を除き、手を出す必要はありません。

覚えておきたいのは、巣立ちビナが自然の中で学ぶ期間の長さです。日本野鳥の会は、親鳥との1週間から1か月の期間に「何が食べ物で、何が危険か」などを学習する必要があると説明しています。人の手はこの学習を肩代わりできません。

ネコやカラスが心配なときの、唯一の手出し

それでも心配な状況はあります。日本野鳥の会は、ネコやカラスに食べられることが心配な場合について「ヒナを近くの茂みの中に移しましょう」と案内しています。親鳥は姿が見えなくても、ヒナの声で気づくことができるためです。

ここで大事なのは「近くの」という部分です。移す先は、親鳥の行動範囲から外れない、数mの範囲の茂みや低木の陰にします。家に持ち帰る、公園の別の場所に移す、といった距離を取る行動は、親子を引き離すことになります。

実際の手順としては、そっと両手ですくって最寄りの茂みに置き、すぐにその場を離れます。長く手に持っていたり、様子を見ようと近くに留まったりすると、親鳥が戻れません。移したあとは、離れた場所から確認します。

ケガをしているものや、希少種など、そのままにしておけないと判断される場合については、同会は自治体などに相談するよう案内しています。判断に迷ったら、自分で抱え込まず、お住まいの都道府県の野生鳥獣担当窓口に連絡するのが確実です。

拾って持ち帰ってしまう【失敗パターン2】

もっとも起きやすく、もっとも取り返しがつきにくいのが、巣立ちビナを保護のつもりで持ち帰ってしまうケースです。

この失敗が起きる原因は、巣立ち直後のひなの見た目にあります。まだうまく飛べず、地面でじっとしているため、弱っているように見えるのです。実際には親鳥が近くにいて、数分おきに餌を運んでいることが多い。人が見ている間だけ親鳥が近寄らないため、「親がいない」と誤って判断してしまいます。

対策は、判断の順序を決めておくことです。ひなを見つけたら、触る前に離れて5分観察する。親鳥が来れば手を出さない。危険な場所なら近くの茂みへ移す。ケガをしていれば自治体に相談する。この4段階を先に覚えておけば、現場で迷いません。

加えて、法律の面でも自己判断での持ち帰りは避ける必要があります。この点は次のH3で扱います。庭やベランダでの関わり方全般については、餌やりのルールをまとめたこちらの記事も参考になります。

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捕獲・飼育は原則禁止。愛玩目的の許可は下りない

野鳥を捕まえて飼うことは、鳥獣保護管理法(正式名称は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」)で原則として禁止されています。スズメも例外ではありません。

環境省の説明によれば、狩猟により捕獲する場合を除いて、原則として野鳥の捕獲、殺傷又は採取が禁止されています。許可が出るのは、生態系や農林水産業に対して鳥獣による被害が生じている場合や、学術研究上の必要性が認められる場合など、限られたケースです。

ペットとして飼いたいという目的についても、環境省は明確な方針を示しています。平成23年9月の改正により、愛玩飼養のための捕獲については、原則として許可しないことと明記されました。かつては平成19年からメジロ1種のみ、一世帯1羽に限り捕獲及び飼養できることとなっていましたが、その後の改正で原則許可しない対象となっています。

したがって、飼育下で15年という数字は「そう飼えばいい」という話ではなく、あくまで生理的な限界を示す参考値です。制度の詳細は環境省「愛玩飼養・鳥獣等の輸入規制」のページで確認できます。

⚠️ 注意:必ず知っておきたいこと

地面にいる巣立ちビナは、弱っているのではなく巣立ちの途中であることが多く、日本野鳥の会はその場を去るよう案内しています。ネコやカラスが心配な場合に限り、近くの茂みへ移すのが同会の示す対応です。ケガをしているなど、そのままにしておけないと判断される場合は自治体などに相談してください。なお、野鳥の捕獲・飼育は鳥獣保護管理法で原則禁止されており、愛玩飼養のための捕獲は原則として許可されません。

庭に来る1羽を、1年でも長く見守るためにできること

水場は水深を浅く。飲み水と水浴びを兼ねる場所になる

庭でできることのなかで、季節を選ばず効果があるのが水場です。餌と違って、水は一年を通して必要になります。

スズメが水を必要とする理由は2つあります。飲むためと、羽の手入れのためです。羽についた汚れや寄生虫を落とす行動は、飛翔性能を保つうえで欠かせません。冬でも晴れた日には水浴びをする姿が見られます。

設置の具体策としては、浅い皿に水を張り、地面から少し高い、周囲が見渡せる場所に置きます。深いと入れず、ネコが隠れられる茂みのすぐ横だと危険です。水は毎日入れ替え、皿はこすり洗いします。放置した水場は、かえって鳥どうしの病気の受け渡し場所になります。

水場のつくり方と、スズメが水浴びと砂浴びを両方する理由については、こちらの記事で寸法まで含めて解説しています。

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巣箱は入口の直径3.0cmが分かれ道

もう1つ、繁殖の側に働きかけられるのが巣箱です。都市部で子スズメの数が伸びない理由の1つが営巣場所の不足であることを踏まえると、巣箱には具体的な意味があります。

スズメ向けの巣箱で決め手になるのは、入口の直径です。3.0cmが基準になります。これより小さいとスズメが入れず、大きすぎると別の鳥やムクドリに使われたり、天敵が入り込みやすくなったりします。

設置のポイントは、人通りが少なく、直射日光や雨風が当たりにくい壁面や枝を選ぶことです。設置後はしばらく近づかず、鳥が警戒を解くのを待ちます。中を覗き込む行為は、放棄の原因になります。

注意点として、巣箱をかけたからといって必ず使われるわけではありません。使われなくても失敗ではなく、翌シーズンに使われることもあります。スズメの巣箱の設計と設置については、こちらの記事にまとめてあります。

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住まいのタイプ別、無理のない関わり方

できることは住環境によって変わります。自分の条件に合う方法を1つ選ぶのが長続きのコツです。

集合住宅のベランダ暮らしなら、水場も餌台も置かないという選択が現実的です。糞や鳴き声が階下や隣室の負担になりやすく、管理規約で禁じられていることもあります。この場合は、近所の公園や川沿いに双眼鏡を持って出る「通う観察」に切り替えます。幼鳥が見分けやすい5月から7月なら、群れに混じる子スズメを探すだけで十分楽しめます。

庭のある戸建てなら、水場が第一候補です。設置と手入れが単純で、季節を選ばず、近隣トラブルにもなりにくい。慣れてきたら巣箱を1つ足す、という順番が無理がありません。

餌台については、条件を絞って考えます。日本野鳥の会は、餌付けを無条件に勧めてはいません。取り入れるとしても、自然の餌が乏しくなる真冬に限り、量を絞り、餌台を清潔に保つといった条件を守ることが前提です。年間を通じた常設は避けるのが無難です。

🗓 観察カレンダー(子スズメに出会いやすい時期)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◎=よく見られる(もっとも観察しやすい時期) ○=見られる △=まれに見られる / 産卵時期は主に3〜8月。バードリサーチの子雀ウォッチは4月から9月の親子関係を記録対象としている

まとめ

🐦 この記事の結論

野生のスズメの平均生存期間は1年未満ですが、標識調査での最長記録は8年1か月です。庭では個体を追うより、群れの数と幼鳥の割合を記録してみてください。

✅ 要点チェック
  • 平均1年未満:大半が最初の1年で失われる
  • 最長8年1か月:足環で確認できた最低ライン
  • 飼育下15年:生理的寿命を示す参考値
  • 年3.5%以上減:全国調査での急減種の1つ
  • ヒナは拾わない:まずその場を離れて見守る

スズメの寿命をめぐる数字は、平均1年未満、最長8年1か月、飼育下15年と、ばらばらに見えて実はそれぞれ違うものを測っています。どれか1つを覚えるより、「何を測った数字か」をセットで持っておくほうが、庭の1羽を見る目が確かになります。最初の一歩としておすすめしたいのは、明日の朝、庭や通勤路で見かけたスズメの数を1回だけ数えてメモすることです。数えた瞬間から、ありふれた鳥が観察対象に変わります。

※本記事の生存期間・個体数のデータは、山階鳥類研究所の鳥類標識調査および環境省・日本自然保護協会の調査報告に基づきます。最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

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この記事を書いた人

野鳥の教科書編集部です。テーマに関する基礎知識や選び方を、公式情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、変更があれば更新します。

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