庭や公園でシジュウカラを覚えたあと、図鑑をめくって「ゴジュウカラ」という名前に出会い、手が止まった人は多いはずです。四十雀と五十雀。名前は一字違いで、どちらも小さくて、どちらも木の幹にいる。似た鳥なのだろう、と思うのが自然です。
ところが、この2種はスズメ目のなかでも科のレベルで別のグループです。シジュウカラはシジュウカラ科、ゴジュウカラはゴジュウカラ科。人間でいえば「名字が似ている他人」くらいの距離感で、体の作りも、暮らす場所も、木の幹での動き方も違います。そして見分けの決め手は、色でも大きさでもなく、動きにあります。頭を下にして木の幹を降りてくる鳥は、日本ではゴジュウカラだけです。
この記事では、分類・見た目・生息場所・鳴き声・巣づくりの5方向から、シジュウカラとゴジュウカラの違いを整理します。似たカラ類6種を全長順に並べた早見表も用意したので、双眼鏡を持って出かける前の予習として読んでみてください。
・シジュウカラとゴジュウカラは科レベルで別のグループだということ
・胸のネクタイ模様と、青灰色の背+黒い過眼線という見た目の分かれ目
・頭を下にして幹を降りる動きが決め手になる理由と、キバシリとの区別
・街の公園と山の落葉広葉樹林という、出会える場所の決定的な差
・巣材・泥塗り・抱卵日数まで含めた、子育ての違い
シジュウカラとゴジュウカラの違いは、名前より先に「科」が別

一字違いの名前でも、分類はシジュウカラ科とゴジュウカラ科
結論から言うと、この2種は近縁ではありません。シジュウカラはスズメ目シジュウカラ科シジュウカラ属、ゴジュウカラはスズメ目ゴジュウカラ科ゴジュウカラ属で、学名は Sitta europaea です。同じスズメ目という点までは共通しますが、そこから先は別々の枝に分かれています。
なぜ分類が違うのに名前が似ているのかというと、和名がつけられた順番の問題です。先に人里でおなじみだったシジュウカラ(四十雀)があり、あとから山で見つかった青灰色の小鳥が「四十雀に似た鳥」としてゴジュウカラ(五十雀)と呼ばれるようになった、という経緯が広く紹介されています。名前は見た目の連想から来ていて、血縁関係を示しているわけではありません。
この違いは実際の観察でも効いてきます。シジュウカラ科の鳥は枝先や葉の間をちょこちょこ動き回るのに対し、ゴジュウカラ科のゴジュウカラは太い幹や横枝の下側に張りついて動きます。同じ木にいても、視線を向ける高さと場所が変わるということです。
覚えておくと得なのは、「カラ」がつく鳥がすべてシジュウカラの仲間ではない、という点です。ヤマガラ・ヒガラ・コガラはシジュウカラ科ですが、ゴジュウカラだけは別の科。図鑑でページが離れているのは、誤植ではありません。
全長14cmと13cm|並んだときに真っ先に見るのは胸
サイズはほとんど差がありません。日本野鳥の会のBIRD FANでは、シジュウカラの全長は14cm、ゴジュウカラは13cmと記載されています。ゴジュウカラは資料によって13.5cm、京都府レッドデータブックでは14cmとされることもあり、野外で「大きさで見分ける」のは現実的ではありません。
そこで最初に見るのは胸と顔です。シジュウカラは白いほお、胸から腹に黒いネクタイ模様が入り、このネクタイは雄が雌に比べて太いという違いがあります。背には緑味があり、翼や尾には青味が差します。一方ゴジュウカラは、頭上から体の上面が青灰色一色で、白くて細い眉斑と黒い過眼線が顔を横切ります。下面は白く、脇は橙色を帯びます。
つまり、胸に黒い縦線が走っていればシジュウカラ、背中がのっぺりした青灰色で目の横に黒い線が入っていればゴジュウカラ、という二択で片がつきます。逆光でシルエットしか見えないときは、尾に注目してください。ゴジュウカラの尾は短く、幹に張りついたときに三角形に近い体型に見えます。
やりがちな失敗は、「胸がオレンジっぽいからゴジュウカラだ」と決めてしまうことです。胸から腹が赤味のある茶色なのはヤマガラ(全長14cm)で、ゴジュウカラの橙色は脇に限られます。腹の中央まで茶色ければ、それはヤマガラです。
| 比較項目 | シジュウカラ | ゴジュウカラ |
|---|---|---|
| 分類 | スズメ目シジュウカラ科 | スズメ目ゴジュウカラ科 |
| 全長 | 14cm | 13cm |
| 見た目の決め手 | 白いほお+胸の黒いネクタイ模様 | 青灰色の上面+白い眉斑と黒い過眼線 |
| 幹での動き | 枝先を動き回る | 幹に縦・逆さにとまる |
| よく見る場所 | 市街地の公園や庭〜低山の林 | 九州以北の山地の林 |
| さえずり | 細い声で「ツーピー」「ツツピー」 | 大きな声で「フィフィフィ」 |

「五十雀」という名前は、四十雀に似ているところから来ている
ゴジュウカラの名前の由来は、シジュウカラに似ているからゴジュウカラになった、という説明が一般的です。四十より五十が大きいのだから体も大きいのだろう、と考えたくなりますが、実際には全長13cmでシジュウカラより小さいくらい。数字は大きさを表していません。
もうひとつよく紹介されるのが、年齢に見立てた説です。昔は四十歳で初老、五十歳で老人と数えたことから、青みがかったグレーの羽を白髪の老人に見立てて「五十雀」と呼んだ、というもの。どちらの説も断定はできませんが、青灰色の上面という特徴が名前に結びついているのは覚えやすいポイントです。
野外での実用面でいうと、名前の由来を知っていると混同が減ります。「五十雀=四十雀の大きい版」と誤って覚えていると、大きめのカラ類を見たときに全部ゴジュウカラに見えてしまうからです。数字ではなく、青灰色と過眼線で覚え直してください。
なお、ゴジュウカラには「木回り(きまわり)」という異名もあります。木の幹を回りながら虫を食べることから来た呼び名で、この鳥の行動をそのまま言い当てています。次の章で扱う逆さ降りは、まさにこの異名の中身です。
似た模様の鳥をまとめて確認したいときは、こちらの記事も参考になります。

庭の木に来た白黒の小鳥を見て、「シジュウカラかな? でも何か違う気がする」と迷ったことはありませんか。カラ類は色づかいがよく似ていて、慣れないうちは全部同じ鳥に…
頭を下にして木を降りられる鳥は、日本ではこの1種だけ
逆さ降りができる理由は、短い尾と幹をつかむ足にある
ゴジュウカラを一発で確定させる方法があります。木の幹を、頭を下に向けたまま降りてくるかどうかです。日本野鳥の会のBIRD FANでもゴジュウカラの特徴として「短い尾、下向きに独特のとまり方をする」と紹介されており、この動きを見たらほぼ確定と考えて差し支えありません。
なぜこんな芸当ができるのかというと、体を支える仕組みが他の鳥と違うからです。多くの樹上性の鳥は、幹に対して上を向いた姿勢を前提に体を使います。ゴジュウカラは尾が短く、尾を支えに使わずに足の力だけで幹に張りつくため、上下どちらの向きでも姿勢を保てます。頭が下向きでも、体は幹から離れません。
実際の観察では、幹の中ほどにとまった鳥が「そのまま下へずり降りていく」かどうかを見ます。シジュウカラやヤマガラも幹にとまりますが、降りるときは一度飛び立って下の枝に移り直すのが普通です。降りる動作を飛ばずに続けているなら、ゴジュウカラを疑ってください。
豆知識として、この動きは餌の探し方と直結しています。上向きにしか動けない鳥は樹皮の隙間を下から覗き込めませんが、頭を下にできるゴジュウカラは、他の鳥が見落とした角度の隙間に届きます。同じ木で採餌場所を分け合う、カラ類の混群のなかでの立ち位置がここにあります。
キバシリとの見分けは、くちばしの反りと尾の長さ
幹に張りつく鳥でもう1種、よく間違われるのがキバシリです。全長14cmでスズメ目キバシリ科、主に九州以北の山地の針葉樹のある林で留鳥として暮らします。木の幹に縦にとまり、らせん状に移動しながら昆虫などを取るという行動も、ゴジュウカラとよく似ています。
分かれ目は3つあります。第一にくちばしで、キバシリは下に曲がる細いくちばしが特徴なのに対し、ゴジュウカラのくちばしはまっすぐ伸びます。第二に尾で、キバシリの尾羽は長く、ゴジュウカラの尾は短い。第三に移動の向きで、キバシリは幹を上へ駆け上がる動きが中心です。
具体的な見分け方としては、まず動きの向きを見て、次にシルエットの色を見ます。キバシリは樹皮に紛れる褐色系で、幹に張りつくと形が溶けて見えます。ゴジュウカラは背中が青灰色なので、褐色の樹皮の上ではっきり浮きます。「褐色で上りだけならキバシリ、青灰色で下りもするならゴジュウカラ」と覚えておくと現場で迷いません。
注意したいのは、声で確認しようとして混乱するケースです。キバシリの地鳴きは「ヅイー」または「ツリー」、さえずりは「ピーピョッピョッ、ピリーピリー」。ゴジュウカラは「フィー」や「ツィッ」と鳴き、さえずりは大きな声で「フィフィフィ」と続けます。どちらも細く高い声なので、慣れないうちは声より動きで判断するほうが確実です。
幹での動きを追う順番を決めておくと、迷いが減る
結論として、幹にいる小鳥を見たら「向き→色→声」の順で確認するのが効率的です。逆にやってはいけないのは、いきなり図鑑の色ページと照合すること。小鳥は数秒で移動するので、色を突き合わせている間に見失います。
順番を決める理由は、情報の得やすさが違うからです。動きの向きは1〜2秒で判断でき、双眼鏡を構えたままでも取れます。色は光の条件に左右され、逆光では青灰色も褐色も黒っぽく見えてしまいます。声は最も確実ですが、鳴いてくれなければ手に入りません。取りやすい情報から順に潰していくのが合理的です。
具体的には、こう追います。まず幹のどこにいるかを見る(枝先ならカラ類、太い幹ならゴジュウカラかキバシリ)。次に移動の向きを見る(下へ歩けばゴジュウカラ、上へだけならキバシリ)。ここまでで候補が2〜3種に絞れたら、はじめて背中の色と顔の線を確認します。
やりがちな失敗は、最初の1羽に集中しすぎることです。ゴジュウカラは非繁殖期の冬にカラ類の混群に入ることもしばしばあり、群れのなかに複数種が混ざっています。1羽を追い続けるより、群れ全体をゆっくり眺めて「幹を降りている個体はいないか」と探すほうが、結果的に早く見つかります。
会える場所が違う|街の公園と、山のブナ林

シジュウカラは市街地の公園や庭にもいる
2種の最大の違いは、住んでいる場所です。シジュウカラは市街地の公園や庭などを含む平地から、標高の低い山地の林、湿原などに生息します。日本野鳥の会の記載でも「市街地から山地まで」とされ、生活圏の広さが際立ちます。
なぜ街でも暮らせるかというと、食べ物と巣場所の両方を人の生活圏で確保できるからです。食性は雑食で、果実、種子、昆虫やクモなどを食べます。虫を主食とし、1年間に12万5千匹もの虫を食べるという研究例も紹介されています。街路樹や庭木にいる虫だけでも、繁殖期をまかなえるということです。
巣についても融通が利きます。木の洞に営巣する習性があり、その延長で巣箱もよく利用します。巣材にはコケ類を多用します。都市部では自然の樹洞が減りますが、人が掛けた巣箱がその代役になるため、住宅地の庭でも繁殖できます。
分布も広く、北海道・本州・四国・九州に加え、奄美諸島のアマミシジュウカラ、沖縄諸島のオキナワシジュウカラ、八重山諸島のイシガキシジュウカラといった亜種が知られています。日本のどこに住んでいても、まず会えるカラ類だと考えて差し支えありません。
ゴジュウカラは山地の落葉広葉樹林が主戦場
対してゴジュウカラは、九州以北の山地の林で留鳥として暮らします。生息環境は平地から山地にかけての落葉広葉樹林で、低山帯上部から亜高山帯の森林に住むため、一般の人にはなじみが薄い鳥だと専門家も指摘しています。
この差が生まれる理由は、餌と巣の条件が厳しいからです。ゴジュウカラは樹洞やキツツキの古巣に営巣します。つまり、キツツキが穴を掘れるだけの太い木が立ち、その古巣が残っているような成熟した林が必要になります。街路樹や若い植栽林では、この条件が揃いません。
実際の探し方としては、ブナやミズナラの落葉広葉樹林を目指します。京都府レッドデータブック2015でも、府内では芦生、八丁平、大江山などのブナ、ミズナラの落葉広葉樹林に少数が生息するとされ、生息地が限られることが記されています。同レッドデータブックでは準絶滅危惧種に選定されています。
逆張りの視点をひとつ。生息地が限られると聞くと減っている鳥に思えますが、バードリサーチの報告によれば、全国鳥類繁殖分布調査で記録されたゴジュウカラの記録メッシュ数は1970年代の267メッシュから1990年代には328メッシュ、2010年代には408メッシュと増加しています。標高1000m以上の高標高域では新たに確認された場所が多く、分布が拡大していました。地域的に希少でも、全国では別の動きをしていることがあります。
| 分類 | スズメ目ゴジュウカラ科ゴジュウカラ属 |
| 全長 | 13cm(資料により13.5cm〜14cm) |
| 見られる季節 | 留鳥として1年中 |
| 生息環境 | 平地から山地の落葉広葉樹林、低山帯上部〜亜高山帯 |
| 鳴き声 | 「フィー」「ツィッ」/さえずりは大きな声で「フィフィフィ」 |
| よく見られる場所 | 九州以北の山地の林(北海道の亜種は低地でも) |
北海道では条件が変わる|エゾゴジュウカラは低地でも見られる
ゴジュウカラは山の鳥、という原則には例外があります。日本野鳥の会の記載では、北海道の亜種は低地でも見られるとされています。つまり北海道に住んでいる人にとっては、ゴジュウカラは「山まで行かないと会えない鳥」ではありません。
理由は亜種の分化にあります。日本のゴジュウカラは3亜種に分かれており、本州から北九州にいるのがゴジュウカラ、南千島列島と北海道にいるのがエゾゴジュウカラ、九州南部にいるのがキュウシュウゴジュウカラです。エゾゴジュウカラは、暮らせる標高帯が本州の個体群と異なります。
具体的には、札幌や旭川の市街地に隣接した公園・緑地でも、条件の合う林があれば観察対象になります。本州の感覚で「標高1000m以上まで登らないと」と構える必要はありません。逆に本州で探すなら、低山の雑木林ではなく、ブナやミズナラが育つ標高帯まで上がるのが近道です。
注意点として、亜種名で呼び分ける必要があるのは記録を取るときだけです。観察メモに「ゴジュウカラ」と書いておけば実用上は困りません。ただ、北海道と本州で「どこで会えるか」の答えが変わることは、旅行先で探す前に知っておくと無駄足を防げます。
失敗パターン1|平地の公園でゴジュウカラを探し続けてしまう
初心者が最も陥りやすいのが、シジュウカラが来る近所の公園で、同じようにゴジュウカラを待ってしまうケースです。原因は単純で、名前が似ているせいで「同じような場所にいる」と無意識に想定してしまうこと。本州の平地の公園では、そもそも生息環境が合っていません。
この失敗が厄介なのは、待っている間にヒガラやコガラを見て「これがゴジュウカラかも」と誤記録してしまう点です。ヒガラは全長11cmで、シジュウカラより小さくネクタイ模様がありません。コガラは全長12cmで、頭に黒いベレー帽のような模様があります。どちらも青灰色の上面と黒い過眼線という組み合わせにはなりません。
対策は、探す場所を先に決めることです。本州なら、ブナやミズナラの落葉広葉樹林が広がる山域へ行く。日帰りなら、標高の上がる登山口周辺の遊歩道やビジターセンター周辺の林を歩く。北海道なら、市街地に近い緑地でも候補になります。
もうひとつの対策は、記録の書き方を変えることです。「ゴジュウカラを見た」ではなく「青灰色・過眼線あり・幹を下向きに移動」と特徴を3つ書いておけば、あとから図鑑と照合できます。名前を先に決めてしまうと、間違いに気づく機会がなくなります。
「ツツピー」と「フィフィフィ」|シジュウカラとゴジュウカラの違いは声にも出る
シジュウカラのさえずりは、細い声の繰り返し
姿が見えないときは、声が決め手になります。シジュウカラのさえずりは、細い声で「ツーピー」や「ツツピー」を繰り返すのが基本形です。キヤノンのバードブランチプロジェクトの解説では、オスは年明けから「ツーピ」という鳴き声を繰り返し、春には「ツツピ、ツツピ」などとバリエーションが増えると紹介されています。
この「繰り返し」がシジュウカラらしさの正体です。1音節を単発で鳴くのではなく、同じフレーズを一定のテンポで並べます。住宅街で2月頃から「ツツピー、ツツピー」と規則正しい声が聞こえてきたら、繁殖期に入ったシジュウカラのオスと考えて差し支えありません。
具体的な聞き分けとしては、テンポと高さを比べます。ヒガラはシジュウカラより高い声で「ツピ」または「ツツピ」を繰り返すため、音の並びだけならそっくりです。ヤマガラは「スィー、スィー」とシジュウカラよりかすれた声や「ビービー」と鼻にかかったような声で鳴き、シジュウカラより低い声でゆっくりしたテンポになります。高くて速ければヒガラ、低くて遅ければヤマガラ、と幅で捉えると整理できます。
注意点として、シジュウカラの鳴き声は「ツイツイ」「ツーピツーピ」「チュチュパー」「ジャージャー」など20種類以上があるとされます。聞いたことのない声が出てきても、シジュウカラの可能性は消えません。1種=1つの声と考えないほうが安全です。
| 分類 | スズメ目シジュウカラ科シジュウカラ属 |
| 全長 | 14cm(約14.5cm・13〜16.5cmとする資料も) |
| 見られる季節 | 留鳥として1年中(さえずりは年明け〜春に増える) |
| 生息環境 | 市街地の公園や庭を含む平地〜標高の低い山地の林、湿原 |
| 鳴き声 | さえずりは「ツーピー」「ツツピー」/地鳴きは「ジュクジュク」 |
| よく見られる場所 | 市街地から山地まで(北海道〜九州、南西諸島に亜種) |
ゴジュウカラは大きな声で「フィフィフィ」
ゴジュウカラの声は、シジュウカラより通りがよく、遠くまで届きます。日本野鳥の会のBIRD FANでは、通常時は「フィー」や「ツィッ」などと鳴き、さえずりは大きな声で「フィフィフィ」と続けると記載されています。山の林で明るく響く笛のような声が繰り返し聞こえたら、まず候補に挙げてください。
声が大きい理由は、暮らす環境と関係していそうです。ゴジュウカラが住むのは太い木が立ち並ぶ成熟した林で、見通しが利きません。枝先で群れとして動くシジュウカラ類と違い、幹を単独で回りながら採餌するため、離れた仲間へ届く音量が必要になります。
実際の探し方としては、声を聞いてから幹を探します。ゴジュウカラは樹冠の葉の中ではなく、太い幹や横枝の下側にいることが多いので、声のする方向の木を、目線から少し上の幹の高さでゆっくり舐めるように見ていきます。葉先を探しても見つかりません。
豆知識をひとつ。冬はカラ類の混群に入ることがしばしばあります。「ツツピー」や「スィー、スィー」に混じって「フィフィフィ」が聞こえたら、群れのなかにゴジュウカラが1〜2羽混ざっているサインです。混群は同じ場所を通過していくので、声を聞いたらその場で待つほうが観察できます。
地鳴きは「ジュクジュク」と「フィー・ツィッ」で分かれる
さえずりは繁殖期にしか聞けませんが、地鳴きは1年中使われます。シジュウカラの地鳴きは、本種独特の「ジュクジュク」と濁った音で、幼鳥は「シーシーシー」と鳴きます。にごった声で「ジジジジ」と続ける鳴き方も特徴的だと紹介されています。
ゴジュウカラの地鳴きは「フィー」や「ツィッ」で、濁りません。この「濁っているかどうか」が、冬の林で2種を分ける実用的な手がかりになります。ざらついた声ならシジュウカラ、澄んで細い声ならゴジュウカラ、という大づかみで十分機能します。
具体的な練習方法としては、街の公園でシジュウカラの「ジュクジュク」を先に耳に入れておくことをおすすめします。市街地の公園や庭でも会える鳥なので、通勤路や近所で反復して覚えられます。基準になる声をひとつ持っていると、山で違う声を聞いたときに「違う」と即座に判断できます。
注意点は、地鳴きは個体差と状況差が大きいことです。警戒しているとき、餌を見つけたとき、仲間を呼ぶときで声色が変わります。1回聞いて確定せず、同じ個体が数回鳴くのを聞いてから判断してください。
失敗パターン2|「ジャージャー」を聞いてコガラと取り違える
もうひとつの典型的な失敗が、「ジャージャー」という声を頼りに種を決めてしまうケースです。シジュウカラの鳴き声のひとつに「ジャージャー」がありますが、コガラも「ツツ、ジャージャー」と鼻にかかったような声で鳴きます。音写が重なるため、声だけでは決められません。
原因は、鳴き声の文字表記に頼りすぎることにあります。図鑑の音写はあくまで目安で、同じ「ジャージャー」でも声質・テンポ・前後に付く音が違います。コガラの場合は前に「ツツ」が付き、鼻にかかった響きになる点が手がかりです。
対策は、声と姿をセットで確認する習慣をつけることです。コガラは全長12cmで、頭に黒いベレー帽のような模様があり、九州以北の山地の林にいます。シジュウカラは白いほおと胸のネクタイ模様。姿を1度確認できれば、その日の「ジャージャー」がどちらのものか判断できます。
そして、この「ジャージャー」には、もうひとつ知っておくと観察が面白くなる意味があります。次の章で扱います。
実は、シジュウカラの鳴き声は「単語」として研究されている
「ジャージャー」はヘビを指す声だった
意外と知られていませんが、シジュウカラは世界的な研究対象です。京都大学の発表によれば、生態学研究センター研究員の鈴木俊貴による研究で、シジュウカラは天敵のヘビをみつけると「ジャージャー」と聞こえる特別な鳴き声を発し、仲間に警戒を促すことが示されています。この鳴き声はヘビに遭遇した時以外に発せられないため、「ヘビ」を示す単語(名詞)である可能性が指摘されました。
研究では、この声が仲間にヘビの視覚イメージを想起させるかどうかが検証されました。結果として、シジュウカラはこの声を聞いた時にだけ、ヘビのように木の幹や地面を這わせた小枝に接近し、それを確認することが分かりました。単語からその指示対象をイメージする能力を、ヒト以外の動物で初めて明らかにした成果として、2018年1月30日に米国科学アカデミー紀要にオンライン掲載されています。
観察に落とし込むと、庭で「ジャージャー」が続いたときは、周囲に何かがいる可能性を考えることになります。巣箱を掛けている庭でこの声を聞いたら、巣箱に近づくのではなく、離れた場所から様子を見るのが適切な対応です。人が近づくこと自体が親鳥の負担になります。
知っておくと得をするのは、この研究がシジュウカラという「どこにでもいる鳥」から生まれた点です。珍しい鳥を探しに行かなくても、近所の公園の1羽が研究対象と同じ種です。身近な鳥を長く見ることの価値が、ここに表れています。
シジュウカラの「ジャージャー」はヘビに遭遇した時以外に発せられない声で、仲間にヘビのイメージを想起させることが実験で確認されています(京都大学・鈴木俊貴、2018年1月30日発表)。庭でこの声が続いたら、巣箱や茂みに近づかず、離れて見守るのが親鳥への配慮になります。
20種類以上の声を使い分けている
シジュウカラの鳴き声は「ツイツイ」「ツーピツーピ」「チュチュパー」「ジャージャー」など20種類以上があるとされます。近年は語順のある使い分けについての研究も進み、動物言語学の分野で注目される種になりました。
なぜこれほど声の種類が多いのかというと、暮らし方と結びついていると考えられます。シジュウカラは市街地から山地まで幅広い環境で暮らし、季節によって群れの構成も変わります。相手や状況が変わるほど、伝える必要のある内容も増えます。
観察者にとっての実用的な意味は、「聞いたことのない声=別種」と早合点しないことです。同じ庭に来る1羽が、状況によってまったく違う声を出します。声のバリエーションの多さは、シジュウカラを識別しにくくしている要因でもあります。
逆に言えば、ゴジュウカラの声はシンプルです。「フィー」「ツィッ」と、さえずりの「フィフィフィ」を覚えておけば大半をカバーできます。声で覚えるなら、ゴジュウカラのほうが取り付きやすい鳥だと言えます。
ゴジュウカラ側でわかってきたのは、分布の変化
ゴジュウカラで進んでいるのは、声の研究より分布の研究です。バードリサーチの報告によると、全国鳥類繁殖分布調査で記録されたゴジュウカラの記録メッシュ数は、1970年代の267メッシュから1990年代には328メッシュ、2010年代には408メッシュと増加しました。
ただし、増え方は標高によって異なります。標高1000m以上の高標高域では、新たに確認された場所が多く、かつ「確認されなくなった」調査地はほとんどなく、分布が拡大していました。一方で標高1000m未満の低標高の森では、2010年代に新たに確認された調査ルートもあったものの、それ以上に1990年代のみにしか記録されず「確認されなくなった」調査ルートがありました。
この数字が観察者に示唆するのは、探す標高の目安です。本州でゴジュウカラを狙うなら、低山より、標高が上がるブナ・ミズナラ帯を選ぶほうが確率が高いということになります。同じ県内でも、標高が数百m違うだけで出会いやすさが変わります。
注意しておきたいのは、これが全国スケールの傾向だという点です。京都府のように府内の生息地が芦生、八丁平、大江山、青葉山などに限られ、準絶滅危惧種に選定されている地域もあります。全国の傾向と、自分が住む地域の状況は別に確認してください。
巣と子育てを比べると、違いはもっとはっきりする
巣材がコケか、木の皮か
繁殖のしかたを比べると、2種が別の科である実感が湧きます。シジュウカラは木の洞に営巣する習性があり、巣材にはコケ類を多用します。この習性のおかげで巣箱もよく利用し、庭に掛けた巣箱で子育てを観察できます。
ゴジュウカラは樹洞やキツツキの古巣に樹皮を敷いて営巣します。北海道大学の小泉研究室の観察記録では、他のカラと違い巣材にコケを用いず、代わりに木の皮を使うと報告されています。巣の中身を見れば、どちらの巣かが分かるということです。
実際の見分けとしては、巣箱の中を掃除するタイミングが手がかりになります。ふかふかしたコケの層が敷き詰められていればシジュウカラ、樹皮の薄片が重なっていればゴジュウカラの巣です。ただし、繁殖期に巣箱を開けるのは避けてください。確認は、繁殖が終わった秋以降に行います。
豆知識として、巣材の違いは巣場所の環境を反映しています。コケが手に入るのは湿った林床のある環境、樹皮が手に入るのは成熟した木が立つ環境。それぞれの鳥が暮らす場所で調達しやすいものを使っている、と考えると納得できます。
巣箱でシジュウカラを迎えたい人は、入口の直径2.8cm前後が基準になります。詳しい設計や設置の考え方は、こちらの記事にまとめています。

庭の木にシジュウカラが来るようになって、「巣箱を掛けたら住んでくれるだろうか」と考えたことはありませんか。ホームセンターで巣箱を眺めてみたものの、大きさも穴の径…
泥で巣穴を塗り固めるのは、ゴジュウカラの習性
ゴジュウカラには、他の小鳥に見られない行動があります。巣穴の入り口や内壁、隙間に泥を塗る習性です。入り口を泥で塗って狭くしてしまうため、樹洞やキツツキの古巣を使っていても、外から見ると穴の形が変わっています。
理由として考えられているのは、外敵や巣穴の競争相手への対策です。キツツキが掘った穴は、ゴジュウカラの体には大きすぎます。自分の体が通る幅まで泥で狭めれば、体の大きな鳥や捕食者が入りにくくなります。巣箱を利用することもあるため、巣箱でこの行動が見られることもあります。
観察の手がかりとしては、山の林で樹洞を見つけたとき、入り口の縁に乾いた泥がこびりついていないかを見ます。泥で縁取られた穴は、ゴジュウカラが使った(あるいは使っている)可能性を示します。木の幹を降りてくる青灰色の鳥とセットで確認できれば、確度が上がります。
注意点は明確です。繁殖中の巣に近づかないこと。日本野鳥の会のフィールドマナーでも「近づかないで、野鳥の巣」と示され、子育ての季節、親鳥はとくに神経質になるものが多く、危険を感じたり、巣のまわりのようすが変化すると、巣を捨ててしまうことがあると説明されています。泥の縁取りを見つけても、写真を撮りに近寄るのは避けてください。
日本野鳥の会のフィールドマナーでは「巣の近くでの撮影はヒナを死にいたらしめることもあるので、野鳥の習性を熟知していない場合は避けましょう」と示されています。泥で縁取られた樹洞や、親鳥が出入りする巣箱を見つけても、近寄らず離れた場所から観察してください。巣箱の中を確認するのは、繁殖が終わったあとにします。
卵の数、抱卵日数、巣立ちまでの日数を並べる
数字で並べると、ゴジュウカラのほうが子育てに時間をかけていることが分かります。シジュウカラは産卵数7〜10個、抱卵期間12〜14日、巣立ち日数16〜19日。ゴジュウカラは1回に5〜7個の卵を産み、抱卵期間は18〜20日、雛は孵化してから20〜25日で巣立ちます。
差が出る理由は、はっきりとは分かっていませんが、環境の違いが関係していると考えられます。北海道大学の小泉研究室の記録でも、ゴジュウカラは「3週間ほどしてようやく孵化。シジュウカラ科と比べると2、3日長い」とされ、育雛期間も長いと報告されています。同研究室の観察例では、卵数は8個前後とされています。
観察に置き換えると、巣箱を掛けている人にとっては「見守る期間の長さ」が変わります。シジュウカラなら卵を温め始めてからおよそ1か月で巣立ちまで進みますが、ゴジュウカラはそれより長くかかります。巣箱の掃除や庭仕事の予定を立てるときは、この差を頭に入れておくと余計な干渉を避けられます。
覚えておきたいのは、これらが目安の幅だということです。年によって餌の量が変わり、巣立つ数も変動します。小泉研究室の記録では、9羽のゴジュウカラが巣立った2012年はシジュウカラでも13羽巣立たせた巣があるなど、豊作の年だったと記されています。数字は固定値ではありません。
似た6種を全長順に並べた早見表と、タイプ別の探し方
全長11cmから14cmまで、6種を並べてみる
ここまでの情報を、野鳥の教科書調べとして1枚の表にまとめました。ヒガラ11cm、コガラ12cm、ゴジュウカラ13cm、シジュウカラ・ヤマガラ・キバシリが14cm。この6種は、山の林で同じ日に会う可能性がある組み合わせです。
| 種名 | 全長 | 科 | 見た目の決め手 | 声の目安 |
|---|---|---|---|---|
| ヒガラ | 11cm | シジュウカラ科 | ネクタイ模様がなく尾が短い | 高い声で「ツピ」「ツツピ」 |
| コガラ | 12cm | シジュウカラ科 | 頭に黒いベレー帽のような模様 | 「ツツ、ジャージャー」/「ヒチー」 |
| ゴジュウカラ | 13cm | ゴジュウカラ科 | 青灰色の上面+白い眉斑と黒い過眼線 | 「フィー」「ツィッ」/「フィフィフィ」 |
| シジュウカラ | 14cm | シジュウカラ科 | 白いほお+胸の黒いネクタイ模様 | 「ツーピー」「ツツピー」/「ジュクジュク」 |
| ヤマガラ | 14cm | シジュウカラ科 | 胸から腹が赤味のある茶色 | かすれた「スィー、スィー」/「ビービー」 |
| キバシリ | 14cm | キバシリ科 | 下に曲がる細いくちばし・長い尾 | 「ヅイー」「ツリー」/「ピーピョッピョッ」 |
この表の使い方は、上から順に消していくことです。まず「幹に張りついているか、枝先にいるか」で、ゴジュウカラ・キバシリの2種と、シジュウカラ科の4種に分かれます。次に幹組は移動の向き(下へ歩けばゴジュウカラ)、枝先組は胸の模様(ネクタイあり=シジュウカラ、茶色い腹=ヤマガラ、模様なしで小さい=ヒガラ、黒いベレー帽=コガラ)で決まります。
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街派・山派・巣箱派|あなたに合う探し方
読者のタイプによって、次にやるべきことは変わります。まず街派、つまり近所の公園や庭で観察したい人。この場合の主役はシジュウカラです。市街地の公園や庭を含む平地で1年中会えるので、まず「ジュクジュク」という濁った地鳴きを耳に入れることから始めてください。ゴジュウカラは、本州の平地では対象外と割り切ったほうが時間を無駄にしません。
次に山派。日帰りでも登山口周辺まで足を延ばせる人は、ブナやミズナラの落葉広葉樹林を狙います。バードリサーチの報告が示すとおり、標高1000m以上の高標高域で分布が拡大しているため、標高を上げるほど確率が上がります。声を頼りに幹を探す、という順番を守ってください。
最後に巣箱派。庭に巣箱を掛けて観察したい人は、シジュウカラが現実的な相手です。木の洞に営巣する習性から巣箱もよく利用し、巣材にコケ類を多用します。ゴジュウカラも巣箱を利用することはありますが、そもそも生息環境が山地の林なので、街の庭では条件が合いません。
タイプが決まったら、あとは同じ場所に通う回数がものを言います。1回の遠征より、近所を10回歩くほうが、鳥の動きのパターンが見えてきます。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | ○ | ○ | ◎ | ○ |
◎=よく見られる(もっとも観察しやすい時期) ○=見られる △=まれに見られる
留鳥のため1年中生息していますが、さえずりが増える春と、葉が落ちて幹が見通せる晩秋が観察しやすい時期です。夏は葉が茂り、姿を追いにくくなります。
観察の前に|日本野鳥の会のフィールドマナー
ゴジュウカラを探して山に入る前に、日本野鳥の会が示すフィールドマナーを確認しておくと安心です。「や・さ・し・い・き・も・ち」の7文字で構成され、「野外活動、無理なく楽しく」「採集は控えて、自然はそのままに」「静かに、そーっと」「一本道、道からはずれないで」「気をつけよう、写真、給餌、人への迷惑」「持って帰ろう、思い出とゴミ」「近づかないで、野鳥の巣」と並びます。
この標語が大事なのは、観察者が増えるほど鳥への影響も積み上がるからです。「一本道、道からはずれないで」は、林床の植生を踏み荒らさないための項目。ゴジュウカラが暮らすブナ・ミズナラ林は、林床の状態も含めた環境が揃って成り立っています。
餌やりについては、同会は「餌を与える行為も、カラスやハトのように人の生活と軋轢が生じている生物、生態系に影響を与えている移入種、水質悪化が指摘されている場所などでは控える必要があります」としています。山の林で野鳥に餌を出す行為は、この観点から慎重に考える必要があります。庭でシジュウカラを迎える場合も、地域のルールと周囲への配慮を先に確認してください。
そして繁殖期の巣。子育ての季節、親鳥はとくに神経質になるものが多く、危険を感じたり、巣のまわりのようすが変化すると、巣を捨ててしまうことがあると説明されています。泥で縁取られた樹洞を見つけたときほど、距離を取る判断が求められます。
まとめ|違いは「科」「場所」「動き」の3点で覚える
最初の一歩としておすすめしたいのは、近所の公園でシジュウカラの「ジュクジュク」という濁った地鳴きを覚えることです。基準になる声と姿がひとつ頭に入ると、山でゴジュウカラの澄んだ「フィー」を聞いたときに、違いが即座に分かります。街で1種を極めることが、山での1種につながります。
そのうえで週末に標高の上がる林へ出かければ、太い幹を頭から下へ歩いていく青灰色の小鳥に出会える日が来ます。名前は一字違いでも、暮らし方はここまで違う。その落差を自分の目で確かめられるのが、この2種を比べる面白さです。
なお、亜種の分布や地域ごとの生息状況は資料によって記述が異なる場合があります。※最新情報は公式サイトでご確認ください。

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