ホームセンターで杉板を眺めながら、「せっかく庭に架けるなら、見た目のいい巣箱にしたい」と考えている方は多いと思います。ネットで「おしゃれ 巣箱」と検索すると、白くペイントされた三角屋根の箱や、小さな窓のついた家型の作品がたくさん出てきます。あれを自分でも作れたら楽しいですよね。
ただ、野鳥の巣箱には人間の家とは違う優先順位があります。先に結論をお伝えすると、おしゃれな巣箱の作り方でいちばん最初に決めるべきなのは、木目でも屋根の形でもなく「入口の穴の直径」です。シジュウカラなら2.7〜2.8cm、スズメなら3.0cm。ここを外すと、どれだけ見た目を整えても中身は空のまま一年が過ぎます。逆に穴さえ合っていれば、デザインの自由度はかなり残ります。
この記事では、鳥が使う条件を満たしたうえで見た目を良くする方法を、板厚1cmという基準から焼き杉の仕上げ、鳥ごとの寸法早見表、架ける時期と高さ、そして作った後の掃除まで順番にたどります。作らずに買うという選択肢の価格も最後に載せました。読み終える頃には、次の週末にどの板を買えばいいかまで決まっているはずです。
・見た目より先に決めるべき入口穴の直径(シジュウカラ2.7〜2.8cm/スズメ3.0cm)
・杉板から巣箱を組み上げる7つの手順と、板厚1cmという基準
・塗らずにおしゃれにする「焼き杉」の仕組みと耐久年数
・10月〜12月に架ける理由と、地面からの高さ・向きの決め方
・作った後に必要な年1回の掃除と、市販の完成品という選択肢
おしゃれな巣箱の作り方で最初に決まるのは、木目でも色でもない

デザインを考える前に、入口の直径を紙に書く
巣箱づくりで最初に決めるのは、入口穴の直径です。理由はシンプルで、この数字が「どの鳥が住めるか」を物理的に決めてしまうからです。巣箱というのは、樹洞性の巣をつくる野鳥が利用する箱型の人工巣のこと。木のうろに入って子育てをする習性を持つ鳥だけが対象で、代表的なのはシジュウカラ、スズメ、ムクドリといった種類です。彼らは自分の体が通るぎりぎりの穴を好みます。
具体的には、シジュウカラ用なら2.7〜2.8cm、スズメ用なら3.0cm、ヤマガラ用なら2.7cm。数ミリの世界ですが、鳥にとっては入れる・入れないの分かれ目になります。設計図を描くとき、屋根の傾斜や板の色を考える前に、この数字を紙の真ん中に書いてください。あとの寸法はすべてこの穴に合わせて決まっていきます。
やりがちな失敗は、円形にくり抜くのが面倒で四角い入口にしてしまうことです。ホールソーがなければ、糸のこや彫刻刀で少しずつ広げる方法もあります。仕上がりが多少ざらついていても問題はありません。むしろ後述するように、内側はざらついたままのほうが鳥には都合がいいのです。
2.7cmと3.0cm、この違いで住人が変わる
穴を大きめに開けておけば、いろいろな鳥が入れて得なのでは——そう思う方もいるかもしれません。ですが実際には逆で、穴が大きいほど巣箱としての性能は落ちます。大きい穴は体の大きい鳥や外敵が入り込める入口にもなるからです。小さな鳥にとって、狭い入口は防犯設備そのものなのです。
だから、呼びたい鳥を先に決めてから穴径を選びます。庭に日常的にシジュウカラが来ているなら2.8cm。屋根瓦の隙間やエアコンの配管まわりにスズメが出入りしているなら3.0cm。雑木林に近い環境でヤマガラの声がするなら2.7cm。日本野鳥の会が設計したシジュウカラ用巣箱も入口穴径は2.8cmで、この数字はシジュウカラに最適な穴径として設定されています。
ちなみに、2.8cmで作った巣箱にスズメやヤマガラが入ることもあります。穴径は「この鳥だけが入れる」という排他的なものではなく、「この鳥までが入れる上限」を決める数字だと考えるとしっくりきます。だから迷ったら小さめに。あとから広げることはできても、狭めることはできません。

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箱の中が暗く、入口から下へ降りられること
穴の次に効いてくるのが、箱の内部構造です。押さえるべき条件は2つあります。ひとつは箱内を暗くする設計であること。もうひとつは、出入り口から下に降りる構造になっていることです。樹洞性の鳥は暗くて深い空間を巣に選ぶので、明るく浅い箱は敬遠されます。
この「下に降りる」を実現するのが、底から穴までの高さという数字です。シジュウカラ用でもヤマガラ用でも15cmが目安になります。つまり、入口から巣の底までしっかり距離をとるということ。箱の高さがシジュウカラ用で18〜30cm、ヤマガラ用で20〜24cmと縦長になっているのは、この落差を確保するためです。
巣箱の設計は「入口穴の直径」→「底から穴までの高さ」→「箱全体の寸法」の順に決めます。シジュウカラなら穴2.7〜2.8cm、底から穴まで15cm、高さ18〜30cm。デザインを考えるのは、この3つが決まってからで間に合います。
横長のポストのような形や、正面が大きく開いたオープンな箱は、写真映えはしても暗さと落差を確保できません。おしゃれさは「外側の仕上げ」で作るもので、内部の形で遊ぶものではない、と割り切るのが近道です。
材料と道具は、思っているより少なくて済む
板厚1cmが基準になる理由
巣箱に使う板は、厚さ1cmくらいのものが基準です。杉材が向いていて、軽くて加工性も良いという特徴があります。屋外に一年架けっぱなしにする箱なので、耐候性のない薄いベニヤや加工しやすいだけの合板はおすすめできません。無垢の杉板か檜の板を選んでください。
なぜ1cmなのかというと、薄すぎると断熱性が落ち、日中の熱が中まで伝わってしまうからです。厚さ12mm以上あれば、より理想的です。逆に厚くしすぎると重くなり、樹木に固定したときの負担が増えます。市販の完成品を見ても、シジュウカラ用の組立キットで重量は約800g、木製の巣箱全体では約800g〜900gという範囲に収まっています。これが一本の枝に架けて無理のない重さの目安になります。
ホームセンターの杉板は幅と長さが規格で決まっているので、呼びたい鳥のサイズに合わせて必要枚数を計算してから買いに行くと無駄が出ません。シジュウカラ用なら幅13cm・奥行き15cm前後の面が中心になるので、幅の広い一枚板を切り分けていくイメージです。
シュロ縄とステンレスの留め具を選ぶ
材料として揃えるのは、杉または檜などの無垢材、ビスまたは釘、ステンレス製の蝶番と留め具、そして樹木への固定用のシュロ縄です。ビスや釘は板厚の2〜3倍の長さを選びます。厚さ1cmの板なら、それに見合った長さのものということですね。
金具をステンレス製にするのは、屋外で一年中雨に濡れるからです。鉄の金具は錆びて膨らみ、木を割りながら抜けていきます。蝶番と留め具が必要なのは、屋根や側面が開く構造にして掃除できるようにするため。ここを省いて全面を固定してしまうと、来年の秋に中を掃除できなくなります。
樹木に固定する縄は、シュロ縄が定番です。天然素材なので木の幹を傷めにくく、経年で色が落ち着いていく質感も巣箱の見た目に合います。針金やロープでもぐるぐる巻きにすれば固定はできますが、幹の成長を締めつけてしまうことがあるので避けたほうが無難です。
実は、カンナもヤスリもかけないほうがいい
ここが、おしゃれな巣箱を目指す人がいちばん驚くところかもしれません。巣箱の板は、カンナやヤスリをかけず、ざらついたままで塗装などもしないのが基本です。すべすべに磨き上げた白木の箱は、家具としては美しくても巣箱としては条件を落としてしまいます。
理由は、鳥の足の引っかかりです。入口から中に降りるとき、そして巣立ちのときに内側の壁をよじ登るとき、ざらついた面が足がかりになります。ツルツルに磨いた内壁は、ヒナにとっては登れない壁です。とくに内側は加工しないまま残してください。
意外と知られていないのですが、この「仕上げない」という原則があるおかげで、DIYのハードルはぐっと下がります。切り口が多少斜めでも、表面に節や割れがあっても、巣箱としての機能は損なわれません。木工が得意でなくても作れるのは、そもそも精密な仕上げを求められていないからなのです。
失敗パターン①:薄い板と、屋外用でない金具で作ってしまう
よくある失敗の1つめが、室内工作用の薄いベニヤ板と一般的な鉄釘で組んでしまうケースです。作った直後は形になりますが、梅雨を越えるあたりから板が反り、隙間から雨が入り込みます。釘は錆びて頭が膨らみ、秋には屋根がぐらつく状態になります。
原因は、屋内工作の材料をそのまま屋外に持ち出したことです。対策はシンプルで、板は厚さ1cm・できれば12mm以上の杉か檜、金具はステンレス製、という2点を守るだけ。板厚が上がると必要なビスの長さも変わるので、板厚の2〜3倍という目安で選び直してください。
傷んだ巣箱は大型の鳥に狙われやすくなるため、注意が必要です。作りっぱなしにせず、翌年の秋に取り外して掃除・補修し、また架け直すことを前提に設計してください。屋根または側面が開く構造にしておくと、この作業がぐっと楽になります。
切る・開ける・組む|杉板から巣箱を仕上げる7つの手順

①板材にマークし、②ノコギリで切り出す
手順の最初は、板材にカット位置をマークすることです。ここで曖昧な線を引くと、あとの工程がすべてずれます。呼びたい鳥の寸法を決めたら、前板・後板・側板2枚・底板・屋根板の6面ぶんを板の上に書き出してください。シジュウカラ用なら幅13cm、奥行き15cm、高さ18〜20cmが基準です。
次にノコギリで部材を切断します。手引きのノコギリで十分ですが、直角を出したいときは工作用のマイターボックス(角度ガイド)を使うと安定します。断面がわずかに斜めでも、組んだときに隙間が大きくならなければ問題ありません。前述のとおり、切り口をヤスリで整える必要もありません。
後板だけは、上下に長く残しておくと固定が楽になります。この余った部分にシュロ縄を通す穴を開けて幹に括りつける構造にすると、箱本体を傷つけずに架け替えができます。組立キットの多くが、新シーズン前には取り外しが容易な設計になっているのも同じ発想です。
③入口穴を開け、④シュロ縄の通し穴を作る
3番目の工程が、入口穴を開けることです。種類に応じた直径で、前板の上寄りに開けます。シジュウカラなら2.8cm、スズメなら3.0cm、ムクドリなら35〜40mm。このとき、底板の位置から穴の下端までが15cmになるように位置を決めると、内部の落差が確保できます。
ホールソーがあれば一発ですが、ない場合はドリルで円周に沿って小さな穴を連続で開け、間をつないでくり抜く方法でも作れます。切り口がギザギザでも、鳥は気にしません。むしろ足がかりになります。
4番目が、シュロ縄通し穴を上下2箇所ずつ開ける工程です。上下2箇所というのが要点で、1箇所だけだと風で箱が回ったり傾いたりします。上と下の2点で押さえることで、幹に密着した状態を保てます。ドリルの径は、使うシュロ縄が余裕をもって通る太さにしてください。
⑤水抜き穴を開け、⑥⑦背面から組んで縄を通す
5番目は、底板に水抜き穴を加工することです。ここを忘れると、吹き込んだ雨が底に溜まります。底面に水抜き穴を複数配置するのが基本で、四隅に小さく開けるだけでも効果があります。巣材が濡れたままになると、ヒナの生存に直接関わる問題になるので省略できない工程です。
6番目が、背面から順に組み立てる作業。後板を基準に側板を立て、底板を入れ、前板、最後に屋根という順で進めると直角が出しやすくなります。屋根または側面のどこか一面は、蝶番と留め具で開くようにしておきます。ここが掃除口になります。
7番目、シュロ縄を通して完成です。この段階ではまだ木の色そのままですが、次のH2で紹介する焼き杉の処理を加えると、一気に印象が変わります。塗装をしない前提なら、この時点で庭に架けても機能上の問題はありません。

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塗らずにおしゃれにする|焼き杉という選択
焼き杉とは、塗装よりも鳥にやさしい仕上げ
おしゃれな巣箱を目指すとき、いちばん相性がいいのが焼き杉です。焼き杉とは、杉材に焼き目をつけることによって、塗装よりも自然にやさしく、腐れにくく、材木が長持ちする工法のこと。表面が黒く炭化した独特の質感になり、木目の風合いが出て、庭のアクセントとしても活用できます。
やり方は難しくありません。ガスバーナーで少し表面を焦がしておくと、木が腐るのを防ぐことができます。塗料を使わないので、鳥が入る箱に化学物質を持ち込まずに済むのも利点です。前のH2で「塗装などもしない」と書きましたが、焼き杉はその原則を守ったまま見た目を作れる、ほぼ唯一といっていい仕上げ方法です。
注意点は、燃やすのではなく焦がすこと。長く炙りすぎると板が反り、厚みも痩せていきます。表面が黒くなったら火を止めて、冷ましてからブラシで軽く炭を落とすくらいがちょうどいい加減です。屋外の不燃物の上で、水を用意して作業してください。
バーナー焼きで30年、三角焼きなら50年以上
焼き杉の耐久性は、実際の数字を見ると納得できます。耐久性はバーナー焼きで30年、三角焼きであれば50年以上持つといわれ、高い耐久性があります。三角焼きというのは、板を三角柱に組んで内側から一気に焼き上げる伝統的な手法で、炭化層が厚く均一に作られるぶん長持ちします。
もちろん巣箱そのものを30年使うわけではありません。年に1度の掃除と補修をしながら架け替えていくのが前提です。ただ、素材の耐久性に余裕があるほど、途中で板が朽ちて作り直す回数は減ります。手間をかけて焼いた一台が何シーズンも使えるのは、DIYの満足度としても大きいところです。
もうひとつ知っておきたいのが、焼き杉は雨などにより自然と色落ちしていくということ。真っ黒だった表面が、数年かけて渋いグレーがかった色に変わっていきます。これを劣化と見るか味わいと見るかは好み次第ですが、庭の緑になじむのは色が落ち着いてからです。
ペイントするなら、入口穴の周りは自然色のまま
それでも色を入れたい、という方はアクリル絵の具という手があります。アクリル絵の具は乾くと耐水性になり、気軽にリメイクやDIYが楽しめる画材です。屋根だけを白くする、側面に小さなラインを入れる、といった部分使いなら、木の質感を残したまま雰囲気を変えられます。
ただし守ってほしい線引きがあります。野鳥の利用に支障を来さないよう、入口穴周辺は自然色のまま保つことが推奨されています。入口の周りだけ鮮やかな色が乗っていると、鳥が警戒して近づかないことがあるためです。塗るなら屋根と背面側、入口のある前板の中心部は無塗装、という配分がバランスの取れたところです。
内側は、色にかかわらず塗らないでください。前述のとおり内壁のざらつきは足がかりとして機能しますし、塗膜で覆うとその凹凸が失われます。おしゃれにするのは外から見える面だけ、と決めておくと迷いません。
シーン別|庭の雰囲気に合わせて仕上げを選ぶ
雑木林風のナチュラルな庭なら、無塗装のままか、軽くバーナーを当てた焼き杉が合います。木の色がそのまま風景に溶けるので、巣箱があることに気づかれないくらいの馴染み方をします。鳥にとっても目立たないほうが安心です。
モダンな外構やウッドデッキのある庭なら、しっかり焼いた黒い焼き杉がおすすめです。黒は緑にも金属にも合いますし、色落ちしてグレーに変わっていく過程も外構と調和します。庭のアクセントとして使えるのは、この黒があるからです。
子どもと一緒に作るなら、アクリル絵の具で屋根だけ塗るのが楽しい落としどころ。入口周りを自然色で残すというルールを先に共有しておけば、子どもの作品としての自由度も確保できます。色を塗る前に「ここは鳥のドアだから塗らないでおこうね」と伝えるだけで、生き物への配慮を学ぶ機会にもなります。
呼びたい鳥でサイズは変わる|4種の寸法早見表
シジュウカラ用|いちばん実績のある基本形
庭の巣箱で最も使われているのがシジュウカラ用です。寸法は幅13〜19cm、奥行き15cm、高さ18〜30cm、穴径2.7〜2.8cm、底から穴までの高さ15cm。幅と高さに幅があるのは、設計する人によって多少の差があるためで、迷ったら小さめの数字から入って問題ありません。
この寸法で作った巣箱には、シジュウカラだけでなくスズメ、ヤマガラなども利用する場合があります。つまり最初の一台としては、いちばん外れの少ないサイズということです。市販品でも日本野鳥の会のオリジナル設計のシジュウカラ用巣箱があり、外寸は約13cm(幅)× 18cm(奥行き)× 30cm(高さ)、入口穴径2.8cm、重量約800gという仕様になっています。
設置する高さは、シジュウカラなら約1.5〜3mが推奨されています。手を伸ばして届く高さから、脚立が必要になるくらいまで。庭木の太さや周囲の見通しに合わせて、この範囲で決めます。

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スズメ用|穴を3.0cmに広げ、箱を縦に伸ばす
スズメ用は、幅18cm、奥行き12〜15cm、高さ24〜28cm、穴径3.0cm。シジュウカラ用と比べると、穴が大きく入口が広めの設計になり、箱の高さも伸びます。材料は杉材で、厚さ1cmが推奨されるのは他の種と同じです。
スズメは人家の周りで暮らす鳥なので、住宅地の庭やベランダで狙うなら現実的な選択肢です。屋根の隙間や戸袋に営巣していた個体が、隙間を塞がれて営巣場所を失っているケースもあります。そういう環境なら、スズメ用の寸法で作った箱が使われる可能性は高くなります。
注意したいのは、穴を3.0cmにするとシジュウカラ用より入れる鳥の幅が広がるという点です。特定の鳥だけを呼びたいという場合には向きません。「うちに来ている鳥に住んでもらう」という考え方で選ぶのがいいと思います。
ヤマガラ用|シジュウカラよりひと回り大きく
ヤマガラ用は、幅15cm、奥行き15cm、高さ20〜24cm、穴径2.7cm、底から穴までの高さ15cm。シジュウカラよりも若干大きめのサイズが適切で、シジュウカラより幅と高さが大きい設計になります。穴径は2.7cmとむしろ小さめですが、内部空間に余裕を持たせるのが特徴です。
ヤマガラは雑木林や社寺林のある環境でよく見られる鳥なので、庭が林に接している、あるいは近くにまとまった樹林があるという条件だと可能性が出てきます。市街地のど真ん中で狙うのは難しい相手です。
面白いのは、シジュウカラ用として作った箱にヤマガラが入ることもあるという点。穴径2.7〜2.8cmという近い数字を共有しているので、どちらが来るかは環境次第になります。「シジュウカラ用に作ったのにヤマガラが来た」は失敗ではなく、成功のバリエーションです。
ムクドリ用|大型鳥向けは高さも設置位置も上がる
ムクドリ用になると、寸法が一段大きくなります。幅15〜18cm、奥行き15〜18cm、高さ28〜40cm、穴径35〜40mm。大型の野鳥用で、穴径が大きく、高さが高い設計です。設置高さも4〜5m程度が推奨されるので、庭木では対応できないことが多くなります。
この寸法を紹介するのは、ムクドリ用を積極的に作ってほしいからではなく、「穴を大きくするとこうなる」という基準を知っておいてほしいからです。穴径を35〜40mmにすると、それは小鳥用ではなく大型鳥用の巣箱になります。作りやすさで穴を広げると、意図しない鳥の家になるということです。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ○ | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |

◎=設置・掃除の適期(秋から冬) ○=繁殖前なら架けられる △=繁殖期にかかるため触らない
| 比較項目 | シジュウカラ用 | スズメ用 | ヤマガラ用 |
|---|---|---|---|
| 入口の穴径 | 2.7〜2.8cm | 3.0cm | 2.7cm |
| 幅 | 13〜19cm | 18cm | 15cm |
| 奥行き | 15cm | 12〜15cm | 15cm |
| 高さ | 18〜30cm | 24〜28cm | 20〜24cm |
| 底から穴まで | 15cm | — | 15cm |
| 設置高さの目安 | 約1.5〜3m | 1.5〜4m | 1.5〜4m |
架ける時期と高さで、結果はここまで変わる
10月〜12月に架けるのが、いちばん確率が高い
作った巣箱をいつ架けるか。答えは秋から冬、10月〜12月が最適です。理由は野鳥の繁殖サイクルにあります。野鳥の繁殖は3月〜5月ごろにはじまるので、巣箱を設置するのはそれよりも前、秋から冬にかけて行うのが適しています。翌年の春に繁殖に使ってもらうための準備、というわけです。
なぜ直前ではだめなのかというと、鳥は繁殖の前に営巣場所を探して回るからです。冬の間に「ここに使えそうな穴がある」と認識してもらう時間が必要になります。3月に慌てて架けても、その年に使われる可能性は下がります。
とはいえ、1月や2月に架けるのが無駄というわけではありません。繁殖開始の3月より前であれば、間に合う可能性は残ります。作り終えたら「来年の秋まで待とう」と保管するより、すぐに架けてしまうほうが結果的に早いことが多いです。
地面から1.5〜4m、蛇などの外敵を意識する
高さは、地面から1.5〜4mが目安です。種によって異なり、シジュウカラは約1.5〜3m、ムクドリは4〜5m程度が推奨されます。地面から2メートル以上の高所に架けることが推奨されており、これにより蛇などの外敵による襲撃を防ぎます。
低すぎると外敵に届いてしまい、高すぎると設置も掃除も危険な作業になります。脚立に乗って安全に手が届く範囲、というのが実用的な線引きです。掃除は年1回必ず発生するので、「今年は架けられたけれど、来年脚立を出すのが怖い」という高さは避けてください。
また、幹がまっすぐで下枝が少ない木を選ぶという条件も、この高さと関係があります。枝が多い木は、外敵にとっての足場になってしまうからです。開けた場所で、天敵の足場になる物が少ない場所を選ぶ、というのが基本の考え方になります。

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入口をやや下に向け、シュロ縄で上下2箇所を固定する
向きについては、明確なコツがあります。入口をやや下に向けるのがポイントで、この工夫により、雨や直射日光を避けることができます。真正面や上向きに取り付けると、入口から雨が吹き込み、中の巣材が濡れます。箱をわずかに前傾させて幹に固定する、と覚えてください。
固定はシュロ縄で樹木の幹に上下2箇所でしっかり行います。上だけだと箱が振り子のように揺れ、下だけだと傾きます。上下で押さえて初めて安定します。縄は経年で緩むので、掃除のときに締め直すのを習慣にしてください。
幹に密着させるとき、後板を長く残した設計にしておくと箱本体を傷めずに縛れます。前のH2で「後板を上下に長く残す」と書いたのは、この工程のためです。設計段階から取り付け方法まで見通しておくと、当日に困りません。
失敗パターン②:よく見える場所に架けてしまう
2つめの失敗が、観察したい気持ちが先に立って、リビングの窓から真正面に見える枝に架けてしまうケースです。設置しやすくて眺めもいいのですが、鳥から見ると人の視線と動きが常にある場所になります。下見には来ても、営巣までは進みません。
設置場所選びには、押さえるべき条件があります。①食べ物になる餌場の間に設置する、②日当たりと風通しが良く、湿度が低い場所、③下枝が少なく幹がまっすぐな木、④人通りがある程度ある場所、⑤開けた場所で天敵の足場になる物が少ない場所。この5つです。
注目してほしいのは④で、「人通りがまったくない場所」ではなく「ある程度ある場所」だという点。人の気配が皆無の場所は、外敵にとっても安全な場所です。ポイントは、人が通り過ぎるけれど立ち止まらない場所を選ぶこと。窓から見えるのは構いませんが、正面ではなく斜めに、しかも人が近づかない側に架けるのが落としどころです。

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作ったあとの1年|掃除まで含めて巣箱づくり
翌年の秋、9月〜10月に中を空にする
巣箱は架けたら終わりではありません。翌年の秋、9月〜10月に中の巣材を取り出し、掃除・補修をして架け替えます。架けた巣箱は年に1度、必ずお手入れしてください。この作業を前提に設計するかどうかで、二年目以降の使われ方が変わります。
なぜ秋なのかというと、繁殖期が終わっているからです。3月〜5月に始まった子育ては夏の間に終わり、秋には巣箱が空になります。このタイミングで開けて、古い巣材をすべて取り出します。中には巣材が層になって溜まっていることが多く、そのままだと翌年の営巣スペースが浅くなってしまいます。
掃除がしやすいのは、底面に水抜き穴があり、屋根や側面が開く構造の箱です。作るときにこの構造を仕込んでおけば、脚立の上で数分の作業で済みます。逆に全面を固定して作ってしまうと、毎年ここで詰まります。
失敗パターン③:傷んだ巣箱をそのまま架け続ける
3つめの失敗は、一度架けた巣箱を何年も触らずに放置してしまうケースです。板が反って隙間ができ、屋根がずれ、シュロ縄が緩んで箱が傾く。見た目が悪くなるだけでなく、実害があります。傷んだ巣箱は大型の鳥に狙われやすくなるので、注意が必要です。
入口以外の場所に隙間ができると、そこが弱点になります。せっかく穴径を2.8cmに絞って安全性を確保したのに、側板の割れ目から中が見えては意味がありません。原因は経年劣化なので、防ぐ方法は定期点検しかありません。
対策は、秋の掃除とセットで補修すること。ビスの緩みを締め直し、割れた板は交換し、シュロ縄は新しいものに替える。焼き杉の色が落ちてきていたら、外した状態でもう一度軽くバーナーを当ててもいいと思います。この作業を毎年繰り返すことで、一台の巣箱が長く使えるようになります。
作るか、買うか|完成品とキットの価格を比べる
「作る時間はないけれど庭に架けたい」という方には、市販品という選択肢があります。職人手作りの焼き杉バードハウスA(前扉タイプ)は、サイズが幅200mm × 奥行き180mm × 高さ290mm、素材は杉の焼き杉仕上げ、入口穴径は約27mm。前面から開閉可能で手入れがしやすい設計になっていて、天然ヒバ油配合の安全な植物性塗料が使われています。メーカー希望小売価格は2,700円程度、通販サイトのインターネット特別価格は2,000円(税込)です。
もう少し本格的な設計を求めるなら、日本野鳥の会のシジュウカラ用巣箱キットがあります。入口穴径2.8cm、外寸は約13cm × 18cm × 30cm、重量約800g、材料はトドマツ材(国産材)。ドリルドライバーを使用して組み立てられる組立キット式で、価格は3,960円(税込)です。三角屋根から斜め屋根に変更されたリニューアル版で、以前より軽くなっています。
選び方の目安としては、「巣箱づくりそのものを楽しみたい」なら杉板から自作、「組み立てる工程だけ体験したい」ならキット、「今シーズンに間に合わせたい」なら完成品。焼き杉の完成品は仕上げまで済んでいるので、届いた日に架けられるのが強みです。
大木が減った街で、巣箱が果たしている役割
最後に、少しだけ背景の話をさせてください。巣箱がこれだけ推奨されるのには理由があります。大木・老木の減少により、野鳥たちは住宅難になっているからです。樹洞は、木が長い年月をかけて朽ちる過程で自然にできるもの。手入れの行き届いた公園や新しい街路樹には、そもそも穴が空いていません。
住み心地のいい巣箱を架けることで、野鳥のすみかを提供できます。庭に一台の箱を架けるという行為は、見た目のインテリアである以上に、失われた樹洞をひとつ補う作業でもあるわけです。おしゃれに仕上げることと、鳥の条件を満たすことは対立しません。焼き杉という手法があるのは、まさにその両立が可能だからです。
一次情報として、キヤノン バードブランチプロジェクトの巣箱解説、東京都環境局の巣箱資料、日本野鳥の会バードショップの巣箱ページが参考になります。焼き杉については焼き杉バードハウスの製品ページに説明があります。
まとめ
次の一歩としておすすめしたいのは、庭やベランダに来ている鳥を一週間だけ観察してみることです。シジュウカラが来ているなら2.8cm、スズメが屋根まわりに出入りしているなら3.0cm。そこが決まれば、あとは板厚1cmの杉板を必要な枚数だけ買ってきて、マーキング・切断・穴あけ・縄通し・水抜き・組み立て・固定という7つの手順を順にたどるだけです。焼き杉の仕上げは、組み上がってからでも間に合います。掃除は翌年の9月〜10月。この年間サイクルまで含めて計画しておくと、一台の巣箱が何シーズンも庭で働いてくれます。
※製品の価格・仕様は変更される場合があります。購入前に各メーカー・販売店の公式サイトでご確認ください。

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