公園のベンチでパンをちぎっていると、足元に鳩がどんどん集まってくる。首をかしげながら見上げられると、つい何かあげたくなりますよね。ベランダの手すりにとまった鳩を見て「お腹が空いているのかな」と気になった人もいるかもしれません。
結論からお伝えすると、鳩に餌をあげるのは基本的に控えるのがおすすめです。街でよく見るドバトは一年中子育てができる鳥で、人がくれる餌は鳩の数を増やし、フン害や巣づくりのトラブルを周りに広げるきっかけになります。環境省も、被害が出ている地域では「みだりに給餌を行わない」よう啓蒙することを求めています。
この記事では、餌をもらった鳩に何が起きるのか、ドバトとキジバトの見分け方、鳩が本来食べているもの、鳥獣保護管理法との関係、そして「それでも冬に野鳥へ餌をあげたい」という人のためのルールまで、野鳥好きの目線でまとめました。餌をあげる前に、ぜひ一度読んでみてください。
・鳩への餌やりを控えたほうがよい理由と、餌をもらった鳩に起きること
・ドバトとキジバトを首元・翼・鳴き声で見分けるコツ
・卵やヒナがいる巣に関する鳥獣保護管理法の注意点と相談先
・冬に野鳥へ餌をあげる場合の時期と、鳩を呼ばない餌台の置き方
鳩に餌をあげても大丈夫?まず押さえたい答え

答えは「基本的に控える」。野鳥の団体も勧めていません
最初に答えを言ってしまうと、鳩に限らず野鳥への餌やりは、基本的にしないほうがよいというのが野鳥の保護に関わる団体の考え方です。日本野鳥の会茨城県のFAQでは、野鳥に餌を与えてもよいかという問いに対して「基本的にお勧めできません」と答えています。
理由として挙げられているのは、大きく分けて三つです。多くの野鳥が給餌に依存すると、集団感染のリスクが高まること。湖や沼での給餌は水の富栄養化を進め、生態系に悪影響を与えること。そして春や夏まで餌を与え続けると、野鳥が自分で餌をとる力が落ち、自然の中で生きていくのが難しくなることです。
鳩の場合、この影響がわかりやすく表れます。鳩は群れで暮らし、人に慣れているので、一度餌をもらえた場所をすぐに覚えます。同じ時間に同じ人が来ると、どこからともなく何羽も舞い降りてくるのはそのためです。
なお、同じFAQでは、与えるとしても「与えるとしても餌不足になる12月から2月くらいまでです」と時期をはっきり区切っています。これは、食べ物が少なくなる冬に小鳥が生き抜く手助けをする、という考え方です。一年中いつでも気軽に餌をあげてよい、という意味ではない点は覚えておきましょう。
「かわいそう」から始まる餌やりが、鳩の暮らしを変えてしまう
餌やりは善意から始まることがほとんどです。ただ、その善意が鳩の行動と数を、人の都合で変えてしまうことがあります。
環境省の資料では、ドバトは人為的な影響を受けて生息数を増やし、その被害が「個人生活、工場、交通機関、農業等各方面に及んで」いると説明されています。人が餌を出す場所があると、鳩はそこを暮らしの拠点にしやすくなり、周りの建物で巣づくりや繁殖が始まります。
たとえば駅前のロータリーや公園の広場で、決まった人がベンチに座ると一斉に鳩が集まってくる光景を見たことはないでしょうか。餌をもらえる時間がわかっている鳩は、その周りの屋根や看板の上で待つようになります。すると待っている間のフンが、ベンチや手すり、通路に落ち続けることになります。
見落としがちなのは、困るのが餌をあげた本人ではないという点です。餌をあげた人は用が済めば帰りますが、フンの掃除や鳴き声、巣づくりの影響を受けるのは、その場所を管理する人や近くに住む人です。「少しだけなら」という気持ちが積み重なると、地域の困りごとに育ってしまうのが鳩への餌やりの難しいところです。
環境省は、被害が出ている地域で「みだりに給餌を行わない」よう啓蒙することを求めています。公園や駅前などでは、管理者や自治体が餌やりに関するルールを設けている場合もあります。鳩のフンや羽には素手で触れず、触れてしまったらよく手を洗うなど、衛生面にも気を配りましょう。
公園・駅前・ベランダ、場所ごとに考えたいこと
どこであっても鳩への餌やりは控えるのが基本ですが、場所によって迷惑のかかり方が少しずつ違います。自分がいる場所に当てはめて考えてみてください。
公園は、子どもからお年寄りまで多くの人が使う場所です。鳩が集まるとベンチや遊具にフンが落ち、お弁当やお菓子を持った子どもに鳩が寄ってくることもあります。公園によっては管理者が掲示で餌やりを控えるよう呼びかけているので、看板を一度確認してみましょう。
駅前や商店街は、環境省の資料にある「交通機関」への被害に直結しやすい場所です。駅は鳩が巣を作りやすい場所のひとつでもあり、餌が加わると住みつく条件がそろってしまいます。
意外と迷うのがベランダです。「自分の家だから自由でしょう」と思いがちですが、鳩は餌場の近くで巣を作れる場所を探します。自分のベランダで餌を出した結果、隣の家の室外機まわりに巣ができる、というように影響が隣近所へ広がることがあります。集合住宅なら、管理規約で餌やりが禁止されていないかも確認しておくと安心です。
地域によっては、条例などで野鳥や鳩への餌やりにルールを設けていることもあります。法律や条例との関係は、下の記事でも詳しくまとめています。

ベランダの手すりにスズメが並んでいるのを見て、思わずご飯粒を置きたくなる。庭に来るシジュウカラのために、ヒマワリの種を買ってこようか迷っている。近所の公園で毎朝…
人からもらう餌で、ドバトの数が増えていく仕組み
| 分類 | ハト目ハト科(野生化したカワラバトの家畜化種) |
| 全長 | 体長30~35cm・体重300g前後 |
| 見られる季節 | 一年中(渡りをしない留鳥) |
| 生息環境 | 都市の中心部から周辺部、ビル街、商業地、農村 |
| 鳴き声 | 「クックー」「グルグル」「クックック」と喉の奥から鳴らす |
| よく見られる場所 | 人家、駅、橋の下などの建造物まわり |
ドバトは季節を問わず子育てができる鳥
街でよく見るドバトは、季節を問わず一年中繁殖できる鳥です。ここが、春から夏にかけて子育てをする多くの野鳥との大きな違いです。
バードリサーチの解説などによると、ドバトはつがい制で、抱卵期間は約16日、ヒナは孵化から28~35日で巣立ちます。繁殖は年7~8回におよぶとされ、条件さえそろえば一年を通して卵を産み、ヒナを育て続けることができます。
具体的に想像してみると、ひと組のつがいが巣立ちを見送ったころには、もう次の子育てに入っている、というサイクルです。寿命は10~20年とされ、実質的には約10年ほどと言われています。長く生きる鳥が一年に何度も子育てをするわけですから、餌が十分にある場所では数が増えやすいのも納得できます。
気をつけたいのは、「冬だから巣はないだろう」という思い込みです。ドバトは寒い時期でも繁殖することがあるので、ベランダの隅や室外機の裏に巣材が集まっていたら、季節に関係なく中の様子に注意しましょう。卵やヒナがいる巣の扱いには法律上の決まりがあるので、後半の鳥獣保護管理法のパートで詳しく説明します。
ピジョンミルクがあるから、餌さえあれば繁殖が続く
ドバトが季節を問わず子育てできる秘密は、「ピジョンミルク」にあります。親鳥が自分の体で作る栄養物で、これをヒナに与えて育てます。
多くの小鳥は、ヒナのために昆虫などを探して何度も巣に運びます。そのため、虫が増える春から夏に子育ての時期が集中します。一方ドバトは、親鳥が分泌するピジョンミルクでヒナを育てられるので、季節ごとの虫の量に左右されにくいのです。バードリサーチの解説でも、つがい制で一年中繁殖できるのはピジョンミルクによって実現している、と説明されています。
ここで大事になるのが、親鳥自身の食べ物です。ピジョンミルクを作るには、親鳥がしっかり食べられることが前提になります。つまり、人がくれるパンや穀物は、親鳥の栄養源になり、そのまま子育ての回数を支える燃料になってしまうわけです。
「ヒナにはあげていないから大丈夫」と考える人もいますが、鳩の場合は親鳥に餌をあげることが、そのまま繁殖を後押しすることになります。餌やりの影響が数に表れやすいのは、このしくみがあるからです。
強い帰巣本能と人慣れで、同じ場所に戻ってくる
ドバトは帰巣本能が強く、一度「ここは安心して過ごせる」「餌がある」と覚えた場所に繰り返し戻ってきます。
もともとドバトは、人に飼われていたカワラバトが野生化した鳥です。そのため人に慣れていて、近づいても逃げないことが多いのが特徴です。群れで生活し、渡りをしない留鳥なので、季節が変わっても同じ地域にとどまります。さらに、三方向を囲まれたような、外から見えにくい場所を好む習性もあります。
この習性を住まいに当てはめると、壁と手すりに囲まれたベランダの一角や、室外機と壁のすき間などは、ドバトにとって居心地のよい場所になりやすいと言えます。そこに餌まであれば、休む場所と食べる場所が近くにそろい、居つく理由がはっきりしてしまいます。
注意したいのは、帰巣本能が強い鳥は、少し追い払ったくらいでは戻ってきやすいという点です。「餌をあげるのをやめたのに、まだ来る」というのはよくあることで、覚えた場所を忘れてもらうには、餌をなくすだけでなく、フンの掃除や物理的な対策も組み合わせる必要があります。
実は、餌を出さないだけで鳩が減ってきた場所がある
意外と知られていないけれど、鳩の数を左右する大きな要因は「人が餌を出すかどうか」です。特別な機械や道具よりも先に、餌の量が数を決めていることがあります。
バードリサーチの解説によると、東京の寺社ではドバトが減少傾向にあるそうです。理由として挙げられているのは、境内での餌の販売を自粛したことと、オオタカやハヤブサといった猛禽類による捕食です。昔は寺社で鳩の餌を売っていて、参拝客が与えるのが当たり前の光景でしたが、それが見直された結果、鳩の数にも変化が表れているわけです。
ここから読み取れるのは、「鳩が多いのは鳩のせい」ではなく、「鳩が多い場所には人が用意した食べ物がある」ということです。餌やりをやめる人が増えれば、その場所の鳩は少しずつ落ち着いた数に戻っていく可能性があります。
ただし、「猛禽類を呼べば解決する」と考えるのは早合点です。猛禽類は人の思いどおりに来るものではありませんし、住宅地で狙って呼べるものでもありません。私たちが今日からできるのは、まず餌を出さないこと。地味ですが、いちばん確実な一歩です。
ドバトとキジバト、目の前の鳩はどっち?

ひとくちに「鳩」と言っても、街で見かける鳩には主にドバトとキジバトの二種類がいます。餌やりの影響の出方も違うので、まずは見分けられるようになっておきましょう。以下は、図鑑や解説サイトの情報を整理した比較表です。
| 比較項目 | ドバト(カワラバト) | キジバト(ヤマバト) |
|---|---|---|
| 見た目の特徴 | 青灰色が典型、白・黒・茶色・まだらなど個体差が大きい | ブドウ色で翼にウロコ模様、尾の先端が白い |
| 首元 | 網模様はなく、緑や青色に光る毛 | 青と黒の網模様(縞模様) |
| 鳴き声 | 「クックー」「グルグル」と喉の奥から | 「デデッホーホーホー」「ポッポー」 |
| 大きさ | 体長30~35cm、胸が張った「鳩胸」 | 体長33cm、ドバトより小ぶりでスリム |
| 行動 | 群れで生活、人に慣れて逃げにくい | 単独かペア、警戒心が高い |
| よく見る場所・巣 | 駅・橋の下・人家など建造物に営巣 | 明るい雑木林を好み、樹上に営巣(都市部にもいる) |
野鳥の教科書調べ(野鳥図鑑・バードリサーチ・解説記事の情報をもとに作成)
首元と翼の模様を見れば、ほぼ迷わない
ドバトとキジバトを見分けるとき、いちばん確実なのは首元と翼の模様です。色は個体差が大きいので、模様を優先して見るのがコツです。
キジバトは翼にウロコのような模様があり、首元には青と黒の網模様があります。体全体はブドウ色と表現される落ち着いた色合いで、尾の先端が白く見えるのも特徴です。一方、ドバトの翼にはウロコ模様がなく、飛んだときなどに黒い横帯が見えることが多いです。首のまわりには網模様がなく、緑や青色に光る毛が生えています。
実際に庭や公園で見るときは、まず首の横に目を向けてみてください。縞のような網模様があればキジバト、光の加減で緑や紫っぽくきらめいていればドバトです。次に翼を見て、背中側にウロコ状の模様が並んでいればキジバトと判断できます。ドバトは足が赤色で、くちばしは暗色で先端が淡い色をしています。
注意したいのは、ドバトの体の色です。青灰色の典型的な個体のほかに、白、黒、茶色、まだら模様などさまざまな色の個体がいるので、「灰色じゃないからドバトではない」と決めつけるのは間違いのもとです。色より模様、というルールで見ると迷いにくくなります。
「クックー」か「デデッホーホーホー」か、声で聞き分ける
姿が見えなくても、鳴き声で二種類はかなりはっきり聞き分けられます。朝、どこからともなく聞こえる鳩の声がどちらなのか、耳をすませてみましょう。
キジバトは「デデッホーホーホー」「ゼーゼーポッポー」「ポッポー」と聞こえる声で、長めの間隔をあけて繰り返し鳴きます。一方ドバトは「クックー」「グルグル」「クックック」というように、喉の奥で鳴らすようなこもった声を出します。
聞き分けのポイントは、声の「リズム」と「響き」です。キジバトは節のあるリズムで、遠くまでよく通ります。住宅地の電線や庭木の上から聞こえてくることもあります。ドバトの声は低くこもっていて、駅のホームや高架下、ベランダの手すりなど、建物のそばで群れの中から聞こえてくることが多いです。
豆知識として、声だけで判断するときは、周りの環境もあわせて考えるのがおすすめです。群れがいる場所で「グルグル」と聞こえたらドバトの可能性が高く、木立の中で節のある声が聞こえたらキジバトを疑ってみましょう。鳴き声を覚えておくと、ベランダに来ている鳩がどちらかを、カーテンを開ける前に見当をつけられるようになります。
群れのドバト、ペアのキジバト。行動の違いと餌やりの関係
ドバトとキジバトは、見た目だけでなく暮らし方も違います。この違いを知っておくと、餌やりの影響がどう表れるのかがイメージしやすくなります。
ドバトは群れで生活し、人に慣れているので、近づいても逃げないことが多い鳥です。かつて家畜化されていた鳥で、集団で行動する習性が残っていると言われています。一方キジバトは、別名をヤマバトといい、元々は野生の鳥です。単独かペアで行動し、大きな群れにはなりません。人に慣れていないため、人や他の動物への警戒心が高いのが特徴です。
具体的な場面で考えると、公園で餌をまいたときに一斉に集まってくるのは、ほとんどがドバトです。キジバトは明るい雑木林を好みますが、都市部でもよく見かけ、庭先で一羽か二羽が静かに地面をつついている姿を見ることがあります。キジバトは樹上に巣を作り、孵化後15日で巣立ちを迎え、年8回繁殖することもあります。繁殖期は4~6月が中心ですが、一年中繁殖できる鳥です。
覚えておきたいのは、キジバトもドバトも繁殖力の高い鳥だということです。「キジバトは群れにならないから少しくらい平気」と考えがちですが、北海道では夏鳥として渡来する個体がいるなど、地域によって暮らし方も異なります。どちらの鳩であっても、餌で呼び寄せないという考え方は同じです。
鳩は本来なにを食べて、餌なしでどれくらい平気?
穀物や種子から、虫やミミズまで食べる雑食性
「鳩はパンが好物」というイメージがあるかもしれませんが、本来の鳩は、自分でいろいろなものを探して食べる雑食性の鳥です。
野鳥図鑑では、ドバトは雑食性で「穀物、種子、パンくず、果実、昆虫など様々なものを食べ」ると紹介されています。ほかにもミミズやカタツムリなどを食べることが知られていて、都市部では人間が捨てた食べ物やゴミからも採食します。
公園の芝生や道ばたで、鳩が首を前後に振りながら歩き、地面を細かくつついている姿を見たことがあると思います。あれは、落ちている草の種や小さな虫などを探しているところです。誰も餌をあげていない場所でも、鳩は自分の力でちゃんと食べ物を見つけています。
知っておきたいのは、雑食性だからといって「何をあげてもいい」わけではないことです。人の食べ物は味つけされていたり、鳩が本来口にしないものが含まれていたりします。そもそも鳩は自分で食べ物を探す力を持っているので、人が用意する必要はありません。鳩の食べ物について、もっと詳しく知りたい人はこちらの記事もどうぞ。

1日に食べる量は体重の10分の1程度
鳩が1日に食べる量は、体重の10分の1程度と言われています。ドバトの体重は300g前後なので、それほど多くの量が必要なわけではありません。
鳥は体が軽く、体温を保つためにこまめに食べる必要があります。ただ、鳩は穀物や種子のように栄養のあるものを効率よく食べられるので、自然の中でも街の中でも、体を維持するだけの食べ物は見つけやすい鳥です。
ここで考えてほしいのが、人がくれる餌の量です。公園で食パンを一枚ちぎってまくと、数羽の鳩にとってはそれだけでかなりの食事になります。毎日同じ場所で誰かが餌をまけば、鳩は自分で探す手間をかけずに必要な量を食べられるようになります。その分の余力が、先ほど紹介したピジョンミルクを作る力、つまり子育ての回数につながっていきます。
注意点として、「少しだけなら影響はない」とは言いにくいのが鳩の難しさです。体重の10分の1程度という量は、人の感覚ではほんのひとつかみに見えます。そのひとつかみが毎日続けば、鳩にとっては十分な「定期便」になるのです。
パンくずやお菓子が「楽な餌場」をつくってしまう
鳩への餌として選ばれがちなのが、パンくずやスナック菓子です。手軽ですが、鳩にとっては探す必要のない「楽な餌場」を作ってしまうことになります。
鳩は帰巣本能が強く、餌がもらえる場所を覚えるのが得意です。しかも人に慣れているので、人が座っただけで近寄ってくるようになります。楽に食べられる場所ができると、群れがその周りに集まり、休む場所や巣を作る場所もその近くで探すようになります。
よくあるのが、ベンチで食べていたお菓子のかけらを「どうせ落ちたから」と鳩にあげてしまうケースです。その一回で、鳩は「この人の近くには食べ物がある」と覚えます。次からは、食べ物を持っている別の人にも近寄っていくようになり、子どもの手からお菓子を取ろうとする、といったトラブルにつながることもあります。
豆知識として、食べ物を持って公園を歩くときは、食べこぼしを残さないことも立派な鳩対策になります。環境省の資料でも、ドバト対策として穀物などの散乱を防ぐことが挙げられています。わざと与えなくても、落ちている食べ物が結果的に餌やりと同じ働きをしてしまうのです。
餌やりが招くフン害・騒音・巣づくりのトラブル
被害は家の中だけでなく、工場や交通機関、農業にも
鳩が増えたときに起きる困りごとは、「ベランダが汚れる」だけではありません。環境省の資料では、ドバトによる被害が個人の生活のほか、工場、交通機関、農業などさまざまな方面に及んでいると説明されています。
主な被害の中身は、フン害、騒音、食べ物への被害、巣づくりです。フンは見た目の汚れだけでなく、感染症のリスクや建造物の腐食につながることがあります。群れで集まれば鳴き声や羽ばたく音が気になりますし、畑の作物や倉庫の穀物が食べられることもあります。
身近な場面に置きかえると、マンションのベランダの手すりや室外機がフンで白くなる、駅の高架下の通路にフンが落ちている、商店街のアーケードの上に鳩が並んで下を歩く人が気にする、といった光景です。どれも、近くに鳩が安心して過ごせる場所と食べ物がそろっていることが背景にあります。
注意したいのは、フンの掃除にも気をつけるべき点があることです。素手で触らない、掃除のあとは手をよく洗うなど、衛生面を意識して作業しましょう。「汚れを取るだけだから」と油断しがちですが、安全な掃除の手順を知っておくと安心です。
フンが残っていると、鳩は何度でも戻ってくる
鳩を寄せつけないためには、餌を出さないことに加えて、フンを早めに片づけることが大切です。フンが残っている場所は、鳩にとって「前にも来た場所」の目印になります。
奈良県御所市の案内では、「ハトのふんが放置されていると、何度も来ることがあるので、早めに清掃」するよう呼びかけています。あわせて、日頃から巣を作りそうな場所を清潔に保つことも勧められています。
たとえばベランダに一度鳩が来て、手すりの下にフンが落ちていたとします。忙しくてそのままにしておくと、次の日も、その次の日も同じ場所にとまるようになり、やがて室外機の裏などに巣材を運び込むこともあります。逆に、早めに掃除して、物を置きっぱなしにしない状態を保てば、鳩が「落ち着ける場所」と感じにくくなります。
豆知識として、鳩のフン対策は「掃除」と「来させない工夫」をセットで考えるのがコツです。掃除だけでは、また来ればすぐに元どおりになります。フンの掃除の安全な手順や、来させないための対策の順番は、こちらの記事で詳しく紹介しています。

よくある失敗①ベランダの手すりにパンくずを置き続けてしまう
鳩への餌やりで特に多い失敗が、ベランダに来た鳩が気になって、手すりやプランターのそばにパンくずを置き続けてしまうケースです。最初は一羽を眺めて楽しんでいたのに、気づけばフン掃除と巣づくりに悩まされる、という流れになりがちです。
原因は、ここまで紹介してきた鳩の習性がすべて重なることにあります。帰巣本能が強く、人に慣れていて、三方向を囲まれた場所を好むドバトにとって、餌が置いてあるベランダは「食べる場所」と「休む場所」が一度に手に入る理想的な場所です。一年中繁殖できるので、そのまま巣を作って子育てを始めることもあります。
よくある状況としては、「朝に一羽だけ来るのがかわいくて、パンの耳を少し置くようになった」「気づいたら二羽、三羽と増え、手すりがフンで汚れるようになった」「室外機の裏に枝が集まっていて、のぞいたら卵があった」という順番です。卵やヒナがいる状態になると、後で説明するように自分の判断では巣を片づけられなくなります。
対策はシンプルで、まず今日から餌を置くのをやめること。そのうえで、フンを早めに掃除し、室外機の裏など巣を作りそうな場所を清潔に保ちます。鳩が居ついてしまう前なら、この組み合わせだけで状況が落ち着くこともあります。「かわいいから少しだけ」が一番の落とし穴だと覚えておきましょう。
鳩を寄せつけないために、今日からできる対策の順番
すでに鳩が来ている場合は、餌をやめたうえで、物理的な対策を組み合わせるのが効果的です。自治体の案内でも、いくつかの具体的な方法が紹介されています。
御所市の案内では、ネットで覆ったり、テグスやピアノ線を設置したりする方法が挙げられています。また、ホームセンターで販売されている「ハト用動物忌避剤やプラスチック製の剣山シート」なども対策グッズとして活用できるとされています。環境省の資料でも、穀物などの散乱を防ぐことが対策のひとつに含まれています。
順番としては、まず鳩を呼ぶ原因をなくし、次に来た形跡を消し、最後に物理的に入れないようにする、と考えるとわかりやすいです。下のステップを参考にしてください。
注意点として、対策グッズだけに頼るのはおすすめしません。餌が出ている場所では、多少のじゃまがあっても鳩は戻ってこようとします。まずStep1とStep2を徹底してから、グッズを足していくほうが、結果的に手間もかからずに済みます。
鳥獣保護管理法で、鳩はどう扱われている?
ドバトもキジバトも「野生の鳥」として法律の対象
鳩はどこにでもいる身近な鳥ですが、法律上は野生の鳥として守られている存在です。「困っているから捕まえてしまおう」と考える前に、ルールを確認しておきましょう。
関係する法律は、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」、いわゆる鳥獣保護管理法です。環境省の解説によると、この法律は鳥類または哺乳類に属する野生動物を対象にしていて、珍しい鳥だけでなく、身近な普通種の鳥も基本的に保護の対象になります。
自治体の案内でも、この点がはっきり書かれています。御所市のページでは、「ハトやカラスなどの野鳥は鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律により保護されており、市による捕獲・駆除は行われていません」と説明されています。つまり、鳩を許可なく捕まえたり、卵やヒナを取ったりすることは、この法律で禁止されている行為にあたります。
注意したいのは、「害鳥だから何をしてもよい」という思い込みです。鳩による被害に困っていても、捕獲や卵の採取には手続きが必要です。この記事では捕獲の方法は扱いませんし、自分で捕まえようとするのはやめましょう。判断に迷ったら、お住まいの自治体の窓口に相談するのが確実です。
卵やヒナがいる巣は、自己判断で撤去しない
ベランダなどで鳩の巣を見つけたとき、いちばん気をつけたいのが、卵やヒナがいるかどうかです。卵やヒナがいる巣は、自分の判断で処分したり移動したりしてはいけません。
害鳥対策の解説では、卵やヒナがいる状態の巣を勝手に処分したり移動したりすると「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せられる、と紹介されています。一方で、卵やヒナがない状態の巣材であれば撤去できる、と一般には案内されています。細かな扱いは状況によって変わることもあるので、迷ったら自治体に確認するのが安心です。
実際の場面で考えると、室外機の裏に枝が数本集まっているだけの段階なら、早めに片づけて掃除しておくことで、本格的な巣づくりを防げる可能性があります。すでに白い卵が見える、ヒナの声がする、という状態なら、その巣には手を出さず、まずは自治体へ相談しましょう。ドバトは孵化から28~35日で巣立つので、状況によっては巣立ちを待ってから片づけることになります。
豆知識として、巣を見つけたらのぞき込みすぎないことも大切です。親鳥が驚いて巣を離れてしまうこともあります。スマートフォンで離れた場所から様子を撮影し、中身を確認してから相談すると、窓口でも状況を伝えやすくなります。
鳩は鳥獣保護管理法の対象になる野生の鳥です。卵やヒナがいる巣を自分の判断で処分・移動したり、鳩を捕まえたりしないでください。巣の撤去の可否や手続きは、お住まいの自治体の担当窓口(農林や環境の担当課など)に確認しましょう。
市役所は駆除しない。困ったときの相談先と許可の条件
鳩の被害に困ったとき、「市役所に電話すれば駆除してくれる」と考える人は多いのですが、実際には市が捕獲や駆除をしてくれることは基本的にありません。
先ほど紹介した御所市の案内のとおり、鳩は法律で保護されているため、市による捕獲・駆除は行われていません。市役所などの窓口が対応するのは、相談やアドバイス、専門の業者の紹介といった内容です。自分でできる対策を試したうえで、それでも難しい場合は、民間の害獣駆除業者に依頼することになります。
卵やヒナのいる巣の撤去については、市役所や役場に申請して許可を得られる場合があります。ただし、その条件は「原則として被害防除対策によっても被害が防止できない場合」とされていて、ネットや清掃などの対策をしても被害が防げないときに限られます。「すぐに片づけたいから許可を」という理由では認められにくい、と考えておきましょう。
注意点として、相談先の名前は自治体ごとに違います。農林商工課のように産業の担当課が窓口になっている自治体もあれば、環境の担当課が受けつけている自治体もあります。自治体の公式サイトで「鳩」「野鳥」「鳥獣」などと検索すると、担当窓口のページが見つかりやすいです。なお、環境省も有効な捕獲方法の研究開発を進めていますが、個人で対応できる範囲はあくまで予防と相談までだと覚えておきましょう。
それでも冬に野鳥へ餌をあげたい人のルール
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ◎ | ◎ | △ | △ | - | - | - | - | - | - | - | ◎ |
◎=餌不足の冬で、与えるならこの時期 △=量を減らしながら終える時期(4月中には終える) -=与えない時期
与えるなら12月~2月、4月中には終える
鳩への餌やりは控えるとして、「冬に庭へ来る小鳥を助けたい」という気持ちを持つ人もいると思います。その場合は、時期をはっきり区切ることが大前提です。
日本野鳥の会茨城県のFAQでは、野鳥への給餌は基本的にお勧めできないとしたうえで、与えるとしても餌不足になる12月から2月くらいまでとしています。ガーデニングの専門メディアでも、野山に餌が少なくなる冬の間だけにするのがガーデンバードウォッチングのルールだと紹介されています。気温が上がり始める4月頃から少しずつ量を減らし、4月中には完全にやめるのが目安です。
なぜ冬だけなのかというと、春になると昆虫が増え、野鳥が自分で食べ物を見つけやすくなるからです。その時期まで餌を与え続けると、野鳥が餌台に頼るようになり、自力で食べる力が落ちてしまいます。給餌はあくまで、食べ物が少ない冬を乗り切る手助けくらいに考えましょう。
注意点として、いったん始めたら気まぐれに置くのではなく、毎日きちんと様子を見ることが求められます。「今日は置いて、明日は忘れた」という与え方は、餌台を頼りに来た鳥を戸惑わせます。毎日の管理ができそうにない場合は、無理に始めないのもひとつの選択です。
餌台は屋根付き・高い位置で、食べ切れる量だけ
冬に小鳥へ餌をあげるなら、餌台の置き方で鳩やカラスを呼ばない工夫をしましょう。ポイントは、屋根付きで高い位置に設置すること、そして1日に食べ切れる量だけを出すことです。
ガーデニングの専門メディアでは、餌をそのまま餌台に置くと「カラスなど大型の鳥に丸ごとかっさらわれてしまう」ため、網などに入れて餌台に固定する工夫が紹介されています。積雪が多い地域では補助的な給餌が役立つ場面もありますが、その場合も屋根付きで高い位置に置くことが前提です。広い庭なら置くタイプ、ベランダなら吊るすタイプの餌台が向いているとされています。
具体的には、群れで行動し人に慣れたドバトは、地面にこぼれた餌を見つけると集まってきやすくなります。餌台の下に落ちた種を放っておくと、小鳥のための餌台がいつの間にか鳩の餌場になってしまうので、こぼれた餌はこまめに片づけましょう。市販の木製の餌台には、幅15cm、奥行き15cm、高さ20.5cmくらいの小ぶりなものもあり、ベランダでも場所をとりません。牛乳パックの底に水抜き穴を5~6か所開けて作る手作りの餌台もあります。
豆知識として、餌と一緒に水場も考えておくと親切です。鳥は水がないと弱りやすいので、冬の給餌とあわせて水の確保も大切だとされています。ただし、餌も水も、あくまで冬の間だけ、管理できる範囲で用意することを忘れないでください。
よくある失敗②春まで続けた餌台が、鳩とカラスの溜まり場に
冬の給餌で起こりがちなのが、「小鳥が来てくれるのがうれしくて、春になっても餌台を片づけられない」という失敗です。気づくと、小鳥ではなく鳩やカラスが集まる場所になってしまうことがあります。
原因は、時期と置き方の二つにあります。春から夏にかけて給餌を続けると、野鳥が餌台に頼るようになるうえ、一年中繁殖できるドバトにとっては、子育て中の親鳥の食事場所になってしまいます。さらに、低い位置の台や地面に近いところに餌を置いていると、群れで歩きながら採食するドバトも簡単に届いてしまいます。
よくある状況としては、「冬の間は庭木の近くに置いた低い餌台にメジロやスズメが来ていた」「暖かくなってもそのまま種を足していた」「ある朝、庭の芝生に鳩が何羽も降りていて、隣の家の屋根にもとまっていた」という流れです。こうなると、ご近所との関係も気になりますよね。
対策は、カレンダーどおりに4月中には給餌を終えること、餌台は屋根付きで高い位置に吊るし、網などで餌を固定すること、こぼれた餌をその日のうちに片づけることの三つです。そして、鳩やカラスが集まり始めたと感じたら、時期に関係なくその場で給餌をやめるのが正解です。餌台を使った給餌の注意点は、既存の餌台の記事でもまとめています。
シーン別:あなたに合う鳩・野鳥との付き合い方
最後に、読者のタイプ別に、鳩や野鳥とどう付き合えばよいかを整理しておきます。自分に近いものを参考にしてください。
公園で鳩に餌をあげたくなる人は、餌の代わりに「観察」を楽しんでみてください。首元の模様や足の色、首を振りながら歩く姿を眺めるだけでも、ドバトとキジバトの違いが見えてきます。食べこぼしを残さないことも、立派な鳩へのやさしさです。
ベランダに鳩が来て困っている人は、まず餌になりそうなものを置かない、フンを早めに掃除する、巣を作りそうな場所を清潔に保つ、の三つから始めましょう。それでも来る場合はネットや忌避剤などを組み合わせ、卵やヒナを見つけたら自治体へ相談します。
庭で冬の小鳥を観察したい人は、12月~2月に限って、屋根付きで高い位置の餌台を使い、食べ切れる量だけを出すようにします。鳩やカラスが来たら中断し、4月中には必ず片づけましょう。
近所で鳩に餌をあげている人を見かけた人は、直接注意するとトラブルになりやすいので、被害が出ているなら施設の管理者や自治体の窓口に相談するのがおすすめです。どのタイプでも共通するのは、「鳩は人が餌を出さなくても自分で生きていける鳥だ」という前提に立つことです。
まとめ:鳩に餌をあげる前に知っておきたいこと
公園やベランダで鳩を見かけたら、今日からは餌の代わりに、首元の模様や鳴き声をじっくり観察してみてください。もしベランダに鳩が来ているなら、まずは餌になるものを片づけて、フンを早めに掃除することから始めましょう。それが、鳩とも近所の人とも気持ちよく付き合うための最初の一歩です。
※法律や自治体の対応、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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