庭先でチュンチュン鳴いているあの鳥が、実は絶滅危惧種になりかけている——そんな話を耳にして、検索してみた方が多いのではないでしょうか。答えを先にお伝えすると、2026年8月時点で、スズメは環境省のレッドリストに載っていません。世界基準のIUCNレッドリストでも「低懸念(Least Concern)」のままです。制度上は、絶滅危惧種ではありません。
ただし「だから減っていない」という話にはなりません。環境省が実施主体となった全国325か所の長期調査では、スズメの個体数は1年あたり3.6%のペースで減り続けていました。この数字を10年分積み上げると、環境省が絶滅危惧Ⅱ類の判定に使っている「10年間で30%以上の減少」という線を、わずかに超えます。リストに載っていない鳥が、リストに載る種と同じ速さで減っている。それが今のスズメの立ち位置です。
この記事では、スズメが絶滅危惧種かどうかという問いに公的な資料で答えたうえで、4つの独立した調査が示した減りかたの数字、有力とされている原因、そして庭やベランダでできることまでを順番に整理します。数字はすべて出典付きで示すので、誰かに説明するときの材料としても使えるはずです。
・スズメは環境省レッドリスト・IUCNレッドリストのどちらにも絶滅危惧種として掲載されていない
・一方で年3.6%減という実測値は、絶滅危惧Ⅱ類の数値基準に届く速さ
・標識調査・繁殖分布調査・里地調査の3つが、別々の方法で同じ方向の減少を示している
・有力な原因は「巣を作る隙間が家からなくなったこと」
・庭でできるのは餌やりより、営巣場所と水場を用意すること
スズメは絶滅危惧種なのか、2026年時点のはっきりした答え

環境省の最新レッドリストに、スズメの名前はない
結論から言うと、載っていません。環境省は2026年3月17日に第5次レッドリスト(鳥類及び爬虫類・両生類)を公表しました。鳥類は計170種が掲載され、うち108種が絶滅危惧種と評価されています。この170種のなかに、スズメは含まれていません。
なぜ載らないのか。レッドリストは「絶滅のおそれ」を評価するもので、判断材料は減少の速さだけではないからです。分布の広さ、現在の個体数の絶対値、生息地の分断度合いなども合わせて見ます。スズメは小笠原諸島を除く全国の人家周辺に分布し、繁殖期の成鳥だけでおよそ1800万羽と推定されています。減っていても、絶滅までの距離はまだ遠いという評価になるわけです。
見分けやすい目安として、第5次レッドリストは前回のレッドリスト2020と比べて鳥類の絶滅危惧種が10種増えました。増加要因として挙げられているのは「開発行為による生息環境の悪化や外来種による捕食」です。スズメが直面している「家の構造が変わった」という要因は、この枠組みでは拾われにくい性質を持っています。
ここで注意したいのは、レッドリストに載っていないことが「保護しなくてよい」という意味ではない点です。レッドリストはあくまで科学的な評価のリストであり、それ自体が捕獲や飼育を規制する法律ではありません。規制は鳥獣保護管理法など別の法律が担っています。
世界基準のIUCNでも「低懸念」のまま止まっている
国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでも、スズメ(学名 Passer montanus)は低懸念(Least Concern、略してLC)に分類されています。絶滅危惧のカテゴリーには入っていません。ただし個体数のトレンド自体は「減少」と評価されています。
この評価が動かない理由は、IUCNが種を「世界全体」で見るからです。スズメはユーラシア大陸の温帯から亜寒帯にかけて広く分布しており、日本国内で減っていても、種全体としての評価には反映されにくい構造になっています。日本で半減しても、大陸で安定していれば世界評価はLCのままです。
具体的に言えば、日本のスズメの現状を国際評価から読み取ることはできません。国内の状況を知りたいなら、環境省のレッドリストと、次の章で扱う国内の長期モニタリング調査を見る必要があります。この使い分けを知らないと「IUCNがLCと言っているから問題ない」という誤読が起きます。
豆知識として、IUCNの数値基準は環境省の判定基準の下敷きにもなっています。環境省は2001年にIUCNが採用した数値基準を受けて、第3次レッドリスト作成時に判定基準の一部を変更しました。つまり物差しは同じで、当てる対象の範囲だけが違うということです。
「減っている」と「絶滅危惧種ではない」は矛盾しない
この2つは両立します。絶滅危惧種というのは減少している種のことではなく、「近い将来に野生で絶滅する危険性が一定水準を超えた種」を指す評価だからです。減少していても、母数が大きく分布が広ければ、その水準にはまだ届きません。
環境省の定義を見ると理解しやすくなります。絶滅危惧Ⅱ類(VU)は「絶滅の危険が増大している種」、準絶滅危惧(NT)は「現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては『絶滅危惧』に移行する可能性のある種」とされています。どのカテゴリーも、減少そのものではなく絶滅までの距離を測る言葉になっています。
庭で観察している人の実感とのズレも、ここから説明できます。20年前より明らかに減ったと感じても、それは「あなたの周囲の密度」の変化です。全国の総個体数が数千万羽の規模で残っているかぎり、制度上のカテゴリーは動きません。
やりがちな失敗が、この2つを一緒くたにして「絶滅危惧種になった」と広めてしまうことです。誤情報として指摘されると、本当に伝えたい減少の事実まで信じてもらえなくなります。「絶滅危惧種ではないが、絶滅危惧種と同じ速さで減っている」と分けて話すのが正確です。
| 分類 | スズメ目スズメ科(Passer montanus) |
| 全長 | 全長14.5cm/翼開長22.5cm |
| 見られる季節 | 通年(留鳥といわれるが、幼鳥は秋に移動すると思われる) |
| 生息環境 | 人家付近でのみ見られる |
| 鳴き声 | 「チュン」、「ジジ」などさまざまな声を出す |
| よく見られる場所 | 住宅地の屋根まわり、電線、農地の縁、公園の地面 |
年3.6%減という数字は、どこまで危ない速さなのか
環境省の物差しは「10年間で30%以上の減少」
絶滅危惧Ⅱ類(VU)の数値基準を見ると、この議論の輪郭がはっきりします。環境省の判定基準では、VUの定量的要件A-2はこう書かれています。「過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、30%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。」
ここで大事なのが「3世代」の扱いです。判定基準の注記では、1世代が短く3世代に要する期間が10年未満のものは年数を採用する、とされています。スズメは1年で繁殖に入る鳥で、世代の回転が速い種です。したがって当てはめる期間は「10年間」になります。
比較すると、絶滅危惧ⅠB類(EN)の同じ要件は50%以上、絶滅危惧ⅠA類(CR)は80%以上です。30%というのは、絶滅危惧のカテゴリーに足を踏み入れる最初の敷居ということになります。
もう一点、この要件には後半があります。減少の「原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない」という条件です。数字だけで自動的に決まるわけではなく、原因の性質もセットで評価されます。ここがスズメの評価を難しくしている部分でもあります。
3.6%を10年積み上げると、ちょうど線を越える
環境省が実施主体、日本自然保護協会が事務局となったモニタリングサイト1000里地調査の2005〜2022年度とりまとめ報告書で、スズメの1年あたりの個体数減少率は3.6%と算出されました。年3.6%というと小さく感じますが、減少は前年の残りに対してかかるので、複利のように効いてきます。
実際に計算してみます。毎年3.6%ずつ減ると、10年後に残るのは約69.3%。つまり約30.7%の減少です(野鳥の教科書調べ)。環境省の30%という線を、わずかに超えます。同じペースが続いた場合、半減までは約18.9年という計算になります。
報告書自体も、この点をはっきり書いています。鳥類では評価対象種106種のうち約15%にあたる16種が「10年あたり30%以上の減少率」を示し、「これらの数値は、環境省の絶滅危惧種の判定基準を満たしうる値であった」と記されています。スズメはこの16種に含まれています。
注意したいのは、この計算が「同じペースが続いたら」という仮定に立っている点です。減少が途中で止まる可能性も、加速する可能性もあります。それでも、20年近い実測データから出た年率であることは押さえておく価値があります。
一緒に減っている15種の顔ぶれが、問題の輪郭を示す
スズメだけが減っているわけではありません。同じ報告書では、急減している16種の年減少率は3.6〜14.1%の幅にありました。内訳を見るとオナガが14.1%、イワツバメが12.1%、オオタカが5.2%です。スズメの3.6%は、この16種のなかで最も緩やかな部類にあたります。
顔ぶれを眺めると共通点が見えてきます。減少傾向がみられた鳥類には、セグロセキレイ・ホトトギス・スズメなど、身近な場所でみられる「普通種」が多数含まれていました。珍しい鳥ではなく、当たり前にいた鳥が減っているというのが、この調査が示した構図です。
報告書は環境面の共通項も指摘しています。農地や草原、湿地など開けた環境に生息・生育する種の減少傾向が目立ち、鳥類・チョウ類・植物の3分類群で共通していた、という結果です。鳥の問題というより、里地里山という環境そのものの変化として現れています。
意外と知られていないのが、この調査を支えているのが市民だという点です。全国325か所の調査サイトを、5,700名以上もの市民調査員が支えています。専門機関の観測網だけでは、身近な鳥の20年分の推移は測れなかったということでもあります。
4つの調査が別の角度から示した、減りかたの実像

足環をつけて数えた20年——標識調査が示した6割減
まず紹介したいのが、山階鳥類研究所の鳥類標識調査のデータです。この解析では、1987年から2008年までの約20年間に、スズメの個体数は6割減少したと推定されました。
この推定が信頼できるのは、調査努力量のばらつきを打ち消す工夫をしているからです。年によって調査地点や人手が変われば、捕獲数は当然変わります。そこで解析では、すべての鳥類の総捕獲数に対するスズメの割合を指標として使い、統計解析を実施しました。
結果として見えたのは、全鳥類種の総捕獲数はあまり変化していないのに、捕獲されたスズメの割合は減少傾向にある、という状況です。網に入る鳥全体の数は変わらないのに、そのうちスズメの取り分だけが細っていったということになります。
ここで気をつけたいのが、標識調査の網が張られる場所はヨシ原や樹林が多く、住宅地の中心ではないという点です。単独の調査でスズメ全体を語ることはできません。だからこそ、性質の違う複数の調査を並べる意味があります。
全国のメッシュを塗り直した繁殖分布調査——18年で62.1%へ
次が、環境省の自然環境保全基礎調査として行われている全国鳥類繁殖分布調査です。第2回が1997〜2002年、第3回が2016〜2020年に実施されました。この2回のデータを比較した研究で、18年間で個体数は62.1%になったと推測されています。
この研究では年あたりの減少率も算出されています。毎年、前年の2.61%の個体数が減少し、おおよそ26年間で半減すると予測できました、という結論です。里地調査の3.6%とは少し違いますが、どちらも「じわじわ減り続けている」という同じ方向を指しています。
興味深いのは、減った場所の特徴です。減少幅が大きい調査地点は、農地面積が広く気温が高い傾向がありました。都市化が原因なら都会ほど減るはずですが、実際は農村側でも強く減っていたことになります。
研究者はこの結果を、土地利用の時間的変化だけでは説明できないと考察しています。候補として挙げられているのは、本種の個体数が多い適地の減少割合、土地利用の変化を伴わない餌生物の減少、そして建物の建て替わりによる営巣場所の減少です。
3つの調査を並べて見る——野鳥の教科書調べ
ここまでの数字を1枚にまとめます。方法も期間も違う調査が、それぞれ独立に減少を示している点に注目してください。1つの調査だけなら方法の癖を疑えますが、3つが揃うと偶然では説明しにくくなります。
| 比較項目 | 鳥類標識調査 | 全国鳥類繁殖分布調査 | モニタリングサイト1000里地調査 |
|---|---|---|---|
| 実施主体 | 山階鳥類研究所 | 環境省の自然環境保全基礎調査 | 環境省(事務局は日本自然保護協会) |
| 対象期間 | 1987〜2008年 | 第2回1997〜2002年と第3回2016〜2020年の比較 | 2005〜2022年度 |
| 数えかた | 捕獲個体に足環をつけて記録 | 全国のメッシュ単位で繁殖分布を記録 | 全国325か所の固定サイトを市民が継続観察 |
| 示された減少 | 約20年間で6割減少と推定 | 18年間で62.1%になったと推測(年2.61%減) | 年3.6%減(10年換算で約30.7%減) |
学会誌が出した長期の見取り図——1960年代からの90%
もう1つ、時間軸をさらに伸ばした研究があります。三上修氏が2009年に日本鳥学会誌58巻161〜170頁に発表した論文です。この論文の英文要旨には、全体の個体数は1990年以降で少なくとも半減し、1960年代以降では90%以上減少した、という解析結果が示されています。
1960年代までさかのぼれる理由は、当時の記録が残っているからです。研究者のサイトでは、1960年頃の駆除・捕獲個体数は現在の30倍、農業被害に至っては現在の60倍だったと紹介されています。害鳥として扱われた記録が、逆に当時の多さを示す資料になっているわけです。
ただし古い時代の推定には幅があります。同じ研究者は、1990年頃と比べて個体数の20%から50%程度に減少したと推定した、という表現も使っています。20%なのか50%なのかで印象は大きく変わるので、幅のある数字として受け取るのが誠実です。
数え方の工夫にも触れておきます。動き回っているスズメを数えるよりも、道を歩きながらスズメの巣を数えた方が安定した精度で調べることができる、という知見が得られています。動く鳥ではなく動かない巣を数える。この発想の転換が、後の原因究明につながっていきます。
巣を作る隙間が消えた街で、何が起きているのか
古い住宅地の巣の密度は、新しい住宅地の3.8〜4.8倍だった
減少の原因として現在もっとも有力視されているのが、営巣場所の減少です。根拠になっているのが、三上修氏らが2013年にBird Research 9巻A13〜A22頁に発表した住宅地の巣密度に関する論文です。
岩手県と埼玉県で、できた年代の違う住宅地を歩いてスズメの巣を数えました。結果は明快で、1970年頃にできた古い住宅地の巣の密度は、2000年頃にできた新しい住宅地と比べて、岩手県で3.8倍、埼玉県で4.8倍でした。同じ住宅地でも、年代が変わると巣の数が数分の1になっていたわけです。
理由は家のつくりにあります。スズメは瓦の下、戸袋のすき間、換気口の周りなど、建物の小さな隙間に巣を作る鳥です。近年の住宅は気密性が高く、そうした隙間がほとんどありません。論文は、住宅が新しくなったことで、スズメが巣をつくれなくなり、スズメの減少をもたらした可能性は大きい、と結論づけています。
庭で確かめる方法もあります。4月から6月にかけて、自宅や近所の家の屋根まわりを観察してみてください。同じ場所に何度もくわえた枯れ草を運び込む個体がいれば、そこが巣です。築年数の違う区画を歩き比べると、密度の差を自分の目で確認できます。
巣立つヒナの数が、住む場所で1.4倍違っている
巣の数だけでなく、1つの巣から巣立つヒナの数にも差が出ています。研究者がまとめた数字では、巣立ち後のヒナ数は商業地で1.41羽、住宅地で1.79羽、農村地で2.03羽でした。商業地と農村地では1.4倍以上の開きがあります。
背景にあるのは、子育て期の餌です。スズメは春から夏はおもに虫を食べ、秋冬はおもに植物の種子や果実を食べます。ヒナに与えるのは虫で、しかも行動範囲は巣から半径100mほどとされています。舗装が進んで草地が消えた商業地では、この半径100mの中に十分な虫がいないということになります。
過去との比較も示されています。かつては2から3羽のヒナをみることが普通だったり、5羽くらいという記録もありました。繁殖回数はほとんどが2回、平均は1.5回から2回くらいとされているので、1回あたり1.41羽なら、年間で3羽前後しか残らない計算になります。
ここから読み取れるのは、「親が来ているのに増えない」という状況があり得るということです。庭にスズメが飛んで来ていても、その巣が十分な数のヒナを出せているとはかぎりません。数だけでなく、繁殖が成立しているかどうかが問題になります。
失敗パターン①:「餌をまけば増える」という思い込み
よくある勘違いが、減っているなら餌をあげれば戻るはずだ、という発想です。しかしここまでの数字が示しているのは、成鳥の食べ物ではなく、巣を作る場所と、ヒナに与える虫が足りていないという構図でした。米やパンくずをまいても、この2つは埋まりません。
実害が出ることもあります。地面にまいた餌は、スズメより先にハトやカラスが見つけます。集まった鳥の糞で近隣から苦情が来る、餌の食べ残しにネズミが寄る、といったトラブルは各地で起きています。餌台を置いたのに来るのがハトばかり、という相談も少なくありません。
日本野鳥の会はフィールドマナーの中で、餌を与える行為も、カラスやハトのように人の生活と軋轢が生じている生物、生態系に影響を与えている移入種、水質悪化が指摘されている場所などでは控える必要があります、としています。無条件に勧められる行為ではないという前提を、まず押さえておきたいところです。
対策としては、餌に頼らない方向へ切り替えることです。具体的には、営巣できる場所を用意すること、そして水を飲み浴びできる場所を作ること。この2つは季節を問わず効果があり、近隣トラブルにもなりにくい方法です。詳しくは後の章で扱います。
スズメが減った原因は「食べ物がない」より「巣を作る隙間がない」に寄っています。古い住宅地の巣の密度は新しい住宅地の3.8〜4.8倍(岩手県・埼玉県での調査)。庭でできる支援は、餌をまくことよりも営巣場所を用意することです。
「絶滅危惧種じゃないから大丈夫」がいちばん危ない
実は今も、スズメは狩猟鳥獣に指定されている
意外と知られていないのですが、スズメは現在も狩猟が認められている鳥です。環境省の狩猟制度の概要によると、狩猟鳥獣は鳥類26種類、獣類20種類が指定されており、鳥類の一覧にスズメが明記されています。
これは矛盾ではなく、制度の枠組みが別だからです。レッドリストは絶滅のおそれの評価で、狩猟鳥獣の指定は鳥獣保護管理法にもとづく資源管理の制度です。年3.6%減という数字は前者の枠組みで語られ、後者の指定にはただちに反映されません。
もちろん、誰でも自由に獲れるわけではありません。狩猟には狩猟免許が必要で、網猟免許、わな猟免許、第一種銃猟免許、第二種銃猟免許の4種類の区分があり、都道府県知事が実施する狩猟免許試験に合格する必要があります。さらに狩猟をしようとする都道府県に登録し、所定の狩猟税を納付する必要があります。狩猟期間も定められており、北海道以外の区域では毎年11月15日〜翌年2月15日、北海道では毎年10月1日〜翌年1月31日です。
知っておきたいのは、免許のない一般の人がスズメを捕まえたり飼ったりすることは認められていない、という点です。傷ついた個体を見つけた場合も、自分で保護せず、まずお住まいの都道府県の担当窓口に相談してください。捕獲や飼養の可否は自治体の判断になります。
普通種ほどデータが取りにくい、という構造的な穴
ここが、身近な鳥をめぐる評価の弱点です。希少種は生息地が限られるため、集中的に調べれば個体数の変化をつかめます。一方、全国どこにでもいる普通種は、母数が大きすぎて全数を数えられません。減っていることを示すには、長期の統計データが要ります。
だから20年分の市民調査が意味を持ちました。全国325か所で5,700名以上が同じ方法で数え続けたからこそ、年3.6%という細い傾きが検出できたわけです。裏を返せば、この蓄積がなければ、スズメの減少は「気のせい」で片づけられていた可能性があります。
具体的に困るのは、対策の優先順位づけです。絶滅危惧種には保護区の設定や事業のアセスメントといった仕組みが働きますが、普通種にはそれがありません。数が半分になっても、制度上は誰も動かないという状態が起こり得ます。
逆に言えば、普通種の減少に効くのは制度より生活側の選択です。家を建て替えるときに巣箱を1つ掛ける、庭の一角を舗装せず草地で残す。こうした個々の判断の積み重ねが、いちばん直接的に効いてきます。
失敗パターン②:巣立ちビナを拾って「保護」してしまう
5月から7月にかけて、地面にうずくまる小さなスズメを見つけて連れ帰ってしまう例が毎年あります。これは多くの場合、保護ではなく親子の分断になります。
理由は、その個体が巣立ちビナだからです。スズメは飛べるようになる前に巣を出て、地上や低木で数日を過ごしながら飛翔を覚えます。この間も親鳥は近くにいて餌を運んでいます。人が近づいたから親が見えないだけで、離れれば戻ってきます。
見分け方は羽の状態です。全身に羽が生えそろい、短い距離なら跳ねて移動できるなら巣立ちビナで、拾う必要はありません。羽が生えそろっていない、目立った外傷があるといった場合は、触らずに都道府県の鳥獣保護担当窓口に電話して指示を仰いでください。
対処としては、その場から人と犬猫を遠ざけて、10メートル以上離れて様子を見るのが基本です。道路上など危険な場所にいる場合にかぎり、近くの植え込みの下へそっと移すにとどめます。連れ帰って飼育することは、鳥獣保護管理法上の手続きなしにはできません。
巣立ちビナを見つけても拾わないでください。羽が生えそろっていれば親鳥が近くで世話をしています。弱っている個体や外傷のある個体を見つけた場合の判断は自治体によって異なるため、自分で判断せず、お住まいの都道府県の鳥獣保護担当窓口に連絡してください。また、野鳥の巣や糞に触れたあとは石けんで手を洗い、素手で羽や死体を扱わないようにしましょう。
庭でできるのは、餌より「隙間」と「水」を用意すること
巣箱は入口の直径で入る鳥が変わる
いちばん直接的に効くのが巣箱です。家から消えた隙間を、人工的に足し直すという考え方になります。スズメは自分で穴を開けられないので、開いている穴を探して入る鳥です。だから入口のサイズがそのまま選別装置になります。
スズメを想定するなら、入口の直径は3.0cm前後が目安です。これより小さいとスズメは入れず、シジュウカラ向けの巣箱になります。大きすぎるとムクドリなど体の大きな鳥に占領されます。掛ける高さは人の目線より上、雨が吹き込みにくい向きを選びます。
設置のコツは、掛けたあと近づかないことです。巣箱を掛けてから中をのぞきに行くと、それだけで放棄されることがあります。設置は繁殖期に入る前、2月から3月のうちに済ませておくと、下見の時期に間に合います。
注意点として、巣箱を掛けても初年度から入るとはかぎりません。長期の調査でも、使われないまま終わる巣箱は一定数あります。1年で結果が出なくても外さず、秋に古い巣材だけ取り除いて翌年に持ち越すのが現実的です。

ホームセンターで巣箱を買ってきて庭の木に架けたのに、春が来てもスズメが入らない。そんな話は野鳥好きのあいだでよく出てきます。原因の多くは、置き場所でも木の種類で…
水場は深さの浅さがすべて
もう1つ効くのが水場です。スズメは水浴びも砂浴びもする鳥で、羽の汚れや寄生虫を落とすために定期的に水を使います。餌台と違って、水はハトやカラスを過度に呼び寄せにくいという利点もあります。
用意するときの決め手は深さです。水深が2cm程度になるよう、浅い皿や植木鉢の受け皿を使います。全長14.5cmの鳥にとって、深い水は溺れる危険がある場所です。底がつるつるだと足が滑るので、小石を敷いて足場を作ってあげると使ってもらいやすくなります。
置き場所は、地面から少し高く、周囲2メートルほどに見通しがあり、3メートルほど先に逃げ込める枝や生垣がある場所が向いています。水浴び中の鳥は無防備で、ネコに狙われやすいからです。開けすぎても、茂みに近すぎても使われません。
失敗しやすいのが水の管理です。夏場は1日で水が濁り、藻が出ます。毎日入れ替えてこすり洗いするのが基本で、それが難しいなら設置しないほうが安全です。汚れた水場は、鳥どうしの感染を広げる場所にもなります。
餌をあげるなら、条件と時期を限る
それでも餌台を置きたい場合は、条件を絞れば選択肢になります。時期は自然の餌が乏しくなる12月から2月に限定し、量は数十分で食べ切る程度にとどめます。春以降まで続けると、ヒナに必要な虫ではなく穀類に親を引き寄せてしまう恐れがあります。
置き方にも条件があります。地面にばらまかず台の上に置く、食べ残しは毎日片づける、台は定期的に洗う。日本野鳥の会のフィールドマナーでも、写真撮影や給餌が地元や周囲の人に誤解やストレスを与える場合は十分な配慮をしましょう、と呼びかけられています。
自治体によっては、餌やりを条例で制限している地域もあります。集合住宅ならベランダでの給餌が管理規約で禁止されている場合もあります。始める前に、お住まいの自治体と管理規約を確認しておくのが確実です。
読者タイプ別に整理すると、庭のある戸建てなら巣箱と水場の両方、ベランダだけなら水場を1つ、屋外スペースがないなら近所の公園で観察に徹する、という組み立てになります。手を出せる範囲は違っても、記録を残すという参加のしかたは誰にでもできます。

見分けて、数えて、記録する。市民の観察が数字を作った
頬の黒い斑があるかどうかで、2種は分かれる
記録を始めるなら、まず種を正しく見分けたいところです。日本で「スズメ」と呼ばれる鳥は1種ではなく、よく似たニュウナイスズメがいます。分かれ目は頬です。スズメは頬に黒い斑があり、ニュウナイスズメは頬が白いので区別がつきます。
名前の由来もここにあります。「にふ(斑)」がないスズメだから、ニュウナイスズメという説です。オスは明るいオレンジブラウンで、頬に黒斑はなく、喉元に黒い斑があります。一方のスズメはほぼ雌雄同色で、オスとメスを外見で分けるのは容易ではありません。
会える場所も違います。スズメは人家付近でのみ見られるのに対し、ニュウナイスズメは林や森などを好みます。日本では主に北海道の平地の林や本州中部以北の山地で5月から7月にかけて繁殖し、関東地方以南の暖地で越冬します。庭に来ているならまずスズメと考えて差し支えありません。
間違えやすいのが幼鳥です。スズメの幼鳥は頬の黒斑の色がうすいため、ニュウナイスズメに見えることがあります。巣立ちの季節に頬の白いスズメを見たら、まず幼鳥を疑ってください。くちばしの付け根が黄色く盛り上がっていれば幼鳥です。

庭先や駅前で見かける茶色い小鳥を、まとめて「スズメ」と呼んでいませんか。じつはそのなかに、スズメではない鳥がかなりの割合で混ざっています。逆に「これは別の鳥だ」…
巣を数えるほうが、鳥を数えるより正確になる
記録のコツは、動くものではなく動かないものを数えることです。研究の現場でも、動き回っているスズメを数えるよりも、道を歩きながらスズメの巣を数えた方が安定した精度で調べることができる、という知見が得られています。
飛び回る鳥は、同じ個体を二重に数えたり、視界から外れて数え落としたりします。巣は動きません。同じ道を同じ順路で歩けば、去年と今年を比べられる数字になります。素人でも精度の高いデータが取れるのが、この方法の強みです。
やり方は簡単で、自宅から半径数百メートルの決まったルートを決め、繁殖期に月1回歩いて、巣材を運び込む建物の場所を地図に記していくだけです。屋根瓦の下、戸袋、換気口の周りなど、隙間のある場所を重点的に見ます。
気をつけたいのは、他人の敷地に立ち入らないこと、そして家をじっと見上げる姿が不審に見えることです。道路から見える範囲にとどめ、住民に声をかけられたら何をしているか説明できるようにしておくと安心です。
巣を探しやすい時期は、繁殖期の前半に集中する
記録する時期にも向き不向きがあります。スズメの繁殖期は3月から8月で、この期間にほとんどが2回繁殖します。巣材を運ぶ姿がいちばん見つけやすいのは、1回目の繁殖に入る時期です。
逆に、真夏から秋は巣を見つけにくくなります。繁殖が終わると親も出入りしなくなり、外から見て使われている巣かどうか判断がつかなくなるからです。秋冬はスズメが群れになって集まる「ねぐら」を探すほうが向いています。
年ごとの比較をしたいなら、毎年同じ月に歩くのが鉄則です。4月に数えた年と6月に数えた年を比べても、増減なのか時期のずれなのかわかりません。カレンダーに固定の予定として入れてしまうのが続けるコツです。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| △ | △ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | △ | △ | △ | △ |
◎=よく見られる(もっとも観察しやすい時期) ○=見られる △=まれに見られる
※スズメ自体は通年見られます。この表は繁殖期3月〜8月をもとにした「巣づくりの様子を観察しやすい時期」の目安です(野鳥の教科書調べ)
観察のマナーは「やさしいきもち」の7文字で足りる
記録を続けるうえで、覚えておきたい原則があります。日本野鳥の会のフィールドマナーは、頭文字をつないだ「やさしいきもち」の7項目にまとまっています。
内容は、や「野外活動、無理なく楽しく」、さ「採集は控えて、自然はそのままに」、し「静かに、そーっと」、い「一本道、道からはずれないで」、き「気をつけよう、写真、給餌、人への迷惑」、も「持って帰ろう、思い出とゴミ」、ち「近づかないで、野鳥の巣」の7つです。
スズメの観察でいちばん効いてくるのは、最後の「ち」でしょう。巣を数える調査をしていると、つい近づいて確認したくなります。しかし営巣中の巣に人が寄ると放棄につながるので、道路上から双眼鏡で確認する範囲にとどめます。
もう1つ意識したいのが「き」です。住宅街での観察は、カメラを向ける先が誰かの家になります。写真を撮らない、家の中を見ない、聞かれたら説明する。この3つを守っていれば、長く続けても摩擦は起きません。
まとめ:数字で見たスズメの現在地と、今日からできること
数字を並べてみると、スズメをめぐる状況は「絶滅寸前」でも「何も起きていない」でもない、その中間にあることがわかります。標識調査は約20年で6割減を示し、繁殖分布調査は18年間で62.1%になったと推測し、里地調査は年3.6%の減少を測りました。方法の違う3つが同じ方向を指している以上、減少そのものは疑いにくい事実です。それでも制度上のカテゴリーが動かないのは、分布が全国におよび、母数がまだ大きいからでした。最初の一歩としておすすめしたいのは、自宅の周りを1ルート決めて、この春に巣がいくつあるか数えてみることです。動く鳥ではなく動かない巣を数える。それだけで、来年以降と比べられる自分のデータが1つ手に入ります。
※レッドリストの区分や調査結果は見直しによって変わることがあります。最新情報は環境省・日本自然保護協会などの公式サイトでご確認ください。

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