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スズメの卵は一腹4〜7個・長径2cm前後|9卵の巣が教える、見つけたときの正解

スズメの卵は一腹4〜7個・長径2cm前後|9卵の巣が教える、見つけたときの正解のアイキャッチ画像

物置のすき間や換気口から枯れ草がはみ出していて、ふと見たら小さな卵が並んでいた。あるいは、庭の地面に薄い斑模様の卵が落ちていた。スズメの卵は、身近な鳥の卵なのに実物を見る機会がほとんどないので、いざ目の前にすると「これは何個産むのが普通なのか」「触っていいのか」で手が止まります。

先に結論を書きます。スズメの卵は一腹4〜7個、大きさは長径17mm〜21.5mm・短径13.5mm〜15.5mmで、白灰色の地に灰褐色や灰紫色の斑があります。産卵は1日1個ずつ、抱卵12日、育雛14日、巣立ち後も10日ほど親から給餌を受けます。そして最も大事なこと——卵やヒナがいる巣は、許可なく動かすと鳥獣保護管理法違反になります。

この記事では、公的機関や研究者の一次データをもとに、卵のサイズ・数・色から、産卵〜独立までの日数、営巣場所、そして見つけたときにしていいこと・してはいけないことまでを順に整理します。秋田県で見つかった「9卵の巣」という国内最大級の記録が何を教えてくれるのかも紹介します。読み終わるころには、庭先の巣とどう付き合えばいいかがはっきりするはずです。

📌 この記事でわかること

・スズメの卵の大きさ・色・数(一腹4〜7個/長径17mm〜21.5mm)
・産卵から独立まで50日以上かかる日程の内訳
・卵が見つかる場所と、巣をのぞくときの注意点
・卵やヒナのいる巣を動かせない法律上の理由と、困ったときの相談先

目次

スズメの卵は一腹4〜7個、長径2cm前後の白灰色

スズメの卵は一腹4〜7個、長径2cm前後の白灰色の解説画像

まずは卵そのものの基本データからです。ここを押さえておくと、庭で見つけた卵がスズメのものかどうかを判断する手がかりになります。

🐦 野鳥スペックカード
分類スズメ目ハタオリドリ科(学名 Passer montanus)
全長140mm〜150mm(約14〜15cm)/体重 約24g
卵の大きさ長径17mm〜21.5mm、短径13.5mm〜15.5mm
卵の色白灰色の地に灰褐色や灰紫色の斑
一腹卵数4〜7個
繁殖期4〜8月(繁殖期間中に2〜3回繁殖)

親指の先ほどの大きさ|長径17mm〜21.5mmという現実

スズメの卵は長径17mm〜21.5mm、短径13.5mm〜15.5mmです。長い方の直径でも2cmちょっと、大人の親指の先ほどしかありません。ウズラの卵をひとまわり小さくしたサイズをイメージすると近いです。

なぜこれほど小さいかというと、親鳥自身が全長140mm〜150mm、体重約24gしかないからです。この数値はバードリサーチの生態図鑑に掲載された計測値で、翼長は65mm〜73mm、尾長は46mm〜56mmとされています。体重24gの鳥が数日連続で卵を産むわけですから、1個あたりの負担は相当なものです。卵が小さいのは「手抜き」ではなく、短期間に複数個を産むための設計だと考えると腑に落ちます。

実際に見分けるときは、大きさと同時に「殻の質感」を見てください。スズメの卵はつやが強すぎず、表面全体に細かい斑が散っています。庭でこのサイズの卵を見つけたら、まずスズメかシジュウカラなど小型の鳥を疑うのが自然です。

注意したいのは、大きさだけで種を断定しないこと。似たサイズの卵を産む小鳥は複数いますし、卵は個体差もあります。巣の場所(人家のすき間か、樹洞か)や周囲にいる親鳥の姿と合わせて判断するほうが確実です。そして、確かめたいからといって卵を手に取るのは避けてください。理由は後の章で説明します。

白灰色に灰褐色の斑|同じ巣でも1個ずつ模様が違う

色は白灰色の地に、灰褐色や灰紫色の斑をもちます。真っ白でも水色でもなく、「薄汚れた白に細かいゴマを振ったような見た目」といえば近いでしょう。

この斑模様には意味があります。スズメは人家のすき間や樹洞といった暗い場所に巣を作りますが、それでも外敵に見つかれば卵は狙われます。地味な斑模様は、巣材の枯れ草にまぎれる保護色として働きます。派手な色の卵を産む鳥は、たいてい外敵が入りにくい環境か、逆に卵を目立たせる別の理由を持っています。

おもしろいのは、同じ巣の中でも卵ごとに模様が違うことです。日本野鳥の会の研究誌『Strix』に掲載された秋田県での事例では、ひとつの巣の卵が「地が薄茶色で密な小さい斑が入る卵」「地が白っぽくて不明瞭な大きい斑を持つ卵」「地の色が白っぽくて比較的明瞭な大きい斑が入る卵」の3タイプに分かれていました。研究者はこの色の違いを手がかりに、卵が誰のものかを推測しています。

豆知識として覚えておきたいのは、この色の違いが「異常」ではないこと。同じ母鳥が産んだ卵でも、産卵の順番によって色素の乗り方が変わります。巣の中に色の違う卵があっても、別の鳥が産んだとは限りません。

一腹4〜7個|資料によって数字が違うのはなぜ?

1回の子育てで産む卵の数(一腹卵数)は4〜7個です。ただし、この数字は資料によって微妙に違います。それは調査した地域と年代が違うからで、どれかが間違っているわけではありません。

下の表は、スズメの一腹卵数について書かれた主な資料を野鳥の教科書で整理したものです。国内外どの調査でも「4〜6個あたりが大多数」という点は共通しています。

資料・調査 一腹卵数 補足
佐野1997(バードリサーチ生態図鑑) 4〜7個 日本のスズメの標準値として掲載
Cramp & Perrins 1994 2〜7卵(最小1・最大8) 最頻値は5卵
農商務省農務局1923(秋田・201巣) 5〜6卵が75% 最大8卵を1例記録
山階1980 通常5〜6卵 稀に4または8卵
Summers-Smith 1995(欧州11研究) 4〜6卵が82〜95% 地域ごとの最大値は7〜10卵

この表から読み取れるのは、100年前の秋田の調査でも、1990年代のヨーロッパの調査でも、中心はほぼ同じという事実です。スズメの卵の数は環境が変わっても大きくは動かない、安定した性質だといえます。

注意点として、「巣の中に見えた卵の数=一腹卵数」とは限りません。産卵の途中で見れば少なく数えますし、前回の未孵化卵が残っていれば多く数えます。数を確かめたいという理由で毎日のぞきに行くのは、次の章で触れるとおり逆効果です。

最後の1個だけ模様が違う「止め卵」を知っていますか

スズメの巣には「止め卵(とめたまご)」と呼ばれる卵があります。最後に産まれた卵は地の色や斑模様がほかと違うことが多く、立教大学のスズメプロジェクトもこの呼び名を紹介しています。

なぜ最後の卵だけ違うのか。産卵は体にとって連続した大仕事で、色素の分泌量が産卵の後半に変わることが理由と考えられています。つまり止め卵は「これで産み終わり」という体のサインが殻に出たもの、と理解するとイメージしやすいはずです。

この止め卵は、研究の現場では手がかりとして使われます。秋田県で見つかった9卵の巣では、色彩の違いから「止め卵が少なくとも2卵含まれている」と判断されました。止め卵が2つあるということは、1羽の雌が1回で産んだ卵ではない可能性が高い——という推論につながるわけです。卵の模様は、巣の中で起きたことを読み解くカルテのような役割を果たします。

豆知識をひとつ。止め卵は「弱い卵」「孵らない卵」という意味ではありません。実際、秋田の事例で唯一孵化したのは、止め卵ではない「地が薄茶色で密に小さい斑が入る卵」でした。模様の違いは順番の記録であって、優劣を示すものではないと考えてください。

産卵から独立まで、実は50日以上かかっている

「卵を見つけた。あと何日で巣立つの?」——これは庭に巣ができた人が最初に知りたいことです。結論を言うと、産卵から子どもが独り立ちするまでには、最短でも40日程度、実際には50日以上かかります。

🏠 産卵から独立までの流れ
Step1:産卵(1日1個ずつ産み、4〜7個そろうまで数日かかる)
Step2:抱卵12日(雌雄で協力するが、雌の方が中心に温める)
Step3:孵化(最後の卵が産まれてから10〜12日後に孵る)
Step4:育雛14日(雛の食事は昆虫が中心。親は何度も巣に通う)
巣立ち後も10日間:親鳥の給餌を受けながら、食べ物と危険を学んで独り立ちします

産卵は1日1個ずつ|巣に3個しかなくても途中かもしれない

スズメは卵を1日1個ずつ産みます。4〜7個なら、産み終わるまでに4〜7日かかる計算です。ここを知らないと巣の状況を読み違えます。

1日1個というペースは、鳥の体の仕組みによるものです。卵の形成には殻を作る時間が必要で、多くの小鳥が同じように1日1個のリズムを持っています。まとめて産むことはできません。

具体的にどう効くかというと、たとえば巣をのぞいて卵が3個だったとき、それが「3個で打ち止め」なのか「まだ産卵の途中」なのかは、その日だけでは判断できないということです。翌日には4個になっているかもしれません。研究者が一腹卵数を数えるときに何度も巣を見回るのは、このためです。

注意点は、抱卵の開始タイミングです。スズメは卵がある程度そろってから本格的に温め始めるため、先に産んだ卵が先に孵るとは限りません。孵化の目安として立教大学のスズメプロジェクトが挙げているのは「最後の卵が産まれてから10〜12日後」。最初の卵からではなく最後の卵から数える、と覚えておくとカレンダーがずれません。

抱卵12日は雌が中心|でも雄もちゃんと温めている

抱卵期間は12日です。そしてこの12日間、温めているのは雌だけではありません。バードリサーチの生態図鑑によれば、抱卵も雛への給餌も雌雄で協力して行い、雌の方が中心に行うとされています。

スズメは雌雄同色で、外見では性別を見分けられません。だから巣に出入りする2羽を見ても、どちらが雌かは分かりません。それでも「交代で出入りしている」という行動そのものが、夫婦で分担している証拠になります。

観察するなら、巣穴から少し離れた場所から双眼鏡で見るのがコツです。片方が入っていき、しばらくして別の1羽が出てくる——この入れ替わりが見えたら、抱卵の交代を目撃したことになります。抱卵中は親鳥が巣にこもるため、外から見ると急に静かになったように感じるはずです。

豆知識として、抱卵期の親鳥は神経質になっています。人が巣の近くに長くとどまると、親鳥は警戒して巣に戻れません。温める時間が減れば卵は冷えます。「静かになったから中を見てみよう」が最も危険なタイミングだということは、覚えておいてください。

育雛14日|巣立ちまでの雛の食事は種ではなく虫

孵化してから巣立つまでは14日です。この2週間、親鳥が運ぶのは種子ではなく昆虫です。

理由は栄養にあります。成鳥のスズメは基本的に草本の種などを食べますが、雛の成長にはタンパク質が要ります。立教大学のスズメプロジェクトは、雛のおもな食事を「鱗翅目の幼虫、双翅目や甲虫類など栄養価の高い昆虫」と説明しています。チョウやガの幼虫、ハエやアブの仲間、甲虫のことです。

この事実は、庭での見え方を変えます。冬にはパンくずや米に集まっていたスズメが、初夏には庭木の葉をしきりに探っている——それは餌の好みが変わったのではなく、雛のために虫を集めているからです。育雛期に庭で虫を捕るスズメが増えたら、近くに巣がある合図と考えていいでしょう。

注意点として、雛のために虫を用意してあげようと考える必要はありません。親鳥は生きた虫を自分で捕らえて運びます。人が用意した食べ物は、雛の育ちに合わないことがあります。餌台の使い分けについては、季節ごとの食性をまとめた記事も参考にしてください。

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巣立ってからの10日間が、実はいちばん危ない

巣立ちはゴールではありません。巣立ち後も親鳥の給餌を10日間くらい受けながら、若鳥は食べ方と身の守り方を学びます。

日本野鳥の会は、この期間の意味をはっきり書いています。自然界では巣立ち後に親鳥と過ごすわずかな期間(1週間から1か月)に「何が食べ物で、何が危険か」などを学習してひとり立ちする、という説明です。逆に言えば、この期間に親と引き離された若鳥は、生きるための知識を持たないまま放り出されることになります。

庭で目にするのは、飛ぶのが下手で、地面や低い枝にとどまっている若鳥の姿です。羽は生えそろっているのにあまり動かない。人が近づいても逃げ足が遅い。こうした個体は「弱っている鳥」ではなく、学習中の巣立ちビナである可能性が高いです。

やりがちな失敗は、この時期の若鳥を「親とはぐれた」と判断してしまうことです。親鳥は人がヒナの近くにいると警戒して近づけません。人が見ている間だけ親が来ないので、はぐれたように見えるだけ——という構図は、次の章以降でもう一度詳しく扱います。

なぜ夏の終わりにも巣がある?年2〜3回という子育て事情

なぜ夏の終わりにも巣がある?年2〜3回という子育て事情の解説画像

「春に巣立ったのに、7月にまた巣を作っている」。これはスズメではよくあることです。スズメは1シーズンに複数回繁殖します。

🗓 スズメの繁殖カレンダー(巣に卵がある可能性)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◎=繁殖の中心期 ○=繁殖している巣がある △=まれ(バードリサーチ生態図鑑の繁殖期4〜8月、農林水産省資料の3〜9月をもとに作成)

繁殖期は4〜8月|資料によって3〜9月とされる理由

スズメの繁殖期は4〜8月です。ただし農林水産省の鳥獣被害対策マニュアルでは「スズメの繁殖期は3〜9月で、年に1〜3回繁殖する」と、より広い期間が示されています。

この差は、対象とする地域の広さの違いから生まれます。日本は北海道から沖縄まで縦に長く、暖かい地域では早く、寒い地域では遅く繁殖が始まります。全国をまとめれば3〜9月まで幅が広がり、標準的な中心部分だけを取れば4〜8月になる、というわけです。

庭での実感に置き換えると、3月に巣材を運ぶ姿を見ることはありますし、8月に入っても餌をねだる雛の声が聞こえることがあります。三上修氏の解説でも、関東では3月の中旬ごろから始める個体もいるし、8月をすぎても繁殖していることはあると説明されています。

注意点は、「繁殖期が終わった」と決めつけないことです。上のカレンダーで△の月でも、絶対にないとは言い切れません。巣に手を触れる予定があるなら、時期ではなく中身(卵や雛がいないか)で判断するのが正解です。

1回の子育てに最短40日|だから年3回は簡単ではない

1回の繁殖にかかる日数を積み上げると、最短でも40日程度になります。抱卵に12日、育雛に14日、巣立ち後のケアに10日。ここに巣作りと産卵の日数が加わるからです。

三上修氏はこの計算を示したうえで、実際には50日以上かかるとみた方がよいと説明しています。巣作りに1週間、産卵に5日(5卵産むとして)かかる分を足せば、40日はあくまで理論上の最短値だとわかります。

具体例で考えてみましょう。4月上旬に巣作りを始めたペアは、順調にいって5月下旬に1回目の子育てを終えます。そこから2回目に入れば7月中旬。3回目まで行こうとすると9月に食い込みます。繁殖期の長さから逆算すると、年3回はかなり条件がそろった場合だとわかります。

豆知識として、この日数はうまくいった場合の話です。途中で卵が失われれば、ペアは巣を作り直してやり直します。同じ場所で何度も巣作りが始まるように見えるのは、繁殖回数が多いからではなく、やり直しているケースもあります。

年1〜3回といっても、実際の平均は1.5〜2回

資料には「年に1〜3回繁殖する」と書かれていますが、実際の平均はもっと控えめです。三上修氏は、ほとんどのスズメは2回繁殖していると考えるのが現実的で、平均繁殖回数は1.5回〜2回くらいと推測しています。

なぜ上限の3回まで届かないのか。理由は日数の制約と、途中で失敗する巣があるからです。天候不順で餌の虫が少なければ育雛は長引きますし、巣そのものを失うこともあります。

この数字は、スズメの数を考えるうえで重要です。1回に4〜7個産んで、年2回なら、単純計算では1ペアあたり年10個前後の卵が生まれます。それでもスズメが増え続けないのは、卵から独り立ちまでの間に失われる数がそれだけ多いということです。

やりがちな失敗:「もう7月だから繁殖は終わった」と判断して、巣のある換気口や雨戸の戸袋を掃除してしまうケースです。7月・8月はまだ○の時期で、2回目・3回目の卵が入っている可能性があります。作業の前に、必ず中身を確認してください。中に卵や雛がいた場合の扱いは、法律の章で説明します。

卵はどんな場所で見つかる?スズメの物件選び

スズメの巣は森の木の上ではなく、人間の建物にあります。だから卵は「思いがけない場所」で見つかります。

📌 押さえておきたいポイント

スズメが営巣するのは、人家の軒や瓦の間、樹洞のほか、電柱の穴・換気口・巣箱・鉄パイプ・交通信号機など。「すき間があって、雨風と外敵をしのげる」なら人工物でも構わないのがスズメの物件選びです。

人家の軒や瓦のすき間|家がそのまま巣になる

もっとも典型的なのが、人家の軒や瓦の間です。スズメは食物や棲み場所を人為的環境に依存しており、人が住んでいないところでは生活できないほど人間生活に密着した鳥だと、バードリサーチの生態図鑑は説明しています。

理由は明快で、屋根瓦の下や外壁のすき間は、天敵の多くが入れないうえ、雨も直接当たらないからです。木の枝に巣を作る鳥にくらべて、巣が壊れるリスクが低いというメリットもあります。

見つけ方のコツは、鳥の姿より「出入り」を見ることです。同じ場所に何度も飛び込んでいく個体がいたら、そこが入口です。枯れ草がはみ出していれば、ほぼ確実に巣があります。屋根の上を見るときは、必ず地上から双眼鏡で確認してください。

注意点として、瓦のすき間や戸袋の巣は、人の生活と近すぎて糞や騒音の問題になることがあります。ただし卵や雛がいる間は動かせません。困ったときの手順は法律の章でまとめます。

巣箱・電柱の穴・信号機まで|すき間ならどこでも

スズメは人家以外の人工物も使います。生態図鑑が挙げているのは、電柱の穴、換気口、巣箱、鉄パイプ、そして交通信号機です。

なぜここまで幅広いのか。スズメが求めているのは「入口が狭くて、中に空間がある構造」であって、素材ではないからです。金属でもコンクリートでも、条件が合えば使います。近年は営巣場所の不足が個体数減少の一因とされており、使える構造を探す選択肢の広さは、都市で生き延びる技術でもあります。

庭で観察するなら、巣箱を掛けるのがいちばん確実です。入口の直径さえ合っていればスズメが使ってくれる可能性があり、シジュウカラ用より少し大きい穴が目安になります。具体的な寸法は巣箱の記事で詳しく扱っています。

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豆知識として、巣箱を使ってくれた場合でも、繁殖中に開けてはいけません。研究として巣箱の中を調べる調査は、許可と手順のもとで行われています。庭の巣箱は「入口の出入りを外から数える」だけでも十分に観察になります。

産座は直径10cm|羽毛と獣毛のベッドが卵を守る

巣の中身にも触れておきます。巣材は枯れ草やワラ、ビニル紐などで、産座(卵を置く中心のくぼみ)には羽毛や獣毛を使います。産座の大きさは直径10cmくらいです。

ここが柔らかい素材で作られているのには理由があります。長径17mm〜21.5mmの卵は殻が薄く、硬い枯れ草の上では割れやすいからです。羽毛や獣毛は保温性も高く、親鳥が餌を取りに出た短い時間の冷えを和らげます。立教大学のスズメプロジェクトも、卵が産みこまれるところは特に丁寧に作られると説明しています。

実際、巣が落ちてしまった場合に中をのぞくと、外側の粗い枯れ草と内側のふかふかした層がはっきり分かれています。ビニル紐が混じっていることも珍しくなく、都市のスズメが手近な材料を使っている様子が見て取れます。

注意点は、落ちた巣も勝手に扱わないことです。中に卵や雛が残っていれば、そのまま持ち帰るのは法律に触れます。次の章で扱う「困ったら自治体に相談」が、ここでも当てはまります。

やりがちな失敗|毎日のぞき込んで巣を放棄させる

卵を見つけた人がいちばんやりがちな失敗は、「毎日、中を確認してしまう」ことです。これは巣の放棄につながります。

原因は、親鳥にとって人の接近が捕食者の接近と同じ意味を持つからです。抱卵中の雌は、危険を感じれば巣に戻りません。日本野鳥の会も、親鳥は人がヒナの近くにいると警戒して近づけない、と説明しています。卵は12日間温め続けて孵るものなので、温める時間が削られれば孵化率は落ちます。

対策は単純で、巣から離れて、出入りだけを見ることです。双眼鏡があれば5m以上離れても親鳥の出入りは十分に見えます。スマートフォンで巣の入口を撮ろうと近寄るのが、いちばん影響の大きい行動だと考えてください。

豆知識をひとつ。研究者が巣箱を見回る場合でも、頻度は限られています。秋田の9卵の事例では、約4週間で計12回の見回りでした。1日1回未満のペースです。庭の巣なら、週に1回外から様子を見る程度で十分です。

9個の卵が入った巣で、孵ったのは1羽だけだった

卵の数が多ければ、たくさん育つ——そう思いたくなりますが、実際はそう単純ではありません。国内最大級の記録が、そのことを教えてくれます。

📌 押さえておきたいポイント

2010年、秋田県大潟村の巣箱でひとつの産座に9卵が産みこまれた巣が見つかりました(松井晋ほか, Strix Vol.27, pp.83-88, 2011)。しかし孵化に達したのは1卵だけ。回収された未孵化卵8個はいずれも発生が進んでいませんでした。

秋田県大潟村の巣箱で、7月13日に9卵になった

この記録は、日本野鳥の会の研究誌『Strix』に報告されたものです。調査地は秋田県大潟村。大規模な稲作地帯に点在する農業倉庫が、スズメの集団営巣場所になっている場所です。

経緯はこうです。2010年7月12日の見回りで、ひとつの産座に8卵入った巣が見つかりました。翌7月13日に観察すると9卵になっていました。研究チームはこの巣を7月12日から8月8日の間に計12回見回り、繁殖の経過を追いました。

結果は、7月23日の観察で1羽が孵化。その後、7月24日から8月2日まで何度観察しても「1雛8卵」のままでした。最後に雛を観察したのは8月6日で、このときには風切羽や尾羽が半分以上伸び、体羽が全身を覆うまで育っていました。8月8日には巣に雛はおらず、巣立ったとみられます。

ここで押さえておきたいのは、9卵という数が通常の範囲外だということです。先の表のとおり、日本でも欧州でも一腹卵数の中心は4〜6卵。9卵は、1羽の雌が普通に産む数ではありません。

未孵化卵8個の計測値が示すもの

研究チームは8月2日に未孵化卵8個をすべて回収し、ノギスで計測しました。平均長径20.02mm(19.49mm〜20.45mm)、平均短径14.96mm(14.57mm〜15.31mm)です。

この数字は、先に紹介した図鑑の値(長径17mm〜21.5mm、短径13.5mm〜15.5mm)にきれいに収まります。つまり、卵そのものは異常なサイズではなかったということです。

さらに、8個すべてを割って中身を調べたところ、孵化直前まで発達した胚は見られず、未受精もしくは胚発生の初期に死亡した卵であることがわかりました。途中まで育って死んだのではなく、そもそも発生がほとんど進んでいなかったのです。

卵の色彩にも情報がありました。未孵化卵の内訳は、地が薄茶色で密な小さい斑が入る卵が5個、地が白っぽくて不明瞭な大きい斑を持つ卵が1個、地の色が白っぽくて大きい斑が入る卵が2個。孵化したのは「地が薄茶色で密に小さい斑が入る卵」1個だったと特定できました。模様の記録が、どの卵が孵ったかを教えてくれた形です。

なぜ孵らなかったのか|温めきれない卵が出る

研究チームが挙げた理由は、抱卵の物理的な限界です。ひとつの産座に通常の一腹卵より多い卵があったことで、うまく抱卵ができていなかった可能性が考えられる、と論文は述べています。

スズメの産座は直径10cmくらい。親鳥は体重約24gの小鳥です。腹の下に収まる卵の数には上限があり、9個を均等に温めるのは難しい。外側に押し出された卵は温まらず、発生が進まないまま残ります。

ではなぜ9卵になったのか。論文は5つの仮説を挙げています。1羽の雌が9卵産んだ、前回の未孵化卵が残った状態で同じ雌が次の卵を産んだ、放棄卵が残った状態で別の雌が産んだ、種内托卵(同じ種の別の雌が卵を預ける)を受けた、複数の雌が1つの巣を同時に使った——です。今回の観察からは決定的な結論は得られなかったとされています。

参考までに、海外でも同様の記録はあります。ドイツの研究(Hannover 1989)では113巣中、9卵巣が1.8%(2巣)、10卵巣が0.9%(1巣)見つかっています。珍しいけれど、起こりうる現象だということです。

実は、卵は多ければ多いほどいいわけではない

意外と知られていないけれど、鳥の卵の数は「体が支えられる上限」に合わせて決まっています。多く産めば多く育つ、という関係ではありません。

秋田の事例がまさにその実例です。9卵という多さは、孵化数1羽という結果につながりました。もしこの巣が普通の5卵だったら、もっと多くの雛が孵っていた可能性があります。数の多さが、逆に育つ数を減らしたわけです。

この視点は、庭の観察でも役に立ちます。巣の卵が4個しかなくても「少ない」と心配する必要はありません。4〜7個は正常な範囲で、むしろ親鳥が確実に温められる数だと考えるべきです。

そしてこの話は、スズメの数が減っていることと矛盾しません。卵の数は昔から大きく変わっていないのに、育つ数が減っているとすれば、問題は卵ではなく巣立ち後の環境にあります。その具体的な数字は、次の章で紹介します。

卵のある巣を動かすと法律違反になります

ここからは、庭で卵を見つけたときに最も大事な話です。野鳥の卵は、法律で守られています。

⚠️ 注意:必ず知っておきたいこと

環境省は「鳥獣又は鳥類の卵については、狩猟により捕獲する場合を除いて、原則としてその捕獲、殺傷又は採取が禁止されています」と示しています。卵やヒナがいる巣を許可なく撤去することは鳥獣保護管理法違反にあたり、長岡京市の案内では違反した場合、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金いずれかの刑罰が課される可能性があると説明されています。

卵の採取・損傷は原則禁止|環境省が示すルール

まず原則です。環境省の捕獲許可制度の説明には、鳥獣又は鳥類の卵については、狩猟により捕獲する場合を除いて、原則としてその捕獲、殺傷又は採取が禁止されていると明記されています。

この「採取」には、持ち帰る行為も含まれます。庭に落ちていた卵を拾って家に置く、割れた卵の殻を標本にする、といった行為も原則の対象になると考えてください。悪意があるかどうかは関係ありません。

例外はあります。同じページによれば、生態系や農林水産業に対して鳥獣による被害等が生じている場合や、学術研究上の必要性が認められる場合などには、環境大臣又は都道府県知事の許可を受けて、鳥獣又は鳥類の卵を捕獲等することが認められています。許可権限は、国指定鳥獣保護区内・希少鳥獣・かすみ網を用いる場合が環境大臣、それ以外が都道府県知事です。

つまり、「絶対に手を出せない」のではなく「勝手には手を出せない」というのが正確な理解です。研究者が巣箱の卵を回収して計測できるのも、この制度の枠内で手続きを踏んでいるからです。

撤去できるのは巣立ったあと|中身の確認が分かれ目

では、家のすき間の巣をどうしても片付けたい場合はどうするか。答えは「卵やヒナがいなくなってから」です。

長岡京市の案内では、府や市町村の許可なく卵やヒナがいる野鳥の巣を撤去することは鳥獣保護管理法により禁止されていると説明されています。裏を返せば、巣立った後で、卵やヒナが残っていないことを確認できれば撤去できるということです。

タイミングの目安は前の章のカレンダーが使えます。繁殖の中心は4〜6月、7月・8月も繁殖している巣があります。作業をするなら、繁殖期を外した秋から冬が現実的です。ただし時期だけで判断せず、必ず中身を確認してください。

どうしても待てない事情がある場合は、自治体の鳥獣担当窓口に相談してください。被害の状況によっては許可の手続きが案内されます。自己判断で先に動かず、先に相談する——この順番が身を守ります。

やりがちな失敗|落ちた卵を拾って温めてしまう

もうひとつの失敗が、地面に落ちていた卵を拾い、家で温めようとするケースです。善意から出る行動ですが、これは制度上も生物学的にも問題があります。

制度の面では、前述のとおり卵の採取は原則禁止です。生物学の面では、落ちた時点で殻に見えないひびが入っていることが多く、また巣から出た卵はすでに冷えています。抱卵は12日間、適切な温度と湿度で続ける必要があり、家庭の環境で再現するのは現実的ではありません。

では、落ちた卵を見つけたらどうするか。基本は「触らずにそのままにする」です。親鳥が巣に戻すことはできませんが、その卵はもともと育たなかった卵である可能性が高い。気になる場合や、明らかに人の手で巣が壊されたと分かる場合は、自治体に相談してください。

豆知識として、殻だけが落ちているケースもあります。孵化した後の殻は、親鳥が巣の外へ運び出す習性があるためです。中身のない殻が落ちていたら、それは事故ではなく無事に孵ったサインかもしれません。

卵の次に迷うのがヒナ|拾わないが正解の理由

卵の時期を過ぎると、今度は地面にいるヒナに出会います。ここでも答えははっきりしています。拾わないでください。

Q. 地面にいるスズメのヒナ、親とはぐれたのでは?
A. 東京都環境局は「巣立ちしたばかりのヒナ(=巣立ちビナ)はうまく飛べません。そのため、枝から枝へ移るときなどに、地面に降りてしまうことがあります」「近くに姿が見えなくても、親鳥は必ずヒナのもとへ戻って世話をします」と説明しています。人がそばにいる間は親鳥が近づけないため、はぐれたように見えるだけのことが多いのです。

巣立ちビナはあまり動かない|それが正常な姿

日本野鳥の会は、巣立ち直後のヒナはあまり動きません、と説明しています。じっとしているのは弱っているからではなく、そういう時期だからです。

理由は羽の発達段階にあります。巣立ち直後は風切羽が伸びきっておらず、長い距離を飛べません。低い場所で親の給餌を待ちながら、少しずつ飛翔力をつけていきます。

見分ける手がかりは、羽が生えそろっているかどうかです。羽毛に覆われていて、脚で立ち、歩ける個体は巣立ちビナです。逆に、羽が生えておらず赤裸に近い個体は本当に巣から落ちた雛ですが、その場合も自分で判断せず自治体に相談してください。

注意点として、拾って飼うことはできません。東京都環境局は、許可なく野鳥を飼うことは法律で禁止されていると明記しています。加えて「私たちはヒナに飛び方やエサの取り方、何が自分にとって危険なのかを教えられません」という理由も示されています。

その場を去るのがいちばんの支援|心配なら茂みへ

日本野鳥の会が示している対応はシンプルです。その場を去る方がよい、というものです。

親鳥は人がヒナの近くにいると警戒して近づけません。人が離れれば、親はすぐに戻って給餌を再開します。見守りたい気持ちは分かりますが、離れることそのものが最も効果的な支援になります。

それでも道路の真ん中など危険な場所にいる場合の対応も示されています。心配な場合はヒナを近くの茂みの中に移しましょう、親鳥は姿が見えなくても、ヒナの声で気づくことができる——という説明です。移動先は「元いた場所のすぐ近く」が原則です。

ケガをしているものや、希少種など、そのままにしておけないと判断される場合は、自治体などに相談してください。判断に迷ったら連れ帰るのではなく、その場から電話で相談するのが正しい順番です。詳しい見分け方は、ヒナに特化した記事でも解説しています。

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都市では巣立ちヒナが1.41羽|卵の数は変わらないのに

ここで、卵の数と実際に育つ数のギャップを示すデータを紹介します。バードリサーチが2010年に実施した市民参加型調査「子雀ウォッチ」の結果です。

全国406の記録を分析したところ、親鳥が連れている巣立ちヒナの平均数は、商業地1.41羽、住宅地1.81羽、農村地2.13羽でした(三上修ほか, Bird Research 7: A1-A12, 2011)。商業地・住宅地・農村地の順に増える、という明確なパターンが出ています。

一腹卵数は4〜7個です。それなのに、連れて歩いているヒナは商業地で1.41羽。都市ほど、卵から巣立ちまでの間に失われる数が多いことになります。営巣場所の不足や、雛に必要な昆虫が都市部で得にくいことが背景として指摘されています。

この数字を知ると、庭に来るスズメの見え方が変わります。親鳥が2羽の子を連れていたら、それは都市部としては上出来な結果です。卵の段階の数字よりも、巣立ち後にどれだけ生き残れるかが、いまのスズメにとっての課題だといえます。

状況別の正解|庭に巣がある人・道で見つけた人・子どもと観察したい人

読者の状況によって、取るべき行動は変わります。3つのタイプに分けて整理します。

庭や家のすき間に巣がある人は、繁殖が終わるまで待つのが基本です。卵から独立まで50日以上かかりますが、その間に巣を動かすことはできません。糞が落ちる場所にシートを敷くなど、被害を軽くする対策で乗り切り、片付けは巣立ちを確認してからにしてください。どうしても待てない事情があるなら自治体に相談します。

散歩中に地面のヒナを見つけた人は、その場を離れるのが正解です。羽が生えそろって立てる個体なら巣立ちビナで、親が近くにいます。危険な場所にいる場合だけ、近くの茂みに移してから離れてください。

子どもと一緒に観察したい人には、双眼鏡での「出入りカウント」をおすすめします。巣に近づかず、親鳥が何分おきに餌を運ぶかを記録するだけで、立派な観察記録になります。育雛期の親鳥は頻繁に巣へ通うので、変化がはっきり見えて飽きません。巣そのものではなく、親鳥の行動を観察対象にするのがコツです。

まとめ:スズメの卵で覚えておきたいこと

🐦 この記事の結論

スズメの卵は一腹4〜7個、長径17mm〜21.5mmの白灰色です。見つけても触らず、離れた場所から親鳥の出入りだけを見守ってください。

✅ 要点チェック
  • 大きさ:長径17mm〜21.5mm、短径13.5mm〜15.5mm
  • :一腹4〜7個。1日1個ずつ産む
  • 日数:抱卵12日、育雛14日、巣立ち後10日
  • 時期:繁殖期4〜8月、年2〜3回の子育て
  • 法律:卵の採取・損傷は原則禁止。撤去は巣立ち後

スズメの卵をめぐる話は、数字を追うほど「思っていたより余裕がない」ことが見えてきます。体重約24gの親鳥が、長径2cmほどの卵を4〜7個産み、12日温め、14日育て、さらに10日面倒を見る。この50日以上の連続作業のどこか一箇所でも人が邪魔をすれば、その年の子育ては失われます。都市の巣立ちヒナが平均1.41羽という数字は、その厳しさをそのまま表しています。

最初の一歩としておすすめしたいのは、巣を見つけたら「その日は近づかないと決めて、5m以上離れた場所から出入りの回数を数える」ことです。それだけで、いま抱卵中なのか、育雛中なのかが見えてきます。中をのぞく代わりに親鳥の行動を追う——それが、卵を守りながら子育てを見届けるいちばん確実な方法です。

※法律の運用や相談窓口の対応は自治体によって異なります。撤去や保護の判断が必要な場合は、お住まいの自治体の鳥獣担当窓口にご確認ください。

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この記事を書いた人

野鳥の教科書編集部です。テーマに関する基礎知識や選び方を、公式情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、変更があれば更新します。

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