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ツバメの子育ては産卵から巣立ちまで39日|親鳥が3日で283回運んだ記録

ツバメの子育ては産卵から巣立ちまで39日|親鳥が3日で283回運んだ記録のアイキャッチ画像

玄関の軒先に泥のかたまりが付きはじめた。数日後には親鳥が出たり入ったりして、気がつけば黄色い口が並んでいる——ツバメの子育ては、日本の家のすぐそばで進みます。けれど「いつ卵を産んで、いつ巣立つのか」「自分は何をすればいいのか」を正確に言える人は、そう多くありません。

結論から書きます。ツバメの子育ては、産卵の初日から巣立ちまでが1回目で39日、2回目で36日という研究記録があります。抱卵が14日、ヒナを育てる期間が21日。ここに巣作りの日数が加わるので、家の人から見れば「軒先が2か月弱にぎやかになる」というスケールです。そしてその間、人がやるべきことはほとんどありません。餌をあげる必要も、巣を直してあげる必要もない。むしろ手を出さないほうがうまくいきます。

この記事では、産卵から巣立ちまでの日数、親鳥が1日にどれだけ餌を運んでいるか、子育てが失敗する原因の内訳、そして巣の下のフンにどう向き合うかまで、公的機関と研究機関の調査データをもとに順番に見ていきます。ヒナが地面にいたときの正解も、途中で必ず出てきます。

📌 押さえておきたいポイント

・産卵初日から巣立ちまでは1回目が39日、2回目が36日(抱卵14日+育雛21日)
・親鳥は15日齢のヒナに3日間で283回も餌を運んでいた(銀座での撮影記録)
・子育て失敗の内訳は、原因不明32%に次いでカラスに襲われた23%、巣が落ちた15%
・卵やヒナがいる巣を許可なく撤去すると、鳥獣保護管理法違反になる可能性がある

目次

ツバメの子育ては産卵から巣立ちまで39日、巣作りを入れると約2か月

ツバメの子育ては産卵から巣立ちまで39日、巣作りを入れると約2か月の解説画像

39日という数字はどこから出てきたのか

ツバメの子育ての長さを一番はっきり示しているのは、日本鳥学会の学術誌に載った「ツバメの生態(第3報)」の記録です。ここでは産卵の初日から巣立ちまでが、1回目の繁殖で39日、2回目で36日と報告されています。内訳は、抱卵日数が1回目14日・2回目12日、ヒナが巣で育つ成育日数が1回目・2回目とも21日。残りが産卵にかかる日数です。

なぜ1回目と2回目で3日ちがうのか。抱卵日数が14日から12日へ短くなっているのが主な理由です。季節が進んで気温が上がると、卵が冷えにくく発生が進みやすくなります。親鳥が卵を温めるために巣に座っている時間も変わってきます。

庭やベランダから見ていると、この39日は「静かな2週間」と「うるさい3週間」に分かれて見えます。親鳥がじっと巣に座っているだけの時期が抱卵、出入りが激しくなってヒナの声が聞こえ出したら育雛です。出入りの回数が急に増えた日が、だいたい孵化の日だと考えて構いません。

注意したいのは、この39日に巣作りの日数が含まれていないことです。泥を運んで巣の形ができるまでにさらに日数がかかるので、家の人が「巣を作りはじめたな」と気づいてから巣立ちまでは、体感でおよそ2か月弱になります。カレンダーに丸を付けるなら、余裕を持って見ておくほうが安心です。

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卵は1日1個ずつ、3〜7個・平均5個

ツバメの卵は一腹3〜7個で平均5個、産卵は1日1個ずつです。1回目の繁殖のほうがやや多く産む傾向も記録されています。孵化する数の平均は4.7個なので、産んだ卵のほとんどが無事にかえっていることになります。

1日1個ずつというのは、鳥にとっては体力的な事情です。卵は親鳥の体に対して小さくありません。全長17cm・体重20g弱のツバメが、まとめて5個をいっぺんに作ることはできないので、日を分けて産みます。

この「1日1個」が観察に効いてきます。巣に親鳥が座りっぱなしになる日と、まだ出入りしている日が混ざっているうちは、産卵の途中です。ずっと座るようになったら抱卵に入った合図。ここから14日を数えれば、孵化のおよその日が読めます。棒の先に鏡を付けて巣の中を確認する方法もありますが、頻繁にのぞくのは親鳥を巣から遠ざけるので、確認は最小限にとどめます。

やりがちな失敗が、卵の数を数えたくて毎日巣に近づいてしまうことです。ツバメは巣に来たばかりの時期ほど警戒心が強く、この時期に人が繰り返し近づくと巣を放棄することがあります。数を知りたい気持ちは、出入りの回数を記録するほうに向けたほうが結果的に長く観察できます。

🐦 野鳥スペックカード
分類スズメ目ツバメ科
全長/翼開長全長17cm/翼開長32cm(体重20g弱)
見られる季節春に渡来し、8月中旬から10月にかけて東南アジアへ渡る
営巣場所人家や商店、駅などに泥でできたおわん型の巣をつくる
トンボ、アブ、ユスリカなどの飛ぶ虫を飛びながら捕食
見分けのポイント背は黒く腹は白、額と喉が赤褐色。雌雄同色だが並ぶとオスのほうが尾が細長い

抱卵は14日、育雛は21日という区切りで見る

子育ての進み具合を読むときは、抱卵14日・育雛21日の2つの数字を覚えておけば足ります。この2つを足した35日前後が、卵が巣に入ってから空になるまでの期間です。

抱卵期は、外から見ると変化に乏しい時期です。親鳥が巣に座り、時々入れ替わる。この時期に巣の中の温度を保てるかどうかが孵化率を左右するので、人の気配で親鳥が巣を離れる時間が増えるのは、そのまま卵にとってのリスクになります。

育雛期に入ると景色が一変します。親鳥が数分おきに飛び込んでは飛び出していく。ヒナの声も日ごとに大きくなり、最初は巣のふちに何も見えなかったのが、2週間を過ぎるころには黄色い口が並ぶようになります。巣が窮屈そうに見えはじめたら、巣立ちが近いサインです。

豆知識として、この21日という育雛期間は1回目も2回目も変わらないと記録されています。抱卵日数は季節によって短くなるのに、ヒナが巣で育つ期間はほぼ固定。飛べるようになるまでに必要な羽の成長は、気温では省略できないということです。

🗓 観察カレンダー
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◎=よく見られる(もっとも観察しやすい時期) ○=見られる △=まれに見られる/子育ての観察しやすさを月別に整理(巣立ちのピークは6月中旬、早いもので5月20日の記録あり)

巣立ちのピークは6月中旬、早いものは5月20日

ツバメの巣立ちのピークは6月中旬で、早い記録には5月20日というものもあります。5月の連休あたりに「うちの軒先に巣ができた」と気づいた家では、6月の中ごろがヤマ場になるという読み方ができます。

この時期に集中するのは、餌の都合です。ツバメが運ぶのは飛んでいる虫だけなので、虫の数が増える時期にヒナの食べ盛りが重なるように繁殖のタイミングが決まっています。虫の発生が早い年は巣立ちも早まり、遅い年は後ろにずれます。

地域差も大きく出ます。渡来の時期そのものが南と北で1か月以上ちがうため、九州で6月上旬に巣立った巣と、東北で7月に入ってから巣立つ巣が同じ年に共存します。「うちはまだ卵なのに、隣町ではもう巣立った」というズレは珍しいことではありません。

見落としやすいのが、ピークを過ぎたあとの巣です。7月に入ってから泥を運びはじめる巣は、多くが2回目の繁殖(二番子)です。1回目が終わった巣を補修して使うこともあるので、「もう終わったはず」と思って巣を落としてしまうと、これから始まる子育てを止めることになります。

親鳥は3日で283回運んだ|巣に届く餌の正体

銀座のビルで撮られた283回という記録

親鳥がどれだけ働いているのかを、映像で数えた調査があります。バードリサーチが東京・銀座のツバメの巣を2022年7月11日から13日の3日間、巣から約5メートル離れた場所にカメラを置いて撮影したものです。ヒナは15日齢、巣立ち前の食べ盛りの時期でした。

3日間の給餌回数は合計283回。内訳はオスが128回、メスが155回で、どの日もメスのほうが回数が多かったものの、統計的な有意差までは出ていません。オスとメスがほぼ同じだけ働き、わずかにメスが多い——というのが実際の姿です。

この数字が観察に効くのは、「巣の前に立っていると何が起きるか」がわかるからです。数分に1回のペースで戻ってくる親鳥は、巣の近くに人がいると入るのをためらいます。1回のためらいは数十秒でも、それが繰り返されればヒナに届く餌の量が変わります。巣の真下で立ち止まらない理由は、マナーというより算数の問題です。

ちなみにメスは給餌のあと巣に長くとどまる傾向も記録されていました。まだ体温調節が十分でないヒナを温める役割が残っているためと考えられます。「メスのほうが回数が多いのに、巣にいる時間も長い」というのは、両方の仕事を抱えているということです。

運んでいるのは飛ぶ虫、4回に1回はミツバチだった

銀座の調査でおもしろいのは、餌の中身まで映像から読み取っていることです。給餌回数の約25%がミツバチで、種類まで識別できた61匹はすべてオスバチでした。巣から約100メートルの場所に養蜂場があり、そこから離れて飛ぶオスバチが狙われていたと考えられています。

残りはハエ、ハチ、羽アリ、チョウ、クサカゲロウなど。半数近くは映像からは識別できませんでした。共通しているのは、どれも飛んでいる虫だということです。ツバメは飛びながら空中で虫を捕らえるので、地面を歩く虫も、木の枝にとまる芋虫も、基本的にメニューには入りません。

働きバチではなくオスバチばかりだった点も見逃せません。オスバチには針がなく、巣の外をふらふら飛ぶ時間が長い。刺されるリスクが低くて捕まえやすい虫を選んでいるように見えます。親鳥は目についた虫を手当たり次第に捕っているわけではないということです。

この「飛ぶ虫だけ」という条件は、庭づくりにもつながります。ツバメを応援したいなら、餌を置くのではなく、虫が飛ぶ環境——水辺や草地が近くにあるかどうかが効いてきます。日本野鳥の会の調査でも、都市部で巣立ちヒナ数にプラスに働く環境として、水域・公園・裸地の順に挙げられています。

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【失敗パターン1】ヒナのために餌を用意してしまう

ツバメの子育てで最も多い善意の空振りが、人が餌を用意してしまうことです。パンくずや米粒を巣の下に置いても、ミルワームを皿に入れても、親鳥もヒナもそれを食べません。1回も減らないまま数日たって、置いた側だけが不安になります。

理由はここまで見てきたとおりで、ツバメが食べるのは飛んでいる虫に限られるからです。地面に置かれた餌は、ツバメにとっては「餌」としての条件を満たしていません。餌台に集まるスズメやシジュウカラとは、口の構造も採餌の方法も別物です。

それどころか、置いた餌は別の動物を呼びます。地面の餌に集まるのはネコやネズミ、そしてカラス。カラスはツバメの子育て失敗原因の上位に入る相手なので、巣の下に餌を置くのは、天敵を巣の真下に呼ぶ行為になりかねません。

対策はシンプルで、餌は用意しない。そのぶん、巣の下に落ちるフンを受ける準備と、人が巣の前で立ち止まらない動線づくりに手をかけたほうが、ヒナに届く餌の量は増えます。手を出さないことが、この鳥に対しては最良の支援になります。

給餌の回数は「近所に虫がいるか」のものさしになる

親鳥の出入りの回数は、その場所の環境を映す鏡でもあります。巣に戻る間隔が短いほど、餌場が近いと考えられるからです。銀座の巣は約100メートル先に養蜂場があり、そこが安定した餌場になっていました。

逆に、出入りの間隔が長い巣は、餌場まで遠いか、虫そのものが少ない可能性があります。日本野鳥の会の全国調査では、市街地の巣立ちヒナ数が平均3.8羽、市街地以外が平均4.2羽と、市街地で0.4羽少ないという結果が出ています。都市部と郊外・農村部の比較でも、約3.9羽と約4.3羽という差が出ています。

観察するなら、スマートフォンのストップウォッチで10分だけ計ってみるのが手軽です。10分間に親鳥が何回戻ったかを数えて、日を変えて記録していく。ヒナが育つにつれて回数が増え、巣立ちが近づくとまた変わっていく流れが見えてきます。

気をつけたいのは、記録に夢中になって巣の近くに長時間立たないことです。三脚を立てて巣の正面に陣取ると、それだけで給餌の回数は落ちます。窓の内側や、少し離れた場所から双眼鏡で見る形にしておけば、親鳥の行動を変えずに数えられます。

ヒナの日齢で読む、巣の中で起きていること

ヒナの日齢で読む、巣の中で起きていることの解説画像

孵化から1週間は「見えないヒナ」の時期

卵がかえっても、最初の1週間は巣のふちからヒナの姿はほとんど見えません。羽もほとんど生えておらず、自分で体温を保てないため、親鳥が温めながら育てる時間が長いからです。

この時期の親鳥は、餌を運ぶ役と温める役を交代でこなします。給餌のあと巣にとどまる時間が長いのはそのためで、銀座の記録でもメスが巣に長く残る様子が捉えられていました。出入りが「思ったより少ないな」と感じても、それは手を抜いているのではなく、温める仕事の分だけ滞在しているということです。

見分け方としては、親鳥が巣に飛び込んだあとすぐ出てこない日が続いていれば、まだ孵化直後です。ヒナの声も、この時期は窓を閉めるとほとんど聞こえないくらいの細さで、道路の音にかき消されます。

この段階で最も避けたいのは、巣に触れることと、長時間の照明です。夜間に巣を照らすライトを新設したり、脚立で目線の高さまで顔を近づけたりすると、親鳥が巣を離れる時間が延びます。体温調節ができないヒナにとって、親鳥の不在は餌以上に痛手になります。

📌 押さえておきたいポイント

ヒナの成長は日齢で読むと迷いません。孵化〜1週目は姿が見えず親鳥が温める時期、2週目に入ると黄色い口が並びはじめ、15日齢前後が食べ盛り。育雛期間は1回目・2回目とも21日と記録されており、巣が窮屈そうに見えたら巣立ちが近いサインです。

15日齢が食べ盛り、巣のふちに黄色い口が並ぶ

銀座の調査でカメラが向けられたのは、ちょうど15日齢のヒナでした。巣立ち前の食べ盛りとされる時期で、3日間で283回という給餌回数はこの段階の記録です。

なぜこの時期に集中するのか。羽が伸び、体が大きくなり、飛ぶための筋肉ができていく段階だからです。体温調節も自分でできるようになるので、親鳥は温める仕事から解放され、そのぶんを餌運びに回せます。出入りの激しさがピークに達するのがこのころです。

外から見ると、巣のふちに黄色い口が並んで見えるようになります。親鳥が近づく気配だけで、いっせいに口を開ける。人の足音でも口を開けてしまうことがあり、これは「人が来た=親が来た」と誤解しているサインなので、そういう反応が出るほど近づいているなら距離を取り直したほうがいい合図です。

この時期に多い勘違いが、「ヒナが1羽減った気がする」というものです。巣の中でヒナは体勢を入れ替えるので、見えるタイミングによって数が変わって見えます。数えるなら、日の高いうちに同じ角度から短時間だけ確認する。減ったかどうかを確かめたくて巣の真下に居座るのは、逆効果になります。

巣が窮屈になったら巣立ちのカウントダウン

育雛の期間は1回目・2回目とも21日と記録されています。孵化した日がわかっていれば、そこから3週間後が目安です。わからない場合は、巣の見た目でおおよそ判断できます。

判断材料は「窮屈さ」です。孵化直後は巣のなかに余裕がありますが、ヒナが育つにつれて体が巣からはみ出すようになり、羽ばたきの練習で巣のふちに乗るヒナも出てきます。この段階になると、親鳥が巣に入らず、外から口移しで餌を渡す場面も見られるようになります。

もうひとつの手がかりが、羽の色です。生えたての羽は縁がまだ揃わず、尾も短いままです。ツバメの成鳥は雌雄同色で、並ぶとオスのほうが尾が細長いという特徴がありますが、巣立ち前後の若いツバメは尾が短く、そこで見分けがつきます。

この時期に巣の掃除や修理をしたくなっても、手を出さないのが正解です。フンで巣の下が汚れていても、巣立ちまであと数日という段階で脚立を立てると、驚いたヒナが巣から飛び出してしまうことがあります。飛べる状態になる前の「早すぎる巣立ち」は、生存率を下げます。

巣立ちの日は晴れた午前中に来る|地面のヒナを拾わない理由

晴天の午前10時〜12時、親がリードして飛び出す

巣立ちの日は、意外とはっきりした条件のもとで訪れます。研究記録では、晴天の午前10時〜12時に親がリードして出るとされています。平均の巣立ち数は4.5羽です。

時間帯が決まっているのには理由があります。気温が上がって上昇気流が出る時間帯のほうが、飛び慣れていないヒナでも滞空しやすい。そして日が高いうちに巣立てば、その日のうちに飛ぶ練習と餌をもらう時間を確保できます。夕方に飛び出すより明らかに有利です。

当日の巣は独特の雰囲気になります。親鳥が巣に入らず、少し離れた電線から鳴き続ける。ヒナは巣のふちに出て羽ばたき、飛び出しては戻りを繰り返す。1羽が出ると続けて出ることが多く、数時間のうちに巣が空になります。

見守るなら、その日は窓の内側から。巣立ちの瞬間に近づいて撮影しようとすると、親鳥の誘導が中断され、ヒナが中途半端な場所に着地します。この鳥にとって巣立ちは「一斉に、まとまって」行うほうが安全なので、人が場面を止めないことが手助けになります。

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地面にいるヒナを拾ってはいけない

巣立ちの季節に必ず起きるのが、「地面にヒナがいる」という状況です。東京都の案内では、巣立ちしたばかりのヒナはうまく飛べないため、枝から枝へ移るときなどに地面に降りてしまうことがあると説明されています。基本の対応は、そのままにしてそっと離れることです。

親鳥は必ずヒナのもとへ戻って世話を続けます。ただし人が近くにいる間は近寄れません。心配して立ち止まっている時間が、そのままヒナが餌をもらえない時間になります。「親鳥が見当たらない」のは、人がいるから来られないだけ、というケースがほとんどです。

人間が代わりに育てることもできません。飛び方も、餌の取り方も、何が危険かも教えられないからです。加えて、許可なく野鳥を飼うことは法律で禁止されています。「ヒナを拾わないで!!キャンペーン」は環境省の後援で、日本鳥類保護連盟や日本野鳥の会などが実施している全国的な呼びかけです。

唯一の例外がネコです。東京都の案内でも、ネコが近くにいる場合は、近くの木の枝先などネコが近寄れないところに移す、という対応が示されています。連れ帰るのではなく、その場の安全な高さに移すだけ。移したらすぐに離れて、親鳥が来られる状態をつくります。

⚠️ 注意:必ず知っておきたいこと

地面にいるヒナは、原則として拾わずそっと離れます。親鳥は必ず戻りますが、人がそばにいる間は近づけません。ネコが近くにいるときだけ、木の枝先などネコが届かない場所に移してすぐ離れてください。許可なく野鳥を飼うことは法律で禁止されています(東京都環境局/環境省後援「ヒナを拾わないで!!キャンペーン」)。東京都環境局「ヒナを拾わないでください」

巣立ってからも、しばらくは親から餌をもらう

巣が空になっても、子育てが終わったわけではありません。巣立ち直後のヒナは飛ぶのが下手で、電線や枝にとまったまま親から餌をもらいます。巣立ちは「独立」ではなく「引っ越し」に近いと考えたほうが実態に合っています。

飛びながら虫を捕るという技術は、練習しないと身につきません。親鳥が空中で餌を渡す場面が見られるのはこの時期で、若いツバメが親に向かって鳴きながら追いかけていく姿は、巣立ち直後の数日の風景です。

見分け方としては、尾の長さが手がかりになります。巣立ったばかりの若いツバメは尾が短く、成鳥のような細長い形にはなっていません。電線に並んでいるツバメのなかで尾が短い個体が混じっていたら、その年に巣立った子です。

この時期に注意したいのが、家の周りでの一時的なフンの増加です。ヒナは巣を離れても近くにとまるので、巣の下だけでなく、電線の下や物干しの上が汚れることがあります。あと数日の辛抱ですが、洗濯物の位置を変えるなどの現実的な対応を用意しておくと、家族の不満がたまりません。

子育てが途中で終わる原因、1位は不明で2位はカラス

アンケートが示した内訳:不明32%・カラス23%・巣落ち15%

ツバメの子育ては、必ず成功するわけではありません。ツバメかんさつ全国ネットワークが行った巣立ち失敗原因のアンケートでは、不明が32%、カラスに襲われたが23%、巣が落ちたが15%と続いていました。

1位が「不明」なのは、失敗が人の目の届かない時間に起きるからです。カラスは人がいない隙を狙ってやってくるため犯行現場を見るのは難しく、数字にはいくらか推測が混じっている可能性がある、と同ネットワークも断っています。実際の被害はもう少しカラス寄りかもしれません。

日本野鳥の会の全国調査(のべ5,351人・10,586巣)では、繁殖失敗の内訳が、捕食者による被害が約35%、巣の落下・雛の転落が22%、人による巣撤去が約9%と報告されています。調査主体も方法も違いますが、「捕食者」「巣の物理的な落下」「人」という3つが主要因である点は一致しています。

ここから読み取れる対策の優先順位は明快です。カラスを近づけない工夫と、巣が落ちない下地づくり。この2つで、把握できている失敗要因の半分以上に手が届きます。

失敗の原因 ツバメかんさつ全国ネットワークのアンケート 日本野鳥の会 全国調査
捕食者(カラス等) カラスに襲われた 23% 捕食者による被害 約35%
巣の落下・転落 巣が落ちた 15% 巣の落下・雛の転落 22%
人によるもの (項目なし) 人による巣撤去 約9%
不明・その他 不明 32%

※野鳥の教科書調べ(ツバメかんさつ全国ネットワークのアンケートと、日本野鳥の会「ツバメの全国調査」の公表値を並べたもの。調査主体・方法が異なるため単純比較はできません)

【失敗パターン2】カラス対策を早く始めすぎる

カラス対策として、巣の前にネットやヒモを張って近づけなくする方法があります。ホームセンターで売っている防鳥ネットが便利で、ヒモを使う場合はツバメやカラスが怪我をしないよう目に見えるものを選びます。見えにくい釣り糸は使いません。

ここで多いのが、タイミングを間違えてツバメまで追い払ってしまう失敗です。ツバメかんさつ全国ネットワークも、対策のタイミングを間違えるとツバメまで追い出す結果になる、と注意を促しています。巣にやって来たばかりのツバメは警戒心が強く、この段階でネットやヒモを張ると巣そのものを捨てられます。

正解は、卵を産んで温めはじめたときが頃合いということです。ツバメがずっと巣に座っているようになれば抱卵していると考えられます。念のため確認したいときは、棒の先に鏡を付けてチェックする方法もあります。

ヘビ対策も同じ考え方です。アオダイショウは木に登って小鳥の巣を襲う習性があり、垂直の壁でもウロコを引っかけて登るとされています。登りそうな場所には滑りやすいビニールシートをかけておくとよい、というのが同ネットワークの案内です。こちらも抱卵に入ってから設置すれば、ツバメを驚かせずに済みます。

実は、スズメがツバメの巣を襲うことがある

意外と知られていないのが、スズメがツバメの天敵になりうることです。ツバメかんさつ全国ネットワークは、スズメがツバメの巣を襲ってヒナを落としてしまうことがあると紹介しています。理由ははっきりしていません。

さらに不可解なのが、追い出したあとの行動です。巣にワラを詰めて自分で使うこともありますが、自分が巣を使わないのにツバメを追い払おうとすることも少なくない、とされています。「巣が欲しいから奪う」だけでは説明がつかない行動です。

庭で観察していると、スズメとツバメが同じ軒先を行き来している場面は珍しくありません。スズメがツバメの巣のふちにとまっているのを見かけたら、それは休憩ではない可能性があります。とはいえスズメも鳥獣保護管理法の対象なので、追い払う以上のことはできません。

現実的にできるのは、巣の周囲にスズメがとまれる足場を作らないことと、ツバメが安心して出入りできる空間を確保することくらいです。人通りの多い場所にツバメが好んで巣を作るのは天敵が近寄りにくいためで、道の駅やサービスエリアのトイレによく巣があるのは、24時間人が出入りしていて一番安全だから、と説明されています。「人の気配」そのものが、ツバメにとっては防御装置なのです。

巣が落ちるのは物理の問題、下地で決まる

失敗原因の2割前後を占める「巣の落下」は、対策のしようがある項目です。ツバメの巣は泥でできているので、下地がツルツルだと接着が効きません。近年の住宅で巣作りが減っている理由のひとつが、この壁面の加工にあります。

日本野鳥の会も、ツバメが減っている背景として、軒のない西洋風家屋の増加と、壁面が加工されて巣が作りにくくなっていることを挙げています。作れないだけでなく、作っても落ちるという問題が起きています。

巣が落ちやすいのは、乾きが遅い梅雨どきと、ヒナが大きくなって重くなる時期です。育雛の後半、5羽近いヒナが入った巣は、作りはじめのころとは重さが違います。この時期に泥がゆるむと、巣ごと落ちます。

すでに巣がある家でできることは、巣の真下に板や棚を取り付けて「落ちても受け止められる」状態にしておくことです。ただし工事の音や脚立の作業は、抱卵に入って落ち着いてから、短時間で終える。巣そのものには触れず、下に支えを足すだけにとどめます。

フンで嫌われないための、家側の準備

フン受けは抱卵が始まってから設置する

ツバメと暮らすうえで最大の摩擦がフンです。ツバメかんさつ全国ネットワークが案内するフン受けは、ツバメが抱卵を始めたら設置するのが原則とされています。それより早いと、ツバメが警戒して巣を放棄することがあるからです。

カラス対策と同じタイミングなのは偶然ではありません。巣作り直後のツバメは環境の変化に敏感で、巣の近くに新しいものが増えるだけで「危ない場所だ」と判断します。逆に抱卵に入ってからは、卵に投資した分だけ簡単には巣を捨てません。

製品として売られているものはプラスチック段ボール製で、耐水紙が20枚つづりになっており、汚れたら1枚ずつめくって使えます。もっと簡単な方法としては、下に新聞紙を敷く、ダンボールや傘を利用して糞よけを作るといった工夫が各地から報告されています。

そしてもうひとつ大事なのが、ツバメが去ったらフン受けを外すことです。つけたままにしていると、翌年はツバメが巣を使わないことがあると案内されています。「来年も来てほしい」と思って残しておくと、逆の結果になるということです。

🏠 手順ステップガイド
Step1:巣ができても、しばらくは何もしない(来たばかりのツバメは警戒心が強く、巣を放棄しやすい)
Step2:親鳥がずっと巣に座るようになったら抱卵開始のサイン。ここが準備の頃合い
Step3:フン受けを設置し、必要ならカラス対策のネットやヒモを張る(見えにくい釣り糸は使わない)
Step4:巣立ちまでは巣に近づかず、フン受けの紙を交換するだけにとどめる
完了! ツバメが去ったらフン受けを外す。つけたままだと翌年その巣が使われないことがあります

卵やヒナがいる巣は、許可なく撤去できない

巣の扱いには法律が関わります。長岡京市は、府や市町村の許可なく卵やヒナがいる野鳥の巣を撤去することは、鳥獣保護管理法により禁止されていますと案内しています。違反した場合、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金いずれかの刑罰が課される可能性があるとされています。

撤去できるのは、鳥が巣立った後です。長岡京市はその際も、中に卵やヒナが残っていないか必ず確認するよう呼びかけています。空に見えても、二番子の卵が入っていることがあるためです。

神奈川県も同様に、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律により、ツバメおよびツバメの卵の捕獲や採取は禁止されており、例外的に県の許可を受ければ認められる、と説明しています。巣立ち後は許可なく巣を取り外せますが、卵やヒナがいる場合は捕獲許可申請が必要です。

そのうえで神奈川県は、繁殖期間(4〜7月)の鳴き声や糞を理由に巣を除去したい気持ちは理解しつつ、成長を温かく見守ってほしいと呼びかけています。法律が禁じているのは撤去そのものではなく、「中に命がある状態での撤去」です。順番さえ守れば、家の都合と両立できます。

⚠️ 注意:必ず知っておきたいこと

卵やヒナがいる巣を、許可なく撤去することはできません。長岡京市は鳥獣保護管理法により禁止されているとし、違反した場合は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金いずれかの刑罰が課される可能性があると案内しています。撤去は巣立ち後に、中に卵やヒナが残っていないか確認してから行ってください。判断に迷う場合はお住まいの自治体の担当窓口に相談を。長岡京市「行政の許可なくツバメの巣などを撤去すると、法律違反になる可能性があります」

店舗・住宅・集合住宅、立場で変わる現実的な落としどころ

同じ「巣ができた」でも、置かれた立場によってできることは変わります。戸建ての住宅なら、フン受けを設置して玄関の動線を少しずらすだけで、巣立ちまでの1か月あまりを乗り切れることがほとんどです。人通りがあること自体はツバメにとって安全材料なので、通行をやめる必要はありません。

店舗や事務所の場合は、お客さんの頭上が問題になります。フン受けに加えて、巣の下に「ツバメが子育て中です」と一言掲示しておくと、汚れへの苦情が「応援」に変わることが少なくありません。日本野鳥の会の調査では、都市部で人が巣を壊した割合が10.6%と、郊外や農村部の1.5%の約7倍にのぼっています。掲示は、その差を埋める安上がりな方法です。

集合住宅は最も判断が難しい立場です。共用部の壁や廊下に巣ができた場合、個人の判断で手を加えることはできません。管理会社や管理組合に、法律上は卵やヒナがいる間は撤去できないことを伝えたうえで、フン受けの設置を提案する形になります。

どの立場でも共通するのは、「巣立ちまでの期間には終わりがある」という事実です。産卵初日から39日、二番子まで含めても夏のうちに終わります。この見通しを最初に共有しておくと、周囲の理解を得やすくなります。

二番子・ねぐら・渡り|子育てのあとに待っていること

2回目の子育てはヒナが1羽少ない

ツバメは春から夏にかけて2回子育てすることもあります。日本野鳥の会の全国調査によれば、1巣あたりの巣立ちヒナ数は1番子が4羽、2番子が3羽でした。2回目のほうが1羽少ない計算です。

理由は複数考えられますが、季節が進むにつれて餌となる虫の条件が変わること、親鳥自身が1回目の子育てで体力を消耗していることが関係していそうです。産卵数も、1回目のほうがやや多い傾向が記録されています。

抱卵日数も、1回目14日に対して2回目は12日と短くなります。産卵初日から巣立ちまでの日数も、1回目39日・2回目36日と短縮されます。夏の終わりまでに渡りの準備を終えなければならないので、2回目は全体的に前倒しで進むわけです。

観察するなら、7月に巣が再びにぎやかになったら二番子を疑います。1回目の巣を補修して使うこともあるので、「巣立ったから」と巣を落としてしまわないことが大切です。空になった巣を数日そのままにして、親鳥が戻ってこないか様子を見てから判断してください。

比較項目 1回目(1番子) 2回目(2番子)
抱卵日数 14日 12日
成育日数(育雛) 21日 21日
産卵初日から巣立ちまで 39日 36日
巣立ちヒナ数(全国平均) 4羽/巣 3羽/巣

※野鳥の教科書調べ(日数は「ツバメの生態(第3報)」、巣立ちヒナ数は日本野鳥の会「ツバメの子育てを見守ろう」の公表値による)

子育てが終わると、ヨシ原に数千羽から数万羽が集まる

すべての子育てが終わると、ツバメは家の軒先から姿を消します。行き先はヨシ原です。日本野鳥の会は、子育てが終わると川沿いのヨシ原等に数千羽から数万羽が集まり、ねぐらをとると説明しています。

集団になるのは安全のためです。1羽ずつ眠るより、大きな群れでいるほうが天敵に対して有利になります。渡りに向けて体力を蓄える時期でもあり、餌の豊富な水辺が選ばれます。

この「ツバメのねぐら入り」は、夏の終わりの見どころのひとつです。日没前後、空にツバメが集まりはじめ、渦を巻くようにヨシ原へ吸い込まれていく。各地の河川敷で観察会が開かれることもあるので、地元の自治体や野鳥の会の情報を調べてみる価値があります。

庭から巣が空になって寂しく感じる時期ですが、ツバメは近所からいなくなったわけではありません。日中は水辺で虫を捕り、夜はヨシ原で眠る生活に切り替わっただけです。夕方の川沿いを歩いてみると、思いがけない数のツバメに出会えます。

8月中旬から10月、2,000km先へ向かう

ねぐらでの生活を経て、ツバメは8月中旬から10月にかけて東南アジアへ渡ります。その年に巣立った若い個体も一緒です。生まれて数か月で、海を越える旅に出ることになります。

渡りをするのは餌の都合です。飛ぶ虫しか食べないツバメにとって、日本の冬は餌がない季節です。虫がいる場所へ移動するしかありません。逆にいえば、春に戻ってくるのも虫が増えるタイミングに合わせているということです。

ただし、そのツバメの数が減っています。日本野鳥の会は、大阪府吹田市の調査で1998年から2010年の12年間に3分の1に減ったこと、石川県で昭和47年から続く「ふるさとのツバメ総調査」で年を追うごとに減っていることを紹介しています。同会の調査では、過去約10年で数が減ったと感じている市民が約4割にのぼりました。

原因として挙げられているのは、宅地化による里山の自然の消失、農業の衰退で水田や耕作地が減り餌となる虫が少なくなったこと、そして軒のない西洋風家屋や加工された壁面で巣が作りにくくなったことです。つまり、家の軒先で子育てを見守れるかどうかは、この鳥の将来に直結しています。日本野鳥の会「ツバメの現状」も一度目を通してみてください。

Q. 去年と同じツバメが、今年もうちの巣に戻ってきているのでしょうか?
A. 見た目だけで判断するのは難しいです。ツバメは雌雄同色で、並ぶとオスのほうが尾が細長いという違いはありますが、個体を見分ける手がかりにはなりません。足環による標識調査でなければ「同じ個体か」は確認できないのが実際のところです。ただし、同じ巣が翌年も使われること自体は珍しくありません。だからこそ、シーズンが終わったらフン受けを外しておくことが、翌年につながります。

まとめ:ツバメの子育ては、見守るだけでいい

🐦 この記事の結論

ツバメの子育ては産卵初日から巣立ちまで39日で終わります。人がすべきは餌やりではなく、抱卵後のフン受け設置と距離をとることです。

✅ 要点チェック
  • 日数:抱卵14日+育雛21日で計39日
  • 給餌:15日齢に3日で283回運んだ記録
  • 餌やり:飛ぶ虫だけなので人の餌は不要
  • 準備:フン受けは抱卵開始後に設置する
  • ヒナ:地面にいても拾わずそっと離れる

まず今日できるのは、巣の様子を1日1回、10分だけ遠くから眺めることです。親鳥がずっと座っていれば抱卵中、出入りが激しくなっていれば育雛中。その見分けがつけば、フン受けを出すタイミングも、カラス対策を始めるタイミングも自然に決まります。餌を用意したり、巣をのぞき込んだりする必要はありません。手を出さずに数えるだけで、軒先の1か月あまりは驚くほど豊かな観察対象になります。

※法律の運用や巣の扱いに関する判断は自治体によって異なる場合があります。撤去の可否など迷う場合は、お住まいの自治体の担当窓口や公式サイトで最新情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

野鳥の教科書編集部です。テーマに関する基礎知識や選び方を、公式情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、変更があれば更新します。

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