庭の木で小さな鳥がせわしなく動き回っている。枝から枝へ移り、葉の裏をのぞき込み、また別の枝へ。白いほおに黒いネクタイ模様の、あのシジュウカラです。あれだけ動き回って、いったい何を食べているのだろう——そう思ったことはありませんか。
先に結論をお伝えします。シジュウカラの食べ物は昆虫、クモ、種子、果実にわたる雑食ですが、その中心にあるのは虫です。体重15gの体で1日に約15kcalを消費し、これは2cmの虫にすると約200匹相当にあたります。あのせわしない動きは、単に落ち着きがないのではなく、必要な量を確保するための行動なのです。
この記事では、シジュウカラが春夏・秋・冬でどう食べ物を切り替えているのか、固い冬芽をどうやって食べているのか、そして庭で餌を用意する場合にどんな条件があるのかまで、公的機関や研究機関の資料をもとに整理します。読み終えるころには、庭に来た1羽が何を探しているのかが見えるようになります。
・シジュウカラは雑食だが、主食は虫(昆虫・クモ)
・1日の消費エネルギーは約15kcal、2cmの虫で約200匹相当
・秋はミズキ・ハナミズキ・ハゼノキ・松ぼっくりの実も食べる
・冬芽は固い皮を剥がしてから中身だけを食べる
・庭で餌を出すなら、日本野鳥の会が示す12月から2月の期間に限られる
シジュウカラの食べ物は虫が主役|雑食なのに「昆虫食の鳥」と呼ばれるわけ

主食は虫、そこに種子と果実が加わる
シジュウカラの食べ物を一言でまとめるなら「虫を主食とする雑食」です。教育出版の野鳥資料では、こん虫、クモ、たねなどが主な食料として挙げられています。つまり動物質の餌が土台にあり、そこへ植物質の種子や果実が季節に応じて加わる構成です。
なぜ虫が中心になるのでしょうか。理由は体のつくりにあります。シジュウカラは細くとがった嘴を持ち、この形は小さな虫をつまみ上げたり、樹皮の隙間から引き出したりするのに向いています。太く頑丈な嘴で硬い種子を割るタイプの鳥とは、道具そのものが違うのです。
具体的な見分け方としては、庭にやってきたシジュウカラがどこを見ているかに注目してください。地面の落ち葉の下、枝の分かれ目、葉の裏側——こうした「虫が潜んでいそうな隙間」を順番にのぞき込んでいたら、それは虫を探している行動です。反対に、木の実がたわわに実った枝先に長く留まっていれば、果実や種子に切り替わっているサインになります。
注意したいのは、雑食という言葉から「何でも食べる鳥」と思い込んでしまうことです。雑食であることと、人が用意したものを何でも食べられることはまったく別の話です。この違いを踏まえないまま餌を用意すると、後半で紹介する失敗につながります。
1日約15kcal、2cmの虫なら約200匹相当という胃袋
シジュウカラの食事量を数字で見ると、あの落ち着きのない動きの理由がはっきりします。キヤノンのバードブランチプロジェクトの解説によれば、シジュウカラのエネルギー消費量は1日に約15kcalであり、これは2cmの虫にすると約200匹相当の食物摂取が必要になる計算です。
体重15gの小鳥が、2cmの虫を200匹分。1日を仮に十数時間の活動時間とすれば、数分に1匹のペースで探し続けなければ追いつきません。小鳥が高い代謝を維持するには、体の大きな動物よりも体重あたりのエネルギー消費が大きくなるという事情があります。だからシジュウカラは、朝から夕方まで採食をやめられないのです。
この数字を知っていると、観察の見方が変わります。庭のシジュウカラが数十秒で別の枝に移ってしまい「もう行っちゃった」と感じるのは、その鳥が飽きっぽいからではありません。1本の枝で得られる量では足りないので、次の場所を探しているだけです。同じ庭に何度も戻ってくるなら、そこは効率のよい採食場所だと判断されている証拠になります。
豆知識として付け加えると、この消費量は季節や気温によって変わります。寒い時期は体温維持にエネルギーを使うため、より多くの餌が必要になります。冬のシジュウカラが必死に探し回っているのは、そういう事情があるからです。
スズメとの違いは「虫か種子か」にある
身近な小鳥の中でシジュウカラと比べられることが多いのがスズメですが、食べ物の軸は正反対です。キヤノンの解説では、シジュウカラは体重15g前後で虫を主食とする一般的な小鳥であり、スズメが種子を主食とするのに対して昆虫食という点で異なると整理されています。
この違いは嘴の形に表れています。種子を主食とする鳥は太く円錐形の嘴を持ち、殻を割る力を確保しています。一方のシジュウカラは細い嘴で、割るより「つまむ・引き出す・剥がす」に適した形です。同じ庭に来ていても、両者は違う場所を見ているわけです。
野外で判断するなら、地面に降りたときの行動を比べてみてください。スズメが地面をついばみ続けるのに対し、シジュウカラは地面に降りても落ち葉をひっくり返すような動きを見せ、すぐに枝へ戻っていくことが多くなります。滞在時間と動きの質が違うのです。
ただし、この違いは「絶対にこうなる」という話ではありません。シジュウカラも種子を食べますし、季節によって比率は動きます。あくまで軸足の違いとして覚えておくと、庭の鳥の行動が読みやすくなります。

食べてはすぐフンをするのは、飛ぶための工夫
シジュウカラを観察していると、餌を食べたそばからフンを落とす場面に出会います。これは消化が悪いのではなく、飛ぶための軽さを保つ仕組みです。頻繁に食べてすぐにフンをするという採食特性が知られており、体内に重量を溜め込まないようにできているのです。
理由はシンプルで、飛ぶ動物にとって体重は直接的な負担になるからです。大量に食べる必要がある一方で、その重さを抱えたままでは機敏に動けません。少しずつ頻繁に食べ、すぐに排出するという回転の速さが、両立の答えになっています。
庭で観察する際の具体例としては、餌台や決まった枝の下に白い点が増えていないか見てみてください。同じ場所にフンの跡が集まっていれば、そこがその鳥のお気に入りの止まり場です。観察ポイントを決めるヒントになります。
注意点として、フンの下に洗濯物や車があると困ることになります。餌台や水場を置く位置を考えるときは、真下に何があるかを先に確認しておくと後のトラブルを避けられます。衛生面の配慮という意味でも、フンが溜まりやすい場所は定期的に掃除しておきたいところです。
| 分類 | スズメ目シジュウカラ科 |
| 全長・翼開長 | 全長14.5cm(約15cm)/翼開長22cm |
| 体重 | 15g |
| 見られる季節 | 留鳥のため一年中(北海道から沖縄まで分布) |
| 主な食べ物 | 昆虫、クモ、種子、果実(雑食・主食は虫) |
| よく見られる場所 | 落葉広葉樹林、平地から山地の林、樹木のある市街地 |
春から夏、枝や葉の裏をのぞき込んでいるのは何を探している?
春夏の主役は昆虫とクモ
暖かい季節のシジュウカラが探しているのは、ほぼ昆虫とクモです。春夏の食べ物として昆虫・クモが挙げられており、教育出版の資料でも夏は虫などを食べると整理されています。木々が芽吹き、葉が茂り、それを食べる虫が増えるこの時期は、シジュウカラにとって最も餌の取りやすい季節にあたります。
なぜ虫が増えるかというと、若葉は虫にとって柔らかく栄養価の高い餌だからです。芽吹きに合わせて葉を食べる虫が増え、その虫を狙って鳥が集まるという流れができます。シジュウカラの活動が活発になる時期と、庭の木に虫がつく時期はほぼ重なります。
観察の具体例としては、新芽が伸びた枝先を狙って見てください。シジュウカラは葉と葉の間に体を入れ込み、逆さになってでも裏側を確認します。この「無理な姿勢でものぞき込む」動きこそ、虫を探している最中のサインです。木の実を食べているときには、ここまで曲芸的な姿勢はあまり取りません。
豆知識として、この時期のシジュウカラは庭木につく虫を減らす働きをします。庭に来る虫を全部困りものと考えるより、鳥を呼ぶ資源と捉え直すと、庭づくりの選択肢が広がります。
枝や葉の裏を探すのは、繁殖期ならではの行動
繁殖期のシジュウカラには、枝や葉の裏をよく探して虫を探すという採食習性があります。これは自分が食べるためだけでなく、ヒナに運ぶ虫を確保するための行動でもあります。
理由は、葉の裏が虫にとって隠れ場所になっているからです。鳥や日差しから身を守るために、多くの幼虫は葉の裏側に張り付いています。それを知っているシジュウカラは、表側をざっと見るのではなく、わざわざ裏を確認して回るという効率のよい探し方をしています。
庭で見分けるなら、シジュウカラが同じ木を「行きつ戻りつ」しているかどうかを見てください。虫を見つけた場所には再訪する傾向があり、同じ枝の周りを何度も往復していれば、そこで採れ高があったということです。逆に一度通っただけで去ってしまう木は、その時点では虫が少ないと判断されています。
注意点は、この時期に木を強く剪定してしまうことです。葉が減れば虫の隠れ場所も減り、シジュウカラが探す場所そのものがなくなります。剪定のタイミングを繁殖期からずらすだけで、庭に来る鳥の数は変わってきます。
ヒナには「栄養のある虫」が運ばれる
繁殖期のシジュウカラは昆虫を多く食べ、ヒナには栄養のある虫を運びます。親鳥が自分の口に入れず、くわえたまま巣へ向かっていたら、それは子育て中の証拠です。
なぜ虫でなければならないのかというと、成長期のヒナは短期間で体をつくり上げる必要があるからです。シジュウカラの産卵期は4月から7月で、卵数は7から10個、抱卵日数は約12日、巣立ちまでの日数は約20日とされています。孵化してからわずか約20日で巣立つスケジュールを支えるには、たんぱく質の多い動物質の餌が欠かせません。
観察の手がかりとしては、親鳥の嘴を見てください。緑色の芋虫らしきものをくわえて何度も同じ方向へ飛んでいくなら、その先に巣があります。ただし巣を探しに行くのではなく、飛んでいく方向を確認する程度にとどめてください。
注意点として、繁殖期に巣へ近づくと親鳥が餌を運べなくなります。親鳥が餌をくわえたまま巣に入らず、周囲で鳴きながら待っているようなら、それは人が近すぎるサインです。距離を取って見守るのが、結果的にいちばん多くの場面を見せてくれます。

失敗パターン①:庭の虫を徹底的に駆除して、鳥が来なくなる
庭に鳥を呼びたい人が最初につまずきやすいのが、虫の扱いです。餌台は用意したのに、同時に庭の虫を薬剤で徹底的に駆除してしまい、シジュウカラが立ち寄らなくなるというパターンが起こります。
原因は、シジュウカラの主食が虫だという前提を見落としていることにあります。1日に2cmの虫で約200匹相当を必要とする鳥にとって、餌台に置かれた少量の種子は食事の一部にしかなりません。虫のいない庭は、シジュウカラから見れば「立ち寄る価値の低い場所」になってしまいます。
対策はシンプルで、庭全体を無菌状態にしないことです。目に見える害を与える虫だけに対処し、庭木の葉に多少の虫がつく状態は許容する。落ち葉をすべて片付けず、隅に少し残しておけば、地表で採食するシジュウカラの探し場所にもなります。
もう一つの注意点は、薬剤を使った直後に餌台を出さないことです。鳥を呼び寄せておきながら、その庭が餌を採りにくい状態になっているのは望ましくありません。庭の手入れと鳥を呼ぶ工夫は、セットで考える必要があります。
春から夏のシジュウカラは、葉の裏や枝の隙間を執拗にのぞき込みます。この時期に見せる曲芸的な姿勢は、虫を探している最中のサインです。庭木の虫をゼロにしないことが、そのまま鳥を呼ぶ条件になります。
秋になると木の実に切り替わる|シジュウカラが狙う実の種類

ミズキ・ハナミズキ・ハゼノキ・松ぼっくりの実
秋のシジュウカラは、虫だけに頼らなくなります。秋にはミズキやハナミズキ、ハゼノキ、松ぼっくりなどの実も食べることが知られており、この時期は植物質の割合が上がります。
理由は、気温が下がるにつれて虫の数が減っていくからです。同時に、秋は木の実が最も充実する季節でもあります。手に入りやすい餌へ柔軟に切り替えられることが、雑食である強みとして働きます。
庭で観察するなら、これらの木があるかどうかを確認してみてください。ハナミズキは庭木として植えられていることが多く、秋に赤い実をつけます。ミズキやハゼノキは公園や林縁でよく見かけます。実が色づく時期に木の周りで待っていると、シジュウカラが立ち寄る場面に出会いやすくなります。
注意点として、木の実を食べに来る鳥はシジュウカラだけではありません。ヒヨドリやムクドリなど、より体の大きな鳥が先に実を食べてしまうこともあります。シジュウカラは体重15gの小さな鳥なので、大型の鳥が去った後の時間帯を狙うほうが観察しやすい場面もあります。

松ぼっくりの実を食べるときの姿勢に注目
松ぼっくりの実を食べるシジュウカラは、体重15gという軽さを活かした姿勢を見せます。細い枝先や松かさにぶら下がるようにして、鱗片の隙間から中身を取り出すのです。
この芸当ができる理由は、体の軽さと脚の力にあります。全長14.5cm、体重15gの体なら、細い枝先でも折れません。さらにシジュウカラは脚で対象を押さえる動きが得意で、この技術が後で紹介する冬芽の食べ方にもつながっています。
見分けのポイントとしては、松の木で逆さにぶら下がっている小鳥がいたら、まず胸元を確認してください。白い腹に黒い縦のネクタイ模様が走っていれば、シジュウカラです。メスはこのネクタイ模様がやや細いという違いがあります。
豆知識ですが、松の木は常緑のため冬も葉が残り、風よけになります。秋から冬にかけて松のある場所を観察ルートに入れておくと、実を食べる場面と休んでいる場面の両方に出会える確率が上がります。
季節別の食べ物早見表(野鳥の教科書調べ)
ここまでの内容を、季節ごとに一覧できる形にまとめました。シジュウカラは留鳥で日本全国に分布するため、この切り替わりは全国どこでも起こります。庭やベランダで観察するときの目安にしてください。
| 季節 | 主な食べ物 | 探している場所 | 観察のヒント |
|---|---|---|---|
| 春 | 昆虫・クモ | 新芽の枝先、葉の裏 | 逆さの姿勢で葉裏を確認する |
| 夏 | 昆虫・クモ(育雛用に多く採る) | 枝や葉の裏 | 虫をくわえたまま飛ぶ姿を探す |
| 秋 | ミズキ・ハナミズキ・ハゼノキ・松ぼっくりの実 | 実のついた樹上 | 実が色づく木の周りで待つ |
| 冬 | 冬芽・木の実・幼虫 | 地表、樹木の枝 | 落ち葉をかき分ける動きに注目 |
表にすると、シジュウカラが「虫→実→冬芽と虫」という往復をしていることが見えてきます。虫が完全に消えるわけではなく、冬でも地表で採食していることが、次の章で紹介する意外な事実につながります。
秋に庭で観察するときのコツ
秋のシジュウカラを庭で見たいなら、実のなる木の位置と、そこへの経路を意識するのが近道です。シジュウカラは開けた空間を長距離横切るより、木から木へ渡り歩く移動を好みます。
理由は身を守るためです。樹木のある市街地に生息するという生息環境の特徴が示すとおり、シジュウカラは木の存在を前提に行動しています。庭に高木が1本もなく、いきなり地面に餌台があるだけでは、降りてくる踏み台がない状態になります。
具体的には、庭の隅にある木や生垣、隣家の樹木からの流れを想像してみてください。その動線上に観察ポイントを置けば、シジュウカラが立ち寄る確率は上がります。逆に、動線から外れた場所に凝った設備を置いても素通りされます。
注意点として、秋は木の実が豊富にある時期なので、人が用意したものへの関心は高くありません。この時期に鳥が来ないからといって餌の量を増やす必要はなく、自然の実を食べている姿を観察する季節と割り切るほうが理にかなっています。
冬芽をそのままは食べない|皮を剥がして中身だけを食べる採食術
冬の主な食べ物は冬芽と木の実
虫が姿を消す冬、シジュウカラが頼るのが冬芽です。冬芽とは、樹木が翌春に葉や花を開くために用意している芽で、固い皮に包まれて越冬しています。この中身が、寒い時期の貴重な餌になります。
環境省東北地方環境事務所の記録では、シジュウカラが樹木の冬芽を啄んでいる様子が報告されています。虫の少ない時期に、樹木が用意した栄養の詰まった部分を利用するという合理的な選択です。
観察の具体例としては、落葉した木の枝先に注目してください。葉がないぶん見通しがよく、シジュウカラの動きを追いやすい季節でもあります。枝先で立ち止まり、何かを嘴でつまんでいたら、冬芽を狙っている可能性があります。
注意点は、冬芽を食べるからといって樹木が枯れるわけではないという点です。鳥が芽をついばむことは自然の中で長く続いてきた関係であり、庭木を守るために鳥を追い払う必要はありません。
4ステップで皮をむく、意外に手の込んだ食べ方
シジュウカラは固い冬芽をそのまま食べることはしません。環境省東北地方環境事務所の観察記録によれば、嘴で冬芽をもぎ取り、足下に置いて脚で掴み、嘴で固い皮を剥がしてから、中の柔らかい芽を食べるという順序を踏んでいます。
理由は、冬芽の外側が食べるのに適していないからです。芽を寒さから守るための固い皮は、シジュウカラの細い嘴では丸ごと処理できません。そこで「押さえる」「剥がす」という二段階の作業が必要になります。脚で対象を押さえる技術は、松ぼっくりの実を扱うときと共通しています。
環境省東北地方環境事務所の観察記録では、樹木の種類にもよるとしたうえで、このような食べ方をしていると記されています。すべての樹種で同じ手順とは限らない点も、あわせて押さえておきたいところです。
実は、冬でもシジュウカラは虫を食べている
意外と知られていないのですが、シジュウカラの冬は木の実と冬芽だけで成り立っているわけではありません。越冬期は地上での採食も多く、幼虫を1日に数百匹も食べるとされています。虫が消えたように見えるのは、人の目に触れる場所からいなくなっただけなのです。
なぜ地上なのかというと、冬の虫は落ち葉の下や樹皮の隙間、朽ち木の中などで越冬しているからです。空中を飛ぶ虫や葉についた虫はいなくなりますが、越冬中の幼虫は探せば見つかります。シジュウカラはその場所を知っていて、探す先を空中から地表へ切り替えているわけです。
観察の具体例としては、冬の庭で地面に降りたシジュウカラの動きを見てください。落ち葉をかき分けたり、地面をつついたりしていれば、越冬中の虫を探しています。夏に比べて地上にいる時間が長いのが、冬のシジュウカラの特徴です。
この事実は、庭づくりの考え方も変えます。落ち葉をすべて片付けてしまうと、冬の採食場所を奪うことになります。庭の隅に落ち葉を残しておくことは、餌台を出すよりも自然な形でシジュウカラを支える方法になります。
寒さに耐えるために、食べる量はむしろ増える
冬のシジュウカラは、餌が少ないのに必要量は減らないという厳しい条件に置かれています。体重15gの体で寒い夜を越すには、体温を保つためのエネルギーが欠かせません。
1日に約15kcal、2cmの虫にして約200匹相当という消費量が土台にあり、そこへ寒さの負担が乗ります。冬のシジュウカラが日中ずっと動き回っているのは、その日の分を確保しなければ翌朝を迎えられないからです。
具体的には、冬の朝と夕方に活動が集中する傾向があります。朝は一晩で消費した分を取り戻すため、夕方は夜に備えるためです。観察する時間帯を選ぶなら、この2つの時間が狙い目になります。
注意点として、この事情は「だから餌を出すべきだ」という結論に直結するものではありません。次の章で見るとおり、餌を出す行為には条件と配慮が必要です。事実を知ることと、人が手を出すことは分けて考える必要があります。
庭でシジュウカラの食べ物を用意するなら、12月から2月だけ
好むのはひまわりの種と、柿などの果物
庭に餌台を置く場合、シジュウカラが好むものとして挙げられるのは、ひまわりの種と柿をはじめとした果物です。シジュウカラは柿をはじめとした果物を好んで食べます。
ひまわりの種が使われる理由は、脂質が多くエネルギー密度が高いためです。寒い時期に体温を保つ必要のある小鳥にとって、少量で効率よくエネルギーを得られる食べ物は理にかなっています。果物も同様に、糖分をすぐエネルギーに変えられる点で冬向きです。
具体的な使い方としては、餌台に置く場合と、枝に果物を刺す場合があります。ただし、これらはあくまで「シジュウカラが食べるもの」であり、与えることが推奨されているわけではありません。この点は次の項目で詳しく整理します。
注意点として、シジュウカラの主食は虫であるという前提は冬も変わりません。餌台の種子はあくまで補助的なもので、これだけで1日約15kcal分を賄っているわけではないことは押さえておいてください。
バードフィーダーで使えるとされているもの
バードフィーダーで使用できるものとして挙げられているのは、黒ひまわりの種、ヘンプシード、ビーフスエット、バードケーキ、ピーナッツです。これらは野鳥向けとして扱われている食べ物です。
共通しているのは、いずれも脂質やたんぱく質を含み、冬のエネルギー補給に向いている点です。ビーフスエットは牛脂を指し、寒い時期に脂質を補う目的で使われます。バードケーキはこうした素材を混ぜて固めたものです。
具体的には、餌台に置くもの、吊るすもの、樹皮に塗るものなど、食べ物によって設置方法が異なります。シジュウカラは脚で押さえて食べる技術を持つため、吊り下げ型でも器用に利用します。
注意点は、ここに挙がっていないものを自己判断で追加しないことです。家庭にあるものを与えたくなりますが、野鳥向けとして確認されていない食べ物を出すのは避けてください。何が適切かの判断は、公的な情報源に沿って行うのが安全です。

庭やベランダに餌台を置いてみたものの、一羽も来ないまま数日が過ぎた。あるいは、これから置こうと思って調べ始めたら「餌付けはやめましょう」という自治体のページに行…
期間は12月から2月、それ以外は出さない
餌台を置く時期には明確な条件があります。自然界で餌が少なくなる季節に限りエサ台を置くことが推奨されており、その期間は、与えるとしても餌不足になる12月から2月くらいまでとされています。
理由は、それ以外の季節には自然の中に十分な餌があるからです。春から夏は昆虫とクモ、秋は木の実がある時期で、人の手を借りる必要はありません。むしろ餌が足りている時期に給餌すると、鳥が人の用意したものに依存する状態を招きます。
日本野鳥の会の考え方としては、給餌は本来推奨できるものではなく、与えるとしても餌不足の時期に限られるという位置づけです。給餌期間外は、ありのままの状態で観察すべきとされています。
注意点として、暖冬だから早めに、寒いから長めに、といった自己判断の延長は避けてください。期間の目安が示されているのは、依存を生まないためです。3月に入ったら片付ける、という区切りを守ることが、シジュウカラのためになります。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ◎ | ◎ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | ◎ |
◎=自然界で餌が少なくなり、餌台を置くとしたらこの期間(12月から2月) △=餌台は置かず、自然の採食をありのままに観察する時期
失敗パターン②:期間を延ばし、確認していない餌を足してしまう
餌台で起きやすい失敗が、期間と中身の両方をなし崩しにしてしまうことです。冬に鳥が来るのが楽しくなり、春になっても片付けられず、さらに家にあるものを追加してしまう——という流れが典型例です。
原因は、鳥が来ること自体が目的になってしまう点にあります。餌に頼り、多くの鳥が集まるようになると、集団感染や水の富栄養化を促進してしまうという指摘があります。来る鳥が増えることは、必ずしもよい結果を意味しません。
対策は2つです。1つ目は、カレンダーに片付ける日を書き込んでおくこと。3月に入ったら中身を出し、餌台を洗って収納する、と決めておけば判断に迷いません。2つ目は、置くものを黒ひまわりの種、ヘンプシード、ビーフスエット、バードケーキ、ピーナッツといった範囲にとどめ、思いつきで足さないことです。
注意点として、途中でやめると鳥が困るのでは、と心配する必要はありません。シジュウカラは留鳥として日本全国で自力で越冬してきた鳥です。餌台がなくても、地表の幼虫や冬芽を見つける方法を持っています。
餌台を出す前に知っておきたい注意点
鳥が集まりすぎることのリスク
餌台をめぐるいちばんの懸念は、限られた場所に多くの鳥が集まることです。餌に頼り、多くの鳥が集まるようになると、集団感染や水の富栄養化を促進してしまうとされています。
理由は、野生の状態では鳥が分散して採食しているからです。1日に約15kcal分を確保するために広い範囲を動き回るのが本来の姿で、1か所に集中する状況は自然界では起こりにくいものです。人工的に密集が生まれると、通常はない接触が増えます。
具体的な対策としては、餌の量を絞ること、餌台や水場を清潔に保つこと、食べ残しを放置しないことが挙げられます。汚れた台をそのままにしておくのは、餌を出さないことよりも望ましくない状態です。
注意点として、水場も同じ考え方が必要です。水を溜めたままにすると水質が悪化します。出すと決めた以上は、管理の手間もセットで引き受けることになります。
日本野鳥の会は、カラスやハトのように人の生活と軋轢が生じている生物、生態系に影響を与えている移入種での給餌は控える必要があります、としています。餌台を出す場合は、こうした鳥が集まっていないかを確認し、集まるようなら中止する判断が求められます。給餌期間外は、ありのままの状態で観察するのが基本です。
カラス・ハト・移入種が来たらどうするか
餌台を出すと、意図しない鳥が来ることがあります。日本野鳥の会は、カラスやハトのように人の生活と軋轢が生じている生物、生態系に影響を与えている移入種での給餌は控える必要があると示しています。
なぜこれらの鳥が区別されるかというと、地域社会とのトラブルにつながりやすい種だからです。人の生活圏で問題が生じている鳥に餌を提供することは、その問題を大きくする方向に働きます。シジュウカラを呼ぶつもりの行為が、別の結果を生んでしまうわけです。
具体的な対応としては、体の大きな鳥が入れない構造の餌台を選ぶ、少量にして食べ切らせる、集まってきたら中止する、といった選択肢があります。判断に迷うなら、いったんやめて様子を見るのが確実です。
注意点として、来てしまった鳥を追い払う方法を考えるより、餌台そのものを見直すほうが根本的です。餌があるから集まっているので、原因側を変えるのが筋道になります。
日本野鳥の会「フィールドマナー」には、観察や給餌に関する考え方がまとめられています。餌台を検討する前に、一度目を通しておくことをおすすめします。
近所への配慮を忘れない
餌台は自分の庭のことのようでいて、周囲に影響します。日本野鳥の会は、写真撮影や給餌、観察が地元の人や周囲の人に誤解やストレスを与える場合もあるので、十分な配慮をしましょう、としています。
理由は、鳥が集まればフンや鳴き声が増えるからです。シジュウカラは頻繁に食べてすぐにフンをする鳥なので、集まる場所の下は汚れます。自分は楽しくても、隣家の洗濯物や駐車場に影響が及べば話は別になります。
具体的には、餌台の設置場所を隣家との境界から離す、真下に何があるかを確認する、フンが溜まったら掃除するといった配慮が挙げられます。事前に一言伝えておくだけで、印象は変わります。
注意点として、集合住宅のベランダでは規約で禁じられている場合があります。始める前に確認しておかないと、後から取り下げることになります。

庭にバードフィーダーを吊るして数週間。ようやくスズメやシジュウカラが来るようになった矢先に、隣の家から「洗濯物にフンが落ちるんだけど」と言われてしまった——。バ…
あなたの観察スタイル別・食事シーンの見つけ方
庭がある人:木と落ち葉を活かす
庭のある人にとって、いちばん効果的なのは餌台を置くことではなく、庭を採食できる場所にすることです。シジュウカラは樹木のある市街地にも生息する鳥なので、木が1本あるだけで立ち寄る理由が生まれます。
理由は、シジュウカラの主食が虫だからです。庭木に虫がつく状態を許容し、落ち葉を庭の隅に残しておけば、春夏は葉の裏で、冬は地表で採食できます。餌台と違って期間の制限がなく、一年を通して自然な形で観察できます。
具体例としては、秋にハナミズキの実がつく庭なら、その時期に窓際から観察する習慣をつけてみてください。実が色づく期間だけの限定的な光景ですが、毎年繰り返されます。
注意点は、庭を整えすぎないことです。落ち葉を残す、虫を全滅させないという方針は、見た目の整った庭とは相性がよくありません。どこまで許容するかを、あらかじめ決めておくとストレスになりません。
ベランダだけの人:無理に呼ばず、周囲の木を見る
ベランダしかない場合、シジュウカラを呼び込むより、周囲の樹木を観察拠点にするほうが現実的です。シジュウカラは木から木へ移動する鳥なので、近くに街路樹や公園の木があれば、そこが観察対象になります。
理由は、ベランダには虫も実もないからです。餌台だけを頼りに呼ぶことになりますが、それは12月から2月に限られ、規約や近隣への配慮という制約も加わります。労力に対して得られる場面が限られます。
具体的には、双眼鏡を1つ用意して、ベランダから見える範囲の木を定点観察する方法があります。全長14.5cmの鳥でも、双眼鏡があれば胸のネクタイ模様まで確認できます。
注意点として、ベランダから隣家や道路を見る形になる場合は、双眼鏡の向きに気をつけてください。鳥を見ているつもりでも、周囲には別の印象を与えます。

ライブや観劇で使っていたオペラグラスを持って公園へ行ったら、鳥がどこにいるのかも分からないまま終わってしまった。逆に、野鳥用に買った双眼鏡を劇場へ持ち込んだら、…
公園や林に出かける人:時間帯と地表を狙う
外に出て観察するなら、落葉広葉樹林や平地から山地の林が狙い目です。シジュウカラの生息環境そのものなので、庭より遭遇率が高くなります。
理由は、餌が豊富にあるからです。虫も木の実も冬芽も揃っている環境では、シジュウカラは1日を通して採食を続けます。特に冬は越冬期の地上での採食が多いため、地表に降りている姿を見つけやすくなります。
具体的には、落ち葉の積もった林床を見渡してみてください。カサカサという音がしたら、その方向に小鳥がいる可能性があります。冬は落葉して見通しがよく、枝先の冬芽をついばむ場面も観察しやすい季節です。
注意点は、追いかけないことです。シジュウカラは数分に1匹のペースで餌を採らなければならない鳥なので、人が近づいて移動を強いると、その分の採食機会を奪うことになります。立ち止まって待つほうが、結果的に長く観察できます。
まとめ:虫と実の入れ替わりを知れば、庭の小鳥が読める
シジュウカラの食事は、季節に合わせて姿を変えます。春から夏は葉の裏の昆虫とクモ、秋はミズキやハナミズキ、ハゼノキ、松ぼっくりの実、そして冬は冬芽と地表の幼虫。虫が消えたように見える冬でさえ、越冬期は地上での採食が多く、幼虫を1日に数百匹食べています。体重15gの体で1日約15kcalを確保するという条件が、この柔軟さを生んでいるのです。
庭でできる最初の一歩は、餌台を買うことではありません。今度シジュウカラが来たら、どこを見ているかを1分だけ観察してみてください。葉の裏をのぞいているのか、枝先で何かを押さえているのか、地面をかき分けているのか。それだけで、その日その庭で何が採れているのかが見えてきます。餌を出すかどうかは、その後で考えても遅くありません。
※給餌の考え方や時期については、日本野鳥の会をはじめとする公的な情報源の最新の見解をご確認ください。

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