ベランダの室外機の裏や、マンションの通路の隅。ふとのぞき込んだ枯れ枝の山に、白い卵が2つ並んでいた——そんな場面に出会うと、まず頭に浮かぶのは「これは何の鳥の卵だろう」「どかしていいのだろうか」という2つの疑問だと思います。
先に結論をお伝えします。街なかで見つかる白い卵が2個セットなら、その多くは鳩の卵です。鳩の卵は白色の楕円形で、長径4cm2mm、短径3cm。ウズラの卵くらいの大きさで、1回の産卵で2個産むのが標準です。そして、卵やヒナがある巣を許可なく撤去することは、鳥獣保護管理法によってできません。困っていても、まず手を出さないことが正解になります。
この記事では、鳩の卵の見た目と大きさから、2日間隔で1個ずつ産まれる産卵スケジュール、16〜18日の抱卵期間、ヒナを育てる「ピジョンミルク」という不思議な食べ物、ドバトとキジバトの違い、そして卵を見つけたときに法律上できること・できないことまでを、順番に整理します。観察したい人にとっても、困っている人にとっても、最初の判断材料になるはずです。
この記事でわかること
・鳩の卵の色・形・大きさ・重さと、1回に2個産む理由
・産卵から孵化、巣立ちまでのスケジュールと日数
・ドバト(カワラバト)とキジバトで違うところ、同じところ
・卵やヒナがある巣を撤去できない法律上の根拠と、正しい手順
鳩の卵は白い楕円形|長径4cm2mmという実寸を知ると迷わない

「鳥の卵」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、斑点のある茶色っぽい卵かもしれません。ところが鳩の卵は、模様がまったくない真っ白な楕円形です。この見た目の素っ気なさが、実は最初の手がかりになります。
色は白一色、斑点も模様もないのが鳩の卵
鳩の卵は白色です。ドバト(カワラバト)もキジバトも、産む卵は白色で、表面に斑点や線状の模様は入りません。だから、建物の隙間や木の枝の上で真っ白な卵を見つけたら、鳩である可能性がかなり高くなります。
身近な鳥の卵には、地色に斑点が散っているものや、青緑がかった色をしているものが少なくありません。当ブログでもカラスの卵を別記事で扱っていますが、そちらは色も斑点の入り方も鳩とはっきり違います。つまり「白一色・無地」という条件は、それだけでかなり候補を絞り込める特徴なのです。
実際に見分けるときは、卵だけを見るのではなく、置かれている場所と数をセットで確認してください。白い卵が2個、枯れ枝を粗く組んだだけの薄い巣に乗っている——この組み合わせなら、鳩と考えて動くのが現実的です。注意したいのは、暗がりでスマートフォンのライトを当ててじっくり確認しようとすること。親鳥が近くにいる場合、強い光は刺激になります。確認は一瞬で切り上げ、その場を離れるのが基本です。

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大きさはウズラの卵くらい|長径4cm2mm・短径3cm
鳩の卵の大きさは、長径が4cm2mm、短径が3cmです。ダスキン・ターミニックスの解説では「ちょうどウズラの卵くらいの大きさで白色」と説明されており、別の図鑑系の資料では「ニワトリの卵とウズラの卵の中間程度の大きさ」とされています。どちらの表現も、手のひらに乗せると小さく感じるサイズ感を指しています。
この「中間くらい」という幅のある言い方になるのは、鳩の種類や個体で多少の差があるためです。スーパーで売られているウズラの卵をイメージして、それよりひとまわり大きいくらい、と考えると実物に近くなります。細長すぎず、丸すぎない楕円形で、どちらかの端がわずかに細くなっています。
見つけたときに大きさを測ろうとして、定規を近づけたり卵を持ち上げたりするのは避けてください。後述しますが、卵に手を触れる行為そのものが法律上の問題になり得ますし、親鳥が巣を放棄する引き金にもなります。大きさは「見た目でウズラの卵くらい」で十分に判断できます。距離を取ったまま、スマートフォンの画面越しに周囲のタイルや木の枝の太さと見比べるだけでも、おおよその見当はつきます。
重さは30〜40グラム|ドバトの卵の実測値
ドバト(カワラバト)が1回に産む卵は通常2つで、重さは1つ30〜40グラムほどとされています。数字だけ見るとピンと来にくいのですが、鳩の親鳥の体格を考えると、決して軽い負担ではありません。それを2日の間隔をあけて2個産むのですから、メスにとって産卵期は体力を使う時期です。
この重さは、巣の作りとも関係してきます。鳩の巣は小枝を組んだだけの薄い皿状で、鳥の巣としては簡素な部類です。強い風が吹けば卵が転がり落ちることもあり、ベランダで「卵が割れて落ちていた」というケースはよく起こります。巣が粗く見えるのは手抜きではなく、鳩という鳥の作り方がもともとそういうものだ、と理解しておくと余計な手出しをせずに済みます。
やりがちな失敗が、落ちそうな卵を見かねて巣の中央に戻してあげることです。善意の行動ですが、これも卵に触れる行為にあたります。さらに、人のにおいや気配が巣に残ることで親鳥の警戒が強まる可能性もあります。落ちた卵、割れた卵を含め、卵に関しては「見守る・触らない」が原則です。
1回に産むのは2個|年に7〜8回産むこともある
鳩が1回に産む卵の数は2個です。これはドバトでもキジバトでも共通していて、資料によっては「1回に2〜3卵」と幅を持たせているものもありますが、標準は2個と考えて問題ありません。3個以上がずらりと並ぶことは、まずありません。
そのかわり、鳩は産卵の回数が多い鳥です。ドバトは年間3〜5回産卵するとされ、条件によっては年間に7〜8回産む場合があると説明されています。1回あたりの卵数は少なくても、年間を通した総数で見ると決して少なくない、というのが鳩の繁殖の特徴です。
ここが、ベランダの鳩対策で「1回だけ我慢すれば終わる」と考えてはいけない理由でもあります。巣立ちを見届けた場所は、同じつがいがまた使うことがあります。卵とヒナがいる間は手を出せませんが、巣立って空になったタイミングで巣材を片づけ、隙間をふさぐところまでをセットで考えておく必要があります。この「空になってから動く」という順番を、次の章から具体的に見ていきます。
| 色 | 白色(斑点・模様なし) |
| 形 | 楕円形 |
| 大きさ | 長径4cm2mm/短径3cm(ウズラの卵くらい) |
| 重さ | 1個あたり30〜40グラム(ドバト) |
| 1回の産卵数 | 2個 |
| 産卵の間隔 | 1個目のあと、2日間隔で2個目 |
2日間隔で1個ずつ|産卵から巣立ちまでのスケジュール
鳩の繁殖は、思っているよりも段取りがはっきりしています。日数の目安を知っておくと、「今この巣はどの段階か」「あと何日ほどそっとしておく必要があるか」が読めるようになります。
1つ目の卵は交尾から4〜5日目の夕方に産まれる
ドバトの場合、交尾から4〜5日目の夕方に1つ目の卵を産みます。ダスキン・ターミニックスの解説でも「受精後4、5日で産卵します」と説明されており、繁殖の開始から産卵までは比較的短い期間で進みます。
この段階では、巣はすでに完成しています。鳩は約3〜4日で巣を完成させるとされているため、「枯れ枝が集まりはじめたな」と気づいてから卵が産まれるまでの猶予は、そう長くありません。ベランダに巣材が持ち込まれているのを見つけた時点が、手出しできる最後のタイミングになりやすい、ということです。
逆に言えば、この時期の観察は貴重です。オスが枝をくわえて運び、メスが巣に組み込んでいく様子は、ベランダの窓越しでも十分に見えます。ただし、窓を開けて身を乗り出すと親鳥は作業を中断します。カーテンの隙間から、動かずに見る。それだけで、鳩の巣作りは驚くほど観察しやすい対象になります。
2つ目の卵は、その2日後の夕方
1つ目の卵が産まれると、その2日後の夕方に2つ目の卵が産まれます。左の卵が先に産まれ、その後2日間隔で産卵される、という説明のとおり、2個の卵は同時ではなく時間差で巣に並びます。
この「2日ずれる」という点は、あとの成長段階にも影響します。同じ巣の中でヒナの大きさに差がついて見えることがありますが、それは異常ではなく、産卵の時間差がそのまま孵化の時間差になっているためです。片方が明らかに小さいからといって、弱っていると決めつける必要はありません。
観察するなら、この時期は特に距離が重要になります。産卵直前・直後の親鳥は巣に強く執着している一方で、繰り返し人が近づくとあっさり離れてしまうこともあります。「何個産んだか確認したい」という気持ちで毎日のぞきに行くのは、いちばんやってはいけない行動です。数を確認したいなら、親鳥が巣を離れて水を飲みに行くタイミングを、離れた場所から一度だけ見れば足ります。
孵化までは16〜18日|寒いと1〜2日延びる
ドバトの卵は16〜18日で孵化します。外気温が低い場合は1〜2日延びるとされ、季節によって前後します。資料によって「平均18日で孵化」「約16日で孵化」と書き方に幅があるのは、この気温差や観察環境の違いを反映しているためです。
つまり、卵を見つけた日から2週間強はヒナが出てこない計算になります。この期間、親鳥はほとんど巣の上にいます。「ずっと同じ場所から動かない鳩がいる」と気づいたら、抱卵中と考えてほぼ間違いありません。
ここで知っておきたいのが、卵が冷えると発生が止まってしまうという点です。人が近づいて親鳥を巣から追い立てる行為は、たとえ数分でも卵にとってはリスクになります。特に気温の低い時期は、その影響が大きくなります。観察も点検も、親鳥が自分の意思で巣を離れているタイミングに限る——これが、卵を傷つけずに関わるための基本的な線引きです。
孵化から巣立ちまで|30〜35日という長さ
孵化したヒナは、生後30〜35日で巣立ちます。バードリサーチの資料では「孵化から28-35日で巣立つ」とされ、ダスキン・ターミニックスの解説では「孵化後40日ほどで巣立ちします」と書かれています。資料によって幅がありますが、いずれにしても1か月前後は巣で過ごす、という点は共通しています。
スズメやシジュウカラのように2週間ほどで巣立つ鳥と比べると、鳩のヒナは長く巣にとどまります。この間、親鳥は餌を運び続け、巣にはフンがたまっていきます。ベランダの鳩の巣が衛生面で問題になりやすいのは、この滞在期間の長さが理由のひとつです。
そして巣作りから巣立ちまでを合計すると、約2ヶ月かかるとされています。「卵を見つけてしまった」時点から数えると、片づけられるようになるまでにひと月以上待つ場面もあり得ます。長いと感じるかもしれませんが、この待ち時間は法律上の要請でもあります。次の章以降で、その根拠を具体的に確認していきます。
抱卵は昼と夜で担当が入れ替わる|親鳥が動かない理由

「同じ場所からずっと動かない鳩がいる」——その正体は、抱卵中の親鳥であることがほとんどです。鳩の抱卵には、ほかの鳥にはあまり見られないはっきりしたルールがあります。
日中は交代、夜はメスが担当する
ドバトの抱卵は、日中はオスとメスが交代で行い、夜間はメスが主に抱卵を行います。バードリサーチの資料でも「抱卵は、日中は雌雄交代で行い、夜間はメスが抱卵する」と記載されており、両親が役割を分けて卵を温めていることがわかります。
この分担があるからこそ、卵は長時間放置されずに済みます。片方が餌を探しに行っている間、もう片方が巣にいる。鳩の夫婦仲は良く、両親が交代で抱卵するという説明のとおり、繁殖期の鳩は2羽1組で動いているのが基本です。
観察する側にとって、この交代は絶好の見どころになります。巣の近くにもう1羽が飛んできて、数十秒のやりとりのあと座っていた個体が飛び立つ——この入れ替わりは、離れた場所から見ていても十分わかります。逆に、日中に何時間も1羽きりで、交代が一度も起きないような場合は、つがいの片方に何かあった可能性も考えられます。ただしそれを確認するために近づくのは本末転倒なので、あくまで「そういうこともある」という理解にとどめてください。
キジバトは昼がオス、夜がメスとはっきり分かれる
同じ鳩の仲間でも、キジバトの抱卵はもう少しきっちりしています。抱卵は昼間はオスが、夜はメスが行い、抱卵期間は約14日、卵から雛がかえるには14〜16日かかるとされています。
ドバトの「日中は交代」に対して、キジバトは「昼はオス」と役割が固定されている点が違いです。ということは、公園や庭の木の上にある皿状の巣を昼間に見て、抱卵している個体がいたなら、それはオスである可能性が高いことになります。鳥の雌雄が外見で見分けにくいキジバトにおいて、これはちょっとした手がかりです。
もっとも、キジバトの巣は木の枝分かれに小枝を組んだ薄い皿状の巣で、下から見上げると卵が透けて見えるほど粗いこともあります。だからといって双眼鏡で長時間ロックオンするのは避けたいところ。巣の位置を特定したら、通りがかりに一瞬確認する程度にとどめ、通行ルート自体を変えるのが親鳥にとっていちばん負担が少ない方法です。
やりがちな失敗①|毎日のぞいて親鳥に巣を放棄させる
鳩の卵をめぐる失敗として最も多いのが、「気になって毎日のぞきに行く」ことです。日本野鳥の会が示す観察マナーでは、巣や巣立ち雛に遭遇した場合、すみやかにその場を離れるようにしましょう、とされています。理由は明確で、親鳥はストレスから巣を放棄したり、ヒナを早期に巣立たせたりする可能性があるからです。
ベランダのように生活空間と巣が近い場合、この距離の取り方はさらに難しくなります。洗濯物を干すたびに親鳥が飛び立ってしまう状況では、卵は繰り返し冷えることになります。「見守っているつもり」が、結果として繁殖の失敗につながることがある、という点は知っておいてください。
対策はシンプルです。巣の存在に気づいたら、そのエリアの利用を最小限にし、確認は日に一度、遠くから短時間で済ませる。写真を撮るならフラッシュを使わず、カーテンや窓越しに撮る。この2つを守るだけで、親鳥への負担は大きく変わります。詳しい観察マナーは記事後半でまとめて整理します。
鳩の抱卵は「日中は交代・夜はメス」(ドバト)、「昼はオス・夜はメス」(キジバト)。両親そろって卵を温めるため、巣が長時間空になることは基本的にありません。親鳥が見当たらないからといって「放棄された」と判断するのは早すぎます。
ヒナを育てるのは虫でも種でもない|ピジョンミルクという食べ物
鳩の子育てには、ほかの多くの小鳥とはっきり違う点があります。それが「ピジョンミルク」です。この仕組みを知ると、なぜ鳩が街なかであれだけ増えられるのかが、生態の面から見えてきます。
そのうから分泌される、粥のような液体
ピジョンミルクは、食道の一部である「そのう」から分泌され、親鳥が吐き戻して口移しで雛に与えられます。見た目は粥状で、たんぱく質や脂肪、リン、カルシウムなどの栄養素が豊富に含まれているとされ、免疫グロブリンも含まれます。
名前に「ミルク」とついていますが、乳腺から出る哺乳類の母乳とは器官も仕組みも別物です。それでいて、哺乳類の母乳と比べてたんぱく質や脂肪の含有量が非常に高いという特徴を持っています。孵化したばかりのヒナが、外から虫を運んでもらわなくても育つのは、この濃い食べ物があるからです。
ここが、ツバメやシジュウカラの子育てとの決定的な違いになります。ツバメの親鳥は飛ぶ虫を延々と運び続けなければヒナを育てられませんが、鳩の親鳥は自分の体内で作った食べ物を与えられます。餌となる虫が少ない時期でも繁殖できるかどうかは、この差から生まれています。

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実は、オスもミルクを出せる
意外と知られていないのは、ピジョンミルクをメスだけでなくオスも分泌できるという点です。両親が協力して給餌することで、一年中繁殖が可能になると説明されています。
「鳩は一年中卵を産む」という話は聞いたことがあっても、その理由まで意識している人は多くありません。実際、ドバトは繁殖が年中可能で、春と秋に盛んになるとされています。オスもメスも同じ食べ物を作れるため、片方が休んでいる間ももう片方が給餌でき、繁殖のサイクルを止めずに回せる——この体の仕組みが、季節に縛られない繁殖を支えているわけです。
抱卵を交代し、給餌も両方が担う。鳩のつがいは、鳥の中でもかなり分担が徹底している部類だと言えます。ベランダで2羽の鳩が入れ替わり立ち替わり出入りしているのを見たら、それは「どちらが親か」ではなく「両方とも親」だと考えるのが正解です。
分泌のスイッチは、ヒナの鳴き声
ピジョンミルクは常に出続けているわけではありません。雛の鳴き声を聞くことでスイッチが入って分泌されるとされています。つまり、ヒナが孵化して声を出しはじめることが、親鳥の体に「今から必要だ」と伝える合図になっています。
この仕組みを知っておくと、巣の周りで人が立てる物音がどれだけ影響しうるかも想像しやすくなります。親鳥がヒナの声を聞き取れる環境が保たれていることは、給餌のサイクルにとって前提条件です。巣のすぐそばで長く作業をする、大きな音を出すといった行為は、避けられるなら避けたいところです。
また、地面に落ちたヒナを見て「お腹をすかせているのでは」と食べ物を与えようとする人がいますが、鳩のヒナが必要としているのは親鳥が作るピジョンミルクであって、人が用意できるものではありません。人の手で代わりを用意するという発想自体が成り立たない、というのがこの章のいちばん実用的な結論です。

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生後20日ごろから固形物へ切り替わる
ピジョンミルクだけで育つ期間は、生まれてすぐの数日間です。生後数日から生後20日程度まではピジョンミルク中心の食事で、その後は徐々に昆虫などの固形物へ移行していきます。
この移行期になると、巣にたまるフンの量や性質も変わってきます。ベランダの巣が「途中から急に汚れが目立つようになった」と感じるのは、ヒナの成長と食べ物の変化がそのまま出ているためです。掃除をしたくなる時期ではありますが、ヒナが巣にいる間は手を出せません。
そして生後30〜35日で巣立ちを迎え、ドバトは生後半年ほどで成熟して繁殖期に入ります。つまり、春に生まれたヒナがその年の秋には親になっている可能性がある、という計算になります。鳩の数が街なかで維持されやすい理由は、卵の数の多さよりも、このサイクルの速さにあると言えます。
ドバトとキジバト、卵と子育てはどこが違うのか
日本の街や住宅地で出会う鳩は、主にドバト(カワラバト)とキジバトの2種類です。卵はどちらも白色で2個。それでも、巣の場所と日数、親鳥の見た目には違いがあります。
卵は同じ、孵化までの日数が違う
ドバトの卵は白色で2個、孵化まで16〜18日。キジバトの卵も白色で2個、抱卵期間は約14日で、14〜16日で孵化します。数字だけを並べると近いのですが、キジバトのほうがやや短い傾向にあります。
この差は、観察するうえでの目安としても使えます。木の上の皿状の巣で抱卵が始まったなら、2週間ほどで孵化する。建物の隙間で抱卵が始まったなら、それより数日長く見ておく。もちろん個体差や気温の影響があるので、あくまで目安です。ドバトは外気温が低い場合、孵化までが1〜2日延びるとされています。
なお、キジバトについては巣立ちまでの日数を示す資料が手元になく、この記事では扱っていません。「わからないことはわからないと書く」ほうが、読者にとっては安全だと考えています。日数を知りたい場合は、観察記録を公開している研究機関の資料をあたるのが確実です。
巣の場所が決定的に違う
いちばんわかりやすい違いは、巣を作る場所です。ドバトは建物の壁、天井裏、室外機の裏、給湯器の隙間、ベランダなどに営巣し、10cm程度の隙間があれば営巣可能とされています。一方のキジバトは、木の枝分かれに小枝を組んだ薄い皿状の巣を作ります。
つまり、「ベランダで卵を見つけた」という相談のほとんどはドバト、「庭木の中に巣があった」という相談はキジバト、と大まかに切り分けられます。この違いは、その後の対応にも直結します。建物の構造に営巣されている場合は、巣立ち後に隙間をふさぐ工事的な対策が必要になりますが、庭木の場合は基本的に見守るだけで済むことが多いためです。
10cmという数字は、対策を考えるうえで覚えておく価値があります。「こんな狭いところには入らないだろう」と思っていた場所が、鳩にとっては十分な広さである可能性がある、ということです。ベランダの点検は、人の目線ではなく鳩の目線で行うのがコツになります。
親鳥の見分けは、羽の鱗模様と鼻こぶで
卵を見つけたら、親鳥の姿も確認しておきたいところです。キジバトは、首に青と水色の縞模様があり、羽に鱗状の模様(キジのメスに似た模様)があります。ドバトと違い、羽の広い範囲にハッキリとした鱗状の模様が見られる点、そしてくちばしに白い鼻こぶがない点が見分けのポイントです。
鳴き声も違います。キジバトは「ホーホーホッホー」「ゼーゼーポッポー」などと鳴き、間隔が長いのが特徴です。姿が見えなくても、この独特のリズムが聞こえてきたらキジバトが近くにいると考えられます。
色の印象で判断しようとすると、ドバトは個体差が大きいため迷いやすくなります。灰色一色のもの、白いもの、黒っぽいものまでさまざまだからです。判断に迷ったら、色ではなく「羽に鱗模様があるか」「くちばしの付け根に白いこぶがあるか」の2点を見てください。この2つのほうが、はるかに安定した手がかりになります。
繁殖が盛んな時期にも違いがある
ドバトは繁殖が一年中可能で、春(3月〜5月)と秋(9月〜10月)に営巣が盛んになります。特に春は気温の上昇と餌の豊富さから活発になるとされています。キジバトは年間を通じて繁殖し、特に3〜10月が盛んです。
春と秋という2つの山があるという点では共通していますが、ドバトは真冬でも繁殖しうるのに対し、キジバトは3〜10月に集中する傾向がある、と整理できます。ベランダの鳩対策を「春だけ気をつければいい」と考えていると、秋に同じことが起きて驚くことになります。
なお、キジバトは北海道では夏鳥として現れる個体もいるとされ、地域によって見られる時期が変わります。お住まいの地域での実際の状況は、地元の観察記録や自治体の情報を確認するのが確実です。
| 比較項目 | ドバト(カワラバト) | キジバト |
|---|---|---|
| 卵の色と数 | 白色・2個 | 白色・2個 |
| 卵の重さ | 30〜40グラム | ニワトリとウズラの卵の間程度 |
| 孵化までの日数 | 16〜18日 | 14〜16日 |
| 抱卵の分担 | 日中は交代/夜はメス | 昼はオス/夜はメス |
| 巣の場所 | 壁・天井裏・室外機の裏・ベランダ | 木の枝分かれ(皿状の巣) |
| 巣立ちまで | 生後30〜35日 | 参照した資料に記載なし |
| 繁殖が盛んな時期 | 3月〜5月・9月〜10月 | 3〜10月 |
※野鳥の教科書調べ。各項目は本文中に示した資料の記載にもとづきます。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| △ | △ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | △ |
◎=営巣が盛んな時期 ○=見られる △=まれに見られる
ドバトは繁殖が一年中可能で、春(3月〜5月)と秋(9月〜10月)に盛んになります。キジバトは年間を通じて繁殖し、特に3〜10月が盛んです。この2種の傾向を重ねた目安として作成しています。
ベランダで鳩の卵を見つけたら、まず何をしてはいけないか
ここからが、多くの人にとって本題かもしれません。困っている状況であっても、卵に対してできることには法律上の制限があります。順を追って確認します。
卵やヒナがあると、許可なく撤去できない
鳥獣保護管理法では、野生鳥獣およびその卵は原則として保護されています。環境省の説明では、狩猟により捕獲する場合を除いて、原則としてその捕獲、殺傷又は採取が禁止されています、とされています。卵もこの対象に含まれます。
したがって、卵やヒナがある巣を、許可なく撤去することはできません。ここを知らずに「うちのベランダなのだから自由にできる」と考えて巣ごと処分してしまうと、法に触れる可能性があります。違反した場合の罰則は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金と定められています。
この点は、感覚と法律がずれやすいところです。私有地であるかどうかは関係なく、対象が野生鳥獣とその卵である以上、保護の枠組みが適用されます。まずは「卵に手を出さない」を出発点にして、そこからできることを探す、という順番で考えてください。制度の全体像は環境省の鳥獣保護管理法の解説ページで確認できます。
巣だけなら撤去できる|見極めのポイント
一方で、卵もヒナもない「巣だけ」の状態であれば、撤去することは可能です。つまり、枯れ枝が集まりはじめた段階、あるいは巣立ちが終わって空になった段階が、手を出せるタイミングになります。
前の章で見たとおり、鳩は約3〜4日で巣を完成させ、交尾から4〜5日目には最初の卵を産みます。巣材が持ち込まれているのに気づいたら、迷っている時間はあまりありません。逆に、すでに卵がある状態なら、巣立ちまで待つほかありません。ヒナが巣立つまでには約1ヶ月かかると説明されており、その間は撤去待機ということになります。
注意したいのは、「今日は親鳥がいないから空だと思った」という判断です。抱卵は交代制なので、一時的に両親とも離れることはあります。空かどうかは、親鳥の有無ではなく、巣の中に卵やヒナがあるかどうかで判断してください。そして確認のために覗き込むこと自体が親鳥への刺激になるので、確認は必要最小限にとどめます。
やむを得ない場合は、許可の手続きがある
被害が深刻な場合、まったく手段がないわけではありません。生態系や農林水産業への被害対策、学術研究上の必要性が認められる場合には、環境大臣又は都道府県知事の許可を得て卵を採取することが認められています。
許可の権限は、国指定鳥獣保護区内や希少鳥獣に関わるものは環境大臣、それ以外は都道府県知事が持ち、多くの場合、市町村長に権限が移譲されています。実務上は、お住まいの市区町村の環境・鳥獣担当窓口が最初の相談先になると考えてよいでしょう。
手続きの内容や必要書類は自治体によって異なります。「どうしても待てない事情がある」という場合ほど、自己判断で動かず、窓口に状況を説明して指示を仰ぐのが結果的に早道です。捕獲許可制度の考え方は環境省の鳥獣の捕獲等の許可に関するページにまとまっています。
やりがちな失敗②|「移動させてあげる」も採取にあたる
もうひとつの典型的な失敗が、善意からの移動です。「ベランダは危ないから、近くの木に巣ごと移してあげよう」「卵を安全な箱に入れておこう」——こうした行動は、気持ちとしては理解できますが、卵の採取にあたる可能性があります。
加えて、実務的にもうまくいきません。鳩の巣は小枝を粗く組んだだけの構造で、持ち上げれば崩れます。場所が変われば親鳥は戻れず、結果として卵は無駄になります。「助けるつもりが、いちばん悪い結果になった」というパターンです。
正しい順番は、①卵・ヒナがあるかを一度だけ確認する、②あるなら巣立ちまで手を出さず、その区画の利用を減らす、③巣立って空になったら巣材を片づけ、10cm程度の隙間をふさいで再営巣を防ぐ、という3ステップです。判断に迷う場面や、通行に支障が出るような場所に営巣された場合は、自治体の担当窓口に相談してください。
卵やヒナがある巣は、許可なく撤去できません。鳥獣保護管理法では野生鳥獣とその卵の捕獲・殺傷・採取が原則禁止されており、違反した場合の罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。巣のみ(卵・ヒナなし)であれば撤去できますが、卵やヒナがある場合は捕獲許可の手続きが必要になります。判断に迷う場合は、お住まいの自治体の鳥獣担当窓口へご相談ください。
観察するなら守りたい距離と衛生|立場別のふるまい方
卵を見つけた状況は人それぞれです。観察を楽しみたい人、困っている人、子どもと一緒に見たい人。それぞれに合ったふるまい方があります。共通しているのは、親鳥に気づかせないこと、そして衛生面に気をつけることです。
営巣中に出会ったら、すみやかに離れる
日本野鳥の会の観察マナーでは、巣や巣立ち雛に遭遇した場合、すみやかにその場を離れるようにしましょう、と示されています。親鳥はストレスから巣を放棄したり、ヒナを早期に巣立たせたりする可能性があるためです。
どこまで近づいてよいかの判断基準も示されています。野鳥が飛び立つ、逃げるなどの行動は、ストレスを感じた時の行動です。つまり、鳥が動いた時点で「もう近すぎる」ということになります。体勢の変化を観察し、変化を感じたら離れる。この基準を持っておくと、距離の取り方に迷わなくなります。
ベランダのように距離を取りようがない場所では、時間で調整します。その区画を通る回数を減らす、洗濯物を別の場所に干す、窓を開ける時間を短くする。物理的な距離が取れないぶん、接触の頻度を下げるという発想です。詳しくは日本野鳥の会の野鳥観察・撮影のマナーガイドラインを確認してみてください。
フラッシュと音声の再生は使わない
撮影したくなる場面ですが、フラッシュ・ストロボは使いません。野鳥の目は強烈な光に慣れていないため、視界や視力が悪くなる可能性があるとされています。暗い場所の巣ほど光を当てたくなりますが、そこが最もリスクの高い状況です。
同じく避けたいのが、鳴き声の再生やバードコール(野鳥を誘引する道具)の使用です。無駄なエネルギー消費と営巣放棄を招くとされています。抱卵中・育雛中の親鳥にとって、体力の消耗は繁殖の成否に直結します。
撮るなら、窓やカーテン越しに、フラッシュを切って一度だけ。動画を回し続けるより、静止画を数枚撮って引き上げるほうが負担は小さくなります。写真の出来より、巣が無事に機能し続けることを優先する——これが繁殖期の撮影の基本姿勢です。
営巣中の写真をSNSに上げない
見落とされがちですが、公開の仕方にも配慮が必要です。営巣中や巣立ち雛の写真公開は、多くの観察者を引き寄せ繁殖に悪影響を与えるとされています。自分ひとりが距離を守っていても、場所が特定できる形で公開すれば、そこに人が集まってしまいます。
特に、公園や街路樹のキジバトの巣は、投稿された背景から場所が割り出されやすい対象です。自宅のベランダであれば人が集まる心配は小さいものの、建物や周辺が写り込むことで別のリスクが生まれます。
どうしても記録を共有したい場合は、巣立ちが終わってから、場所がわからない形で投稿する。この2つの条件を満たすだけで、繁殖への影響はほぼなくなります。急いで投稿する理由は、鳥の側には1つもありません。
糞に素手で触れない|掃除は巣立ってから
衛生面の注意も欠かせません。営巣周辺の糞にはクリプトコッカス菌・サルモネラ菌が含まれるため、素手やマスクなしでの接近は感染リスクがあるとされています。鳩の巣は巣立ちまで1か月前後使われるため、糞の量もそれなりになります。
掃除に取りかかるのは、巣立ちが終わって巣が空になってからです。その際も素手で触らず、手袋とマスクを着用し、乾いた状態で掃き集めるのではなく、湿らせてから拭き取るほうが粉じんが舞いにくくなります。体調に不安がある場合や量が多い場合は、無理をせず専門の業者に依頼するのが安全です。
最後に、立場別のふるまい方を整理します。観察を楽しみたい人は、窓越し・フラッシュなし・1日1回までを守れば、抱卵の交代から巣立ちまでを追えます。ベランダで困っている人は、卵・ヒナの有無を一度だけ確認し、あるなら巣立ちを待ち、空になってから隙間をふさぐ順番で進めます。子どもと一緒に見たい人は、近づかずに双眼鏡を使い、「なぜ触ってはいけないか」を法律と生態の両面から説明する機会にすると、観察そのものが学びになります。
営巣周辺の糞にはクリプトコッカス菌・サルモネラ菌が含まれるとされています。素手やマスクなしでの接近は避け、掃除は巣立ち後に手袋・マスクを着用して行ってください。撮影時のフラッシュ・ストロボ、鳴き声の再生やバードコールによる誘引も、営巣放棄につながるため使用しません。
まとめ:鳩の卵は「白い2個」を覚え、触らず日数で待つ
鳩の卵は、白くて模様がなく、ウズラの卵くらいの大きさで2個。この特徴を覚えておけば、街なかで見つけた卵の正体はかなりの確率で見当がつきます。そして正体がわかったあとにやるべきことは、実はとても少ないのです。ドバトなら16〜18日、キジバトなら14〜16日で卵は孵化し、ドバトのヒナは生後30〜35日で巣立ちます。巣作りから巣立ちまで約2ヶ月というサイクルを知っていれば、「あと何日待てばいいか」という見通しが立ちます。
もし今、ベランダで卵を見つけて困っているなら、最初の一歩は「巣に卵かヒナがあるかどうかを、一度だけ遠くから確認する」ことです。あるなら、その区画の利用を減らして巣立ちを待つ。空になっていたら、巣材を片づけて10cm程度の隙間をふさぐ。この順番さえ守れば、法律の面でも、鳥の側から見ても、いちばん無理のない対応になります。
※法令の運用や許可手続きの詳細は自治体によって異なります。実際に対応する際は、環境省の該当ページと、お住まいの自治体の鳥獣担当窓口で最新の情報をご確認ください。

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