ホームセンターの園芸コーナーに並ぶ「野鳥用ミックスシード」の袋を手に取って、そのままレジに向かうか迷ったことはありませんか。袋を庭に置けば鳥が来る、というほど話は単純ではありません。同じ庭でも、置いた餌が殻つきのヒマワリの種なのか、アワやヒエのような小粒の種子なのか、ミカンなのか、牛脂なのかで、集まる顔ぶれがきれいに入れ替わります。
結論から言うと、野鳥の餌は「種子」「果実」「脂」の3タイプに整理できて、どれを選ぶかが来る鳥を決めます。そしてもうひとつ、公的機関と日本野鳥の会がそろって示している線引きがあります。餌を出すのは自然界の食べものが不足する12月から2月ごろまで、というものです。日本野鳥の会 茨城県は「基本的にお勧めできません」と前置きしたうえで、与えるとしても餌不足になる12月から2月くらいまで、と説明しています。
この記事では、餌の3タイプと来る鳥の対応関係、与えてはいけない食べもの、給餌を冬に限る理由、そして餌台で広がる4つの病気とその防ぎ方までを、一次情報をたどりながら順番に見ていきます。最後には、餌より先に置いたほうがいいものの話もします。
・野鳥の餌は「種子・果実・脂」の3タイプ。選んだタイプで来る鳥が入れ替わる
・給餌の目安は12月〜2月。3月以降は量を減らして終わらせる
・餌台には4種類の病気がついてまわる。消毒は9倍に薄めた家庭用塩素漂白剤で月に1、2度
・餌より先に効くのは、水深2〜3cmの水場と実のなる木
野鳥の餌は「種子・果実・脂」の3タイプ、選んだタイプで来る鳥が変わる

殻つきヒマワリの種は、カラ類とカワラヒワの指定席
餌台に1種類だけ置くとしたら、殻つきのヒマワリの種が選びやすい餌です。理由は、太いくちばしを持つ鳥だけが殻を割れるから。殻を割る力のある鳥に絞って届くので、餌台が特定の鳥でごった返しにくくなります。
実際に殻を割って中身を食べるのは、シジュウカラやヤマガラといったカラ類と、カワラヒワです。あきた森づくり活動サポートセンターによれば、カワラヒワのくちばしが太いのは木の実や草の実が好きなためで、タンポポやヤグルマソウなどの種子を食べ、夏にはヒマワリの実も大好物だと説明されています。福井県自然保護センターが冬に開設している「冬の野鳥レストラン」でも、ヒマワリの種にコゲラ、シジュウカラ、アカゲラ、ヤマガラ、コガラ、エナガ、ゴジュウカラ、シメといった顔ぶれが記録されています。
見分け方は食べ方に出ます。シジュウカラやヤマガラは1粒くわえて近くの枝へ飛び、足で押さえてつつきます。カワラヒワは餌台に居座って、その場で次々と殻を割ります。餌台の上に鳥が長くとどまっていればカワラヒワ、数秒で飛び去るならカラ類、という当たりのつけ方ができます。
注意したいのは殻の処理です。殻つきを使うと餌台の下に殻が積もります。この殻の山は湿ると菌が育つ場所になるので、こまめに掃き集める前提で選んでください。掃除の手間を減らしたいなら、殻をむいた「むきヒマワリ」もありますが、今度は殻を割れない鳥まで集まってきます。
アワ・ヒエ・キビなど小粒の種子は、地面で食べる鳥に届く
アワ、ヒエ、キビのような小粒の種子は、スズメをはじめとする地上で採食する鳥に向いた餌です。ヒマワリの種のように殻を割る必要がないので、くちばしの小さな鳥でも食べられます。
根拠は食性そのものにあります。農林水産省の鳥類被害対策マニュアルは、スズメについて「主に種子食で、特にイネ科、タデ科、キク科などの小粒状の乾いた種子を好む」と記しています。アワやヒエはまさにイネ科の小粒の種子で、スズメが野外で食べているものと種類が近いわけです。
庭で観察するときは、集まり方に注目してください。スズメは非繁殖期には群れで生活し、夜は竹やぶや大木などに集団でねぐらを持ちます。1羽が見つけると、しばらくして数羽から十数羽に増えるのはこのためです。カワラヒワも非繁殖期には数十羽から数百羽の群れで生活し、ルーズコロニーと呼ばれる緩やかな集団をつくります。
知っておくと得なのは、小粒の種子は風で飛びやすいという点です。浅い皿にひとつかみだけ、というくらいで足ります。まいた分がその日のうちになくなる量に抑えると、地面に残って傷むぶんを減らせます。
ミカンやリンゴに反応するのは、ヒヨドリとメジロだけ
果実は、種子とはまったく別の鳥を呼びます。日本野鳥の会 茨城県は、庭の餌台の例としてミカンやリンゴを挙げ、そこに来る鳥としてヒヨドリの名前を出しています。
果実に反応する鳥が限られるのは、餌の探し方が違うからです。ヒヨドリはヤブツバキ、梅、桜などの花の花粉や木の実を好み、花の蜜が大好きで、顔を花粉だらけにして蜜をなめ続けます。メジロも冬から春にかけてツバキや梅、桜などの木の花の蜜を良く吸い、木の実も良く食べます。どちらも果実や蜜を日常的に探している鳥なので、庭に切ったミカンが現れれば見つけるのが早いのです。
置き方の具体例としては、半分に切ったミカンを枝や柵に刺す形がよく使われます。ここで起きやすいのが、ヒヨドリの独占です。ヒヨドリは全長28cm、翼開長40cmと餌台の常連のなかでは大型で、縄張り意識が強く、他種はもちろん同じヒヨドリでも追い払ってしまいます。全長12cmのメジロが近づけないまま終わることは珍しくありません。
対策はシンプルで、果実を1か所にまとめないことです。庭の離れた2か所に置くと、ヒヨドリが片方を守っている間にメジロがもう片方を使えます。ただしヒヨドリは畑の野菜や果樹に被害を与えることもある鳥なので、家庭菜園が隣にあるなら果実を出す前に一度考えたほうがいいでしょう。
牛脂は真冬だけ。金属ネットに入れて木に下げる
3つめのタイプが脂です。牛脂は冬の高カロリー源として使われる餌で、公的施設でも実例があります。福井県自然保護センターの「冬の野鳥レストラン」では、ヒマワリの種や木の実とあわせて、牛脂を金属ネットにいれて木に設置しています。
金属ネットを使うのには意味があります。塊のまま置くと大きな鳥がまるごと持ち去ってしまいますが、ネット越しなら小さくつつくしかありません。同センターの記録では、この牛脂にコゲラやシジュウカラ、ヤマガラといった小型の鳥が来ています。幹に張りついて採食するコゲラのような鳥にとっては、木に下がっている形そのものが使いやすいのです。
ただし脂は温度に弱く、気温が上がると溶けて羽に付きます。冬のあいだだけ、という条件が種子や果実以上に強く効く餌だと考えてください。福井県自然保護センターの取り組みも「冬の」野鳥レストランという名前がついています。
もうひとつ、脂は夜行性の哺乳類も引き寄せます。同センターのセンサーカメラでは、テン、キツネ、タヌキといった動物の訪問も確認されています。庭に置く場合は、夜には回収する、あるいは地面から離れた枝に下げるといった配慮が必要です。
| 餌のタイプ | 具体例 | 主に来る鳥 | 扱いの注意 |
|---|---|---|---|
| 種子(大粒) | 殻つきヒマワリの種 | シジュウカラ/ヤマガラ/カワラヒワ/シメ | 下に殻が積もる。掃き集める |
| 種子(小粒) | アワ・ヒエ・キビ | スズメ/カワラヒワ | 風で飛ぶ。1日で減る量だけ |
| 果実 | ミカン・リンゴ | ヒヨドリ/メジロ | ヒヨドリが独占しやすい |
| 脂 | 牛脂(金属ネット入り) | コゲラ/シジュウカラ/ヤマガラ | 真冬限定。夜は哺乳類も来る |

全長12cmから33cmまで、餌台の常連はここが違う
全長15cmのシジュウカラは、1粒くわえて枝へ運ぶ
餌台に来る鳥の代表格がシジュウカラです。全長15cm、翼開長22cm。日本では4亜種が留鳥として周年生息するので、季節を問わず庭の近くにいる可能性があります。
この鳥が餌台で目立つのは、行動がはっきりしているからです。ヒマワリの種を1粒くわえるとすぐに近くの枝へ移り、足で押さえてつつき割ります。長く餌台にとどまらないので、次の鳥がすぐ入れ替わって入ってきます。1つの餌台にシジュウカラが5羽いるように見えても、実際は同じ2、3羽が往復しているだけ、ということもあります。
覚えておくと便利なのが、餌台に来る季節と来ない季節の差です。繁殖期には主に昆虫類を捕食し、幼虫を1日に数百匹も食べます。産卵期は4〜7月で、卵数7〜10個、抱卵日数約12日、巣立ちまでの日数約20日。つまり春から初夏のシジュウカラは、種子より虫を探しています。餌台にあまり来なくなっても、いなくなったわけではありません。
豆知識をひとつ。シジュウカラは一夫一婦制で、繁殖期を終わっても離婚率は1割程度と低く、9割が同じツガイを保ちます。冬の餌台に2羽そろって現れるカラ類は、翌春も同じ相手と子育てをしている可能性が高いということです。
| 名前 | シジュウカラ |
| 全長 | 全長15cm(翼開長22cm) |
| 餌台に来る季節 | 12月〜2月が中心(4〜7月は繁殖期で虫食中心) |
| 好む餌 | ヒマワリの種、牛脂 |
| 鳴き声 | さえずりは「ツーツーピィー」、地鳴きは「チッチ、ジュクジュク」 |
| 餌台での動き | 1粒くわえて枝へ運び、足で押さえて割る |
シジュウカラが年間を通して何を食べているのかは、こちらの記事で掘り下げています。

全長14cmのヤマガラは、食べずに隠す
ヤマガラは全長14cm、翼開長22cm。シジュウカラとほぼ同じ大きさですが、餌台での行動が違います。この鳥は、その場で食べるより「隠す」のです。
エゴノキやアカマツ、ツバキ、スダジイ、イチイなど、樹木の実を樹皮の隙間や土の中などに隠して貯食する習性があります。しかも隠し方が細かく、比較的浅い深さ2cm未満に1個ずつ種子を貯食します。エゴノキの実にいたっては、有毒な果皮を割って中の種子だけを取り出します。
この習性は餌台の観察に直結します。ヤマガラが何度も往復して種を運び出しているのに、餌台の周りで食べている姿を見ない。そんなときは、庭の樹皮や落ち葉の下に貯食されている最中です。餌を出しすぎると、食べきれない分が全部どこかに埋められることになるので、ここでも「1日で減る量」という目安が効いてきます。
分布も知っておくと観察の見込みが立ちます。日本と朝鮮半島、台湾にしかいない留鳥で、落葉広葉樹林や照葉樹林に生息し、冬期は平地林や市街地の公園でもよく見られます。地鳴きは「ニィーニィーニィー」「ビィービィービィー」と、少し鼻にかかった声です。姿より先に、この鼻声が聞こえることがあります。
全長15cmのカワラヒワは、数十羽の群れで一気に来る
カワラヒワは全長15cm、翼開長24cm。シジュウカラと同じサイズですが、来方がまったく違います。非繁殖期には数十羽から数百羽の群れで生活し、ルーズコロニーと呼ばれる緩やかな集団をつくります。こうしたルーズコロニーを形成することによって、天敵からの防衛や食べ物の発見が有利に働くとされています。
つまり、餌台にカワラヒワが1羽来たら、それは群れの偵察という見方ができます。しばらくすると十数羽がまとめて降りてきて、餌台がいっぱいになることがあります。ここが後で触れる「過密」の話につながります。
見分けの手がかりは声です。繁殖期には「キリキリコロコロ」と明るい声が普通で、この声に「チョンチョンチョン」「ビィー、ビィー」という声を組み合わせてさえずります。餌台の周りの電線からこの声が降ってきたら、群れが来る前触れかもしれません。
分布にも季節性があります。留鳥または漂鳥として九州以北に生息し、本州中部以北では、冬になると多くの鳥が暖かい地方に移動します。同じ庭でも、去年の冬に来て今年は来ない、ということが起こりうる鳥です。
全長28cmのヒヨドリと33cmのキジバトが来たら考えること
餌台の常連には、小鳥だけでなく大型の鳥も含まれます。ヒヨドリは全長28cm・翼開長40cm、キジバトは全長33cm・翼開長55cm。並べてみると、全長12cmのメジロの2倍から3倍近い体格差です。
この差が問題になるのは、餌台の容量が限られているからです。ヒヨドリは縄張り意識が強く、他種はもちろん同じヒヨドリでも追い払ってしまいます。キジバトは林床や草地、農耕地などの地上を歩きながら採餌し、主に草や木の実を食べる鳥なので、地面にまいた小粒の種子が狙われます。地面まきをやめて浅い皿の餌台に切り替えるだけで、キジバトの割合は下がります。
大型の鳥が来ること自体は失敗ではありません。ただ、ヒヨドリやキジバトが集まると糞の量が増え、隣家との間で問題になりやすくなります。愛知県は給餌の弊害として、ゴミを荒らすこと、糞や鳴き声が問題になるなど、周辺への生活環境被害につながると挙げています。
ちなみに、同じハトでもキジバトとドバトは別です。ドバトは穀類を中心に様々なものを食べ、鳴き声は「クックー」「ポッポー」など。キジバトは「デデッポッポー」と、のどかな山村を思わせる声で繰り返し鳴きます。声で判別できると、どちらが来ているのかがはっきりします。
| 鳥の名前 | 全長 | 翼開長 | 反応する餌 | 餌台での特徴 |
|---|---|---|---|---|
| メジロ | 12cm | 18cm | 果実・花の蜜 | ヒヨドリに追われやすい |
| スズメ | 約14cm | — | 小粒の種子 | 群れで来て地面でも食べる |
| ヤマガラ | 14cm | 22cm | ヒマワリの種・牛脂 | その場で食べず貯食する |
| シジュウカラ | 15cm | 22cm | ヒマワリの種・牛脂 | 1粒くわえて枝へ運ぶ |
| カワラヒワ | 15cm | 24cm | ヒマワリの種・草の実 | 群れで居座って食べる |
| ヒヨドリ | 28cm | 40cm | 果実・花の蜜 | 他種も同種も追い払う |
| キジバト | 33cm | 55cm | 草や木の実 | 地上を歩いて採食する |
※野鳥の教科書調べ。全長・翼開長はあきた森づくり活動サポートセンター「野鳥シリーズ」および農林水産省の鳥類被害対策マニュアルの記載値。
パンやごはん、味のついた食べものを出してはいけない理由

塩分・糖分・油分が過剰な食べものは、病気を招く
台所にあるものを分けてあげたくなりますが、人の食べものは野鳥の餌になりません。茨城県は餌付けの弊害として、自然の中でとる餌と異なり、化学合成された食品添加物が含まれていたり、塩分、糖分、油分が過剰に含まれたりすることで病気を招くと説明しています。
なぜそうなるのかは、体の大きさを考えるとイメージしやすくなります。餌台に来る鳥の多くは全長12cmから15cm。人が「ひとかけら」と感じる量でも、その体には相当な割合の塩分や糖分が入ることになります。パン、菓子、揚げ物、味つけされた惣菜は、どれもこの条件に当てはまります。
判断の基準はシンプルにできます。野外でその鳥が食べているものと種類が近いかどうか。スズメが野外で食べているのはイネ科、タデ科、キク科などの小粒状の乾いた種子です。アワやヒエはこの条件に合いますが、食パンは合いません。同じ「炭水化物だから大丈夫」という発想は成り立ちません。
それから、意図せず餌をやってしまっているケースにも注意が必要です。茨城県は、農作物残渣や生ごみの放置なども意図しない餌付けにあたるとして注意を促しています。餌台を出していないつもりでも、庭先の生ごみが同じ役割を果たしていることがあります。
パン・菓子・揚げ物・味つけした惣菜は餌台に出さないでください。茨城県は、人が与える餌には化学合成された食品添加物や、塩分・糖分・油分が過剰に含まれることがあり、病気を招くとしています。また、かびくさい匂いがしたり、湿気ていたり、かびや細菌が生えているような餌は捨ててください(日本鳥学会掲載資料)。
【失敗パターン1】パンの耳をまいたら、集まったのはハトばかりだった
よくある失敗が「小鳥に来てほしくてパンの耳をまいたら、キジバトやドバトが居着いた」というものです。原因は、パンが誰でも食べられる形をしていることにあります。
殻つきのヒマワリの種なら、殻を割れる鳥にしか届きません。ところが柔らかくちぎれるパンは、くちばしの形を問わず誰でも食べられます。地上を歩きながら採餌するキジバトのような鳥にとっては、地面にまかれたパンほど見つけやすいものはありません。結果として、呼びたかった小鳥ではなく大型の鳥が定着します。
そこから先は、糞の量という現実的な問題になります。愛知県が挙げているとおり、給餌は糞や鳴き声が問題になるなど、周辺への生活環境被害につながります。近所からの苦情が出てからでは、餌台をやめる以外の選択肢がなくなってしまいます。
対策は2段構えです。ひとつは餌の形を変えること。殻つきの種子や、金属ネットに入れた牛脂のように「食べるのに技術がいる」餌に切り替えると、来る鳥が絞られます。もうひとつは地面にまかないこと。浅い皿の餌台に載せる形にするだけで、地上採食の鳥の割合が下がります。
湿った餌とカビた餌は、その日のうちに捨てる
餌の種類と同じくらい大事なのが、餌の状態です。日本鳥学会が掲載している資料では、アスペルギルス真菌(カビ)は、湿った餌や、餌台の下にあるくず餌の中で成長し、鳥が真菌の胞子を吸い込むと、菌糸が肺や気嚢全体に広がり、その結果気管支炎と肺炎を起こすと説明されています。
怖いのは、この病気が見た目でわかりにくいことです。同資料は、アスペルギルス症の肺炎はほとんど常に致命的だとしています。餌台の下に落ちたくず餌が雨で湿ったまま何日も残っている、という状態はそのまま発生源になります。
具体的な判断としては、かびくさい匂いがしたり、湿気ていたり、かびや細菌が生えているような餌は捨ててください、というのが同資料の指示です。さらに、傷んだ餌を入れていた保存用容器や、餌をすくうためのさじなども、いったん全部消毒することが求められています。
やりがちなのは、大袋を買って庭先の物置に置きっぱなしにすることです。湿気を吸った餌はカビの温床になりますし、保存してある餌にネズミが入るリスクもあります。ハツカネズミは、自分自身は発病しなくても、何種類かの鳥の病気を運搬することがあるとされています。餌は密閉して屋内で保管するのが無難です。
餌やりを12月〜2月に限る、という公的な線引き
公的見解は「基本的にお勧めできません」から始まる
野鳥の餌やりを調べると、自治体や団体の見解が思ったより慎重であることに気づきます。愛知県は「野鳥へのみだりな給餌は控えていただくよう、お願いします」とし、その理由として、野鳥へのみだりな給餌は自然界のバランスを崩すおそれがあるとしています。
具体的に挙げられているのは4点です。野鳥が自ら餌をとる能力を奪ってしまうこと。野鳥が密集することにより、鳥インフルエンザ等感染症のリスクが高まること。水域での給餌は水質を悪化させること。そして、特定の野鳥が増えることにより、他の野生生物に悪影響を与えること。
日本野鳥の会 茨城県も同じく「基本的にお勧めできません」としたうえで、与えるとしても餌不足になる12月から2月くらいまで、という条件を示しています。懸念として挙がっているのは、餌に頼り多くの鳥が集まるようになると集団感染が起きること、湖沼の場合は水の富栄養化を促進してしまうことです。
ここで押さえておきたいのは、これらが「やってはいけない」と「無条件にやっていい」の中間にある、という点です。日本鳥学会が掲載している資料も、野鳥への給餌に問題があるとはいっても、餌を与えるのが悪いとか、全く止めるべきだというわけではなく、餌を与える人間側には彼らを危険にさらさない倫理上の責任がある、と整理しています。
なぜ12月から2月なのか
時期が冬に限られるのは、自然界の餌が不足するのがこの時期だからです。逆に言えば、それ以外の季節は鳥が自力で食べものを見つけられます。
鳥の側の事情を見ると、この線引きの意味がはっきりします。シジュウカラの産卵期は4〜7月で、この時期は主に昆虫類を捕食し、幼虫を1日に数百匹も食べます。スズメの繁殖期は3〜9月で、年に1〜3回繁殖します。春から夏にかけての鳥は虫を探しており、餌台の種子はそもそも必要としていません。
もうひとつの理由が依存です。茨城県は、人が与える餌に依存するようになり、自ら餌をとることができなくなってしまうことを弊害の筆頭に挙げています。年間を通して餌台に餌があると、その庭を中心にした行動が固定されていきます。
注意点として、12月から2月というのは目安であって、地域差があります。本州中部以北では、カワラヒワのように冬になると多くの鳥が暖かい地方に移動する種もいます。住んでいる地域の積雪や気温を見ながら、遅くとも春には終わらせる、という考え方をしてください。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ◎ | ◎ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | ◎ |
◎=日本野鳥の会 茨城県が示す「与えるとしても」の範囲(12月〜2月) △=原則として出さない時期。3月は量を減らしながら終える
3月以降は、量を減らしながら終わらせる
終わらせ方にもコツがあります。ある日いきなり餌台を撤去するのではなく、量を減らしていくほうが穏やかです。
理由は、鳥の側の行動が餌台を前提に組み立てられているからです。餌台に依存するようになると自然性が損なわれる、というのが給餌を冬に限る理由でしたが、これは撤去のタイミングにも当てはまります。段階的に減らせば、鳥は自然の餌場へ探索の重心を戻していけます。
具体的な手順としては、3月に入ったら1回あたりの量を半分にし、次の週にはさらに半分にする、という進め方がわかりやすいでしょう。空になった餌台をしばらく置いておくと、鳥が来ないことを確認できます。撤去は、鳥が来なくなってからで構いません。
そして撤去したら、そのまま物置にしまわないでください。日本野鳥の会は餌台について、清潔に保ち定期的に消毒をしましょうとしています。次のシーズンに汚れたまま出すことになるより、片づける時点で洗って乾かしておくほうが確実です。
餌やりと法律の関係を、誤解しないために
餌やりそのものと、鳥を捕まえたり飼ったりすることは、法律上まったく別の話です。ここを混同すると、悪気なく違法行為に踏み込んでしまうことがあります。
環境省は、鳥獣保護管理法においては、環境大臣又は都道府県知事の許可を得て行うか、狩猟者登録を受けて行う場合以外は、鳥獣の捕獲は原則として禁止されていると示しています。違反して野生の鳥獣を捕獲した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
具体的な場面としては、餌台に来たシジュウカラが弱っているように見えたので家に入れて世話をした、というケースがこれに触れる可能性があります。餌を置くことと、鳥を手元に置くことのあいだには、はっきりした線があります。日本野鳥の会は、死んだ野鳥については直接、素手で触れるのは避け、都道府県の自然保護関係部署に相談してくださいとしています。
また、餌やり自体を条例で規制している自治体もあります。庭で始める前に、住んでいる市区町村のサイトで野鳥・野生鳥獣の餌やりに関する案内を確認しておくと安心です。餌やりと法律の線引きについては、こちらの記事でさらに詳しく整理しています。

ベランダの手すりにスズメが並んでいるのを見て、思わずご飯粒を置きたくなる。庭に来るシジュウカラのために、ヒマワリの種を買ってこようか迷っている。近所の公園で毎朝…
餌台につきまとう4つの病気と、誰にでもできる8つのステップ
サルモネラ症は、餌台で最も一般的な病気
餌台を出すなら、病気の話は避けて通れません。日本鳥学会が掲載している資料は、餌台をよく利用する野鳥に普通に見られる病気が4種類あると整理しています。そのうち最も一般的とされるのがサルモネラ症です。
感染のしくみは単純です。感染した鳥は糞便中に細菌を排泄し、糞によって汚染された餌を食べて他の鳥が感染します。つまり、餌と糞が混じる状態そのものが感染経路になります。同資料は、サルモネラ菌が全身に広がると鳥はすぐに死んでしまうとしています。
庭で確認できるサインもあります。同資料によれば、病気の野鳥は不活発で敏捷性に欠け、あまり物を食べず、しばしば餌台の上でじっとしているし、飛びたがりません。羽毛は健康そうに見えません。餌台に長時間動かずにとまっている鳥がいたら、それは「よく慣れた鳥」ではない可能性があります。
見落としやすい点として、同資料は、これらの明らかな徴候にもかかわらず、餌台の鳥が混雑していると病気の野鳥は見落とされがちだと指摘しています。にぎわっている餌台ほど、1羽ずつの様子が見えなくなるということです。
トリコモナス症・アスペルギルス症・鳥ポックスの見え方
残る3つも、それぞれ違う形で現れます。まずトリコモナス症は、ハト類に病原性のある寄生性原生動物によるものです。重篤なトリコモナス症の鳥は口や喉に病変ができ、うまく呑み込むことができなくなり、汚染された食物や水を落としてしまうので、他の鳥がそれを食べて病気が広がります。
アスペルギルス症は、前の章で触れたカビによるものです。湿った餌や餌台の下のくず餌で真菌が育ち、胞子を吸い込んだ鳥が気管支炎と肺炎を起こします。餌の管理と直結する病気なので、掃除の頻度がそのまま予防になります。
鳥ポックスは、鳥の顔、翼、脚や足指などの羽毛のない皮膚表面にいぼ状の病変を作るので、他の病気より目に付きます。感染した鳥との直接接触や、餌や餌台に潜むウイルスを健康な鳥がついばむこと、昆虫の体について機械的に運ばれることで広がります。ただし同資料は、鳥の皮膚にあるいぼ状の過形成がすべて鳥ポックスウィルスによってできたものとは限らないとも注意しています。
これら4種類はすべて死亡の原因となることがあります。鳥ポックスによる顔の上の過形成は視界や採食を妨げるほど大きくなることがあり、足や指にできると立ったりとまったりすることに支障が出ます。病気の野鳥は飢餓、脱水、捕食圧、厳しい天候などに耐えられなくなる、という連鎖が起きます。
【失敗パターン2】鳥が群がる餌台に満足して、そのまま置き続けた
餌台に鳥がぎっしり集まると嬉しくなりますが、そこが分かれ道です。日本鳥学会掲載の資料は、たくさんの野鳥が一つの餌台に群がると気分がいいものです、と認めたうえで、過密は病気を広げる主要因だと明言しています。
判断の基準まで示されています。鳥が餌に近づくのに、押し合いへしあいになるなら、それはもう過密な状態です。しかも、こういった過密状態はストレスを生み、鳥を病気にかかりやすくします。カワラヒワのように数十羽の群れで来る鳥がいると、この状態は簡単に発生します。
対策は、餌台を広くするか、数を分けることです。同資料の第1のステップも「ゆとりある空間を与える」で、餌台を広くして過密を避けましょうとされています。庭の離れた場所に2か所置く形は、ヒヨドリの独占対策と病気対策を同時に満たします。
さらに、隣近所への声かけも予防の一部です。野鳥は通常、餌台間を移動しているので、行く先々で病気が広がります。餌台の安全性は、地域住民が協力しあい、野鳥のために同じ配慮をすることで保たれる、というのが同資料の締めくくりです。
消毒は9倍に薄めた家庭用塩素漂白剤で、月に1、2度
掃除と消毒には具体的な手順があります。日本鳥学会掲載の資料は、消毒には液体の家庭用塩素漂白剤を9倍のぬるま湯で薄めて(10%溶液)使用してください、としています。
手順は、餌台を完全に空にしてごみなどを取り除き、充分な量の溶液を作って溶液中に完全に2、3分浸し、その後空気にあてて乾燥させる、というものです。頻度は月に1、2度が目安で、もし餌台に病気の鳥がいるのに気がついたら、毎週行うとよいかもしれない、とされています。
あわせて、餌台の周辺はいつも清潔にし、古い餌や糞のないようにしてください、というのが第2のステップです。掃除はほうきやシャベルで充分としつつ、ガレージや仕事場で使うような掃除機があればさらにいいかもしれない、とも書かれています。
餌台そのものの形にも注意点があります。尖ったところや鋭い角のない、安全な餌台を使用してください、というのが第3のステップです。小さな引っ掻き傷や切り傷でも、健康な鳥が細菌やウィルスに感染する原因となるためです。手作りの餌台では、切り口のバリを落としておくといいでしょう。
餌台そのものの選び方や置き場所については、こちらの記事で詳しく扱っています。

庭やベランダに小さな台を置いて、そこに小鳥が降りてくる——想像すると気持ちが弾みますよね。ホームセンターやネット通販でも野鳥の餌台は手軽に手に入りますし、板を切…
鳥インフルエンザが出たとき、餌台をどうするか
近くで感染が見つかったら、給餌を自粛する
冬になると、野鳥の高病原性鳥インフルエンザのニュースが出ます。そのときに餌台をどうするかは、あらかじめ決めておくとあわてずに済みます。
日本野鳥の会は、管理が不十分な餌台に鳥を集めることは野鳥への感染のリスクを高めることにつながるとしたうえで、餌台は清潔に保ち定期的に消毒をしましょう、近くで感染が見つかった際には給餌を自粛しましょう、と示しています。
判断の材料になるのは、環境省が公表している発生状況です。都道府県ごとの検出事例と、野鳥監視重点区域の指定・解除の日付が一覧になっています。自分の住む地域が重点区域に入っているかどうかを見て、入っていれば餌台を休む、という運用が現実的です。
愛知県も、給餌の弊害として、野鳥が密集することにより鳥インフルエンザ等感染症のリスクが高まると挙げています。餌台は鳥を1か所に集める装置なので、感染が出ている時期には、その働きが裏目に出るということです。
死んだ鳥を見つけたら、素手で触らない
庭や餌台の下で死んだ鳥を見つけることがあります。このときの対応は決まっています。日本野鳥の会は、直接、素手で触れるのは避け、都道府県の自然保護関係部署に相談してください、としています。
相談先が都道府県なのは、野鳥の死亡個体の検査体制が都道府県単位で組まれているからです。環境省は発生状況を都道府県別・市町村別に整理して公表しており、検体の種類や種名、検査結果までが記録されています。個人が処分してしまうと、この記録の網から漏れることになります。
実際の動き方としては、その場を離れて自治体に電話し、指示を待つのが基本です。移動させたり、袋に入れたりする必要はありません。子どもやペットが近づかないようにだけ気をつけてください。
1羽だけでなく、同じ場所で複数の鳥が続けて死んでいる場合は、より確実に連絡してください。餌台を出している場合は、連絡と同時に給餌を止めるのが安全側の判断です。
観察に出かけるときの、靴底とタイヤの話
庭の餌台だけでなく、外へ観察に出るときにも配慮すべきことがあります。日本野鳥の会は、バードウォッチングにあたって、カモ類が多い水辺の糞に近づかないこと、靴底や三脚、車のタイヤをアルコールで消毒すること、探鳥後に養鶏場に近づかないことを挙げています。
これは、人が病原体を別の場所へ運んでしまうことを防ぐための配慮です。水辺で靴底についた泥が、そのまま自宅の庭や別の観察地に持ち込まれる経路をふさぐ、という考え方をしています。
庭に置き換えると、餌台の掃除をしたあとに手を洗うこと、掃除に使った道具を室内に持ち込む前に洗うことが同じ意味を持ちます。餌台の下の糞を掃いたほうきをそのまま玄関に立てかける、という流れは避けたほうがいいでしょう。
なお、養鶏場が近くにある地域では、家きんへの感染が起きたときに周辺が野鳥監視重点区域に指定されることがあります。そうした地域では、給餌を控える判断がより強く求められます。
死んだ野鳥を見つけたら、直接、素手で触れるのは避け、都道府県の自然保護関係部署に相談してください(日本野鳥の会)。また、近くで感染が見つかった際には給餌を自粛しましょう、とされています。野鳥を捕まえたり飼ったりすることは、鳥獣保護管理法により原則として禁止されています。
実は、餌より先に置いたほうがいいものがある
鳥は一日に一度、水浴をする
意外と知られていないけれど、庭に鳥を呼ぶ効果が高いのは餌ではなく水です。日本野鳥の会 茨城県は、庭に野鳥を呼びたいという質問への回答で、餌台よりも水場(バードバス)の設置を勧めています。
理由として挙げられているのは、鳥は一日に一度、水浴をします、という習性です。餌は季節によって自然界にあったりなかったりしますが、水浴びの必要は年間を通してあります。つまり水場は、12月から2月という制約なしに使える手段です。
具体的な条件も示されています。2〜3cm程度の深さで清潔な水を常置すること。深い容器では小鳥が入れません。全長12cmのメジロや14cmのスズメが入って安心できる深さ、と考えるとイメージしやすいでしょう。
注意点は、水も汚れるということです。餌台と同じで、糞が混ざった水をそのままにすれば感染の経路になります。清潔な水を、というのが条件に入っているのはそのためです。毎日入れ替える前提で、洗いやすい浅い皿を選んでください。
実のなる木は、餌台の季節が終わっても残る
もうひとつ勧められているのが、実のなる木の植栽です。餌台が12月から2月という期間限定なのに対して、木は毎年その季節に実をつけます。
効くのは、鳥が野外で実際に食べているものと一致するからです。ヒヨドリはヤブツバキ、梅、桜などの花の花粉や木の実を好みます。メジロは冬から春にかけてツバキや梅、桜などの木の花の蜜を良く吸い、木の実も良く食べます。ヤマガラはエゴノキやアカマツ、ツバキ、スダジイ、イチイなどの実を貯食します。
具体的な選び方としては、これらの名前が挙がっている樹種から、庭の広さに合うものを選ぶのが近道です。ツバキは花の蜜と実の両方でメジロとヒヨドリに効き、エゴノキはヤマガラを呼びます。シジュウカラは秋にミズキやハナミズキ、ハゼノキ、松ぼっくりなどの実も食べます。
豆知識として、ヤマガラの貯食は庭の中で完結します。比較的浅い深さ2cm未満に1個ずつ種子を貯食するので、エゴノキを植えると、実を隠しに来るヤマガラを毎年観察できることになります。餌台のように毎日の管理を必要としない、という点も木の利点です。
庭がある人・ベランダだけの人・雪国の人で、正解は変わる
住んでいる環境によって、現実的な選択肢は違います。3つのパターンに分けて整理します。
庭がある場合は、実のなる木と水場を軸にして、餌台は12月から2月の補助として使う形が組みやすいでしょう。餌台は2か所に分けると、ヒヨドリの独占と過密の両方を避けられます。掃除に使った道具の置き場所も、屋外に確保しておくと動線が短くなります。
ベランダだけの場合は、水場を優先してください。餌をまくと殻や糞が下の階に落ち、苦情につながりやすいためです。愛知県が挙げているとおり、糞や鳴き声が問題になるなど、周辺への生活環境被害につながることがあります。水を入れた浅い皿なら、こぼれる範囲を小さく抑えられます。
雪国の場合は、12月から2月という目安の意味がいちばん強く出ます。積雪で地面の種子が使えなくなるためです。ただし雪が消える時期は地域差が大きいので、カレンダーの日付ではなく、地面が見えてきたかどうかを撤収の合図にするとよいでしょう。3月に入ったら量を減らし、鳥が来なくなってから片づけます。
まとめ:野鳥の餌は、選ぶタイプと季節でほぼ決まる
餌の種類を1つ決めるだけで、庭に来る鳥の顔ぶれは変わります。全長15cmのシジュウカラに1粒くわえて飛ぶところを見せてほしいなら殻つきヒマワリの種、全長約14cmのスズメの群れを呼びたいならアワやヒエ、全長12cmのメジロを待つならミカン。そのうえで、公的機関と日本野鳥の会が共通して示している12月から2月という枠と、月に1、2度の消毒という約束を守れば、鳥にも近所にも負担の小さい形で冬の観察を続けられます。最初の一歩としては、餌台を買うより先に、水深2〜3cmの浅い皿に水を張って庭に置いてみてください。餌台の季節が来る前に、どこに鳥が降りるかがわかります。
※給餌の可否や条例は自治体によって異なります。餌やりに関する扱いと、鳥インフルエンザの発生状況は、お住まいの自治体・環境省の最新情報でご確認ください。

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